○ツムウロゴ王国 軍事基地内
コングマン。230cm。230kg。30歳。
ツムウロゴ王国のパイロットであり、ゴリラである。
ジャングルを模(も)した広大な運動スペース…。
ツムウロゴ王国・国境付近の軍事基地内にそれはあり…。
ツムウロゴ王国・国境付近の軍事基地内にそれはあり…。
夜間はコングマンの寝所ともなっている。
「フワァ~ウッホォオ~~~~。」
時は朝であり。コングマンは目覚める。
ノォビノォォビィ~~~~~!!
コングマンは伸びをし。
自身の体が目覚めていくのを感じた。
そして。
グイィ~! グイィィ~!!
動的ストレッチを行う。
動的ストレッチとは、動きの中で腕や足などをいろいろな方向に回し、
関節の可動域を広げつつ、関節周辺の筋肉をほぐして温めるストレッチだ。
我々が一般的に認知しているストレッチは静的ストレッチ(筋肉を伸ばしたまま数十秒静止するストレッチ)。
これは練習前後どちらもすべきではないとされている。弾性エネルギー(バネ)が失われるとされるからだ。
だから『動的ストレッチ』。
行っているのは『マエケン体操』。
21世紀のメジャーリーガー『前田健太(マエダ ケンタ、通称・マエケン)』が行う独特なストレッチだ。
その動きとは。
肘を体の真ん中に真ん中に持っていく事。
投げるのと一緒の動きで右腕が体に巻きつく感じ。
上げるのは回したまま自然に。
大きく柔らかくムチのイメージで。
【肘で円を大きく描くイメージ。遠くに遠くに上げるように】
で、行われる。
そんなこんなで他の動的ストレッチも終えると。
「ウホォ~~~~~~~~~~~~~~!!」
シュパァン!
シュパパァン!!
コングマンは『シャドー』を始める。
『シャドー』とはボクシングにおける『シャドーボクシング』の事である。
頭で仮想の敵を想定し、パンチやキックを繰り出す。
これがなかなか効果を発揮する。
肉食動物が幼い頃『遊びの中、狩りの練習』をするようなモノだ。
20世紀末。伝説的な素手喧嘩(ステゴロ)ヤクザが言うには、
『ライオンや熊はトレーニングをしない』。
『鍛える事は女々しい』。
と豪語したが、肉食動物と言えど、狩りの練習を行わなければ生き残れない。
もっとも。そのヤクザが言う意味はその『強烈な雄度』が誇り高い訳だが。
話を戻そう。
コングマンは、練習をする。
己が未熟である事を知るからだ。
未熟ならば練習をする。それは当然の事であろう。
先に不覚を取った…。
無貌の頭と胸部に隻眼、そして長い腕を持つ異形の機体。
(春休戦さん作「影狼隊徒然記【阿弗利加南部戦線】」参照。)
(春休戦さん作「影狼隊徒然記【阿弗利加南部戦線】」参照。)
今度は同じ結果になる事を良しとしない。
ならば、どうする?練習するしかないだろう??
だから、コングマンは練習した。
そんな時であった…!
「精(せぇ)出るなぁ。コンちゃん。」
「バナナ持ってきただぁよ♪」
バナナを持った。
黒髪、褐色(かっしょく)の娘が話かけてきた。
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○超鋼戦機カラクリオー外伝
クロガネの賛歌 第8.5章 ー ショートストーリー ー
第 1 話 「 愛 ☆ コ ン グ マ ン 」
その声に。
その声にコングマンはときめく。
キ ュ ウ ン … !
それはコングマンが恋をしているからだ。
この黒髪で褐色の女性…。
『ルゥナ=ドンリウ』を…!
『ルゥナ=ドンリウ』を、愛しているからなのだ!!
それは小柄な女性であった。
148cm48kg。
その小柄な様と、
方言丸出しの愛らしい口調が、
コングマンの心がそそるのだ。
一生をかけて守ってやりたい。
そう思えてならないのである。
しかし…。
「ウホゥ…。」
コングマンは背中を向ける。
そして、うつむく。
ルゥナは切なげに…。
「コンちゃん…。」
と呟く。
それは。
コングマンが意地悪をしているからではない。
また、放置プレイをしている訳でもない。
それは…。
ゴリラは好きなメスの前では、
脇汗をかいてドキドキするくらいピュアな生き物であるからだ。
それに加えて好きなメスが近くにいると
目を合わせることができず、うつむいてしまうからなのだ。
コングマンは苦しむ。
(何て情けが無いのだ。)
(私はルゥナを愛していると言うのに!)
だが…。
脇汗は止まらず。
心臓はドキドキとし…。
バッコンバッコンをしている。
ちなみにバッコンバッコンは、
Hな事をしている擬音ではない。
緊張をしている心音であるのだ。
ルゥナはこう言う。
「コンちゃん…。」
「バナナ置いとくだ。」
「食べてくれると嬉しいだぁよ。」
「そんじゃあなぁ。コンちゃん。」
タッ。
ルゥナは逃げるようにその場を去った。
コングマンは。
「ウホゥ…。」
と呻(うめ)いた。
コングマンは悲しい。
そんな時だった。
「いやぁ、見ていましたよ。」
「コングマン君。君は自分の心に素直になれないのですねぇ。」
ツムウロゴ王国の国王ノサリマ・タハである。
コングマンをしおらしげに。
「ウホゥ…。」
と答える。
ノサリマはこう言う。
「この国のウドイカホ高原に『マウーシュ』と言う『花』があります。」
「その花はこの国の伝説で『愛する者に捧げる花』とされています。」
「その道は険しく、途中、ライオンが居るサバンナや、絶壁の崖を上らねばなりませんが…。」
「コングマン君。『君の愛が本物ならば、その試練を乗り切る事が出来るんじゃあありませんかねぇ?』」
コングマンは…!!
「ウッホゥッ!!」
気持ちを新たにする!!
この気持ち!
この張り裂けんばかりの胸の内!!
伝える事が出来たなら…!
伝える事が出来るならッ!!
このコングマンッ!!
命を懸けて、その試練ッ!!
乗 り 越 え て み せ よ う ッ ! !
コングマンはウドイカホ高原へと向かった。
○ウドイカホ高原
コングマンはウドイカホ高原に辿(たど)り着いた。
道中、ライオンには遭遇(そうぐう)しなかったモノも、
中々と険しい崖を上って来た。
しかし道中が如何に険しかろうと、
コングマンには愛があった。
愛が故にこの険しい道のりを乗り越えてこれた。
そして辿(たど)り着いた、そこには…!
可憐(かれん)な…!
可憐(かれん)な花(フラワー)が其処にはあった!!
ノサリマが言っていた通りの特徴だ。
ルゥナを連想させるような可憐な花だ。
これが『マウーシュ』と言う花に違いない!!
待っていてくれ『ルゥナ』ッ!
今ッ!君にッ!!
この花を捧げて見せるッ!!
コングマンは、マウーシュを一つ千切ると。
ダッ!!
大急ぎで、基地へと向かったッ!!
○ツムウロゴ王国 夜間 サバンナ
ライオンであった。
それは…メスのライオン。
1頭じゃあない。数頭だ。
ライオンはメスが集団で狩りを行い、
扇形に散開しながら獲物に忍び寄る。
そして今は忍び寄られた状態と言う訳だ。
コングマンは思考する。
(今、自分は花を持っている。)
(小さな花だ。置きながら…は無理だな。)
(まず間違いなく見失うだろう。)
な
ら
ば
!
(大事に手で包み込むように持ち!)
(戦うしかあるまいッ!!)
そ
う
だ
!
(ライオンは足技で仕留めるッ!!)
ッ
ッ
そうこうしている内にッ!!
ッ
ッ
ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
ッ
ッ
ライオンの1頭が、コングマンに襲い掛かるッ!!
だ
が
!
コングマンッ!!
ム
ォ
ン
!
コングマンは、右足を高く突き上げる!!
その構え、かのK-1の鉄人、青い目の侍と称された
『アンディ・フグ』必殺の『踵落とし』の如く…!!
そ
う
!
それはゴリラだから出来る技!
ゴリラの足指関節によってのみ可能とする絶技!!
名
付
け
て
!
『 足 し っ ぺ 』で あ る ! !
ッ
ッ
ド ッ ッ ッ ギ ャ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア ア ~~~~~~~~~~~~~~~~~ ン ン ン ! !
ッ
ッ
倒した!ライオンを1頭倒した!!
殺しちゃあいない!コングマンは無為に命を奪わない!!
気絶させる程度に抑えているッ!!
ッ
ッ
ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
ッ
ッ
残りのライオンが一斉に襲い掛かって来た!!
ダ
ン
!
コングマンが、軽く宙を浮くッ!!
そ
し
て
!
「ウッッッ!
ホォォォオオ オ オ オ オ ー ッ ! ! 」
ッ
ッ
その場で『旋風脚』をブチかますッ!!
そして襲いかかる、メスライオン達を、一気に倒したのだ!!
ッ
ッ
コングマン!
(命は奪わない。)
(この隙に通らせてもらう。)
コングマンは、サバンナを去った。
○ツムウロゴ王国 軍事基地内
コングマンは、棲家(すみか)に戻った。
そして探す。愛するルゥナを…!!
そうして…!
見つけたッ!!
ダッ!
走り寄る、コングマン!
ルゥナは驚く。
「コンちゃんじゃねぇか!」
そして、こう言う。
「昨日はどうしたんだ?基地を空けて…。」
「心配してたんだぞ、コンちゃん。」
そう言うルゥナに、コングマンは…。
「ウッホゥ…。」
大事に運んで来た、可憐な花。
『マウーシュ』をルゥナに見せる。
「…!」
ルゥナはその意味を察する。
「コンちゃん…。」
「コンちゃん、オラの事…。」
コングマンは、力強く叫ぶッ!!
「ウッホォォォォオオオオオオオオオ オ オ オ オ オ ! ! ! ! ! 」
ルゥナはその叫びを受け取り…。
「コンちゃん…。」
ルゥナは語り出す。
「コンちゃん…。オラな。」
「動物保護官の娘として生まれて…。そんな親を見てな。」
「生涯、動物の為に生きてこうって思ってたんだあ。」
「でも戦争が始まって…。その中でコンちゃん。」
「おめさが、動物なのに戦ってる事を知ったんだ。」
「それが何とも切なくてなあ。」
「動物は動物らしく生きて欲しいと思えてならなくてなあ。」
「そんなおめさをせめてサポート出来ればって…。」
「この職に就いたんだ。」
「でも、コンちゃん、いっつもオラに冷たくて…。」
「それが悲しくて…。辛くって…。こんなにも…。」
「オラがコンちゃんの事を『好き』なのにって…。」
「そう思えてならなかったんだ。」
「コンちゃん…。」
「コンちゃん、オラの事好きなのけ?」
コングマンは頷(うなず)く。
「ウッホゥ…。」
ルゥナは泣き出す。
「うわ…わわわわ……。」
「うわぁぁあああああああん。」
コングマンは黙って抱き寄せ。
ヒシ…。
と、抱き寄せる。
そこに言葉は必要なかった。
○エピローグ
ツムウロゴ王国のパイロット…。
コングマン。ゴリラである。
ゴリラにして、彼は、
ツムウロゴ王国の1のパイロットであり…。
ツムウロゴ王国の1の穏やかな心を持っていた。
そして…。
その傍(かたわ)らには…。
小柄な黒髪で褐色の女性が一人。
その名は…。
ルゥナ=ドンリウ。
2人の仲は非常にむつましく…。
誰もが2人の未来を祝福したと言う。
ーーーーーー
第1話「愛☆コングマン」