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RTA
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概要
RTAとは
RTA(リアルタイムアタック、Real Time Attack)とは、ゲームの開始から設定された終了地点までを、現実に経過した時間で計測して速さを競うプレイスタイルである。
日本では「RTA」という名称が広く定着しているが、海外では一般に「Speedrun(スピードラン)」と呼ばれる。
通常プレイとは異なり、最短ルートの構築、ゲーム内部仕様の解析、操作精度の向上、乱数調整、ロード時間の短縮、バグ・グリッチ・仕様の利用などが研究対象となる。
ゲームによっては数時間から数十時間かかる通常プレイが、RTAでは数分、場合によっては数十秒単位にまで短縮される場合がある。
RTA in JapanではRTAを「ゲームを最初からプレイして、実時間でどれだけ早くクリアできるのかを競う遊び方」と説明している。
目次
起源
タイムアタックからRTAへ
ゲームをできるだけ速く攻略するという遊び自体は、RTAという言葉が誕生する以前から存在していた。
日本では1980年代からアーケードゲームなどで「タイムアタック」という言葉が使われ、1990年代にはRPGなどでもゲーム内に記録されたプレイ時間を短縮するやり込みが盛んになった。
当時のタイムアタックではゲーム内部の時計、いわゆるIGT(In-Game Time)を利用する場合が多かった。
しかしゲームによっては、
- ゲーム内時計が存在しない
- セーブ中やロード中に時計が停止する
- リセットを繰り返すことでゲーム内時間だけを短縮できる
などの問題があった。
このため、ゲーム内時計ではなく現実世界の経過時間をストップウォッチなどで計測する方法が発達した。
「リアルタイムアタック」という名称については、2000年前後にゲーム攻略サークル「極限攻略研究会」が使用・定着させた日本発祥の造語とされることが多い。
1990年代以前のゲーム雑誌に存在した「最速クリア」「やり込み」投稿文化も、RTAへつながる重要な前史である。
RTAとTAの違い
TA
TA(Time Attack)は、主にゲーム内部で記録される時間を基準とするタイムアタックを指す場合がある。
ただし用語の使い方はコミュニティや時代によって異なる。
RTA
RTAでは実際の経過時間を測定する。
ロード、メニュー操作、イベント、ゲームによってはリセットや再起動まで含めて計測される。
そのためゲーム内部の時計を止めるだけではタイム短縮にならない。
RTAとTAS
RTAと混同されるものとしてTASがある。
TASはTool-Assisted SpeedrunまたはTool-Assisted Superplayの略で、エミュレータなどの補助機能を利用して理論的あるいは極端に最適化されたプレイを作成する。
代表的な補助には、
- フレーム単位入力
- スローモーション
- ステートセーブ
- 入力のやり直し
などがある。
一方、通常のRTAは人間がリアルタイムで実際に操作することを基本としている。
ただしTASで発見されたルートやバグが、後に人間のRTAへ移植される例も非常に多い。
カテゴリー
RTAには複数の競技カテゴリーが存在する。
Any%
ゲームクリアに必要な達成率を問わず、規定上許された方法で可能な限り早くエンディング等へ到達するカテゴリー。
大規模なバグやワープが許可される場合、通常のゲーム進行をほとんど無視することもある。
100%
ゲーム内の主要収集要素などをすべて取得してクリアするカテゴリー。
作品ごとに100%の定義は異なる。
Glitchless
一定のバグ・グリッチ利用を禁止したカテゴリー。
ただし「どこまでがバグで、どこまでが仕様か」は簡単には決められないため、コミュニティごとにルールが細かく定義されている。
No Major Glitches
大規模な進行破壊バグは禁止するが、小規模なテクニックや仕様利用は認めるカテゴリー。
No Wrong Warp
Wrong Warpなど特定の大規模ワープだけを禁止するカテゴリー。
バグとの関係
RTAとゲームバグは非常に深い関係にある。
RTAではゲームを「製作者が想定した攻略手順」ではなく、「プログラムが実際に何を許可するか」という観点から解析する。
このため、
- 壁抜け
- 高速移動
- イベントスキップ
- ステージスキップ
- メモリ破壊
- 状態管理の不整合
- 座標オーバーフロー
- オブジェクト挙動の悪用
- 任意コード実行
などが発見されることがある。
バグは単なる偶発的な不具合ではなく、RTAでは競技技術として体系化される場合がある。
また、バグを禁止するカテゴリーでも「どの挙動を禁止するか」を明確化する必要があり、RTAコミュニティが事実上ゲーム仕様の研究機関のようになることもある。
ゲーム内バグをソフトウェア工学的に分類した研究では、『スーパーマリオ』シリーズのRTAで利用されるバグの多くが状態管理や処理タイミングの問題として分類できることも報告されている。
ゼルダの伝説 時のオカリナ
RTA研究の代表例
『ゼルダの伝説 時のオカリナ』は、RTA史において特に高度な解析が進んだ作品の一つである。
現在もSpeedrun.comには、
- Any%
- 100%
- All Dungeons
- Glitchless
- No Wrong Warp
- MST
など多数のカテゴリーが存在する。
RBA
RBA(Reverse Bottle Adventure)は、アイテム管理領域などゲーム内部の状態を利用して通常では起こらないアイテム変化を発生させる技術。
2000年代の時のオカリナRTAに大きな影響を与え、後の高度なルート研究へつながった。
Wrong Warp
Wrong Warpは、通常とは異なる場所へゲームを遷移させるワープ技術。
本来のイベント進行やダンジョン攻略を大幅に飛ばすことができ、Any%のタイムを劇的に短縮した。
その一方で「Wrong Warpを禁止したカテゴリー」も成立した。
SRM
SRM(Stale Reference Manipulation)は、消滅したオブジェクトへの参照などゲーム内部の状態を操作する高度な技術。
時のオカリナではSRMの研究が進み、単なる壁抜けを超えてメモリ操作に近い領域へRTAが到達した。
ACE
ACE(Arbitrary Code Execution、任意コード実行)は、ゲーム内部のメモリ状態を操作し、本来ゲームに存在しない処理まで実行させる技術。
時のオカリナでは、RTA研究が最終的に「ゲームを攻略する」だけでなく「ゲーム内部でプログラムを書く」ような領域まで進んだことで知られる。
このため時のオカリナRTAは、
「攻略」
↓
「バグ利用」
↓
「メモリ操作」
↓
「任意コード実行」
というRTA技術発展の象徴的作品となっている。
「攻略」
↓
「バグ利用」
↓
「メモリ操作」
↓
「任意コード実行」
というRTA技術発展の象徴的作品となっている。
日本独自のバグ制限ルール
日本では『時のオカリナ バグ制限RTA協議会』などが存在し、どの技術を認めるかをコミュニティで議論していた。
例えば、
- 盾突き
- 折れたデクの棒
- 無敵時間利用
などを許可しつつ、それ以外の特定バグを禁止するといった細かなレギュレーションが策定されていた。
RTAにおいて「バグ有り/無し」は単純な二択ではないことを示す例である。
スーパーマリオ64
RTAの代表的作品
『スーパーマリオ64』も世界的に有名なRTAタイトルである。
代表的カテゴリーには、
- 0 Star
- 1 Star
- 16 Star
- 70 Star
- 120 Star
などがある。
必要スター数をどこまで減らしてクッパへ到達できるかという研究が、作品のRTA史そのものになっている。
BLJ
BLJ(Backwards Long Jump)は、後ろ向き幅跳びを特定条件で連続入力することで異常な速度を蓄積する技術。
この速度を利用して、本来必要なスター数を無視して扉や階段を突破できる。
特に旧来の16枚RTAや0枚RTAで象徴的な技となった。
後期版や一部再発売版では修正されている。
MIPS Clip
地下にいるウサギのMIPSを利用し、扉や壁などをすり抜ける技。
オブジェクトを持った状態と当たり判定処理の組み合わせを利用して、本来進めない場所へ侵入する。
Lakitu Skip
ゲーム開始直後のジュゲムによるカメラ説明イベントを回避する技術。
短い時間短縮だが、RTAでは数秒以下の短縮も重要なため、長年利用されている。
ルート研究
スーパーマリオ64では、単一の巨大バグだけでなく、
- スター取得順
- 移動角度
- 壁蹴り
- 幅跳び
- カメラ操作
- ステージ退出位置
など無数の小さな最適化が積み重ねられている。
そのため120枚RTAのようなバグ依存度の低いカテゴリーでも、数十年にわたりルート更新が続いている。
バグは「ズル」なのか
RTAではバグ利用を単純なズルとは考えない。
重要なのはカテゴリーごとのルールである。
バグを許可したAny%と、バグを禁止・制限したGlitchlessは別競技として並立する。
つまり、
「バグを使うか否か」
ではなく、
「どのルールの中で最速を競うか」
がRTAの基本思想である。
「バグを使うか否か」
ではなく、
「どのルールの中で最速を競うか」
がRTAの基本思想である。
チェスと将棋が別競技であるのと同様に、同じゲームでもカテゴリーが違えば別種目として扱われる。
ニコニコ動画とRTA
2000年代後半以降、ニコニコ動画やニコニコ生放送によって日本のRTA文化は大きく拡大した。
従来のRTA動画は記録証明としての意味合いが強く、
- 非常に長い
- 解説が少ない
- 競技を知らない視聴者には理解しづらい
という面があった。
ここへ「実況・解説・編集・ネットミーム」を組み込んだ動画文化が登場する。
その代表がbiim兄貴である。
biim兄貴
概要
biim兄貴は、日本のRTA動画文化に大きな影響を与えた投稿者。
RTA画面に、
- ゲーム映像
- 解説字幕
- チャート説明
- 補足画像
などを同時表示するレイアウトを使用し、この形式は後に「biimシステム」「biim式」と呼ばれるようになった。
2010年代半ばには類似形式のRTA動画がニコニコ動画で大量に投稿されるようになり、RTAを競技記録だけでなく「見る娯楽」として広める役割を果たした。
biimシステム
biimシステムに厳密な統一規格は存在しないが、典型的には、
- メイン領域:ゲーム映像
- 画面右側:チャート、キャラクター、画像など
- 画面下部:字幕・解説
- ゆっくり音声などによる実況
という構成を取る。
プレイ内容だけでなく、
- ゲーム解説
- ルート解説
- 失敗談
- 小ネタ
を盛り込めるため、長時間RTAとの相性が非常に良かった。
biim兄貴と淫夢
biim兄貴のRTA文化を語る上で、「真夏の夜の淫夢」を含むニコニコのネットミーム文化との関係は切り離せない。
本人はインタビューで、RTAを知る以前からいわゆる「日本独自のインターネット文化動画」を制作・視聴しており、その文化を「出身母体」と認識している旨を語っている。
ここでいう文化には、
- 真夏の夜の淫夢
- レスリングシリーズ
- BB素材
- 音MAD
などが含まれる。
そのため初期のbiim式RTA動画には淫夢語録やBB素材などが多数使用された。
このスタイルが拡散したことで、
「RTA」
「ゆっくり実況」
「biimシステム」
「淫夢語録」
が一時期強く結びついた。
「RTA」
「ゆっくり実況」
「biimシステム」
「淫夢語録」
が一時期強く結びついた。
実際、2010年代のニコニコ動画ではbiimシステム採用RTAが一つのジャンルとして巨大化した。
淫夢とRTA文化の関係
重要なのは、「RTAそのものが淫夢由来」という意味ではない点である。
RTA自体は2000年前後には既に成立しており、さらにその前にはタイムアタック・やり込み文化が存在する。
淫夢文化との融合は主として2010年代以降の「動画表現」において発生した。
整理すると、
タイムアタック文化
↓
RTA成立
↓
ニコニコ生放送・動画文化
↓
biim兄貴
↓
biimシステム
↓
淫夢・BB・語録文化との融合
↓
大量のbiim式RTA動画
↓
RTA成立
↓
ニコニコ生放送・動画文化
↓
biim兄貴
↓
biimシステム
↓
淫夢・BB・語録文化との融合
↓
大量のbiim式RTA動画
という流れである。
そのためRTA史から淫夢文化だけを完全に除外すると、日本の動画RTA史、とりわけ2010年代ニコニコ文化の説明として不完全になる。
「健全化」とRTA史
現在のRTAはRTA in Japanなど大規模イベントの発展によって、一般向けゲームイベントとしても認知されるようになった。
一方で、日本のネットRTA文化が拡大した過程には、
- ニコニコ動画
- ゆっくり実況
- BB劇場
- 淫夢語録
- MAD文化
といったアングラ寄りのネット文化が存在していた。
したがって現在のRTA文化だけを見て、過去の淫夢・ミーム文化との関係を存在しなかったものとして扱うのは、歴史的には適切ではない。
ただし、
「RTA=淫夢」
でもなく、
「RTA in Japan=biim界隈」
でもない。
「RTA=淫夢」
でもなく、
「RTA in Japan=biim界隈」
でもない。
競技RTA、イベントRTA、biim式RTA、TAS、配信RTAなどは互いに重なりながらも別々の文化圏を形成している。
RTA in Japan
RTA in Japanは、日本最大規模のRTAイベントの一つ。
様々なゲームのRTA走者が集まり、連続してRTAを披露する。
現在では夏と冬を中心に大規模イベントが開催されており、日本におけるRTA一般認知の拡大に大きく貢献した。
2017年に第1回イベントが開催され、2020年には一般社団法人化された。
RTAがゲーム研究に与えた影響
RTAではゲームを極端な条件で繰り返しプレイするため、通常プレイでは発見されにくい仕様や不具合が見つかる。
その結果、
- ゲームエンジンの状態遷移
- メモリ管理
- 当たり判定
- 乱数
- 座標計算
- イベントフラグ
などの解析が進む。
『時のオカリナ』のSRMやACE、『スーパーマリオ64』のBLJやMIPS Clipなどは、RTAが単なる「早解き」を超えてゲームソフトウェア解析文化へ発展した代表例である。
関連用語
Speedrun
海外で一般的な呼称。
Runner
RTAを行うプレイヤー。日本では「走者」と呼ばれる。
WR
World Record。世界記録。
PB
Personal Best。自己ベスト。
Split
区間ごとのタイム。
Route
攻略順序、アイテム取得順などを最適化した手順。
Glitch
バグや想定外挙動を利用した技。
Skip
イベントやエリアなどを飛ばす技術。
Wrong Warp
本来とは異なる場所へ遷移するワープ技。
ACE
Arbitrary Code Execution。任意コード実行。
IGT
In-Game Time。ゲーム内部で計測される時間。
RTA
Real Time Attack。現実世界での経過時間によるタイムアタック。
TAS
Tool-Assisted Speedrun / Tool-Assisted Superplay。
関連項目
外部リンク
- RTA in Japan
- Speedrun.com
- ゼルダの伝説シリーズ リアルタイムアタック研究会
- スーパーマリオ64RTAインフォ
余談
「RTA」という語はゲーム以外にも転用され、「○○RTA」として「何かを異常な速さで達成する」というインターネットスラングとして使用される。
例として、
「退職RTA」
「炎上RTA」
「即終了RTA」
などがある。
「退職RTA」
「炎上RTA」
「即終了RTA」
などがある。
本来のRTA文化から派生した比喩表現である。









