山羊のビーフシチュー(やぎのビーフシチュー)は『帥丙ラジカル』の第7話「養子」でメインテーマにされている料理。同じ話に登場する山羊のジンギスカンについても本項で記す。
概要
『帥丙ラジカル』の第7話では、主人公・帥丙水人の父であり料理人でもある明戸が、自身の考案した「山羊のビーフシチュー」を人々に試食させるべく奮闘する。が、まず読者にとって不自然に映るのは「山羊のビーフシチュー」という言葉そのものだろう。「ビーフシチュー」の「ビーフ」とは牛肉のことだ。「山羊肉のシチュー」と言い換えればいいじゃないかとツッコみたくなるところだが、実は作中でも妻の冨美子によってすでにツッコまれている。にもかかわらず、作中では最後まで頑なに「山羊のビーフシチュー」という表現が使われ続ける。第7話の序盤にはチムピスがビーフシチューをおいしそうに食べる描写があるため、そこから繋げようと考えたのか、あるいは矛盾を活かしたギャグなのかもしれないが、言い換えるという発想に至らなかったと考えてもそれはそれでドクマムシらしい。
しかしこの第7話には実のところもう一つのツッコみどころが存在する。山羊のジンギスカンだ。話の後半からは、水人が先輩とのバーベキューで嫌々ながらそれを食べさせられ続ける。普通であればジンギスカンというのは山羊(ヤギ)肉ではなく羊(ヒツジ)肉の料理を指すはずだが、これも単に取り違えているわけではない可能性が高い。というのも、作中では山羊肉の臭さが嫌になるほど強調されて描かれているが、実際に山羊肉というのは羊の肉よりもかなり臭いと言われている。そうした山羊肉独特の性質を文章化しているばかりか、水人はそのジンギスカンについて「ふつう乾燥させて野菜の上に乗せて蒸し焼きにする」と調理法の指摘まで行っている。これは山羊料理にある程度通じていないとできない描写だろう。ドクマムシの非凡な食の感性が表れている描写なのかもしれない。
ちなみに、成獣の山羊の肉は英語圏ではシェボン(chevon)と呼ばれることが多いが、アジアのいくつかの国などでは成獣の羊の肉を指すはずのマトン(mutton)という言葉が山羊の肉のこととして通じることもあるという。ジンギスカンにはマトンを用いることも普通だが、つまりその際には羊の肉を用いても山羊の肉を用いても間違っていないことになる。
とにかく、山羊肉の料理にはここまで話のネタになる要素があるということである。