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帥丙ラジカル

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帥丙ラジカル』(すいへい(?) - )は野村剛(のむら つよし)によって「小説家になろう」に投稿された小説作品。ND 宣伝 によると兄(すなわちドクマムシ)の別名義による作品だという。

2013年9月12日に第1話「入学式」が公開。第9話まで続き、NDの寄稿による番外編「とある高校の便所の落書き」が2013年11月10日に公開された後、5年間のブランクがあり、その後の2018年12月2日に第10話の「複数の帥丙」が公開された。

- 目次

概要

ギャグ小説で、暴力描写とブラックユーモアを主な要素としているらしい。ちなみにタイトルの「ラジカル」(radical)という英単語には「過激派」という意味がある。

目次の文章によると「主人公、帥丙水人 どこにでもいる普通の不良高校生 複数のストーリーを最後一つにまとめるのを分野に描く 学園ブラックユーモア」とのこと。イマイチ意味が分からないが、本編を実際に読む限りでは「一つの話の中で複数の場面が進行しており、それが一つの結末に収束する」ということを表しているようだ。

第一話冒頭によると、野村もといドクマムシはこの作品を「ライトノベル分類の大賞部門」(どこかの出版社のラノベ新人賞?)へ第6話まで続けて送り付けたが、一次予選に入ることなく落ちてしまったという。このとき、ドクマムシはそもそも「ライトノベル」がなんなのかを把握していなかったらしい。他の回の冒頭を見ると「頭がビー玉のメインキャラクター」やら「下半身を切り離して生え替えさせることができるトカゲ女」やら、人間離れした登場人物が出てくることが分かる。

感想は一件だけだが、ツイッター経由で作品を知ったという人物から寄せられており、文章作法の問題、描写の不足や過多について指摘されていたようだ。これについてドクマムシは素直に受け入れていた一方、ストーリーについては「(読者は)ついていけないだろう」「複数の物語を最後一つにまとめるのは読者は疲れるんじゃないのか」と問題視しつつも、「上の分野は絶対に外せません」と語っており、作品のコンセプト自体については強い思い入れを持っていたようだ。なお、誤字脱字や珍妙な言葉遣いは相変わらずだが、それについては指摘されていない。「なろう」では文章がおかしい作品でもそれ自体はあまり問題視されず、面白ければ高い評価を受けているようだ。

特徴

極・魔導物語』と似通った文章の拙さや登場人物の珍獣率など、一目で読む気を削がれる要素が強力なことには違いない。また、この作品の売りである「複数の場面が最後に収束する」という形式も、序盤では全く関係のなさそうな複数の場面が入れ替わり立ち代わり描かれるので、作者本人の言う通りやや着いて行きづらい点は否めない。しかし、それらをうまいこと無視して読めば、NDの小説と比較して高く評価できる点も多い。そうした比較の上で見出される特徴は以下の通り。
  • NDよりも読みやすい正式な文体を用いる。一文ごとに空行が入ることもなく、会話もちゃんと括弧で示している。
  • ND曰くドクマムシは二次元の女性が大嫌いだったというが、NDのようにそれを作品上で拗らせるようなことはあまりない(女子に対するお馴染みの人体切断描写は相変わらずだが)。一方、方言を用いるが真面目な副ヒロインとして勝谷を登場させたり、異世界出身の美少女人外キャラ・チムピスをヒロインにして積極的に脱がせたりなど、女性キャラを有効的に活用している場面が多々見られる。(ただし、紫や狩生など、悲惨な末路を辿る女性サブキャラクターも少なくないようだ。)
  • NDの『秘封霖倶楽部』同様に作中に大量の伏線を出すが、異なる点としてほとんどの伏線を放棄せずその回のうちに回収している。作者自身がこの要素を売りとしているだけのことはあって、各回非常にキレがいい。ただし、後に詳しく語られる予定だったまま放置されたと思われる話も作中ではいくつか見られる(帥丙の兄が殺人鬼だという話、ビー玉の祖母が失踪した話など)。
  • 一つの読み方として、『極・魔導物語』に十分な耐性があればむしろ円滑に読める可能性がある。なぜなら『極・魔導物語』と共通した描写が多く、ドクマムシのセルフリメイクのようにも見えるものが所々あるからだ。最も顕著なものとして、第6話冒頭では、帥丙がテレビゲームを終えて「まだ10時だけどもう寝るか」と見覚えのある台詞を発して寝ようとするとき、知り合いから立て続けに電話がかかってきて辟易するというシーンがあるが、これはほぼ『極・魔導物語(完全版)』のプロローグと同じと言える。
  • NDも番外編の寄稿という形で本作に関わっているが、フジシマ高校とは対照的で全く普通の学校であるはずのフクイ高校に変態倶楽部という異常な存在(『秘封霖倶楽部』に登場するレズ集団「新女性世界」のホモ版のようなもの)を描いてしまったり、帥丙に代わる根暗な主人公を描いて根拠もなく複数のヒロインからモテさせたり、ホラー描写を入れたりなど、『秘封霖倶楽部』の登場人物名を変えただけのようなものを書いて本作の作風をことごとくぶち壊している。この番外編を最後に、続く予定であるはずの本編は5年以上滞った。

登場人物

登場人物はよく言えば個性的ではあるが、ほとんどのキャラが外見を明確に描写されておらず(ヒロインのチムピスだけがやたら鮮明に描かれている)、想像で補うほかないところが残念である。
  • 帥丙水人 - 主人公の不良高校生。新宿の郊外に住んでいる。金髪である上、言動は大体『極・魔導物語』の田中一郎と変わらないので、脳内で田中に変換して読んでも差し支えなさそうだ。下の名前の読みは「み」から始まるので「みずと」か「みずひと」のいずれかと思われる。
  • 松沢大輔 - 水人の隣の席に座る眼鏡の生徒。喧嘩を嫌いつつ、なぜか鞄の中に画鋲付きメリケンサックを入れている(メリケンサックは極・魔導物語の田中の武器としてお馴染みだ)。能天気な性格をしているが、喋り方は極・魔導物語の西村次郎を連想させる。
  • 勝谷淳希 - オレンジ色のツンツン髪をした女子生徒で、帥丙や松沢と親しくなる。苗字の読みは「かつたに」。福岡県出身で博多弁を喋るが、帥丙には何を言っているか分からない時がある。性格はやや強気だが真面目。ただし、ドクマムシ曰く脇役に過ぎず、ヒロインではないとのこと。母親は彼女が9歳の時に標準語に切り替えたというが、彼女自身は出身に誇りを持っているため切り替える気がないという。父親はゴミ処理業者で、自身も業務を手伝うことがある。
  • ビー玉・ボール - 第二話に登場してからは帥丙たちと行動を共にする。頭がビー玉で、その見た目を揶揄したものには容赦なく襲い掛かる。第二話で帥丙にキレて新宿をメチャクチャにできる程度には戦闘力があるようだが、その後はすっかり暴れなくなる。
  • 吉田呂南 - 第三話にのみ登場するトカゲ少女。ストーリー解説にて詳述。
  • 帥丙明戸 - 帥丙の父親。レストラン勤務の料理人らしいが、扱うのはメジャーな料理ではなく、しばしば様々な動物を調理してメニューを考えているらしい。
  • チムピス・ペイント - 本シリーズのメインヒロイン。記事を参照。
  • レプラ・コーン - かつてリキウド族の家畜としての運命からチムピスを救ったという命の恩人。長い髪で右目を隠し、戦士のような姿をしている。チムピスは帥丙に対してレプラの面影を見たらしい。
  • ミアン - かつてのチムピスやレプラの仲間で、レプラ同じく作中には名前しか出てこない。かつて自身を犠牲にし紫の暴走する巨人を封印したらしいが、その封印は第6話で帥丙が図らずもたやすく解除してしまう。その紫の巨人が何だったのかは明かされておらず、それを封印した経緯も定かではない。
  • 狩生 - 帥丙と同い年の親戚。今のところだと第6話にのみ登場。5歳のころ帥丙と宝林島へ旅行に行ったときにサメに沖へ連れ去られ、遭難してアフリカ大陸のどこかで発見された。やがて帥丙が再会したときには、自身を悪しき天の使いから世界を救う魔法少女だと思い込み、不条理な行動を繰り返して帥丙の祖父からも「粗大ゴミ」呼ばわりされる。帥丙からも乱暴に扱われ、再び訪れた宝林島では帥丙に縛り付けられたまま放置され、清掃業者の起こした爆発で本州まで吹き飛ばされるが、その行先でも勝谷が運んでいたスパコンを爆発させ跡形もなく消滅する。その後は一切登場しない。
  • おじいちゃん - 帥丙の祖父。具体的な名前は明かされていない。第6話で帥丙とともに無人になった宝林島に漂着するが、そこで現れたチムピスに酷く怯え、そのために宝林島から脱出する船からも飛び降り、その行方は一切触れられていない。
  • ジョセフィーナ - 第7話に登場。明戸が料理人を務めるレストラン・ジャックスパングにて、同じく料理人を務める同僚。名前からすると女性のようだが、雄々しい口調で喋り、明戸をライバル視している。情に厚く、明戸がジャックスパングでの勤続を諦めようとすると彼を罵るが、彼が店に留まると分かると「友達が辞めないで済んだ」と大いにはしゃぐ。
  • 帥丙黒潮 - 第7話にて名前のみ明かされる帥丙の兄。大量殺人鬼として収監されており、かつて何度かその標的にされたという帥丙は、彼に対して面会すらも必死に拒む。自室には未だに被害者の死体を隠しているらしい。
  • ピー - 第8話にてフェイセス(チムピスの出身)の生き残りを抹殺するために現れた謎の人物。登場した時点で既にチムピスにとっては顔見知りだったようだ。長袖のハイレグを着ており、鉄製の右手を自由に変形させて攻撃することができる。チムピスを抹殺して目的を遂げた後は元の世界に戻って新しい世界を作る予定だったというが、失敗に終わったようだ。
  • 阿笠光彦 - 帥丙の隣家の息子。帥丙の家族には国立大生として話が伝わっているが、実際は中卒で引きこもりの暴力息子。名前が『名探偵コナン』の登場人物から取られたものかどうかは定かではない。妹の幕張はフクイ高校でチムピスと同じクラスに所属しており、両者ともに第8話に登場するが、最後にフジシマ高校から発射された「プリトニウム」搭載のロケットの直撃を受けて家もろとも爆発する。
  • 黒光隆斗 - 帥丙の隣家の息子。阿笠と同じく帥丙家ではいい子扱いされているが、実際はネット生放送で奇行を配信している。その様子を目撃した母親に殺害されたようだ。

ストーリー

第一話 入学式

暴走族に属する帥丙は父親の手前、不本意ながらもフジシマ高校の一般入試を受験するが、カンニングが成功したため合格してしまう。しかし、その高校では校則が厳格であり、かといって帥丙がそれに従い暴走族を抜けることも族側が許さない。そこで、帥丙は不良グループのリーダーに暴走族を呼ばせ、その族を高校で暴れさせることで自身も退学するという計画を立てる。

しかし、初日に帥丙がフジシマ高校へ登校すると、担任教師の田ノ村藤尾が人間離れした怪力の持ち主であることを目の当たりにし、加えて隣の席の松沢からは他の教師も化け物揃いであることを伝えられる。そこで帥丙は暴走族の身を案じ、不良グループのリーダーに族を引き返させるよう伝えようとするが、すでに高校へバイクを走らせているリーダーたちとはなかなか連絡が取れない。結局、暴走族の面々は校門に入った途端に木っ端微塵に消し飛ばされ、加えて帥丙は校則上、どれだけ問題を起こしても退学処分を受けることはないということを知らされる。

第二話 ビー玉

帥丙は授業中に体罰を受けて校舎から弾き出されて気絶した上、屋上から投げ捨てられた煙草の吸い殻で火傷を負う。吸い殻を捨てたのは頭がビー玉の男子生徒、ビー玉・ボールで、帥丙は彼に対して因縁をつける。ビー玉は帥丙からミントキャンディ呼ばわりされたことに腹を立てて彼の喧嘩を買うが、帥丙はビー玉の常識離れした能力を見てすっかり怯え、彼から逃げ回る。それでもビー玉は彼を決して許さず、執拗に追い回す傍らで新宿の街をめちゃくちゃに破壊する。しかし、そこではテロ組織・ダダダダが輸送していた大量のガソリンが爆発を起こしたことでビー玉もその事故に巻き込まれ、喧嘩に懲りた彼は帥丙に対して仲直りを申し出る。帥丙は和解を受け入れるが、その瞬間にビー玉の一撃を叩き込まれる。

(※ビー玉の友人で揚羽という名前の人物が出てくるが、黒髪で片目が隠れた男子生徒とのことで、『極・魔導物語』の揚羽木葉とは全くの別人であるようだ。)

第三話 トカゲ女

帥丙はごみ処理業者のバイトとして商店街へ向かう。そこでは吉田呂南(よしだ ろな)という11歳の少女がたびたび盗みを働き、商店の人々は怒り心頭に達して彼女を捕まえようとしていた。しかし、吉田は狡猾な上に並外れた身体能力の持ち主で、捕まえられても下半身を切り離して逃げることができ、しかもその下半身は再生させることができる。その結果、何度も吉田の捕獲に失敗した魚屋・細村の水槽には彼女の大量の下半身が蓄積されていた。そこで、先輩と共に細村に呼び出されたごみ処理業者の帥丙は、吉田の下半身をすべて処理するように依頼される。帥丙は大量の下半身を可燃ごみとして処理するため、それらを収集車のプレス機構の中に積み込むが、故障のためそれを作動させることができず、やむを得ずそのまま収集車を発進させて次の客の元へ向かう。しかし、その最中に吉田の下半身を一体路上へ落としてしまい、それを目撃したオタク系の男性は大勢の仲間を呼び、女子小学生のラブドールを求めて帥丙の車両を痛車で追跡する。

一方、吉田は商店街で切り捨てた下半身のホットパンツに母親の高価な財布を入れていたことに気付き、それを取り戻すために上半身だけの姿で商店街へと戻る。しかし、そこには細村の息子によって作られた多数の高度な防犯装置が張り巡らされており、警報を作動させてしまった吉田は兵器を持った商店の人々に攻撃され追い回される。彼女の目当てである下半身はすでに帥丙たちが50万円以上の値でオタクたちに売り捌いていたが、彼らは吉田を追う商人たちの戦火に巻き込まれ、吉田はそのドサクサから財布を回収する。また、帥丙もオタクたちと死亡した先輩から手に入れた大金を持ち帰るため、盗んだ痛車で逃走する。

商人たちはすでに商店街の出口を封鎖しており、吉田を追い詰めるところまで達していたが、そこで細村は防犯装置を作動させるリモコンを落としていたことに気付く。そして、逃走中の帥丙は細村のリモコンを轢いたことで防犯装置を都合よく作動させ、追い詰められていた吉田を図らずも解放させる。やがて吉田は自宅に戻るが、手に入れた財布は母のものではなく、それは帥丙の手に渡っていた。そこにはあと1ポイントでロンドン旅行と引き換えられるポイントカードが入っていたが、帥丙はそれを捨ててしまい、代わりに手に入れた大金を収めて持ち帰る。

(この回は複数の視点から物語をうまくまとめ上げており、NDを遥かに凌駕する構成力を示している。しかし、女子小学生の切断された下半身を曲がりなりにも性的対象として描いている辺り、彼やレインコートの作品に共通して見られる人体切断フェチの片鱗がここでもまた表れていると言える。)

第四話 時間テロ

帥丙は勝谷・松沢と昼休みの食事の最中、老人からスタンガン攻撃を受けて気絶し、3人とも誘拐される。そして3人は豚小屋のような場所で拘束された状態で目を覚まし、彼らを誘拐した老人・地田満蔵はテロリストを自称して帥丙に父親の居場所を言うよう要求する。曰く、帥丙の父親・帥丙明戸は彼を裏切った人物で、地田は彼のせいで去勢されたのだといい、3人を伴って復讐のために明戸を追って1945年の米軍基地へとタイムスリップする。

そのころ、明戸はスナックで出会った若き日の地田の相談を鵜呑みにし、老いた地田たちの行先と同じ1945年の米軍基地に潜入していた。というのも、地田は子供の裸を見ることや子供と結婚することに対して執着しており、彼が友人から聞かされたところによると、それが叶わない原因はダグラス・マッカーサーによる占領統治下で制定された日本国憲法の児童ポルノ禁止法で、彼はそれを抹消するために過去改変の技術を開発していた。しかし、過去改変の実行段階において必要な協力者が現れず、彼が悲嘆に暮れていたところを見過ごせなくなった明戸が協力を申し出たのだった。

そうして明戸は遠隔地から地田の指示を受け、警備の目をなんとか掻い潜って米軍基地の会議室へと侵入し、憲法書を発見する。しかし、内容はすべて英語で明戸にも地田にも理解できない。そこで、地田の持つ無線端末の和訳機能のみが頼りだと聞かされた明戸は地田のもとへ憲法書を持ち出そうとするが、そこで老いた地田の襲撃を受け、その隙に憲法書も米兵から奪われる。窮地に陥った明戸はひとまず体勢を立て直すために米軍の車両を奪い、仲間の地田を乗せて撤退するが、その最中に老いた地田や米兵からも乗り込まれて揉み合いとなり、混乱の中で若い地田は米兵と共に車から降ろされて拘束される。

やがて、残った2人を乗せた車両は、老いた地田とは別の場所に飛ばされてきた帥丙ら3人の元へと辿り着き、地田は4人をまとめて抹殺しようとする。しかし、苦闘の末に帥丙が投げた瓦礫が地田の銃に命中し、暴発によって地田は消滅する。そして、明戸たちの過去改変の目的を知った勝谷は、地田の野望がいかに子供たちを危険にさらしうるものかということを訴え、しかも日本国憲法は児ポ規制に全く関係ないということを伝えて明戸を説得し、その場を丸く収めて全員で現代へと帰還する。一方で、米兵に拘束された若き日の地田はリンチを受けて去勢され、明戸への復讐のため、70年後に帥丙たちを誘拐するまでの経緯を辿るのだった。

第五話 転校生

帥丙たちのクラスに紫記羽(むらさき しるば)というボクっ娘の転校生が加わる。紫は大手化粧品メーカー・アマトリの社長の一人娘で、クラス一同に対して相応の態度で接するように要求するが、パチンコの話題に夢中で全く興味を示さない帥丙たちと対立する。紫は帰宅後も学校での人間関係を思い悩むが、家庭でもわがままが原因で執事から折檻を受け、食卓では若いころ暴力に明け暮れた父親を軽蔑し、夕食も喉を通らず、気分が沈む。しかし一方、勝谷だけは紫に対して友好的であり、委員長の黒田や担任の田ノ村の協力を得て学年全体による紫の歓迎会を企画していた。

翌日、紫が登校すると校門には勝谷が徹夜で制作した歓迎会のゲートが立てられており、それを見た彼女は心を開き始める。しかし、ゲートは高校に対して無断で立てられたものだったため、激怒した校長に破壊されて吹き飛ばされる。また、紫が勝谷に誘われて歓迎会を訪れると、プレゼントと称して帥丙から二匹のハブ、松沢からクマネズミ、その他大勢からも虫や爬虫類を渡されそうになり拒絶する。さらに、紫から水晶玉呼ばわりされて反感を抱いていたビー玉が現れると、帥丙と松沢にイバラ鞭を渡して紫に集団暴力を加えようとし、紫は必死で校舎から逃げ出そうとする。

一方、近くの教室では演劇部が紫を歓迎するための花火を制作しており、花火に興味を持った帥丙はその場に加わって花火玉に過剰な量の火薬玉を詰め込む。そして、打ち上げ台でそれらの発射準備に入るが、校長が吹き飛ばしたゲートが飛んできたところに演劇部員が花火を暴発させてしまい、巨大な誘爆を起こす。しかし、校舎から逃げ出そうとしていた紫は、彼女を引き留めようとする勝谷の説得を受ける中、暴発した花火の美しさに感動する。そして、事故に逃げ惑う生徒たちには気付かないまま、勝谷と共に爆発に巻き込まれる。

  • 以降の紫の安否はしばらく不明だったが、5年のブランクの後に公開された第十話で無事生存していることが判明。

第六話 チムピス・ペイント

帥丙は勝谷から来た勉強会への誘いを無視し、祖父と親戚の狩生とともに宝林島へと観光に行く。宝林島はかつて帥丙と狩生が5歳の頃に訪れた場所だが、同時に彼らが去ってから間もなく石油の枯渇によって無人となった場所でもあった。そして、彼らはそれを知らずに島へ到着したきり、移動手段を失って身動きが取れなくなる。

その後、帥丙は島の廃墟を探索するうちに、観光ガイドにも載っていない神殿のような場所を発見し、そこに拘束されていた異形の少女・チムピス・ペイントと出会う。帥丙はチムピスの拘束を解き、彼女の制止をよそに探索を続けるが、そばの瓦礫を崩したことで彼女の言う何らかの「結界」を消滅させ、そこから紫色の巨人を解き放ってしまう。そして、仲間の犠牲によって封印されたという巨人が解き放たれたことでチムピスは憤慨して帥丙を突き放すが、巨人との戦闘により窮地に陥ったところを帥丙に救われる。そこで、巨人の次の攻撃により帥丙とチムピスは再びの窮地に陥るが、かつて帥丙が5歳のころ狩生と乗った縄カゴスライダーを発見し、それを用いて巨人の元から逃走する。

その頃、帥丙たちが辿り着いた場所と反対の海岸では、清掃業者を務める勝谷の父が部下を引き連れ、政府の要請により島を消滅させるための強力な爆弾を設置し、島を離れようとしていた。そこで、巨人の攻撃に吹き飛ばされた帥丙とチムピスはその業者たちの船の上へ着地し、祖父や狩生を置き去りにしてともに島を離れる。そして、宝林島は巨人もろとも爆弾で消し飛ばされ、チムピスは帥丙を主人と見なして一生従属することを誓う。

  • 幼いころから帥丙と縁がある、狩生という新キャラが出てくるが、気の触れた振る舞いをして帥丙から不遇な扱いを受けるばかりで本筋には全く関わらない。しかもこの後のストーリーにも登場しない。
  • 帥丙と狩生が昔に宝林島を訪れたときを描く回想場面にて、狩生は5歳にしてなぜかハイレグの水着を着ている。なぜ着ているのか、誰が着せたのかも全く語られていない。謎に満ちた描写である。
  • かつてビー玉が誤って無人の宝林島を訪れた際に、彼の祖母が行方不明になったということが語られる。しかし、重要そうな話の割に全く詳細が語られないので、後の話の伏線として出てきた話題なのかもしれない。
  • 神殿のような場所で発見されたチムピスは長年拘束されていたようにも見えるが、実際のところ囚われていたのはたった一か月間らしい。

第七話 養子

宝林島を脱出した帥丙はチムピスを連れ、勝谷の父の車で自宅へと戻る。帥丙の母・冨美子はチムピスを新しい家族の一員として優しく迎え入れようとするが、レストラン勤務から帰宅した父親の明戸は彼女を人間ではなく山羊としてみなして憚らず、調理してシチューを作ろうとする。冨美子は明戸を制止するが、外から動物を持ち帰って調理するという普段の行動すら制限された明戸は、勤務先のレストラン・ジャックスパングのメニューに山羊の料理を加えるための試作ができないことで苦悩する。なぜなら、新メニューの審査段階に入るまでに試作品を店員以外の2人以上に試食させ、感想を得ることが出来なければ、メニューを考案した明戸はジャックスパングの規則により解雇されてしまう。そして、明戸は誰からも試作の感想を貰えないまま、すでに審査を目前に控えていた。

一方、チムピスは冨美子の協力を得て高校に入るために勉強する。そして、帥丙とは別のフクイ高校にて入学のための試験を受けるが、基本的に言語が理解できなかったことで数学と科学以外の点数を稼ぐことができず、校長から入学を断られる。しかしその後、チムピスがジャックスパングの広告ビラを見つけて冨美子とともに食事に訪れると、そこには同じくビラを見て店を訪れたフクイ高校の校長が現れ、彼は明戸の作ったシチューを口にすると、亡き妻の姿をそこに見て涙を流す。そして、その場にいたチムピスを見た校長は、彼女がシチューを作った料理人の娘だと知らされると、シチューの礼としてチムピスにフクイ高校への入学を許可する。さらに、チムピスがおもむろに明戸のシチューを口に運んで感想を述べたことで2人分の感想が揃い、明戸は解雇を免れる。

  • 作中では明戸の作ろうとしている山羊の肉の料理が「ビーフシチュー」と表記されている。牛肉ではなく山羊の肉が使われているビーフシチューというのは、それ即ちビーフシチューではないのだが、そのことについては一応作中でも触れられている。しかし、それでも頑なにビーフシチューとして表記されている。
  • 明戸がレストランで審査を控えるころ、帥丙は先輩とのバーベキューで臭みの取れていないジンギスカンを無理やり山ほど食べさせられているが、帥丙もまた料理人の息子というだけあって、山羊の肉から臭みを取る方法自体は知っていたようだ。
  • なぜ新メニューの試作品に感想を得られないと明戸が解雇されるのか、そのルールの必要性はよく分からない。

第八話 フクイ高校

チムピスはフクイ高校へ初めて登校するが、フェイセスの生き残りを抹殺する目的を持ったピーという人物が校舎内に侵入し、学校全体を騒動に巻き込みながらチムピスの命を狙う。チムピスは最初に仲良くなった同じクラスの女子高生・黒沢を連れて逃げながら応戦するが、歯が立たずに窮地に陥る。

一方、ピーの襲撃より前に同じクラスの不良女子・阿笠幕張が捨てた落書きの紙切れが偶然フジシマ高校へと流れ付くと、それを拾った教諭の田ノ村は、自身だけが唯一取得している赤ちゃん語検定資格によって、その落書きの赤ちゃん言葉から偶然にも隕石墜落の予言を読み取る。そして、その予言に恐れ戦いた田ノ村は人工生物部の元へ急ぎ、隕石を破壊するために部員を全員集めて備品の「プリトニウム」を搭載したロケットを作らせる。

やがて、田ノ村たちはロケットを発射するが、失敗によりロケットは本来の軌道から大きく外れて発射される。そして、ロケットはフクイ高校にいるピーに直撃してともに空へと消えていき、チムピスと黒沢は生き延びる。しかし、空へ消えたロケットはその後帥丙の隣家に着弾し、そこに住む幕張と兄の光彦を巻き込んで爆発する。

  • 作中で隕石迎撃のために作られた兵器が搭載しているのは「プリトニウム」という名前の物質だが、一字違いのプルトニウムを搭載した場合は原子爆弾になる。

第九話 クロハラハムスター

帥丙は火星への遠足に強制的に連れていかれ、他人と同じものを提出してはいけないという条件下で火星にしかないものを採取・提出するという課題を出される。しかし、目に付く採取物はすでに他人に取られてしまい、失格すれば海王星へ連れていかれることを知らされた帥丙は火星の地を彷徨い続ける。そんな中、ロケットを発見した帥丙は火星から脱出して地球に逃げることを思い付き、ロケットに搭乗して出発するが、それはビー玉が教師から地質調査用に借りた自爆ロケットだった。

その頃、チムピスは同じクラスの男子生徒・久保と共に愛知県名古屋市の大須を観光するが、クロハラハムスターなる凶暴な肉食ハムスターがトラック事故により積載物から大量に解き放たれ、大須は大混乱に陥る。そして、ハムスターに久保を殺されたチムピスは同じく襲い掛かられそうになるが、ショットガンを持ったミグレートと名乗る太ったオタクに窮地を救われる。さらに、自ら囮となった彼を置き去って生き残ったチムピスは、駅を通過する地下鉄車両にしがみついて逃げ延びる。

一方、ミグレートは帥丙の捨てたロケットの直撃を受けてすべてのハムスターとともに消し飛ぶ。また、自爆ロケットから脱出した帥丙は名古屋駅前で停車していた黒塗りの高級車の後部座席に落下し、車の持ち主である当流組のヤクザに誘拐される。

番外編 とある高校の便所の落書き

NDがゲスト寄稿した特別編。帥丙がヤクザに捕まっている間に、かつての帥丙の知り合いであったフクイ高生の中村千明が巻き込まれる、本編とは全く無関係な出来事を描く。しかし、特筆する価値がないのでここでは省略する。

第十話 複数の帥丙

帥丙の父親・明戸はデパートの買い物でポイントを集め、交換期限の迫る中でなんとかそのポイントを「大麻で出来た皿」と交換する。すると、未来からタイムマシンで現れたという息子の帥丙に妻の冨美子を殺害される。未来の帥丙の目的は明戸を殺害することで、さもなくば彼の入手した大麻の皿によって帥丙たちの未来が荒廃してしまう。そこで現在の帥丙はタイムマシンを用いて過去の明戸に皿の入手をやめさせる手段を提案するが、その試みはうまく行かず、むしろその度に次々と別々の未来から新たな帥丙が現れる。その原因がタイムマシンの欠陥であることが判明するとその問題は解決されるが、今度は過去の改変を望まない未来の帥丙たちとの泥沼の戦いに突入する。

明戸は帥丙を殺害することでひとまず窮地を脱するが、今度は未来の明戸たちから狙われ、過去を改変しようにもタイムマシンのエネルギーが不足したことで望みを失う。しかし、帥丙が松沢から貰った電流の流れる手袋がなんとか過去へと転送されてデパートの陳列棚に乗り、手袋に触れた過去の明戸が失神して大麻の皿を入手する機会を逃したため、過去の改変に成功。帥丙や冨美子は生還するが、代わりに皿の持ち主となった勝谷はそれが破滅をもたらすことを知って扱いに困り果てる。

  • 2018年末、なんと5年越しに公開された新作である。しかも比較的ボリュームが大きい。
  • この回には初登場以降出番のなかった紫や、それまで名前しか登場しなかったビー玉の祖母が登場する。黒潮の初登場をも匂わせる場面があるが、それは思わせぶりに終わる。
  • ビー玉の祖母や黒潮の存在が触れられる辺り、拾い切れなかった伏線を拾おうとする試みが窺われるが、物語は最終的に元の状態へ戻る上、続きに関しては「いつになるかわかりません。では」という言葉だけで締めくくられている。

外部リンク


関連項目


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帥丙ラジカル/コメントログ(2023年01月05日のコメント)
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