はないちもんめ の 暴走と同時刻
俺は今、Tさんにもらった材料で夢子ちゃんへのお守り効果付きアクセサリーを作成している。とは言っても石に小型ドリルで穴開けて鎖通すだけなんだけどな!
最後に削りかすを吹き飛ばして、……うん。
「できた!」
多少見目が良くないのはアレだ。ぶきっちょだからしょうがない。
「要はハートだ。ハート」
それに多少荒い方が手作り感が……と、あれは、
「チャラい兄ちゃん?」
≪日焼けマシンで人間ステーキ≫だっけ? の契約者やってる女装の似合うちょっと男色気味な≪首塚≫の人であるところの金髪のチャラチャラした兄ちゃんが近づいてくる。
「なんかひどくムカつく紹介をされたような気がする……」
何を言ってるんだろうこの子は、被害妄想だろうか。
なにやら呟いている兄ちゃんに心の中で意見しているとチャラい兄ちゃんが俺の手の中の物を見て言った。
「ドリルなんか持って何をやってる?」
チャラい兄ちゃんが注目しているのは穴開け用の小型ドリルだ。あー、周りに正装が多い中ノーマルな服装で(お姫様たちにとっ捕まりそうになったのでTさん共々逃げた)武器にも使える代物を持って隅でこそこそ怪しいことやってる人間には確かに声も掛けたくなるか。
「旅立つ夢子ちゃんへのお守り作りをやってんだよ」
言ってやると、
「あぁ、そういえば旅立つとか、そんなこと言ってたな」
と返ってきた。
ありゃ?
「知ってんの?」
一応ほとんどの奴は知らないはずなんだが。
「Tさんに聞いた」
あ、なるほど。
納得しているとチャラい兄ちゃんは俺の制作物を見て言った。
「不器用だな。お前」
「でっかいお世話だ」
人には向き不向き、得意不得意があんだよこんちくしょうめ。
そう思ってチャラい兄ちゃんをジトっと睨むと兄ちゃんは手を差し出し、
「貸せ」
言った。
「へ?」
なんのこっちゃかわからない俺にいいから貸せと言って兄ちゃんは不格好なペンダントと道具を取り、いじる。
そして数分後――
「すげぇ、立派だ」
ペンダントはかなり見目が良くなっていた。
「器用なんだな」
感心して言うとチャラい兄ちゃんは、
「アクセサリー作りで慣れてるからな」
と答えた。
「手作りなのか? それ」
チャラチャラ鳴っているシルバーアクセサリーを指差し訊く、
「だいたいはそうだな」
チャラい兄ちゃんは答えながらほら、とペンダントを渡してくれた。
「ありがと」
良いやつだなぁと思いつつありがたく受け取る。
そしてつい愚痴を漏らす。
「夢子ちゃんが旅立っちまうのはほんっとに残念だよなぁ、」
チャラい兄ちゃんを見つつ、
「これからはいつでも女装させられると思ったのに……」
しんみり言うと心無い言葉が返ってきた。
「あ? 何言ってんだよこの阿婆擦れ!」
んだと、
「何か文句あんのかこの童貞!」
チャラい兄ちゃんはハッと笑い、
「経験済みだっ!」
な……に?
「え、と……やっぱりはじめては、将門……か?」
ちょっと目をそらしつつ言うと、
「なんで将門様なんだよ! 普通に女だ! あと将門様を呼び捨てにするな!」
「……男じゃ、ないの?」
俺が至極当然の疑問を訊ねるとチャラい兄ちゃんは言う。
「どこをどう見たら俺が男好きになるんだよ!」
えー。
……うん、まあここまではいい。一応納得ができなくもない言葉だ。怪しいが。でも、次の言葉がいけなかった。――曰く、
「――この貧乳がっ!」
…………ほぅ
いや、別に気にしてはいないんだが、こう、改めて言われると。なぁ?
「ああ、手がすべってえ」
言ってポケットからわざと一枚の画像を落としてやる。
「あん?」
チラリと落ちたそれを見たチャラい兄ちゃんの顔が固まった。
落としたのは金髪のミニスカートがかわいらしいお嬢さん、に見えるチャラい兄ちゃんが机を楯にして徹底抗戦している姿を斜め上のアングルから撮ったものだった。
「な!? おい……これ、うそだろ? 写撃からは完全に逃げきったはず……」
俺はTさんの挙動を意識した余裕の態度でおもむろに画像を拾いあげ、
「ん? あぁ、ほら、俺ってこういうことに関してはTさんより頭が回るから」
なんでもないことのように言ってやった。
「―――――!」
チャラい兄ちゃんが何か言っている。が、その時俺はそんなことを気にしている暇などなかった。
チャラい兄ちゃんの肩越しにとても面白い光景が展開されていたからだ。
その光景と言うのは、
いつかの≪はないちもんめ≫の嬢ちゃんが黒服さんに飛びついている光景だった。
黒服さんはそのまま勢いで押し倒され、
「はふぅ」
≪はないちもんめ≫の嬢ちゃんはなにやら安心したような吐息をもらしながら黒服さんに頬ずりしだした。
まるでよく懐いた動物みたいだ。とてもあの時のツンツンしてた嬢ちゃんからは想像できない。
「……アルコールの臭い……もしかして、お酒飲みました?」
黒服さんの声が聞こえる。
あ、酔ってんのか。そういえば若干顔が赤いや。
「おい、聞いてんのか!」
「ああうん聞いてる聞いてる」
何かほざいてきたチャラい兄ちゃんの言葉にてきとーに答える。どうも自分の話に忙しくて後ろで繰り広げられている光景に意識が向かないらしい。
その間にも現場では動きがっ! っておおっ!
嬢ちゃんが黒服さんの後頭部に手を伸ばし、そのまま口を押し付け、
チューした! チューしたぞっ!
「なぁ」
「あ?」
「なんか小さい子がキスしてもなぜかチューって言いたくなるよな?」
「何言ってんだ?」
「いや、なんだ。なんとなく、な」
言っているうちに気付く。普通のチューじゃ、ない?
息継ぎのように嬢ちゃんが顔を離した瞬間、二人の口の間糸が引いて、
「お、大人だ……」
「はぁ?」
なにか負けた気がした。
「なぁ」
「――、なんだよ!」
チャラい兄ちゃんに声をかけると兄ちゃんはなぜか息が切れている。
「黒服さんは兄ちゃんにとって大事な人か?」
「あ? ああそうだよ!」
うむうむ、なるほど。
「じゃあ黒服さんが襲われてたら助けに行く?」
「当たり前だろ!」
即答だ。
まあ襲われると言うより激しくじゃれつかれてるって感じだけど。
「じゃあこれ、はい」
「……は?」
頭の上でひらひらやってた画像をチャラい兄ちゃんに渡してあげる。
「さあこれがあれば俺から離れられるよな?」
訊くと、
「あ、ああ」
戸惑い気味に返事が返ってきた。
「はい、じゃあ回れー、右」
パン、と手を叩いて言うとチャラい兄ちゃんは律儀に回れ右をした。そして――
「んな!?」
衝撃の光景を見る。
「酔ってるっぽいぞ?」
「あんのやろっ!」
兄ちゃんは画像を懐に突っ込むと現場へと駆けだして行った。
「がんばれー」
俺はいつの間にか手に構えていたカメラのシャッターを連続で切りつつ見送りながら、ポケットに手を入れ、他の画像を取り出す。
「マスターテープもこっちが保有してるんだけど、あの兄ちゃんきっと気がつかないだろうなぁ」
はないちもんめの嬢ちゃんをスリッパでぶっ叩いたチャラい兄ちゃんが視界の奥に見える。
「黒服さんもてるなー」
小学生から男までかー。
あれ?
「広い範囲で言ったつもりが何故か狭く感じる……」
おかしい。
「ま、いいや。とりあえず夢子ちゃんが行く時までこれは隠しておいて」
ポケットに今しがた完成した石を突っ込むと、
「お部屋に戻るとしましょうか」
意気揚々と戻ることにした。
最後に削りかすを吹き飛ばして、……うん。
「できた!」
多少見目が良くないのはアレだ。ぶきっちょだからしょうがない。
「要はハートだ。ハート」
それに多少荒い方が手作り感が……と、あれは、
「チャラい兄ちゃん?」
≪日焼けマシンで人間ステーキ≫だっけ? の契約者やってる女装の似合うちょっと男色気味な≪首塚≫の人であるところの金髪のチャラチャラした兄ちゃんが近づいてくる。
「なんかひどくムカつく紹介をされたような気がする……」
何を言ってるんだろうこの子は、被害妄想だろうか。
なにやら呟いている兄ちゃんに心の中で意見しているとチャラい兄ちゃんが俺の手の中の物を見て言った。
「ドリルなんか持って何をやってる?」
チャラい兄ちゃんが注目しているのは穴開け用の小型ドリルだ。あー、周りに正装が多い中ノーマルな服装で(お姫様たちにとっ捕まりそうになったのでTさん共々逃げた)武器にも使える代物を持って隅でこそこそ怪しいことやってる人間には確かに声も掛けたくなるか。
「旅立つ夢子ちゃんへのお守り作りをやってんだよ」
言ってやると、
「あぁ、そういえば旅立つとか、そんなこと言ってたな」
と返ってきた。
ありゃ?
「知ってんの?」
一応ほとんどの奴は知らないはずなんだが。
「Tさんに聞いた」
あ、なるほど。
納得しているとチャラい兄ちゃんは俺の制作物を見て言った。
「不器用だな。お前」
「でっかいお世話だ」
人には向き不向き、得意不得意があんだよこんちくしょうめ。
そう思ってチャラい兄ちゃんをジトっと睨むと兄ちゃんは手を差し出し、
「貸せ」
言った。
「へ?」
なんのこっちゃかわからない俺にいいから貸せと言って兄ちゃんは不格好なペンダントと道具を取り、いじる。
そして数分後――
「すげぇ、立派だ」
ペンダントはかなり見目が良くなっていた。
「器用なんだな」
感心して言うとチャラい兄ちゃんは、
「アクセサリー作りで慣れてるからな」
と答えた。
「手作りなのか? それ」
チャラチャラ鳴っているシルバーアクセサリーを指差し訊く、
「だいたいはそうだな」
チャラい兄ちゃんは答えながらほら、とペンダントを渡してくれた。
「ありがと」
良いやつだなぁと思いつつありがたく受け取る。
そしてつい愚痴を漏らす。
「夢子ちゃんが旅立っちまうのはほんっとに残念だよなぁ、」
チャラい兄ちゃんを見つつ、
「これからはいつでも女装させられると思ったのに……」
しんみり言うと心無い言葉が返ってきた。
「あ? 何言ってんだよこの阿婆擦れ!」
んだと、
「何か文句あんのかこの童貞!」
チャラい兄ちゃんはハッと笑い、
「経験済みだっ!」
な……に?
「え、と……やっぱりはじめては、将門……か?」
ちょっと目をそらしつつ言うと、
「なんで将門様なんだよ! 普通に女だ! あと将門様を呼び捨てにするな!」
「……男じゃ、ないの?」
俺が至極当然の疑問を訊ねるとチャラい兄ちゃんは言う。
「どこをどう見たら俺が男好きになるんだよ!」
えー。
……うん、まあここまではいい。一応納得ができなくもない言葉だ。怪しいが。でも、次の言葉がいけなかった。――曰く、
「――この貧乳がっ!」
…………ほぅ
いや、別に気にしてはいないんだが、こう、改めて言われると。なぁ?
「ああ、手がすべってえ」
言ってポケットからわざと一枚の画像を落としてやる。
「あん?」
チラリと落ちたそれを見たチャラい兄ちゃんの顔が固まった。
落としたのは金髪のミニスカートがかわいらしいお嬢さん、に見えるチャラい兄ちゃんが机を楯にして徹底抗戦している姿を斜め上のアングルから撮ったものだった。
「な!? おい……これ、うそだろ? 写撃からは完全に逃げきったはず……」
俺はTさんの挙動を意識した余裕の態度でおもむろに画像を拾いあげ、
「ん? あぁ、ほら、俺ってこういうことに関してはTさんより頭が回るから」
なんでもないことのように言ってやった。
「―――――!」
チャラい兄ちゃんが何か言っている。が、その時俺はそんなことを気にしている暇などなかった。
チャラい兄ちゃんの肩越しにとても面白い光景が展開されていたからだ。
その光景と言うのは、
いつかの≪はないちもんめ≫の嬢ちゃんが黒服さんに飛びついている光景だった。
黒服さんはそのまま勢いで押し倒され、
「はふぅ」
≪はないちもんめ≫の嬢ちゃんはなにやら安心したような吐息をもらしながら黒服さんに頬ずりしだした。
まるでよく懐いた動物みたいだ。とてもあの時のツンツンしてた嬢ちゃんからは想像できない。
「……アルコールの臭い……もしかして、お酒飲みました?」
黒服さんの声が聞こえる。
あ、酔ってんのか。そういえば若干顔が赤いや。
「おい、聞いてんのか!」
「ああうん聞いてる聞いてる」
何かほざいてきたチャラい兄ちゃんの言葉にてきとーに答える。どうも自分の話に忙しくて後ろで繰り広げられている光景に意識が向かないらしい。
その間にも現場では動きがっ! っておおっ!
嬢ちゃんが黒服さんの後頭部に手を伸ばし、そのまま口を押し付け、
チューした! チューしたぞっ!
「なぁ」
「あ?」
「なんか小さい子がキスしてもなぜかチューって言いたくなるよな?」
「何言ってんだ?」
「いや、なんだ。なんとなく、な」
言っているうちに気付く。普通のチューじゃ、ない?
息継ぎのように嬢ちゃんが顔を離した瞬間、二人の口の間糸が引いて、
「お、大人だ……」
「はぁ?」
なにか負けた気がした。
「なぁ」
「――、なんだよ!」
チャラい兄ちゃんに声をかけると兄ちゃんはなぜか息が切れている。
「黒服さんは兄ちゃんにとって大事な人か?」
「あ? ああそうだよ!」
うむうむ、なるほど。
「じゃあ黒服さんが襲われてたら助けに行く?」
「当たり前だろ!」
即答だ。
まあ襲われると言うより激しくじゃれつかれてるって感じだけど。
「じゃあこれ、はい」
「……は?」
頭の上でひらひらやってた画像をチャラい兄ちゃんに渡してあげる。
「さあこれがあれば俺から離れられるよな?」
訊くと、
「あ、ああ」
戸惑い気味に返事が返ってきた。
「はい、じゃあ回れー、右」
パン、と手を叩いて言うとチャラい兄ちゃんは律儀に回れ右をした。そして――
「んな!?」
衝撃の光景を見る。
「酔ってるっぽいぞ?」
「あんのやろっ!」
兄ちゃんは画像を懐に突っ込むと現場へと駆けだして行った。
「がんばれー」
俺はいつの間にか手に構えていたカメラのシャッターを連続で切りつつ見送りながら、ポケットに手を入れ、他の画像を取り出す。
「マスターテープもこっちが保有してるんだけど、あの兄ちゃんきっと気がつかないだろうなぁ」
はないちもんめの嬢ちゃんをスリッパでぶっ叩いたチャラい兄ちゃんが視界の奥に見える。
「黒服さんもてるなー」
小学生から男までかー。
あれ?
「広い範囲で言ったつもりが何故か狭く感じる……」
おかしい。
「ま、いいや。とりあえず夢子ちゃんが行く時までこれは隠しておいて」
ポケットに今しがた完成した石を突っ込むと、
「お部屋に戻るとしましょうか」
意気揚々と戻ることにした。
【彼女がTさんに黒服が艶やかな女性にも慕われていると聞くまであと五分。】