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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-39c

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 Tさんに、パワーストーンの契約者である彼女も会場に来ている事を伝えた後、彼女のもとへ向かったTさんと別れ…黒服は、会場を見渡していた
 …赤いはんてん
 Tさんは、確かにそう言った
 人間であった頃の記憶が、頭をよぎる

「…恐らくは、彼女のことなのでしょうね…」

 契約者と、とても…とても、仲が良かった赤いはんてん
 …そうか、彼女は、生きているのか
 その事を確認し、そして、恐らくはこの会場に来ているであろう事を予測し、その姿を探す
 あの特徴的な真っ赤なはんてんは、すぐに見付かると思うのだが
 …それに、もしかしたら
 彼女の傍には赤マントもいるだろうから、尚更目立つはずだが…

 辺りを見回し、先に見付かったのは赤いはんてんたちではなく、同僚の姿だった
 普段、どこかやる気なさげにしている黒服だ
 傍には、同じく同僚である黒服の女性の姿も見える
 大分酒を飲んでいるようだが…大丈夫だろうか

「あなたも、いらしていましたか」
「あ、Dさん。やっぱり来てたんだ」

 大分酔いが進んでいるのか、いつもと少し様子が違う同僚の姿に、小さく苦笑する
 明日の仕事に、響かなければいいのだが

「…?誰か探してるの?」

 彼の様子に気付いてか、やる気なさげな黒服がそう尋ねてきた
 はい、と彼は小さく頷く

「赤いはんてんを纏った少女と、赤いマントを身につけた男性を、見かけませんでしたか?恐らくは、二人一緒に居ると思うのですが…」
「ん~?…見てないと思うけど、どうだろう?」
「赤いマントの男性なら見かけましたが。一緒に居たのは、青いはんてんを纏った女性でしたよ?」

 …あぁ、そうか、今、青いはんてんの姿をとっているのか
 ありがとうございます、と2人に頭を下げ、改めて会場を見回す
 …いた
 青いはんてんと、赤マント
 2人に近づいていくと…一瞬、青いはんてんは警戒したようだったが
 しかし、赤マントが気づいてくれたようだ

「…君、かね?「夢の国の地下トンネル」」
「はい」
「え?…お前、なの?「組織」の黒服になっていたって、本当だったのね…」

 まじまじと、青いはんてんが見つめてくる
 …こちらも、酒が入っているのだろうか
 ほんのり、頬が赤い

「お久しぶりです」
「あぁ、久しぶりだな」
「私達がわかるという事は…思い出しているのね?」

 はい、と頷く
 …人間であった頃の記憶は、完全に、全て戻った訳ではない
 しかし、二人の事は覚えている

 大切な友人の契約していた都市伝説
 自分たちが関わった事件にて、心を取り戻した都市伝説

 この2人の友人の記憶も、彼は思い出していた

「…生きていてくれて、良かった」

 ほっとしたように、彼が微笑むと
 青いはんてんが、どこか複雑そうな表情を浮かべてきた
 まじまじと、彼を見つめてくる

「…お前は、相変わらずね。黒服になっても、何も変わってない」
「そうでしょうか?」
「えぇ、あの頃と同じ。どこまでもお人好しで自分なんてどうでもよくて、他人の事ばっかり……あの人と、おんなじ」

 一瞬、青いはんてんの表情に、影がさす
 しかし、彼女はそれを振り払うように、笑ってきた

「それじゃ、赤マント、私、料理とお酒を取ってくるわね」
「あぁ、だが、君、酒はほどほどにしてくれたまえ」
「だいじょーぶだいじょーぶ。まだ酔っていないから」

 酔っ払いに限って、そんな事を言うのだ
 恐らく、今、彼と赤マントの考えは、それで一致したことだろう
 そんな事など露知らず、青いはんてんは料理と酒を求めて、他のテーブルに向かっていく

「…お元気そうですね」
「おかげさまでな。流石に、今回の件の直後は少し大人しかったのだが……まぁ、元通り、だよ」

 表面上は、と
 赤マントは、最後に呟くように付け加えた


 悲しみは消えていない
 憎しみも、完全には消えていない

 されど、彼女は前を見て生きることを決めた
 後ろに振り返り続けてはいけないと、彼女はようやく気づいたのだ


「…私は、彼女の傍にいて、彼女を護るだけだよ。彼女の契約者の最後の願いの為にも、な」
「…そうですか」

 赤マントは、少なくとも表面上は、昔と変わっていないようだった
 人殺しの赤マントから、人攫いの赤マントに戻って…そのまま、のように見えた
 あれ以来、恐らく彼は誰も殺さずに生きてこれたのだろう
 …その事に、ほっとする
 また、人殺しの赤マントになってしまったら、また元に戻れるかどうかはわからないのだから

「君は、どうかね?」
「?」
「…君の、背負っていたものは少しは晴れたか?」
「……えぇ」

 …「夢の国」が、正気に戻った
 悪夢に犯された原因が、狂える「夢の国の創立者」であった事は、彼にとってもショックが大きかった事実
 しかし、それでも…「夢の国の創立者」は倒された
 再び都市伝説として生まれたとしても、恐らく、彼は眠り続けたままで…もう、狂える事はないだろう
 「夢の国」はもう、悪夢に侵されない
 彼女なら、大丈夫だ
 あの少女は、もう二度と、「夢の国」を悪夢の国に変えたりしない
 …彼は、そう、信じている

 あの時、少女を救えなかった苦しみを
 黒服となり、人間であった頃の記憶を失っても、背負い続けていた


 あの時救えていれば、少女は苦しまずにすんだのに
 あの時救えていれば、犠牲者が増え続ける事はなかったのに
 あの時救えていれば、友人たちも死なずにすんだのに


 後悔と苦しみは、完全に消えた訳ではない
 それでも…彼もまた、前を見て生きることを、決めた
 後ろを振り返ってばかりでは、死んでしまった友人たちに申し訳ないし

 …何よりも、あの少女に、申し訳ないから

「…あの、赤マント」
「ふむ、何だね?」
「…カーバンクルの契約者から、聞いたのですが…「さっちゃんの歌の四番目」が行方知れずと言うのは……本当、なのですか?」

 青いはんてんが傍に居ない今が、尋ねるチャンス
 そう考え、黒服はそう尋ねた
 あぁ、とかすかに表情を曇らせ、赤マントは答える

「少なくとも、私たちは行方を把握していない……そうか、君は、カーバンクルの契約者には会えたのかね?」
「はい…立派な大人になっていましたよ」
「……そうか」

 良かった、と赤マントは笑う
 この様子だと、赤マントたちはカーバンクルの契約者とは、あまり顔を合わせていなかったようだ
 …まぁ、当時まだ幼かったカーバンクルの契約者は、赤マントたちとはあまり親交がなかったから、仕方ない事なのかもしれない

「彼は…復讐は、考えてはいないようでした」
「そうか…なら、良かった」

 …と、なると
 やはり、問題は行方知れずの「さっちゃんの歌の四番目」と言うことになる
 あの子は、自分の契約者である男性に、とても、とてもよく懐いていた
 契約者を失った悲しみは、憎しみは…赤いはんてんと同じか、それ以上だろう

 はたして、彼女はまだ生きているだろうか?
 生きていて…復讐を、狙っている?
 それとも、新たな契約者を見つけて…その人間とともに、穏かに暮らしている?

 後者であって欲しい、とそう願う
 あの小さな少女に、復讐に生きて欲しくはなかったから

「何かわかったら、君に連絡しよう」
「…わかりました、こちらでも、何か情報を掴み次第、ご連絡いたします」

 頼んだぞ、と赤マントは笑う
 そして、どの酒を持ってこようか悩んでいるらしい青いはんてんの方へと、向き直った

「…では、私は彼女の元にいよう。ヘタに彼女が強い酒を飲んで酔ってしまっては大変だ」
「………そう、ですね」

 …青いはんてんの酒癖を思い出し、彼は大きく頷いた
 今の、軽い酔いの状態なら、まだいい

 しかし
 しかし、だ
 今以上に酔ってしまっては、危険だ
 いや、物理的に危険はないのだが、ある意味危険だ
 あれ以上、酔わせる訳には行くまい
 …もっとも、この会場には多種多様な酒がある
 そして、彼女は赤いはんてんではなく、青いはんてんと言う大人の姿をとっている以上…彼女の飲酒を止める事など、できない訳で
 そうなると、苦労するのは赤マントだろうが…

 小さく苦笑し、赤マントは青いはんてんの元に向かった
 その後ろ姿を見送り…さて、と黒服は、会場の出入り口へと向かう

「…「夢の国」に、渡さなければならない物もありますからね…」

 Tさんに教えられた部屋へと向かうべく
 黒服は、そちらへと足を伸ばしたのだった



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