「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち-13

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マッドガッサーと愉快な仲間たち 13


「……くけけっ」

 暗い、人気のない路地裏にて
 ごそごそ、不審な動きをする人影一人
 …「爆発する携帯電話」の契約者だ
 あちらこちらに、攻撃用の携帯電話を仕掛けているのである
 彼の攻撃の真髄は、不意打ち・トラップ
 正面きって戦う事は苦手である
 能力の関係だけではなく、本人の身体能力もあまり高くないのだ
 よって、彼は勝利のために努力して、あちらこちらに携帯電話を仕掛ける
 どうせ見付かった所で、問題はないのだから、わりと遠慮なくあちこちに仕掛けていた

「…けけっ……後は他の場所に…」

 残りの携帯電話を抱え、彼はそこを立ち去ろうとした
 …しかし

「………?……………くけっ?」

 …気配が、何時の間にか、自分を取り囲んでいた事に
 「爆発する携帯電話」の契約者は、ようやく気づいた


「…大丈夫ですか?少年」
「あぁ……」

 よろりっ
 都市伝説である事が判明した祖母による特訓
 それで、わりと少年は死にかけていた
 まぁ、死んではいないのだから、きっと問題はないのだろう…多分
 修行自体は、彼が望んだ事であるのだし

 そして、未だ元の男性の体に戻れていない2人
 元に戻る手段を探す為にも、夕暮れの街中を歩く

「あー、くそ、出て来いよマッドガッサー。その仲間でもいいから!」

 半ばやけくそ気味に、少年がそう叫んだ時


 -------ドォン!!と
 どこからか、爆音が響き渡った


「うわっ!?何だ!?」
「爆発音、ですか?……街中で?」

 ぼぅん!と
 続けざま、聞こえてきた爆音

「向こうから、ですね」
「…ひょっとして、都市伝説同士の戦いか?」

 ぼぅん、ぼぅん
 連続して聞こえてくる、小規模の爆発音
 …それは、段々と二人に近づいてきていた
 やがて、ばっ!と
 路地裏から、人影が飛び出す

「………あ!」
「くけっ?」

 飛び出してきたのは…二回ほど、面識がある相手
 二回ほど、「人肉料理店」オーナーの胸元にぶつかってしまい、鼻血を拭いて気絶した男性だ
 あちらも、少年…いや、今は少女だが…たちに、気づいた

 その男性を、追いかけるように
 正気を失ったかのような雄叫びを上げる人影が、数名飛び出してくる!

「くけけ………っ!?」

 男性は逃げ切れず、人影に捕まろうとしている
 …これは、不味そうだ

「…あの追いかけている人間達のほう、都市伝説の気配がしますね」
「マジかよっ!?」

 ますます、危険ではないか
 名前も契約しているらしい都市伝説も知らないが、見捨てる気にもなれず
 少年は、手元に包丁を取り出すと、そちらに向かって駆け出した


「-------っ」

 どしゃり
 道ばたで押さえ込まれる
 何時の間にか、「爆発する携帯電話」の契約者を囲んでいた人影たち
 彼には、誰も彼も、見覚えのない相手ばかりだ
 しかし、確実に…「爆発する携帯電話」を、狙ってきているようだった
 もしかしたら、都市伝説契約者を無差別に襲っているだけの、相手かもしれないが
 「魔女の一撃」契約者が、似たような連中に襲われたという話をしていたのを思い出し、だからこそ、彼は逃げていたのだ
 …もっとも、体育の実技の成績が、生まれてこの方「2」以上になった事のない彼
 逃げ切れるはずもなかった

 相手の目的はわからないが、不味い状況である
 それに、先ほど視界の隅に……二回ほど、自分が迷惑をかけた二人連れの女性の姿が入ってきた
 ヘタをしたら、そちらを巻き込む
 いっそ、今時分が持っている攻撃用の携帯を一斉爆発させて逃げるか
 「爆発する携帯電話」の契約者が、そう考え出した時

「-----っらぁ!!」

 ぶん!と
 振るわれた、包丁
 彼を押さえつけていた人影たちは、それを避けて彼から手を放す

「大丈夫ですか?」
「……けけ?…………大丈夫、だ」

 ぼいんっ
 ……視界の隅で胸が揺れているのを、なるべく見ないようにする
 まともに見たら、意識が保つかどうかわからない

「…何だよ、こいつら」

 包丁を構えたまま、「爆発する携帯電話」の契約者に襲い掛かっていた連中を睨みつけている小柄な少女
 …突然、包丁を出したように見えたから、彼女も契約者なのか、と彼は理解した
 ……あんな大振りの包丁、隠して持ち歩けるとは思えない

「…都市伝説契約者、と言うよりは…それによって、操られているように見えますね。コーク・ロア辺りでしょうか?……コーラにはコカインが含まれている、その都市伝説の」
「…くけけっ、多分、そうだ…」

 巨乳な女性の呟きに、「爆発する携帯電話」の契約者は同意した
 …「魔女の一撃」契約者が話していた襲撃者たちの様子と、一致するからだ
 と、なると、どこかでその都市伝説契約者がいるはずだが

 ……いや、それよりも
 その都市伝説契約者は、「組織」とやらに捕まった、と聞いているのに?
 何故、またそれらが発生している?

「少年、親玉を見つける必要があるかもしれません」
「親玉ぁ!?…っつっても、この近くにいるとは限らないかもしれないだろ!?」
「いえ、操っている対象に指令を出すためにも、状況を把握する必要がありますし…傍で、見ていると思うのですが」

 じり、じり、と
 こちらに迫ってくる、襲撃者たち 
 どいつもこいつも、正気を失っている表情だ
 にじり、にじり
 ゾンビのように、近づいてくる

「えぇと………あんた!!契約してる都市伝説で、親玉の居場所とか、感知できないか?!」
「くけっ!?………無理、だ…俺の、契約している、都市伝説は……攻撃用だ」

 びくり、突然話を振られて驚きながらも、「爆発する携帯電話」の契約者は答えた
 …そう言えば、マッドガッサーたちの仲間になってから…彼ら以外に助けられたのは、初めてかもしれない
 どうして、名前も知らぬ自分を助けてきたのか?
 …「爆発する携帯電話」の契約者には、よく、わからない

「オーナー!」
「………そこ!あそこの路地です!」

 巨乳の女性が、「爆発する携帯電話」が先ほど、飛び出してきた路地裏を指差した
 確かに、一瞬……人影が、見えた
 こちらの様子を、窺っているかのような人影が

「じゃあ、あっちまで行けば……って、うぉ!?」

 とうとう接近してきた襲撃者たちが、少女に手を伸ばす

 ぶぅん!と少女が大振りの包丁を振り回したが…すぱり、肉体を切られても、襲撃者達はそれを苦痛に感じていないように見える
 …コーラに含まれるコカインの都市伝説
 それで操られているとしたら…恐らく、身体能力強化に加えて、痛覚無視の力でも備わっているのかもしれない
 痛みなど気にせず、攻撃を仕掛けてくる相手
 それは、脅威だ

「……くけけっ、親玉に近づけば……どうにか、なるか?」
「なる!むしろ近づけないと無理!!」
「………けけけ……わかった…」

 …あまり、仲間以外の前で能力を使わない方がいい、と忠告されていたが
 今は、そう言う状況ではないだろう
 鞄から、携帯電話を一つ、適当に取り出し……ぶんっ!と、彼はそれを放り投げた
 襲撃者の一人にそれはこつん、と辺り……その足元に、落ちる

「……けけっ、それから、離れろ……」
「え、あぁ」

 急いで距離をとる少女
 その直後、彼は投げつけた携帯に、己の携帯から電話をかけ……能力を、発動する

 ピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
 着信を告げる、携帯
 開かれた携帯のその画面が、異様な光を放つ

「………吹き飛べ……くけけけけけけけけけけけけけっ」

 どごぉんっ!!
 携帯電話が爆発し……辺りは、煙に包み込まれた



「……っち、またか…!?」

 コーク・ロアの契約者は舌打ちする
 自分を、この都市伝説と契約させてくれた存在は、他の都市伝説契約者を集めようとしていた
 だから、この契約者は、「爆発する携帯電話」と契約しているらしい、あの陰気そうな若者をスカウトしようとしたのだ
 …念のため、操っている連中で囲んでから話し掛けたら、辺りに仕掛けていたらしい携帯電話を爆発させて、一目散に逃げられたが
 まったく、失礼な話である
 こちらの仲間になれば、高給取りになれると言うのに…!
 それと、邪魔してきた女2人
 あの2人も、都市伝説契約者か
 いっそ、あの2人もスカウトするか…?

 …とまれ、煙が晴れないことには、次の行動ができない
 彼の能力で操っている対象には、細かい指示は出せないのだ
 あんな視界の効かない中でヘタに攻撃させては同士討ちになる

 あんな視界の中では、相手とて行動できまい
 そう、彼はたかをくくっていたが…

「…………え?」

 ば!と
 煙の中から、飛び出してきた人影
 ……不味い!?
 彼は、咄嗟に逃げ出そうとしたが

「遅いっ!!」

 ずぷり
 その腹に、少女が持っていた包丁が食い込んで
 次の瞬間には、彼は生きたまま解体され始めていっていたのだった



 …どうやら、終わったらしかった
 操られていた襲撃者たちが、バタバタと倒れる

「よし、食材ゲットですね」
「いや、やめてくれオーナー」
「流石に冗談ですよ。契約者であって、辛うじて人間なんですし」
「辛うじてって言うな!?」

 …何やら、女性二人の会話があんまり聞いちゃいけない会話のような気がしたので、「爆発する携帯電話」は、その会話をスルーした
 多分、そう言う都市伝説と、その契約者なのだろう
 …人型の都市伝説と契約していると、寂しくなさそうでいいな、と少し羨ましくなる

「…あ、そうだ、大丈夫か?」
「……くけけっ、大丈夫…」

 ……あぁ、そうだ
 こう言う時、言うべき言葉があったはず
 人と関わる事などあまりなかったから、口にした回数など、今までの人生で数える程度だが

「……ありがとう………くけけっ」

 助けてもらったのだから、礼を言うべきなのだ
 そう考え、「爆発する携帯電話」の契約者は、そう呟くように口にした

「いや、こっちこそ、ありがとうな」

 そう言って、少女が手を伸ばしてきた
 …握手、という事なのだろうか?
 彼は恐る恐る、その手をとって…小さく、握手した

「こちらこそ、本当にありがとうございました」
「……くけっ?」

 きゅ、と
 次に、彼の手を握ってきたのは…巨乳の女性の方

 ばいいいーん
 正面から向き会った事で、その胸を直接見ることになり
 その、ギリギリラインの服から溢れ出そうなそれを、彼はまともに見たことにより

「…………けけっ」

 ぶふぉっ!!

「あぁっ!?今回は大丈夫かと思ったら!?」
「っちょ!?ぶつかってもいないのに、今までで最大の出血量!?大丈夫か!?しっかりしろ!!」

 ……割と、盛大に鼻血を拭いて
 「爆発する携帯電話」の契約者は、安らかに力尽きたのだった




終わってしまえばいい



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