マッドガッサーと愉快な仲間たち 18
拝啓、両親…は存在しないんで、俺と言う存在を生み出してくれた人間たちへ
今、久々にガチで殺されそうです
今、久々にガチで殺されそうです
全力でもって、マッドガッサーはそれから逃げていた
くすくす笑って、それはコーラを操り襲い掛かる
くすくす笑って、それはコーラを操り襲い掛かる
「うぉわっ!?」
じゅうっ!と
背後のアスファルトが、追いつかれないよう倒していった障害物が次々と溶かされていく
何と言うチート能力
解かされて死ぬなんざ御免だっ!!
背後のアスファルトが、追いつかれないよう倒していった障害物が次々と溶かされていく
何と言うチート能力
解かされて死ぬなんざ御免だっ!!
「もう、逃げないでよ」
「逃げるに決まってるだろ畜生っ!!」
「逃げるに決まってるだろ畜生っ!!」
ガスを放ちたいところだが、ガス精製のための集中を行う所じゃない
死ぬ!!
立ち止まった瞬間に死ねるっ!!
とにかく、マッドガッサーは必死に、背後から追ってくる追跡者から逃げ続けていた
死ぬ!!
立ち止まった瞬間に死ねるっ!!
とにかく、マッドガッサーは必死に、背後から追ってくる追跡者から逃げ続けていた
*
面倒だが、「組織」の仕事なので仕方ない
「骨を溶かすコーラ」と契約しているその青年は、マッドガッサーを追いかけていた
自分の担当である黒服は、一味の隠れ家の特定やら被害状況の完全な把握やらで忙しいそうで、傍にはいない
どうやら、マッドガッサーの事件以外にも、「コーラにはコカインが含まれている」と言う都市伝説との契約者が異常に増えている件も調べているらしいが…また過労で倒れるつもりなのだろうか
何事も、ほどほどが一番だとは思うのだが
「骨を溶かすコーラ」と契約しているその青年は、マッドガッサーを追いかけていた
自分の担当である黒服は、一味の隠れ家の特定やら被害状況の完全な把握やらで忙しいそうで、傍にはいない
どうやら、マッドガッサーの事件以外にも、「コーラにはコカインが含まれている」と言う都市伝説との契約者が異常に増えている件も調べているらしいが…また過労で倒れるつもりなのだろうか
何事も、ほどほどが一番だとは思うのだが
「…もう、思ったよりも脚が早いなぁ」
なんと言うか、逃げ足が早い
自分とて、足は遅くない方だと思うのだが、なかなか追いつけない
こぽり、コーラを操り攻撃するのだが、紙一重で交わされる
自分とて、足は遅くない方だと思うのだが、なかなか追いつけない
こぽり、コーラを操り攻撃するのだが、紙一重で交わされる
「-----おわっ!?」
「もう、また外れた」
「もう、また外れた」
襲い掛かったコーラは、マッドガッサーが被っていた帽子にかすり、それを溶かすだけで終わった
ぱさりっ、帽子の中に隠されていた銀色の長い髪が、露になる
ぱさりっ、帽子の中に隠されていた銀色の長い髪が、露になる
「逃げないでよ、そうすれば、いっそ一瞬で楽に殺してあげるよ?」
「死にたくなんぞないわっ!?」
「まぁ、そうだよねぇ」
「死にたくなんぞないわっ!?」
「まぁ、そうだよねぇ」
好き好んで死にたがる者など、自殺志願者でもないかぎりいないだろう
まぁ、死を望まなくても、自分は死を与えるつもりだが
追って、追って、追い続ける
じわり、じわり、追い詰める
さっさと溶かして終わらせたいなぁ、面倒だなぁ
そう考えつつ、走り続ける
まぁ、死を望まなくても、自分は死を与えるつもりだが
追って、追って、追い続ける
じわり、じわり、追い詰める
さっさと溶かして終わらせたいなぁ、面倒だなぁ
そう考えつつ、走り続ける
……と、ぼぅんっ!と
頭上から響いた、爆音
見ると、窓ガラスが爆破されたのか、ガラスの破片が己の頭上に降り注いできている
頭上から響いた、爆音
見ると、窓ガラスが爆破されたのか、ガラスの破片が己の頭上に降り注いできている
ごぽり、コーラの動きを、攻撃から防御に切り替える
己に降り注いでくるガラス片たちをコーラで包み込み、一気に溶かした
この程度でこちらの脚を止めようなど、甘い
己に降り注いでくるガラス片たちをコーラで包み込み、一気に溶かした
この程度でこちらの脚を止めようなど、甘い
「どこかで、君の仲間が見てるんだね…そいつも、溶かしてあげようか?」
「…………っ」
「…………っ」
ぴたり
逃げ続けていたマッドガッサーが、足を止めた
くるり、振り返り…多分、睨みつけてきているのだと思う
ガスマスクのせいで、表情はわからないが
逃げ続けていたマッドガッサーが、足を止めた
くるり、振り返り…多分、睨みつけてきているのだと思う
ガスマスクのせいで、表情はわからないが
「…お前らの目的は、俺なんだろうが。他の奴らは関係ないだろ?」
「えー?でも、君と一緒に悪事を働いてるんだよね?」
「えー?でも、君と一緒に悪事を働いてるんだよね?」
首を傾げつつ、そう告げてみせる
青年自身はその現場を見ていないのでなんとも言えないが、一応そう聞いている
だから、マッドガッサー一味は全員討伐対象、との事だ
一応、青年の担当の黒服は、説得の道もないかと考えてはいるようだが…
青年自身はその現場を見ていないのでなんとも言えないが、一応そう聞いている
だから、マッドガッサー一味は全員討伐対象、との事だ
一応、青年の担当の黒服は、説得の道もないかと考えてはいるようだが…
「僕等の敵なんだし、溶かしちゃってもいいよね?」
「…お断りだな」
「…お断りだな」
じゃきんっ、と
マッドガッサーはそれを向けてくる
マッドガッサーはそれを向けてくる
「俺が溶かされるのも、仲間を溶かされるのも御免だ」
「そう?……でも、仕方ないよね」
「そう?……でも、仕方ないよね」
だって、敵だから
青年は、コーラを放とうと構える
マッドガッサーも、ガスを放とうと言うのか、発射口を青年に向けてきて
青年は、コーラを放とうと構える
マッドガッサーも、ガスを放とうと言うのか、発射口を青年に向けてきて
青年が、コーラを放とうとした、その時
「おぉっと、ちょぉっと待ってくれや」
聞こえてきた、制止の声
直後…どこからか迫ってきた黒い触手のようなものが、マッドガッサーに襲い掛かる
直後…どこからか迫ってきた黒い触手のようなものが、マッドガッサーに襲い掛かる
「うわっ!?」
しゅるりっ
それは、一瞬でマッドガッサーに絡みつき、地面に繋ぎとめた
しゅるしゅると…道の奥から、髪を伸ばしながら独りの黒服が姿を現す
それは、一瞬でマッドガッサーに絡みつき、地面に繋ぎとめた
しゅるしゅると…道の奥から、髪を伸ばしながら独りの黒服が姿を現す
「……だぁれ?」
見覚えのない姿に、青年は首をかしげた
彼の担当よりは、若い姿をしている
黒服である事は、間違いなさそうだが
彼の担当よりは、若い姿をしている
黒服である事は、間違いなさそうだが
「あー、そう言や初対面だったな…まぁ、黒服Hとでも覚えていてくれや」
しゅるり、しゅるり
髪を伸ばしつつ、その黒服はマッドガッサーに近づいている
髪を伸ばしつつ、その黒服はマッドガッサーに近づいている
「ねぇ、どうして止めたの?」
せっかく溶かそうと思ったのに
青年がそう呟くと、黒服Hは苦笑してくる
「あー、それがだな。上が方針変えやがってよ…こいつを、生け捕りにしろって」
「えー、溶かした方が楽だよ?」
「上の方針なんだわ、諦めてくれや」
「えー、溶かした方が楽だよ?」
「上の方針なんだわ、諦めてくれや」
肩をすくめてくる黒服H
…なんだか、自分を担当している黒服よりも、軽い印象だ
…なんだか、自分を担当している黒服よりも、軽い印象だ
「っつ……生け捕り、だぁ?」
黒服Hによって地面に縫い付けられながら、マッドガッサーはガスマスクごしに、黒服Hを睨んでいるようだった
地面に縫い付けられた際の衝撃で、はずれかけているガスマスク
その下にかすかに見える顔は…思った以上に、幼いようにも見えた
地面に縫い付けられた際の衝撃で、はずれかけているガスマスク
その下にかすかに見える顔は…思った以上に、幼いようにも見えた
「あー、何するんだか知らんが、そう言われてんだよ。まぁ、珍しいしなぁ」
「実験コースまっしぐら?それとも解体コース?」
「笑顔で怖いこと言わないでくれや、そこの青年」
「だって、「組織」の考える事だし」
「実験コースまっしぐら?それとも解体コース?」
「笑顔で怖いこと言わないでくれや、そこの青年」
「だって、「組織」の考える事だし」
溶かしちゃえばあっと言う間に片付くのに
どうして、そんな面倒な事するんだろう?
どうして、そんな面倒な事するんだろう?
「組織」の考えは、青年にはイマイチ理解できない
まぁ、理解するつもりもないが
まぁ、理解するつもりもないが
「そう言う訳なんで、ちょっと一緒に来てもらうぜ?マッドガッサー」
「-----っは」
「-----っは」
こちらの会話を聞いていた、マッドガッサーが
嘲笑うように、言い放ってくる
嘲笑うように、言い放ってくる
「…お断りだな」
ごそ、と
縫い付けられたその状態で…服の下から、マッドガッサーは何かを取り出した
…それは
縫い付けられたその状態で…服の下から、マッドガッサーは何かを取り出した
…それは
「!」
「ッ手榴弾!?」
「捕まるなんざ、御免だなっ!!」
「ッ手榴弾!?」
「捕まるなんざ、御免だなっ!!」
っぴ!t
その栓を抜いたマッドガッサー
その次の瞬間……その細い狭い道に、爆発音と激しい振動が、響き渡った
その栓を抜いたマッドガッサー
その次の瞬間……その細い狭い道に、爆発音と激しい振動が、響き渡った
…煙が、晴れていく
「無事かー?」
「うん。君のお陰でね」
「うん。君のお陰でね」
しゅるりっ
髪を伸ばし、一瞬で「骨を解かすコーラ」の契約者を引っつかみ、建物の屋上まで避難していた黒服H
ゆっくりと、地面に降りていく
…マッドガッサーの姿は、影も形もない
髪を伸ばし、一瞬で「骨を解かすコーラ」の契約者を引っつかみ、建物の屋上まで避難していた黒服H
ゆっくりと、地面に降りていく
…マッドガッサーの姿は、影も形もない
「あー、逃げられたか」
「やっぱり、溶かしちゃえば良かったのに」
「上が煩いんだよ。ったく、ころころ方針変えやがって…」
「やっぱり、溶かしちゃえば良かったのに」
「上が煩いんだよ。ったく、ころころ方針変えやがって…」
現場の苦労を知りやがれ
黒服Hは、そうぼやく
…と言うか、マッドガッサーは手榴弾なんぞ、どこで手に入れたのか
そう言えば、北区の山の中で、ロケットランチャーとか地雷が回収されたと言う話を聞いたような聞かなかったような
その辺で拾ったのだろうか?
黒服Hは、そうぼやく
…と言うか、マッドガッサーは手榴弾なんぞ、どこで手に入れたのか
そう言えば、北区の山の中で、ロケットランチャーとか地雷が回収されたと言う話を聞いたような聞かなかったような
その辺で拾ったのだろうか?
…マッドガッサーの正体は軍の関係者で、人体実験を行っているのだ、という説がある
その延長戦で、武器の扱いを心得ているのか
その延長戦で、武器の扱いを心得ているのか
「とりあえず、この失敗は君のせい、って事でいい?」
「うわ、ひでぇ……まぁ、わりと俺のせいだよなぁ」
「うわ、ひでぇ……まぁ、わりと俺のせいだよなぁ」
頭を掻く黒服H
…そして、こんな事を提案する
「あれだ、逃げられたんじゃなく、俺たちはマッドガッサーと遭遇しなかった。そう言う事にしね?」
「あ、それいいね」
「あ、それいいね」
よし、交渉成立だ
ぐ!と親指を立てあって…黒服Hと「骨を溶かすコーラ」の契約者は、マッドガッサーと自分達は遭遇しなかった事にした
うん、これでいいのだ、面倒だし
ぐ!と親指を立てあって…黒服Hと「骨を溶かすコーラ」の契約者は、マッドガッサーと自分達は遭遇しなかった事にした
うん、これでいいのだ、面倒だし
……それに
黒服H、個人としては
もっと美人のねーちゃんとか増やしてくれねぇかなぁ、と
こっそり、マッドガッサーに期待し続けるのだった
黒服H、個人としては
もっと美人のねーちゃんとか増やしてくれねぇかなぁ、と
こっそり、マッドガッサーに期待し続けるのだった
*
体が丈夫で良かった
心から、そう思う
間近で手榴弾炸裂させても生きてるとか、都市伝説としても、相当体が丈夫なのではないだろうか、自分は
心から、そう思う
間近で手榴弾炸裂させても生きてるとか、都市伝説としても、相当体が丈夫なのではないだろうか、自分は
「うぉ…でも、流石にかなり痛ぇ」
よろり、よろける
…その体を、支えられた
「よくもまぁ、生きてるもんだ」
「……けけ……無事、か?」
「……けけ……無事、か?」
13階段と、爆発する携帯電話だ
13階段が、マッドガッサーに肩をかす
13階段が、マッドガッサーに肩をかす
「ったく、どうして途中で立ち止まるんだよ。俺が待ち構えてたとこまで引き寄せりゃ良かったのに」
「…お前の能力、遠距離から攻撃されたら無力だろうが…」
「…お前の能力、遠距離から攻撃されたら無力だろうが…」
ぼやきつつ、13階段の肩を借りながらマッドガッサーは歩く
…この二人では、あの「骨を溶かすコーラ」相手には少々不利
むしろ、能力者であると知られた瞬間、溶かされかねない雰囲気だった
……それならば、自分が出来る限り、足止めした方がいい
…この二人では、あの「骨を溶かすコーラ」相手には少々不利
むしろ、能力者であると知られた瞬間、溶かされかねない雰囲気だった
……それならば、自分が出来る限り、足止めした方がいい
「…くけっ…無理は、駄目、だぞ?」
「へたれで弱いけどリーダーなんだからよ。お前がいなかったら目的達成できないんだぜ?」
「……まぁ、気をつけるさ」
「へたれで弱いけどリーダーなんだからよ。お前がいなかったら目的達成できないんだぜ?」
「……まぁ、気をつけるさ」
…全く
リーダーと言う奴は、仲間を気遣いつつ自分も生き延びなければならないから、大変だ
リーダーと言う奴は、仲間を気遣いつつ自分も生き延びなければならないから、大変だ
……だが、それも悪くない、と
マッドガッサーはこっそりと、そう考えたのだった
マッドガッサーはこっそりと、そう考えたのだった
終わる