マッドガッサーと愉快な仲間たち 17
(白装束は槌を振るうより)
それは、ハロウィンの夜の事
ぽぅ、とそれはそれを取り込む
あぁ、憎い、憎い、憎い、憎い
私を殺した誰かが憎い
私を殺したのはだぁれ?
それは、取りこまれて自覚する
あはは、わかった、わかったよ
私を殺した憎いらしいそいつを、私が殺してあげようか
あぁ、憎い、憎い、憎い、憎い
私を殺した誰かが憎い
私を殺したのはだぁれ?
それは、取りこまれて自覚する
あはは、わかった、わかったよ
私を殺した憎いらしいそいつを、私が殺してあげようか
…こんこん、と
入り口を、ノックする音が聞こえてきた
眠ってしまったジャッカロープの背を撫でていた「爆発する携帯電話」の契約者は顔をあげて…首をかしげる
…ハロウィンの、子供たちが歩く時間にはそろそろ遅いと思うのだが…
入り口を、ノックする音が聞こえてきた
眠ってしまったジャッカロープの背を撫でていた「爆発する携帯電話」の契約者は顔をあげて…首をかしげる
…ハロウィンの、子供たちが歩く時間にはそろそろ遅いと思うのだが…
こんこん、こんこん
ノックの音が響く
「爆発する携帯電話」の契約者は立ち上がり、ジャッカロープをそっと椅子の上に降ろす
他の面子は、教会の奥に引っ込んでいる
あまり、他人と顔を合わせるのは苦手だが…自分が、対応しないと
こんこん、こんこん、こんこん、こんこん
ノックが続くその扉を、そっと開けて…
ノックの音が響く
「爆発する携帯電話」の契約者は立ち上がり、ジャッカロープをそっと椅子の上に降ろす
他の面子は、教会の奥に引っ込んでいる
あまり、他人と顔を合わせるのは苦手だが…自分が、対応しないと
こんこん、こんこん、こんこん、こんこん
ノックが続くその扉を、そっと開けて…
そして、「爆発する携帯電話」の契約者は、そこに立っていた人影を見て、凍りついた
「-------ぁ」
咄嗟に、閉じようとした扉は、その人影に抑えこまれた
注がれるのは、憎悪の眼差し
殺気交じりのそれに、体が震える
注がれるのは、憎悪の眼差し
殺気交じりのそれに、体が震える
「見つけた」
そこに立っていたのは、女
憎々しげな眼差しを向けてくるその相手を…「爆発する携帯電話」の契約者は、覚えていた
はっきりと、覚えている…忘れられるはずがない
憎々しげな眼差しを向けてくるその相手を…「爆発する携帯電話」の契約者は、覚えていた
はっきりと、覚えている…忘れられるはずがない
生まれて初めて殺した相手のことを、忘れる事などできるものか
「----っ」
伸びた手が、こちらの首を絞めてきた
ぎり、とマニュキュアで彩られた指が、喉に食い込んでくる
ぎり、とマニュキュアで彩られた指が、喉に食い込んでくる
「く………ぁ」
「どうして私を殺したの?」
「どうして私を殺したの?」
ぎょろり
憎悪に染まった瞳が、「爆発する携帯電話」の契約者を睨む
憎悪に染まった瞳が、「爆発する携帯電話」の契約者を睨む
「ねぇ、どうして?」
「---っ、-----っ」
「---っ、-----っ」
ぎり、ぎり、と
指が、喉に食い込んでくる
酸素を吸い込む事が出来ず、呼吸ができない
指が、喉に食い込んでくる
酸素を吸い込む事が出来ず、呼吸ができない
問い掛ける声に、答える事も出来ない
「ねぇ、どうして…どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてっ!!!」
首を締め付けてくる力が、更に強くなる
その手を振り払う事もできず、ただ、呼吸を阻害され、意識が遠のいていく
その手を振り払う事もできず、ただ、呼吸を阻害され、意識が遠のいていく
…そんな、自分の腕を
後ろから、誰かが掴んだような気がした
後ろから、誰かが掴んだような気がした
「----っぎゃあ!?」
響いた悲鳴
喉から、手が離れる
げほげほと咳き込むその体が、後ろに引かれる
喉から、手が離れる
げほげほと咳き込むその体が、後ろに引かれる
「大丈夫か!?」
「………くけっ」
「………くけっ」
自分を引き寄せたのがマッドガッサーだと、その声でわかった
前を見れば…自分の首を絞めてきていた女の腕が、肘の辺りで引き裂かれたかのようにぶらり、皮一枚で繋がってぶら下がっていた
激しい痛みに、女がうめき
前を見れば…自分の首を絞めてきていた女の腕が、肘の辺りで引き裂かれたかのようにぶらり、皮一枚で繋がってぶら下がっていた
激しい痛みに、女がうめき
何時の間にか、「爆発する携帯電話」とその女の間に割り込んでいた、司祭の姿をとったマリ・ヴェリテが
眼鏡の下に笑顔を浮かべたまま…その胸元を貫き、心臓を握りつぶした
眼鏡の下に笑顔を浮かべたまま…その胸元を貫き、心臓を握りつぶした
「…まったく、せっかくのハロウィンの夜だと言うのに。とんだ客人でしたね」
絶命した女の死体を持ち上げ、マリが呟く
絶命したそれを、マリは舌なめずりをして見つめていた…多分、食べるつもりなのだろう、食欲的な意味で
「大丈夫か?」
「…だい、じょうぶ」
「…だい、じょうぶ」
ようやく、呼吸が落ち着いた
マッドガッサーの問いかけに、「爆発する携帯電話」の契約者は、こくりと頷いた
マッドガッサーの問いかけに、「爆発する携帯電話」の契約者は、こくりと頷いた
…何故
何故、死んだはずのあの女が、ここに来たのか
小さく、体を振るわせる
何故、死んだはずのあの女が、ここに来たのか
小さく、体を振るわせる
自分が、確かに殺したはずだ
「爆発する携帯電話」と契約した、その直後に…その力を、使って
あの女は、間違いなく頭と手を爆破されて、死んだはず
それなのに……どうして
「爆発する携帯電話」と契約した、その直後に…その力を、使って
あの女は、間違いなく頭と手を爆破されて、死んだはず
それなのに……どうして
かたかたと、体が震え続ける
「組織」に追われるようになるまでに、2、3人殺した
確かに、殺してきた
己の能力で、通常の人間ならば蘇生など不可能なほどのダメージを与えて、確かに殺した
「組織」に追われるようになるまでに、2、3人殺した
確かに、殺してきた
己の能力で、通常の人間ならば蘇生など不可能なほどのダメージを与えて、確かに殺した
殺した理由は、防衛の為だった
物心ついた頃から、孤独だった自分
その自分に、彼女らは近づいてきた
それは、好意の上ではなく、こちらを利用する為で
…利用し尽くして、消されそうになるのを、確かに理解して、恐ろしくて
自衛のために、殺した
物心ついた頃から、孤独だった自分
その自分に、彼女らは近づいてきた
それは、好意の上ではなく、こちらを利用する為で
…利用し尽くして、消されそうになるのを、確かに理解して、恐ろしくて
自衛のために、殺した
……しかし、「組織」に追われるようになって、考えるようになったのだ
それで、本当に正しかったのか?と
それは、未だにわからない
ただ、殺されそうになったのに、自分の身を護らないのは馬鹿だ、とも思う
それで、本当に正しかったのか?と
それは、未だにわからない
ただ、殺されそうになったのに、自分の身を護らないのは馬鹿だ、とも思う
…だからこそ
今の仲間を、自分を利用するのではなく、本当に仲間と思っている皆の力になりたい、と「爆発する携帯電話」の契約者は考える
そのためならば、人殺しも厭わない
……どんな罪を犯そうとも、自分に手を差し伸べてくれた仲間を護りたいと、そう考える
今の仲間を、自分を利用するのではなく、本当に仲間と思っている皆の力になりたい、と「爆発する携帯電話」の契約者は考える
そのためならば、人殺しも厭わない
……どんな罪を犯そうとも、自分に手を差し伸べてくれた仲間を護りたいと、そう考える
…しかし
殺したはずの相手が、目の前に現れて
殺したはずの相手が、目の前に現れて
その憎悪を、殺意をぶつけられて
……「殺人」と言う行為の代償を、改めて認識する
……「殺人」と言う行為の代償を、改めて認識する
「…そんな顔をなさらないでください」
司祭の姿のマリが、「爆発する携帯電話」の顔を覗き込んだ
いつも通りの笑顔に返り血を浴びて、その血塗れの姿で続ける
いつも通りの笑顔に返り血を浴びて、その血塗れの姿で続ける
「あれが何であろうと、あなたを殺そうとした時点で我々の敵。ならば、始末するまでです」
「………くけっ」
「俺達も、色々と恨みを買ってるからな…まぁ、こう言う事もあるさ。そうなったら、ちゃんと護ってやるからな」
「………くけっ」
「俺達も、色々と恨みを買ってるからな…まぁ、こう言う事もあるさ。そうなったら、ちゃんと護ってやるからな」
だから、大丈夫だ、と
小さく、頭を撫でられる
小さく、頭を撫でられる
女の死体を担いで、マリは部屋の奥へと入っていった
後には、玄関に血黙りだけが残される
後には、玄関に血黙りだけが残される
「……って、マリの野郎、血の跡の掃除押し付けやがったな」
「…くけけっ、掃除、した方がいいか?」
「そりゃあ、血の跡は隠さないと駄目だろう、常識で考えて……あぁ、お前は座って休んでろ、俺がやるから」
「……くけ」
「…くけけっ、掃除、した方がいいか?」
「そりゃあ、血の跡は隠さないと駄目だろう、常識で考えて……あぁ、お前は座って休んでろ、俺がやるから」
「……くけ」
「爆発する携帯電話」の契約者を椅子に座らせ、マッドガッサーは雑巾を取りに教会の奥へと入っていく
…座り込み、「爆発する携帯電話」の契約者は、そっと首に触れた
先ほどまで、絞められていたその首に
もしかしたら、痕でも残っているかもしれない
…座り込み、「爆発する携帯電話」の契約者は、そっと首に触れた
先ほどまで、絞められていたその首に
もしかしたら、痕でも残っているかもしれない
…殺すという事は、恨まれるという事
いつか、その殺意は自分に返ってくるのかもしれない
いつか、その殺意は自分に返ってくるのかもしれない
……だが、それでも
いつか殺意を返され、自分が殺されたとしても
いつか殺意を返され、自分が殺されたとしても
今の仲間達のためならば、どれだけこの手を血で染めようとも厭わない
自分などに手を差し伸べてくれた仲間達を、護る為ならば、自分は躊躇わない
護られてばかりではなく、護りたいのだ、助けたいのだ
自分などに手を差し伸べてくれた仲間達を、護る為ならば、自分は躊躇わない
護られてばかりではなく、護りたいのだ、助けたいのだ
己の力で誰かを助けられるのならば
自分は、それをためらいなどするものか
自分は、それをためらいなどするものか
教会の入り口に置かれていたハロウィンの南瓜のランタン
その一方に灯っていた光が……すぅ、と
静かに消滅した事に、誰も気づかない
その一方に灯っていた光が……すぅ、と
静かに消滅した事に、誰も気づかない
fin