「コーク・ロアに支配された人間が、なぁ」
適当に獲物を物色した帰り、マッドガッサーは似非関西弁の女性と合流し、並んで歩いていた
時刻は、そろそろ深夜を回る
こんな時刻に、ガスマスクの男が若い女性と並んで歩いていても通報されなこの街は、本当にありがたい
時刻は、そろそろ深夜を回る
こんな時刻に、ガスマスクの男が若い女性と並んで歩いていても通報されなこの街は、本当にありがたい
「爆やんも、二回くらい襲われとるやん?相当数が増えとるんちゃう?」
「…支配型で、支配している対象を増やしてるんだよな?だとしたら、あいつが狙われたのは完全に能力目当てだろ。コーク・ロアの能力で支配された状態でも、契約している都市伝説の能力は使えるからな」
「…支配型で、支配している対象を増やしてるんだよな?だとしたら、あいつが狙われたのは完全に能力目当てだろ。コーク・ロアの能力で支配された状態でも、契約している都市伝説の能力は使えるからな」
…やはり、この街は危険か?
いや、だが、同時にここまで動きやすい街はない
ここを逃さない手はないのだ
……それに、魔女の一撃の契約者は、この街に住んでいるとある対象に、異様に執着している
そっちの目的が叶うまでは、この街にいたいところだが…
いや、だが、同時にここまで動きやすい街はない
ここを逃さない手はないのだ
……それに、魔女の一撃の契約者は、この街に住んでいるとある対象に、異様に執着している
そっちの目的が叶うまでは、この街にいたいところだが…
「………だとしても、やばいかね?」
「…ヤバイんちゃう?」
「…ヤバイんちゃう?」
…気配が
二人に、ゆっくりと近づいてきていた
ざわざわと、何かが近づいてくる感覚
二人に、ゆっくりと近づいてきていた
ざわざわと、何かが近づいてくる感覚
「…走るぞっ!」
「りょーかいっ!」
「りょーかいっ!」
言うが早いか、二人は駆け出す
しゅるしゅると、背後から迫ってきていた気配が、途端に隠す事をやめた
漆黒の闇の中、黒いそれが迫ってくる
しゅるしゅると、背後から迫ってきていた気配が、途端に隠す事をやめた
漆黒の闇の中、黒いそれが迫ってくる
「げ、この髪は…………うぉわっ!?」
「んみゃっ!?」
「んみゃっ!?」
しゅるり
髪は、何時の間にか、二人の真正面からも迫ってきていて
あっと言う間に、二人の体を絡めとった
髪は、何時の間にか、二人の真正面からも迫ってきていて
あっと言う間に、二人の体を絡めとった
「-------っ!!」
ごがっ!!
「マッドはん!?」
マッドガッサーの体が、塀に叩きつけられる
その衝撃で、からんっ、と……被っていたガスマスクが、落ちた
その衝撃で、からんっ、と……被っていたガスマスクが、落ちた
「おや、こりゃまた……随分と、可愛らしい顔してたんだな」
すたん、と
塀の上に降りる影…髪をわさわさと不気味に伸ばす、黒服
塀の上に降りる影…髪をわさわさと不気味に伸ばす、黒服
「ってめ……」
「よぉ、また会ったな」
「よぉ、また会ったな」
ニヤリ、その黒服はマッドガッサーを見下ろして笑った
髪は、完全にマッドガッサーと似非関西弁の女性を束縛し、その動きを封じている
髪は、完全にマッドガッサーと似非関西弁の女性を束縛し、その動きを封じている
「あー、そんなに睨むなや。殺すんじゃなくて、お持ち帰りするよう言われてんだから……生け捕りとか、そう言う方針で行くならいくで、もっと早く決めとけってのな」
「生け捕りて……マッドはんに何する気や!?」
「さぁ?俺は聞かされてないし、っつか、具体的には聞きたくねぇや」
「生け捕りて……マッドはんに何する気や!?」
「さぁ?俺は聞かされてないし、っつか、具体的には聞きたくねぇや」
似非関西弁の女性の言葉に、その黒服は肩をすくめてみせた
…生け捕りにしたマッドガッサーを、「組織」はどうするつもりなのか?
正直、考えたくもない
突然変異の個体、その特殊な研究対象を、「組織」がどうするか…考えなくとも、大体想像はつく
…生け捕りにしたマッドガッサーを、「組織」はどうするつもりなのか?
正直、考えたくもない
突然変異の個体、その特殊な研究対象を、「組織」がどうするか…考えなくとも、大体想像はつく
「…そう言や、マッドガッサーは生け捕りにしろって言われてっけど、その仲間に付いては指定受けてないな…どうすっかねぇ」
「!」
「!」
黒服が何気なく呟いたその言葉に、ぴくり、マッドガッサーが反応したように見えた
…そうだ、マッドガッサーの仲間については、何も指示が出されていない
つまりは、処分しろと言う事なのだろうな、と黒服は考えた
特に、「13階段」に対しては、そうなのだろう
「組織」の裏切り者で、しかも、あんまりよろしくない…今ではもうなかった事にされている計画の、生き証人のようなものだ
見つけ次第始末しろ、といわれてもおかしくない
…個人的に、ちょっと可愛がった事もある対象だから、自分が「13階段」を追う事にはなりたくないものだ、黒服はそう考えていた
ついでに……今、捕まえている似非関西弁の女性
そっちも、始末は勿体無いよなぁ
さて、どうにかならないものか
考えていて……マッドガッサーが自分を睨みつけている事に、黒服は気づいた
…そうだ、マッドガッサーの仲間については、何も指示が出されていない
つまりは、処分しろと言う事なのだろうな、と黒服は考えた
特に、「13階段」に対しては、そうなのだろう
「組織」の裏切り者で、しかも、あんまりよろしくない…今ではもうなかった事にされている計画の、生き証人のようなものだ
見つけ次第始末しろ、といわれてもおかしくない
…個人的に、ちょっと可愛がった事もある対象だから、自分が「13階段」を追う事にはなりたくないものだ、黒服はそう考えていた
ついでに……今、捕まえている似非関西弁の女性
そっちも、始末は勿体無いよなぁ
さて、どうにかならないものか
考えていて……マッドガッサーが自分を睨みつけている事に、黒服は気づいた
「---っは、いいね、その目。人を殺した事がある奴の、殺意交じりの眼差し、ってか?」
はっきりとした、敵意、殺意
自分の大切なものを護ろうと言う、獣の目
今のマッドガッサーの眼差しは、そう言う目だった
自分の大切なものを護ろうと言う、獣の目
今のマッドガッサーの眼差しは、そう言う目だった
「仲間が大切か?…………都市伝説の癖に、契約者でもない人間と仲良く、とは珍しいもんだ」
「お前だって、都市伝説だろうが」
「あぁ、そうだよ?」
「お前だって、都市伝説だろうが」
「あぁ、そうだよ?」
そうだ、自分も、都市伝説だ
くっく、と黒服は笑う
くっく、と黒服は笑う
「元人間の…都市伝説に飲み込まれて、都市伝説と言う化け物になっちまった存在だよ?」
すたん、と塀から降りて、マッドガッサーに近づく
髪によって動きを束縛され、しかし、マッドガッサーは鋭く黒服を睨み続けていた
…かつて、殺戮を行った経験がある者の、殺意の眼差し
それを、黒服は真正面から受け止める
髪によって動きを束縛され、しかし、マッドガッサーは鋭く黒服を睨み続けていた
…かつて、殺戮を行った経験がある者の、殺意の眼差し
それを、黒服は真正面から受け止める
「どうせ、都市伝説なんざ、人間から見りゃあ化け物だ。そんな化け物と契約してくれる人間だって希少だってのに……その化け物と、契約もしてないのに、一緒に行動するような人間がいるなんてな。どんな手を使ったんだか」
「…ッマッドはんの事、悪く言わんといてや!」
「…ッマッドはんの事、悪く言わんといてや!」
あぁ、随分と慕われているじゃないか
都市伝説の癖に、化け物の癖に
俺はうまくいかなかったってのに、こいつはうまくいきそうだってかい?
……気に食わないねぇ?
都市伝説の癖に、化け物の癖に
俺はうまくいかなかったってのに、こいつはうまくいきそうだってかい?
……気に食わないねぇ?
「まぁ、そう言いなさんなや?……今、俺はあんたらの命を握ってる状態なんだぜ?」
「……彼女だけでも、放せ」
「……彼女だけでも、放せ」
黒服を睨みつけたまま、マッドガッサーが低い声で告げてくる
完全に動きを束縛された何もできない状態だと言うのに、それでも護ろうとでも言うのか?
完全に動きを束縛された何もできない状態だと言うのに、それでも護ろうとでも言うのか?
「嫌だ、って言ったら、お前さんはどうする?」
「…そう、だな」
「…そう、だな」
…ぎりっ、と
束縛された腕を、マッドガッサーは無理矢理動かそうとする
無駄なことを
黒服は、マッドガッサーを束縛する力を強めていく
束縛された腕を、マッドガッサーは無理矢理動かそうとする
無駄なことを
黒服は、マッドガッサーを束縛する力を強めていく
「無理に動かすと、腕が引きちぎれるぜ?」
「…マッドはん!」
「…マッドはん!」
ぎり、ぎり……と
マッドガッサーが動かそうとするその腕を、束縛し続ける
……しかし
マッドガッサーが動かそうとするその腕を、束縛し続ける
……しかし
「-------っ、う、ぁ」
「っ!」
「っ!」
ぶちり
束縛していた黒服の髪を、半ば引きちぎるように…その腕に髪を食い込ませ、肉を、骨を切らせ出血しながら…マッドガッサーは、無理矢理に右腕をうごかした
その指を、口元まで運んで
束縛していた黒服の髪を、半ば引きちぎるように…その腕に髪を食い込ませ、肉を、骨を切らせ出血しながら…マッドガッサーは、無理矢理に右腕をうごかした
その指を、口元まで運んで
ぴぃいいいいいいいい…………-----------------
高い、口笛の音が、周囲に響き渡った
高い、口笛の音が、周囲に響き渡った
ひゅうっ、と
風の音が、辺りに響いて
風の音が、辺りに響いて
直後、激風が黒服に襲い掛かった
「っく……!?」
立つ事すらままならない、激風
まるで、竜巻が自分の場所にピンポイントで直撃してきたかのようなその風に、黒服は体勢を崩した
その拍子に、マッドガッサーと似非関西弁の女性を束縛していた髪の力が、緩む
その拍子に、マッドガッサーと似非関西弁の女性を束縛していた髪の力が、緩む
叫び声のような、何かの鳴き声が、風の音に混じって響く
再び襲い掛かってきた激風に、黒服は体を飛ばされ、塀に体を叩きつけられた
直後、目の前を…何か、巨大な、巨大な
鳥のような生き物が、通り過ぎていったのを、確認する
再び襲い掛かってきた激風に、黒服は体を飛ばされ、塀に体を叩きつけられた
直後、目の前を…何か、巨大な、巨大な
鳥のような生き物が、通り過ぎていったのを、確認する
「ぐ……くそ、何だってんだ…?」
…風が、やんで
マッドガッサーの姿も、似非関西弁の女性の姿も、消えていた
残っているのは、引きちぎられた髪の毛と……マッドガッサーが流した血痕だけだ
マッドガッサーの姿も、似非関西弁の女性の姿も、消えていた
残っているのは、引きちぎられた髪の毛と……マッドガッサーが流した血痕だけだ
「…まさか、さっきのが…例の、巨大都市伝説か…?くそ、マジでマッドガッサーの仲間かよ」
舌打ちする
事実を確認できたのはいいが…これは、やっかいだ
今回は逃走に使用したようだが、あれに暴れられては洒落にならない
流石に、報告するしかないだろう
黒服はため息をついて、懐から携帯を取り出した
事実を確認できたのはいいが…これは、やっかいだ
今回は逃走に使用したようだが、あれに暴れられては洒落にならない
流石に、報告するしかないだろう
黒服はため息をついて、懐から携帯を取り出した
「怪我はないか?」
「うちは平気や…それより、マッドはん、腕」
「都市伝説だから平気だよ。後でジャッカロープの乳でも分けてもらうさ」
「うちは平気や…それより、マッドはん、腕」
「都市伝説だから平気だよ。後でジャッカロープの乳でも分けてもらうさ」
ぶらり、半ば使い物にならなくなった腕をぶら下げつつ、マッドガッサーは似非関西弁の女性にそう答える
彼女に怪我がなかった事実に、酷くほっとしている自身に、マッドガッサーは気づいていた
彼女に怪我がなかった事実に、酷くほっとしている自身に、マッドガッサーは気づいていた
「なぁ、アレが、ひょっとして前に話とった秘密兵器?」
「あぁ。あいつがいりゃあ、いざとなりゃどこにでも逃げれるぞ」
「って、逃げる専用かいっ!?」
「約束なんだよ、荒事には手を出させないっつぅ」
「あぁ。あいつがいりゃあ、いざとなりゃどこにでも逃げれるぞ」
「って、逃げる専用かいっ!?」
「約束なんだよ、荒事には手を出させないっつぅ」
ばさり
二人を逃がしたその巨大な存在は、翼をはばたかせ、高く、高く飛び上がっていっている
それは、軽く見積もっても軽飛行機くらいの、巨大な存在
これがヘタに暴れれば、何がおきるかわかったものではないし…それこそ、本格的にあちこちの組織に目をつけられる
二人を逃がしたその巨大な存在は、翼をはばたかせ、高く、高く飛び上がっていっている
それは、軽く見積もっても軽飛行機くらいの、巨大な存在
これがヘタに暴れれば、何がおきるかわかったものではないし…それこそ、本格的にあちこちの組織に目をつけられる
「マッドはん?…考え込むのもええけど、まずは早よ教会に入って治療しよや?」
「ん……あぁ」
「ん……あぁ」
…自分は、「組織」には生け捕りにされようとしている
だが、仲間は…どうなるか、わからない
それこそ、始末でもされかねない
それを、改めて自覚する
だが、仲間は…どうなるか、わからない
それこそ、始末でもされかねない
それを、改めて自覚する
…だからと言って、今更計画を諦めるつもりもなく
……いや、半ば、その計画など、どうでもよくなってきているはずなのだが
しかし、それを手放す気にもなれず
……いや、半ば、その計画など、どうでもよくなってきているはずなのだが
しかし、それを手放す気にもなれず
「…しばらく、潜むぞ」
「うん?……おおっぴらに動かん、って事?」
「あぁ、多少は動くが……ちまちまやっても、目をつけられていくだけだ…………一気に、やってやる」
「うん?……おおっぴらに動かん、って事?」
「あぁ、多少は動くが……ちまちまやっても、目をつけられていくだけだ…………一気に、やってやる」
それだけの知識を、自分は思い出している
…この学校町を全体を、一気にガスで包み込んでやる
その準備が、必要だ
…この学校町を全体を、一気にガスで包み込んでやる
その準備が、必要だ
「…後で、他の連中にも言うつもりだが………身を引きたくなったら、いつでも引けよ?俺がこれからやろうとしている事は成功するかどうかわからないし、何より…他の都市伝説契約者たちにかぎつけられたら、本格的に戦いになるだろうしな」
「……今更、何言うとるん」
「……今更、何言うとるん」
苦笑してくる、似非関西弁の女性
…あぁ、本当に今更だな、と
感覚がなくなってきた右腕の事など忘れながら…マッドガッサーもまた苦笑したのだった
…あぁ、本当に今更だな、と
感覚がなくなってきた右腕の事など忘れながら…マッドガッサーもまた苦笑したのだった
to be … ?