「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-30d

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○月×日 21:43 家庭科室

「……おかしい」
「え?何がですか?」

 銀髪の青年が呟いた言葉に、長い黒髪の少女が首を傾げた
 同じ考えを抱いたのだろう
 不良教師が、続けて呟く

「…その黒服から、スパニッシュフライが出てこない」
「どう言う事だ?」

 今度は、八百屋の大将が疑問の声を出す
 気絶したままの黒服Hに、気を使ってか家庭科室にあった大きな布をかけてやっていた白骨標本が……あ、と声を出す

『あ、そう言えば…スパニッシュフライは、宿主が気絶したら、口から出てくるんですよね?』
『そう言えば、そうやったなぁ』

 一度、スパニッシュフライを飲み込んだ事がある人体模型が同意する
 …そうだ
 スパニッシュフライは、取り付いた宿主が気絶すると、その体内から排出される
 「骨を溶かすコーラ」の契約者が気絶した瞬間だって、その口からスパニッシュフライが排出されたのだ…まぁ、Tさんの攻撃に飲み込まれて、一瞬で消滅していたが
 だが……気絶しているはずの黒服Hからは、スパニッシュフライが排出されていない
 しかし、間違いなく、黒服Hは気絶しているのだ

「それって、もしかして…」
「…こいつは、操られていなかったのかもしれないな」

 銀髪の青年は、厳しい視線を気を失ったままの黒服Hに向けた
 ……すると

「---いやぁ、操られてたぜ?途中までは」

 気を失っていたはずの、黒服Hの口が……ゆっくりと、開いた

『っ!』

 ば!と急いで離れる人体模型
 皆が、一斉に警戒態勢を取った…が

「…あぁ、そう警戒しないでくれや。体中痛くて、戦う気になれねぇ」

 ゆっくりと黒服Hが体を起こした
 こきこきと、首を鳴らしている

「おぉ、痛ぇ。ちったぁ手加減してくれてもいいだろうがよ。気絶させるだけなら」
「……どう言う事、かな?」

 にっこりと、「骨を溶かすコーラ」の契約者が黒服Hに微笑みかける
 ただし、その手に持っているコーラのペットボトルの蓋は、空いているが

「おぉ、怖い怖い。ちゃんと話すから落ち着いてくれや」

 壁に寄りかかる状態で座りながら、黒服Hは一同を見回す
 サングラスのせいで表情ははっきりしないが、どこか楽しげに笑っているようだった

「確かに、俺は最初操られてたさ…ただ、途中、なんとも強いお嬢ちゃんに撃退されたな。その時に、一瞬、気を失ったんだよ」

 その時に、スパニッシュフライは排出された
 そう、黒服Hは口にする

「え、じゃあ…もう、操られてないのに、マッドガッサー達の味方を、したんですか…?」
「って言うか、君、途中までだって本当に操られてたの?君って、確か精神支配系の能力をほとんど受け付けないんだよね?」

 長い髪の少女が途惑ったような声をあげ、「骨を溶かすコーラ」の契約者は、追い討ちをかける
 くっくっく、と黒服Hは、やはり楽しげに笑うだけだ

「まぁ、ちょいとな。個人的な事情とか色々とあるんでね……一応、途中までは本当に操られてたんだぜ?」
「………」

 疑いの眼差しを向けられながらも、黒服Hの態度は変わらない
 飄々と、これ以上の追及を逃れようとしている

「…安心しな。マジで、この状態じゃあ戦えないんだ。お前さんたちの邪魔はしないさ。ここを移動して屋上に向かうんだとしても…俺には、それを止められない。まぁ、せいぜいできるのはお願いだけかね?」
『…お願い、ですか?』
「あぁ、そうだよ、骨のお嬢ちゃん………お前たち、屋上に向かうんだろ?」

 その問いには、誰も答えない
 もう、その答えは決まりきっている事だ
 マッドガッサーを止めるには、屋上に行くしかないのだから
 それをわかっていて、黒服Hは続ける

「その途中…多分、階段の踊り場にいると思うんだが。そこに、若干馬鹿っぽそうな奴がいるかもしれない。そいつの事、あまり虐めないでやってくれや?」
「階段……「13階段」か」
「あぁ…ま、それはあいつの本名じゃあないがね」

 一瞬
 黒服の、楽しげな笑みが……どこか、皮肉気なものに、変わった
 その変化はほんの一瞬で、見逃してしまってもおかしくないもの
 しかし、不思議と一同は、その笑みを見逃す事がなかった

「…そいつを、虐めないでくれるんなら……まぁ、あとはどうでもいい、さ」
「それが、お前の「罪滅ぼし」の対象か?」
「……おやまぁ、あんまり関わりたくない能力をお持ちのようで」

 くっくっく、と銀髪の青年に、黒服Hは笑った
 青年の言葉を、肯定せず…しかし、否定もしない

「…根っからの、悪い奴じゃあないんだよ、連中も」

 そう言って、黒服Hは天井を見上げた
 …そのずっと先の、マッドガッサー達も見つめるように

「…あいつらの望む世界、ってのも、面白そうだったんだが、ねぇ…やっぱ、この賭けは勝率が低すぎだ。やっぱ…止めた方が、親切だった、かねぇ…?」

 独り言のように呟かれた言葉
 その言葉に、返事を返したものはいなかった



to be … ?




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