「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 占い師と少女-a08

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uranaishi

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占い師と少女 マッドガッサー決戦編 08


○月×日 21:30

カタッ

……初めは、小さな音だった。

カツッ カツッ

しかしそれは徐々に大きく、なおかつ近づいてきていた。
化学準備室の中にいた私たちの間に、小さな緊張が走る。

「……足音だな」
「敵か、味方か、どっちなんやろうな」
「味方だといいんですけれど……」
「まだ戦えないよ、僕」

不良教師さんたちの間で素早く交わされる会話。
この会話の慣れは、今までにも似たような状況を潜り抜けてきただろう事を想像させる。
私の横では、占い師さんが壁を……正確には、壁の向こうを見ていた。

「この足音は誰のもんだ、兄ちゃん」

刻一刻と近づく足音に、しかし大将はのんびりと聞いた。

「…………マリ・ヴェリテのベートだ」
「……ほう」

占い師さんの答えに、不良教師さんは煙草をくわえたまま、軽く頷いただけだった。
マリ・ヴェリテのベートといえば、以前にも戦った事のある都市伝説だ。
単純な腕力で攻めてくる相手が苦手な私たちがその時に取った結論は「戦略的撤退」……簡単に言ってしまえば、勝てないと見込んだのだ。

「私たちに気付いていると思いますか?」
「さて……さっきの階段前での騒ぎは確実に聞かれていただろう。あの後すぐに監視カメラは無力化したが、二階の見回りに誰かが来てもおかしくはない」
「それなら、ここに隠れていればいいんじゃないでしょうか」
「一瞬それも考えてたんだがな」

白骨標本さんの指摘に、占い師さんは方をすくめた。

「マリ・ヴェリテは耳がいい。どう考えてもさっきの、聞かれただろうな」
「さっきの…………?」
「…………ああ、あれか」

占い師さんの言葉に、白骨標本は首をかしげ、不良教師さんは何かに気づいたように

……っじゅ

「うおわっちゃ!?」

……人体模型の目に、煙草の火をすりつけた。

「旦那っ、わては味方でっせ、味方。いきなり煙草を押し付けるんは今後の信頼関係にひびが――」
「……お前、さっきのフラメンコ、かなり激しいステップだったな?」
「……へ? あー、いや、途中からなんやえらいのってきてしもうたんですわー」
「音も、激しかったよな?」
「………………」
「………………」

……っじゅ

「うわぁっちゃあ!!??」
「反省しろ、反省」
「…………さて、そろそろ近いぞ、どうする?」

コントのようなやり取りを続ける2人をよそに、占い師さんは相変わらず壁の向こうを見ていた。
その言葉に、不良教師さんは煙草を再び口にくわえ

「ここを主戦場にするのは避けたい所だな」
「……なら、さっさと出て、奇襲にでも出るか」
「え? でも、この前は逃げ――戦略的撤退をしたじゃないですか。今回は大丈夫何ですか?」
「なに、あの時は準備もしてなかったし、戦力も違う。マリ・ヴェリテを倒すなら今だろうな」

そう言って部屋の面々を見渡し

「……さて、時間もあまりないが、作戦会議と行こうか」

***************************

○月×日 21:28

マリ・ヴェリテは2階の廊下を、視聴覚室から角へと向けて歩いていた。
少し前に入ったスーパーハカーからの情報を頼りに、1階から上がって来たのだが

「……誰もいねぇじゃねぇか」

視聴覚教室の脇にある階段の踊り場に大きな穴があいてはいるが……それ以外に、人影は全くない。
しかし、それはそうだろう、とマリ・ヴェリテは大して落胆もしていなかった。
マリ・ヴェリテがここへ来たのは騒動から10分近くが経った後だった。侵入者がここで「魔女の一撃」の契約者と交戦していたとしても、今まで悠長に残っているとは思えない。

「それでも、まだ二階にいるかもしれねぇからな……」

ふと、スーパーハカーからもたらされていた情報の中に、一つ奇妙な事があるのを思い出した。
『催涙弾のガスが消えた後、そこにいた全員の姿が見えなくなっていた』……そう、スーパーハカーは報告していた。
もちろん、ガスの中「魔女の一撃」の契約者を追って穴から出た、という可能性もある。穴の外は校舎の外であり、監視カメラは少ない。
だが、それにしては消える前の人数が多すぎる。10人近い人や都市伝説が、そんな数十秒の間に消えるものだろうか?
…………もしかしたら、監視カメラを無効化出来る誰かが、この校舎の中に侵入しているのかもしれない。
マリ・ヴェリテはそう考えていた。

「…………ん?」

その時、小さな音がマリ・ヴェリテの耳に入る。
何かを打ち付けるような小さな音、しかし、それは無生物によって出されるものではない。

「…………そっちか」

カツッ カツッ

ノリウムの床に足音が反射するのも気にせず、マリ・ヴェリテは進む。

「……何、逃げたなら逃げたで、それを嬲り殺しにするのもいいもんだ」

誰に語るでもなく、マリ・ヴェリテは独り呟いていた。




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