占い師と少女 マッドガッサー決戦編 12
※金さん、女装少年の方、合流後の占い師一行視点
○月×日 22:07 二階廊下
ドクターさん達が合流し、その後に金さんと女装少年さんが合流して……いつの間にか、私たちのグループは10人を超える程のものになっていた。
幅の広い廊下を目一杯使っても、何列かにならないといけない程の人数。多分、かなり目立っている事だろう。
幅の広い廊下を目一杯使っても、何列かにならないといけない程の人数。多分、かなり目立っている事だろう。
「……大体、何であんたも来てるんだ。さっきの『お願い』は嘘か?」
占い師さんが言った対象は、私たちの少し後ろを歩いている黒服Hさんだった。
「なに、どんな大怪我してる最中でも、美少女のピンチは救わねばならないだろう、常識で考えて」
「それが生物の本能、それが『漢』と言うものだよ」
「それが生物の本能、それが『漢』と言うものだよ」
黒服Hさんの隣にいたドクターさんも賛同する。
ちなみに、ドクターさんは既に化学準備室で借りた白衣を着ていた。
その横には、軽い応急手当を終えた女装少年さんと、ザクロさんもいる。
ちなみに、ドクターさんは既に化学準備室で借りた白衣を着ていた。
その横には、軽い応急手当を終えた女装少年さんと、ザクロさんもいる。
「……お前は男じゃないだろう」
「兄さん、愛は性別を超えるんだよ」
「兄さん、愛は性別を超えるんだよ」
私たちの斜め前では、不良教師さんと「骨を溶かすコーラ」の契約者さんが何かを言いあいながら、皆を先導するように歩いていた。
不良教師さんの向かう先は、美術準備室。…………そこに、階段を使わずに3階へと上がる抜け道があるのだという。
不良教師さんの向かう先は、美術準備室。…………そこに、階段を使わずに3階へと上がる抜け道があるのだという。
『いやー、そやけどほんま懐かしいわー』
『今は、どちらに?』
「あ、はい。『うわさの産物』というレストランで――――」
『今は、どちらに?』
「あ、はい。『うわさの産物』というレストランで――――」
不良教師さん達の少し後ろでは、金さん達が互いの意近況報告に咲かせていた。
女体化によってフィギュア化されているのが、何というか……原型を留めてなくて、普通に可愛いと思ってしまった。
……そういえば、もし白骨標本さんがガスを浴びたら、女性の骨格になるのだろうか。
女体化によってフィギュア化されているのが、何というか……原型を留めてなくて、普通に可愛いと思ってしまった。
……そういえば、もし白骨標本さんがガスを浴びたら、女性の骨格になるのだろうか。
「……っと、着いたぞ。ここだ」
数分が経ち、幾つかあるうちの一つのドアの前に、不良教師さんが立ち止まった。
暗がりで見づらいプレートには「美術準備室」の文字。
暗がりで見づらいプレートには「美術準備室」の文字。
「……さて、どの鍵だったか……」
化学準備室と同様、懐から取りだした鍵を一つ一つ合せていく。
非常灯の灯りを頼りが、銀色の鍵を緑色に照らし出した。
非常灯の灯りを頼りが、銀色の鍵を緑色に照らし出した。
かちゃり
少しして、その内の一つが当たり、辺りに錠の空く乾いた音が響いた。
不良教師さんによって扉が開かれ、中から空気が漏れてくる。
不良教師さんによって扉が開かれ、中から空気が漏れてくる。
「…………あれ?」
その空気に、私は違和感を覚えた。
化学準備室を開けた時の空気は籠っていて、少しの固さと湿っぽさがあった。
しかし、この空気は……非常に冷たい上、どこかが空いているのか、解放後も風が出入りしていた。
化学準備室を開けた時の空気は籠っていて、少しの固さと湿っぽさがあった。
しかし、この空気は……非常に冷たい上、どこかが空いているのか、解放後も風が出入りしていた。
「……ほう……」
さきに中に入った不良教師さんが、軽いため息を漏らす。
「誰か先に来た人間がいたみたいだな……」
その視線の先には、大量の鼠の死骸と、ある点を中心とした爆風の後。
その中心には、椅子が一脚、ぽつんと置いてあった。
その中心には、椅子が一脚、ぽつんと置いてあった。
「……ハーメルンの笛吹き、か」
鼠を見た占い師さんが呟く。
ハーメルンの笛吹きと言えば、購買で私たちを襲った鼠を操っていた人だけれど……。
ハーメルンの笛吹きと言えば、購買で私たちを襲った鼠を操っていた人だけれど……。
『大丈夫だったんでしょうか……?』
「爆発した跡に足場として椅子が置かれてるんだ。まず平気だろう」
「爆発した跡に足場として椅子が置かれてるんだ。まず平気だろう」
白骨標本さんの言葉に、不良教師さんが周囲を見聞して答えた。
「さて…………」
占い師さんが、天井の一部空いている所を中心に、室内を見回す。
能力を使っているのか、その目に映っているのは室内の情景ではない。
能力を使っているのか、その目に映っているのは室内の情景ではない。
「……特に罠らしい罠もない。これなら行けそうだが……」
占い師さんの視線が、ふと一角に止まる。
「何だね?」
その先にはドクターさんと、
「……ワタクシには、ちょっと通るのが無理だと思いますわ」
その巨躯に気絶した少女を乗せた、ザクロさんだった。
「ああ……確かにザクロさんには……」
「俺の髪で天井までなら、押し上げる事は出来るが……」
「俺の髪で天井までなら、押し上げる事は出来るが……」
女装少年さんの言葉を受けた形で言った黒服Hさんに、不良教師さんが首を振った。
「その後も少し歩かなくちゃならない。入るだけじゃ駄目だな」
「ふむ……なら、ここで一旦別行動、という事かね」
「別行動、ですか……?」
「ふむ……なら、ここで一旦別行動、という事かね」
「別行動、ですか……?」
私の疑問に、ドクターさんが答えてくれる。
「ザクロ君が階段を使うしかない以上、ここから3階へあがる班と、階段を通る班に分かれた方がいいという事だよ、お嬢さん」
「え? でも、全員で行動した方がいいんじゃないんですか?」
「階段を渡るとなると、あいつを説得しなくちゃならないな。下手に大勢で行くと身構えられるさ」
「あいつ……? ……ああ、『13階段』か」
「え? でも、全員で行動した方がいいんじゃないんですか?」
「階段を渡るとなると、あいつを説得しなくちゃならないな。下手に大勢で行くと身構えられるさ」
「あいつ……? ……ああ、『13階段』か」
占い師さんの言葉に、黒服Hさんは手を軽く振った
「もしあいつを説得する気なら、その名前であいつを呼ばないほうがいい。嫌がるからな」
占い師さんは軽く首を振って
「……いや、俺たちは説得には回らない。ここから3階へ行くつもりだ」
「案内人としては、俺も3階までは付き添わなければ、な」
「兄さんが行くなら、もちろん僕も」
『わても行きまっせ―』
「案内人としては、俺も3階までは付き添わなければ、な」
「兄さんが行くなら、もちろん僕も」
『わても行きまっせ―』
占い師さんの言葉に反応して、意向を示し始める不良教師さん達。
「あ、えっと……」
そこに、おずおずとした声がかかった。
「私も、白骨さん達と一緒に行きたいんですけど……いいですか?」
『もちろん大歓迎やでー!』
「ここから行けるなら、その人数が多いのに越したことはない」
『もちろん大歓迎やでー!』
「ここから行けるなら、その人数が多いのに越したことはない」
人体模型さんがばしばしと金さんを叩き、占い師さんもそれに同意した。
…………えっと、不良教師さん達にドクターさんたち、黒服Hさんに、金さんと、私たちが決まった事になるから、後は……。
…………えっと、不良教師さん達にドクターさんたち、黒服Hさんに、金さんと、私たちが決まった事になるから、後は……。
「あ、えっと、元々説得予定だったし、ザクロさん達に付いていこうと思ってるんだけど……」
そう言って、女装少年さんはドクターさンたちの方を伺った。
「ふむ……お嬢さんが加わるのはボク的には全く構わないよ」
「もちろん、美少女はウェルカムだ」
「もちろん、美少女はウェルカムだ」
それに答えたのは、何とも純粋な男性陣の言葉だった。
……女装少年さんが少し心配になってきた。
……女装少年さんが少し心配になってきた。
「……さて、これで組み分けは終わりか?」
占い師さんの言葉に、面々が頷いた。
「よし、じゃ、取りあえずの目的は3階で合流。俺たちはここから、あんた達は『13階段』を説得で3階まで上る」
「ワタクシ達が説得に失敗した場合は?」
「それなら、天井を壊してでも来ればいい。主戦力のあんたらがいないままでマッドガッサーには挑めんさ。最低限、あんたらかTさん達と合流するまで、戦闘を始めるつもりはない」
「ワタクシ達が説得に失敗した場合は?」
「それなら、天井を壊してでも来ればいい。主戦力のあんたらがいないままでマッドガッサーには挑めんさ。最低限、あんたらかTさん達と合流するまで、戦闘を始めるつもりはない」
そこまで言って、占い師さんは天井を見上げ
「……まぁ、罠を解除したり、スパニッシュフライに操られた奴がいたら気絶させる位はするかもしれんが」
「……ふむ、では、ここで」
「……ふむ、では、ここで」
そう言って私に差し出されたドクターの手を
パシッ
占い師さんが取った。
「…………ふむ」
残念そうな顔をするドクターさん。
こんな状況下でも自分の欲求を通そうとするドクターさんに、私は少し感心してしまった……。
こんな状況下でも自分の欲求を通そうとするドクターさんに、私は少し感心してしまった……。