占い師と少女 マッドガッサー決戦編 11
※黒服Hと呪われた歌の契約者-30dのその後、占い師一行視点
○月×日 21:49 家庭科室
黒服Hさんの話しを聞いてから、私たちは今後の行動について話し合っていた。
二階までは「骨を溶かすコーラ」の契約者さんの能力で、階段を溶かす事で進む事が出来た。
けれど、さっきの戦いでまた大分精神を消耗したらしく、同じように階段を溶かすにはかなりの時間を必要だと言うのだ。
二階までは「骨を溶かすコーラ」の契約者さんの能力で、階段を溶かす事で進む事が出来た。
けれど、さっきの戦いでまた大分精神を消耗したらしく、同じように階段を溶かすにはかなりの時間を必要だと言うのだ。
「……それに、戦力の問題もある」
『戦力なら……先程みたいに全員で戦えばなんとかなるんじゃないんでしょうか?』
『戦力なら……先程みたいに全員で戦えばなんとかなるんじゃないんでしょうか?』
占い師さんが言った問題に、白骨標本さんが答えた。
「それは、相手がマリ・ヴェリテ一人だった時の場合だ。一味全員を相手にするとなると、今の俺達には難しいだろうな」
「でも、Tさん達は『魔女の一撃』の契約者を追って行ってしまいましたし……」
「それが終わるまではここに足止めって事? 僕は休めるなら全然構わないけど」
「弟の精神が回復するのを待つのも案だとは思うが……あの男がここに戻ってくる保証もない。下手に時間を潰すのは今後に響くんじゃないのか」
「けどよ、急いで行ってやられちまうって可能性もあるわけだろ?」
「でも、Tさん達は『魔女の一撃』の契約者を追って行ってしまいましたし……」
「それが終わるまではここに足止めって事? 僕は休めるなら全然構わないけど」
「弟の精神が回復するのを待つのも案だとは思うが……あの男がここに戻ってくる保証もない。下手に時間を潰すのは今後に響くんじゃないのか」
「けどよ、急いで行ってやられちまうって可能性もあるわけだろ?」
……占い師さんの言葉から始まった議論は、黒服Hさんと人体模型さんを除いた、かなり大掛かりなもにになっていた。
黒服Hさんは疲れたのか目を閉じているし、人体模型さんに至っては
黒服Hさんは疲れたのか目を閉じているし、人体模型さんに至っては
カツッカツッカツッカツッカツッカツッ!
フラメンコより激しいステップで、ゴーゴーを踊っていた。
……さっき不良教師さんに怒られたのを、忘れてしまったのだろうか。
……さっき不良教師さんに怒られたのを、忘れてしまったのだろうか。
「だが――――」
「しかし――――」
「しかし――――」
そんな状況の中、議論が最高潮に達しようとした時――
『とりあえず水道があって助かった。水で拭う程度だったが幾分かにおいはマシになったな』
――隣の調理室から、女性の声が響いてきた。
「っ!」
部屋にいた全員の顔に緊張が走る。
家庭科室と調理室とを繋いでいる扉に視線が集中する中、私と占い師さんは透視で壁の向こうを覗き見て
家庭科室と調理室とを繋いでいる扉に視線が集中する中、私と占い師さんは透視で壁の向こうを覗き見て
「…………うわぁ」
「…………ほう」
「…………ほう」
と、同時に声を漏らした。
しかし、緊張のためか他の誰も私たちの様子に気付いていない様子だ。
しかし、緊張のためか他の誰も私たちの様子に気付いていない様子だ。
『……隣が家庭科室だろう。科学準備室よりはそちらの方が色々あるかもしれんな』
……そして、家庭科室に、再び声が響き
がちゃり
家庭科室と調理室の間にある通用ドアが、開いた。
「…………ふむ?」
中から出てきたのは、前にエプロンをかけただけの、俗に言う裸エプロン状態の女性だった。
碧い眼に、占い師さんと同じ銀色の髪が映えている。
その後を追うように、少女を乗せた黒い犬がのっそりと現れた。
碧い眼に、占い師さんと同じ銀色の髪が映えている。
その後を追うように、少女を乗せた黒い犬がのっそりと現れた。
しゅるっ
……そんな中、ふと何かが床を這うような音が響く。
「ほう、裸エプロン……」
音のした方を見ると、いつの間に起きたのか、黒服Hさんがしゅるしゅると髪を伸ばしていた。
しかしそれも、「骨を溶かすコーラ」の契約者さんに睨まれ、すぐに引っ込める。
しかしそれも、「骨を溶かすコーラ」の契約者さんに睨まれ、すぐに引っ込める。
「……いつぞやの黒服君ではないか。そちらの一行はお仲間かね?」
私たちの緊張をよそに、裸エプロンの女性は黒服Hさんへと問いかけた。
それに対して、相手を知っているのか、黒服Hさんは困惑したような顔をしている。
……そんなある種の緊張状態の中、真っ先に動き始めたのは――
それに対して、相手を知っているのか、黒服Hさんは困惑したような顔をしている。
……そんなある種の緊張状態の中、真っ先に動き始めたのは――
「……兄さんに何を見せてるのかな?」
――ペットボトルの蓋を開けた「骨を溶かすコーラ」の契約者さんだった。
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○月×日 21:54 家庭科室
「……それで、あんた達はマッドガッサーの敵か? 味方か?」
裸エプロンの女性を襲おうとした「骨を溶かすコーラ」の契約者さんを止め、止める際に散らかってしまった室内を片づけ、話し合いのできる空間を作る……。
……占い師さんが問いかけるまでに、数分の時が経過していた。
……占い師さんが問いかけるまでに、数分の時が経過していた。
「ふむ……敵か味方かで言えば、敵……という事になるのだろうな」
「しかし、そのブラックドックはあんたの契約した都市伝説ではないはずだ。『エイズ・メアリー』はどうした?」
「……ふむ。中々に面白い能力を持っているようだ。後でちょっと調べさせて――」
「しかし、そのブラックドックはあんたの契約した都市伝説ではないはずだ。『エイズ・メアリー』はどうした?」
「……ふむ。中々に面白い能力を持っているようだ。後でちょっと調べさせて――」
ごぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ……
「――――ふむ」
女性の言葉に反応し、「骨を溶かすコーラ」の契約者さんの周囲にコーラが渦巻くのを見て、女性は口をつぐんだ。
「それで? 敵ではないという事だが、そのブラックドックの背中に乗っている『死体洗いのアルバイト』の契約者は、マッドガッサーの一味ではないはずだろう?」
「そこの馬鹿な部下なら、スパニッシュフライに操られてしまってね。さっきまでボクと戦っていたよ」
「正確には、ワタクシとドクターさんですわ」
「そこの馬鹿な部下なら、スパニッシュフライに操られてしまってね。さっきまでボクと戦っていたよ」
「正確には、ワタクシとドクターさんですわ」
女性の言葉に、ブラックドックさんが補強をする。
「……なるほど、な」
占い師さんは頷いて、そのまま辺りを見回し、言った。
「さて、聞きたい事は大体聞けたとは思うが……他に何か聞きたい事のある奴はいるか?」
その言葉に、真っ先に反応したのは
しゅるっ
……手ではなく、髪だった。
見ると、壁に寄りかかったままの状態で、黒服Hさんが女性を見ていた。
見ると、壁に寄りかかったままの状態で、黒服Hさんが女性を見ていた。
「なんだね、黒服君」
「いや、なに。男としてはこれをどうしても聞かなければならないような衝動に駆られたんだが……」
「いや、なに。男としてはこれをどうしても聞かなければならないような衝動に駆られたんだが……」
しゅるしゅる……パシッ
言葉の間中、女性に向かって伸びていた髪を、ブラックドックさんが捉えた。
それを見て、残念そうな顔をする黒服Hさん。
それを見て、残念そうな顔をする黒服Hさん。
「このような状況下で、そのような行動はどうかと思いますわ」
「悪いな、つい条件反射で」
「条件反射であんな――」
「君、男には誰でもついやってしまいたくなる時があるんだ。大目に見てあげようじゃないか」
「……ドクターさんが言うのでしたら構いませんが……」
「……さて、それでなんだね? 黒服君」
「いやなに、なぜ裸エプロンなんて男の浪漫や夢一杯な格好をしているのか、と」
「ああ……これかね?」
「悪いな、つい条件反射で」
「条件反射であんな――」
「君、男には誰でもついやってしまいたくなる時があるんだ。大目に見てあげようじゃないか」
「……ドクターさんが言うのでしたら構いませんが……」
「……さて、それでなんだね? 黒服君」
「いやなに、なぜ裸エプロンなんて男の浪漫や夢一杯な格好をしているのか、と」
「ああ……これかね?」
ひらひらと裸エプロンを振わせる女性。
…………占い師さんと不良教師さん、「骨を溶かすコーラ」の契約者さん以外の男性陣の目がそれに吸い寄せられたのは、見なかった事にしよう。
…………占い師さんと不良教師さん、「骨を溶かすコーラ」の契約者さん以外の男性陣の目がそれに吸い寄せられたのは、見なかった事にしよう。
「さっきの戦いでこの馬鹿者に『ホルマリンプール』に沈められてね。着ていた物が全て駄目になってしまったんだ」
『ホルマリンって……かなり毒性の強い劇薬ですよね?』
「白骨のお嬢さん。これでも僕は『エイズ・メアリー』の契約者だよ。服こそ濡れたが、薬品に浸かったくらいでは死なんさ」
「それで、エプロンだけ……ですか?」
「何も着ないよりはマシだろう?」
『ホルマリンって……かなり毒性の強い劇薬ですよね?』
「白骨のお嬢さん。これでも僕は『エイズ・メアリー』の契約者だよ。服こそ濡れたが、薬品に浸かったくらいでは死なんさ」
「それで、エプロンだけ……ですか?」
「何も着ないよりはマシだろう?」
女性の言葉に、教室内に沈黙が降りる。
マシだけれど、逆効果……そんな空気が、教室を支配していた。
マシだけれど、逆効果……そんな空気が、教室を支配していた。
「……まぁ、いい。あんたに敵意がないのは分かった。それで、どうする? 俺たちはこの後屋上まで行くつもりなんだが……」
「馬鹿な部下の尻拭いは上司の仕事だから、な。ボクも行くとしよう」
「ワタクシも、ドクターさんと一緒に」
「馬鹿な部下の尻拭いは上司の仕事だから、な。ボクも行くとしよう」
「ワタクシも、ドクターさんと一緒に」
女性の言葉に、ブラックドックさんも頷く。
「ボクは……そうだな、ドクターと呼んでくれればいい。この大きな犬は――」
「ザクロ、ですわ」
「ザクロ、ですわ」
そう言って差し出された女性……ドクターの手を、占い師さんが取る。
取られた手を見て、占い師さんを見て、私を見て……少し残念そうな顔をしたドクターは
取られた手を見て、占い師さんを見て、私を見て……少し残念そうな顔をしたドクターは
「……ふむ、出来ればボクはそちらのお嬢さんと――」
「ドクターさんっ!!」
「――――ふむ」
「ドクターさんっ!!」
「――――ふむ」
ザクロさんに窘められ、さらに残念そうな顔をするドクター。
私は、少しの身の危険を感じつつ
私は、少しの身の危険を感じつつ
(……これで、戦力が整った事になるのかな)
そんな事を考えた。
○月×日 21:58 ドクターとザクロ、占い師・不良教師一行に合流。