「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 電子レンジで猫をチン!-02

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【電磁人の韻律詩~2号~ セイギノミカタ 】

「ふぁあ……、よく寝た。」
事件の翌日、日曜日の朝、明日真はベッドで思い切り安眠していた。
フニ
寝返りを打つと彼の腕に柔らかいものが当たる。
まぁ枕の類だろう、と思って彼はまどろむ。
それにしては少々暖かすぎる気もするが……、細かいことは気にする気は無いようだ。
ぱちり、と彼は目を開く。
よく見ると自分の隣に少女が眠っている。
ついでに自分の腕が思いっきり彼女の胸に当たっているのも見えた。

「うぉわわわわわ!!!!」
ベッドから跳ね起きる明日。
どうも彼は女性が苦手らしい。
「やぁ、おはよう。朝のどっきりハプニングは喜んでくれたかな?」
隣で寝ていたのは電子レンジの都市伝説。
一応、女性。
「ったく……。何をやっているんだ?」
「堅いことを言うなよ、私だって疲れているんだ。
 少し巫山戯たって良いだろ?」

普通ならソレは嬉しいハプニングだっただろう。
だが女性に不慣れな彼にとってはとんでもない迷惑だ。
しかしそんな事情も無視して電子レンジは話を続ける。
「ねえ、そういえば電子レンジ買って欲しいな。
 古い電子レンジの中に入っているのも耐えられないんだけど。」
可愛い声を出してねだっているがビジュアル的には電子レンジである。
「え……、家のじゃ駄目かよ。」
「だってあれも大分古いよ~!」
「っ……、まあ命の恩人だし、仕方ないか。」
明日はため息をつく。
お小遣いはそこそこ有るのだがやはり家電は厳しいらしい。
「やったー!それじゃあ今日の朝ご飯は私が作ってあげるよ!」
「お、おう……。電子レンジで調理とかはやめてくれよ……。」
今の彼女の姿を見ていると割と洒落にならないのが困った話である。
「任せなさい!」
「心配だなあ………。」


二十分後


「――――――できたよッ!」
「うぉお!美味そうだな。」
明日の座るテーブルの前には
目玉焼き
味噌汁
ご飯
鮭の塩焼きが並んでおり
そして
どこから引っ張り出してきたのか割烹着姿の電子レンジが座っていたのであった。
「まあ大事な契約者だしこれくらいはしてあげないとさ!
 これからは私に幾らでも頼りなさい!」
「……アリガトウゴザイマス。」
深々と頭を下げる明日。
「そんな改まらなくても良いよ、速く食べて!」
「それじゃあ……。」
明日真は目の前の和風定食Aセットを口に運び始めた。
会話はない。
それくらい物凄い勢いで食べているのだ。
そして和風定食Aセットを食べ終わり、明日は呟いた。
「人の作った物なんて食べるの久しぶりだなあ……。」
「私も自分が調理した物で人が喜んでくれたのは生まれて初めてだよ。」
「言われてみればそうか………。
 あれ、そういえばお前の分の飯はどうした?」
「コンセントで充電したから大丈夫。」
自分の髪を指さす電子レンジ。
髪の部分がコンセントに当たるようだ。
「そうか……、ところでこれからお前をどうやって呼べば良い?」
明日は今まで自分が気にしていた一番の問題を彼女に聞いた。
「今まで通り電子レンジで良いよ、呼び方なんて些細な問題さ。」
「電子レンジねぇ……。じゃあ恋路とかどうよ。恋の路と書いて恋路。
 そのままレンジだと男っぽくて違和感がある。」
「解ったよ、ところで君の名字ってなんだっけ?」
「明日、明日と書いてアケビと読む。」
「明日真ねぇ……、解った。私は君のことをアスマと呼ぼう。」
「じゃあよろしく恋路。」
「よろしくアスマ。電子レンジは奮発してくれよ。」
二人はガシッと握手をして牛乳で乾杯した。
無論、恋路に牛乳など飲めるはずがなかったのだが。

朝食を食べ終わった後、明日真はテレビをつけた。
朝のニュースでは昨日のクラブでの出来事はまったく事件になっていなかった。
まだ発覚していないのだろうか?
あれだけ派手に人が死んだのにそんなことにはならない。
明日真はそんなことを考えながらテレビに見入っていた。
「アスマ、何難しい顔しているんだい?」
「いや、昨日のことってニュースにならないのかなあ……と。」
「ああ、多分組織がもみ消したんじゃないかな?」
明日の隣に置いてある電子レンジから声がする。
「組織?なんじゃいそりゃあ。」
「都市伝説を悪用する契約者を捕まえたり、暴れる都市伝説を倒す組織だね。
 都市伝説関係の事件はその人達にわりともみ消されているんだって。」
「ふ~ん。」
丁度ニュースが終わった。
カメラ目線でキャスターが満面の笑みを送る。
「そろそろ行くか。」
「良いよ。」
二人は某大手家電量販店に向かったのである。

それから一時間後、時間は昼の十三時。
「という訳でヤヌダ電気に到着だ。」
「やったー!」
真昼のヤヌダ電気には明日と恋路がやってきていた。
女性物の服がないのでそれもついでに買いに来た。
「買う物はたった一つ、電子レンジだ。それ以外は絶対に買わないぞ!」
「はーい。」
「買いたいと言っても駄目だからな!」
「はーい。」
「それじゃあ、三階の調理器具売り場に行きたいと思います。」
「はーい。」
「あのエレベーターで行くか……。」
二人はエレベーターに乗り込むと三階のボタンを押そうとする。
すると遠くから黒い服を着た男が走ってきた。
「おーい、まってくれ!」
黒ずくめの男など誰がどう見たって怪しい。
明日は迷うことなく閉ボタンを押した。
が、それが動かない。
それどころか逆に開ボタンが光り始めたのだ。
「おう、ありがとうよ。」
黒ずくめの男はエレベーターに乗り込んできた。
男は乗り込むと迷わず12階――――――屋上のボタンを押した。

ブォォォオォン……………
動き出したエレベーター

「貴方は、昨日会った人?」
先に口を開いたのは恋路だった。
「よう、偶然にもまたあったな。無事、逃げ切れたようでなにより。」
こともなげに言う黒い服の男。
「……あいつの知り合いか何かか?」
わずかに怒りを込めた声色で話す明日。
「待て待て、誤解してないか?昨日の事件なら違うんだ、あいつは組織に追われている。
 俺は事件の話を聞いてそこに駆けつけようとしていたところだったんだ。」
「もうちょっと早く着いていれば……。」
「ああ、済まなかった。」
申し訳なさそうな振りをしているが黒服の男の真意はわからない。
「ところで黒服さん、私達に一体何の用なんだい?」
黒服を睨む恋路。
「はっはっは、そんな怖い顔をしないでくれよお嬢さん。
 用件は単純だぜ。
 電子レンジで猫をチン!とその契約者、あんたらを組織に勧誘しに来た。」
「乗った!」
「ちょ、アスマ!組織には関わらない方が良いって!」
怒ったような声を恋路は上げる。
彼女は組織の危険性を知っているのだろう。
「そうかそうか、悩むだろうな……ってえ!?」
「いや、だってここで乗っておかないと危ないじゃん。」
「ま、まあそういえばそうだな。話が早いのは良いことだぜ。
 そこのお嬢さんはそれで良いのか?」
「いや、別にアスマに着いていこうと思ってたから良いんだけど……。
 ここまであっさり決められるとは……。」
不服そうな恋路。
しかしそんな恋路を無視して黒服は話を始める。
「じゃあ早速なんだけれども組織の人間として仕事をして欲しい。
 この電気量販店の屋上で『遊園地の人さらい』って都市伝説が確認されている。
 こいつらを倒してくれ、勿論やばくなったら俺も手伝う。」
「遊園地の人さらいって……子供でも攫っているのか?
 なら許せないな、すぐ行くよ。
 案内してくれ。」
黒服は驚いたような顔をする。
そして少し考えた後、恋路に聞く。
「なぁ、お前の契約者はいつもこんな様子なのか?
 悪い奴は容赦しない、なんて平気で言える人間なんて久しぶりに見た。」
「ええ、昨日契約したばっかりだけどハーメルンの笛吹き相手に向かって行こうとしたさ。
 友達が殺されたなら許せないって。」
「ふぅん、良いな、そういう奴は好きだぜ。」
そう言った黒服の顔は笑っている。
真意はわからない。
カチーン!
エレベーターが屋上に到達する。
「ほら、初仕事だ。期待しているぜ、明日と電子レンジ。」
「任された、行くぞ恋路。」
「仕方ないわね、まあアスマに着いていく予定しかないし……。
 良い電子レンジ買いなさいよ!」
猫を電子レンジでチン!とその契約者はエレベーターの扉を開けて屋上に向かっていった。
「おーい!コレ終わったら電子レンジ位買ってやるよ!
 あと既に一般人の退避は済ましているからSearch&Destroyで頼む!」
大声で二人の背中に声を掛ける黒服。
恋路が親指を立てて任せろ、というポーズを取っていた。
「いやぁ……、人の女ってのも中々妄想が膨らむなあ。」
黒服は髪をシュルシュルと伸ばしていた。


「おいおい、人が居ないな。」
「そうね、本当に普通の人達は逃げ出しちゃったみたい。」
家電量販店の屋上の遊園地を進む二人組。
屋上にある遊園地には本当に人っ子一人いない。
「電磁波で他の都市伝説の位置とか解らないの?」
明日が尋ねる。
「電子レンジにそんなこと出来るわけ無いよ。まあ携帯に電波送るくらいなら行けるかも……?」
「行けるのか?」
明日がそんなことを聞いた直後だった。
「キャッ!」
ガボ、と袋をかぶせられて中東風の男に捕まる恋路。
「ちょっと!離しなさいよ!」
どうやら袋をかぶせられると能力が使えなくなるらしい。
「待てお前ら!」
男に向けて殴りかかる明日。
契約したばかりで戦闘経験は無いが彼にもなんとなくで能力の使い方が解ってきていた。


「――――――1000w!」

バチィン!
明日は殴りつけるようにしながら電子レンジの能力を発動させる。
身体の小さい動物に対しては軽いマイクロ波照射で十分だが人間などにはそれでは致命傷にならない。
だから昨日恋路がハーメルンの笛吹きにしていたように直接マイクロ波を流し込まなくてはいけないのだ。
中東風の男は脳を焼かれたらしく、動きを止めてしまう。

「こういう感じか……。大丈夫か、恋路?」
「大丈夫大丈夫!良いから速く袋から出して~!」
もぞもぞ動く黒い袋。
しかし一瞬で女性を袋に入れるなんて凄い手際である。
そのうえ袋を結ぶひもの結び目もかなり固い。
「解ったわか………。」

コツ、コツ、コツ………
足音
明日が周囲を見渡すと何人もの中東風の男が明日達を取り囲んでいた。

「悪い、ちょっと手間取りそうだ。」
「え、何?敵ってまだ居るの?」
「ああ、ちょっと待ってろ!」
袋をそのままにして明日は走り始める。
まずは飛びかかってきた中東風の男にマイクロ波を、今度は照射する。
「――――――1200w、照射!」
「$#”%$#&#!!」
「ってうわ!危ない!」
照射したにも関わらず中東風の男は明日に突進してきた。
どうやら照射すると効果の発現までに少し時間差が有るらしい。
明日は男を蹴り飛ばすと直接マイクロ波を流し込む。
残りの男達もジワジワと距離を詰めてくる。
このままだと囲まれてしまう、そう思った明日はペットボトルを取り出す。
「こっそり家から持ってきた美味しい水だ!これでも喰らっとけ!」
蓋を開いて指でわずかに触れながら周りの男達に振りまく。
「そしてそれに向けて……照射!」


――――――ブゥン!


指で触れていたことによってマイクロ波を流し込まれて熱湯になった水が男達に降り注ぐ。
そしてそれに向けて電子レンジでチンを行えば……。


「―――――――――――chin!……だぜ。」


中東風の男達は次々に体表から焼けただれていく。
照射が終了し、男達が動けなくなったのを確認すると明日は恋路を袋から取り出した。
「おお、思ったより上手に使っているじゃない!」
「だろ?その辺りは完璧だ。」
二人でハイタッチ
黒服の所に戻ろうとした直後だった。


「タスケテ―!」


小さな子供の声。
明日がその方向を見ると子供が中東風の男に誘拐されかけていたのだ。
「っ!行くぞ恋路!」
「あいよっ!」
「待てぇ!そこのお前!」
中東風の男の前に立ちふさがる明日と恋路。
中東風の男は子供にナイフを突きつける。
人質にしているつもりなのだろう。
「動けばこのガキをコロス!大人しくシテイロ!」
「くそったれ………。」
「アスマ、構わないよ。あの子供だって本当に人質かどうかは解らない。
 こっそり照射すればすぐに倒せるって!」
「いや、子供を殺すわけにはいかない。」
「でもあいつに逃げられるよ?」
「だからって子供が死んで良い訳ないだろうが!」
不服そうな顔の恋路。
「ソノママ後ろに下がっていロ!」
中東風の男の言うとおりに明日と恋路は後ろに下がる。
ゆっくり下がる。
ゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくり
ゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくり
ゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくり
ゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくり
ゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくり
ゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくり

中東風の男は子供を連れてそのまま逃げようとする。
「待て!子供は置いていけ!」
明日が叫ぶ。
「イヤナコッタ!この距離じゃおいつけねえよバーカバーカ!」
中東風の男はすでに遠い距離にいる。
「うわ~ん!助けてお兄ちゃん!」
中東風の男は明日を騙したのだ。
子供を人質に使い、他人を騙し、子供を解放もしない。
次の瞬間、そんな人間に明日の怒りはいとも容易く最高潮に達した。
「――――――巫山戯るなよ?」

バチィン!
妙な音がしたかと思うと中東風の男が崩れ落ちる。
「ウワッ!頭が……!!!」
「おい、マイクロ波って物を暖めるだけじゃないんだぜ?
 脳の中に直接振動を叩き込むことも出来る……。
 もうお前は痛くて意識も保っていられない筈だ。」
もがく男。
ゆっくりと歩み寄り女の子を逃がした後に男に詰め寄る。
「子供を人質にとるような奴が簡単に殺して貰えると思うなよ……!」
「待ってアスマ!それ以上はやり過ぎだよ!
 そんな量の電波を扱ったら君の方が保たない!」
アスマを止める恋路。


「そうだ、そこから先はもうやる必要なんて無い。」

二人が後ろを振り返るとそこには黒服が居た。
何故か先程逃がした女の子も捕まっていた。
アスマは驚いてそちらの方に視線が釘付けになる。
「正義感が強いのは結構だがこの子供こそがその都市伝説の契約者だ。判断が甘いぜ。」
「え……、そんな。」
バチバチ言っていた辺りの空気が一気に静かになる。
「とりあえずこいつらは組織の方で預かっておく。
 処分は上の人間が決めるそうだ。
 とりあえずお前らを担当するのは俺になるはずだからよろしくな。
 疲れているだろ?あとはおれがやっておくからお前らは先に下に戻って休んでいろ。」
「でも……。」
「良いから良いから!さっさと行ってこい。」
「そうだよアスマ、無理しちゃ駄目だって!」
疲れた様子のアスマの手を引いて恋路は下の階に降りていった。

「さぁて……と。」
黒服は遊園地の誘拐犯達に向き直る。
「勿論、お前らを助ける気などさらさら無い。
 あいつを止めたのはこれ以上能力を使われると他の黒服にもあいつの能力がばれるからだ。
 どこであいつらが見ているか解らないからな。
 それじゃあ、さようならだ。」

バツン!

遊園地の誘拐犯達は簡単に引きちぎられて遊園地に真っ赤な血の花が二輪咲いた。
「あいつの都市伝説、伸ばせば面白いかも解らないな。
 出来る限り秘密にしておこう。」
そう言って黒服は下の階に戻っていったのであった。
この後、彼が大量の電子レンジを買わされて大変な目に遭うのだがそれはまた別のお話である。
【電磁人の韻律詩~2号~ セイギノミカタ  fin】


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