ドクター 14
「いよう、久し振りだな!」
やたらと陽気な男の声
しかも聞き覚えがある、本当に久し振りな声
「おいおい無視かよ? なんだぁ、いきなり大学辞めてどっか行っちまうから心配してたんだぜ?」
無視、徹底無視
「日本に帰ってきてるってのはなんとなく想像してたんだがなぁ」
並んで歩こうとする男を視界に入れないように足早に
「やっぱアレか? お前が付き合ってた、牧場の娘。あいつが死んだのが」
「そろそろ黙れコラ」
手にした買い物袋を地面に置き、スカートの下から抜き放ったトンファーの先端を突き付けるバイトちゃん
「ははは、怖い顔すんなよ。この話ぐらいしかお前の足を止めれそうな話題が無かったんだ」
全く物怖じした様子もなく、声を掛けてきた男は笑顔を浮かべている
「……こんな格好して、かつ体格も違うってのに何で俺だと判った」
「まあ何だ、かつての学友の面影があった事と、奇妙なガスを使うマッドガッサーの話を知ってた事が要因かな?」
「お前の気持ち悪い能力は健在な訳か」
「ああ、健在どころか着実に成長してる。*しにしか使えないお前のよりずっと有用だぜ?」
そう言うと男は、自分の耳を軽く指で突付く
「調べたい情報を頭ん中でセットしときゃ、それについての会話を自動で盗み聞きしてくれる……まさに名前通り『壁に耳あり』ってやつだ。情報は絞り込まないと五月蝿くて何もわからんのが難点だな」
「で、そんなお前が何でこんなとこにいるんだ。学校いた頃はイギリス行ってMI6に入るって息巻いてたくせに」
「入ったぜ?」
「……は?」
「ああ、勿論表のじゃない。こんな能力があるんだ、当然ながらジェームスやマイクロフトがいる方にな」
「……死者の生存説が都市伝説なら、架空の人物の実在説も都市伝説か」
「よっぽど存在が浸透していて、かつ実在を疑われない程度に人間じみてないとダメだがな。んで俺はお仕事でこの町に来たってわけだ。言ったろ、マッドガッサーの話を知ってるって」
彼はアメリカで現在で大暴れしているマッドガッサーの調査の過程として、どうもそれから分派したらしい存在がこの町にいると聞きつけてやってきたというのだ
「そしたらまあ、マッドガッサーのお仲間に『マリ・ヴェリテのベート』やら『魔女の一撃』やらいるわいるわ。こいつらの目的を探る必要が出てきたってわけよ。そしたらまあ……」
バイトちゃんの顔を見て、ぷるぷると震えながら笑いを堪える学友
「何、それマジ? 女体化ガスとか最初は冗談だと思ってたんだけどさぁ」
「見りゃあわかんだろ!? こちとらアメリカ敵に回してんだ、イギリスが増えたところで大差無ぇんだぞ!?」
「いやいや、冗談じみた状況で済んでるお前はマジで運が良い」
呼吸を整えて笑い声を抑えた学友は、少しだけ真面目な顔になる
「まだそんな数じゃないが、奴らに捕まって戻ってきてない被害者もいるようだ。性的な意味で食われてるならご愁傷様だが……『ベート』がいるとなると洒落にならん」
「食欲的な意味で喰われてる可能性もあるのか」
「噂話をまとめて推測するとだがな」
「お前はそれを助けに行ったりするのか?」
「んにゃ? 俺は諜報専門だし、随分と昔にうちのジェームズさんがこの町の組織……『首塚』だっけな? そことドンパチやってな。最終的にはそこのトップと飲み友達になったそうだけど、MI6はこの町に直接介入しないって約束しちゃったらしくてさ」
ぽりぽりと頭を掻きながら溜息を吐く学友
「そもそも、俺は諜報専門だっつーの。人間らしいレベルでは身体を鍛えてはいるけどな、都市伝説相手にどうこうできるレベルじゃない」
「だからって、放っておくわけにはいかんだろ!?」
「だーかーらー、それは俺の仕事じゃあない。情報は集められるが、実働戦力のコネは無いし。だからお前に話してんだよ」
「……はぁ?」
「マッドガッサー一味に関する情報をお前にだけ話す。組織連中に関わられちゃ公式な協力になっちまうからな……それが、俺ができる限り最大の協力だ。後はお前が自分でどうにかするなり、誰かに協力を仰ぐなりすればいいさ」
「……俺だって組織の一員なんだけどな。MI6なんかにいるなら知ってるだろ、『第三帝国』ぐらい」
「今のお前ははぐれ者なんだろ? お前んとこの上司、結構頑張って探してるみたいだぜ」
ぐ、と言葉に詰まるバイトちゃんの肩を、ぽんぽんと叩く学友
「早いとこ事を解決して帰ってやれよ。あとまあ一つ言いたい事があるんだが」
「ん、何だ?」
「俺はスカートの短いフリフリな日本のメイドより、古式ゆかしい英国メイドの方が好き……ってトンファー振り回すな!? 蹴るな! パンツ見えてんぞ!」
「その見た記憶ごとホルマリンプールに沈めてやろうじゃねぇか馬鹿野郎!」
やたらと陽気な男の声
しかも聞き覚えがある、本当に久し振りな声
「おいおい無視かよ? なんだぁ、いきなり大学辞めてどっか行っちまうから心配してたんだぜ?」
無視、徹底無視
「日本に帰ってきてるってのはなんとなく想像してたんだがなぁ」
並んで歩こうとする男を視界に入れないように足早に
「やっぱアレか? お前が付き合ってた、牧場の娘。あいつが死んだのが」
「そろそろ黙れコラ」
手にした買い物袋を地面に置き、スカートの下から抜き放ったトンファーの先端を突き付けるバイトちゃん
「ははは、怖い顔すんなよ。この話ぐらいしかお前の足を止めれそうな話題が無かったんだ」
全く物怖じした様子もなく、声を掛けてきた男は笑顔を浮かべている
「……こんな格好して、かつ体格も違うってのに何で俺だと判った」
「まあ何だ、かつての学友の面影があった事と、奇妙なガスを使うマッドガッサーの話を知ってた事が要因かな?」
「お前の気持ち悪い能力は健在な訳か」
「ああ、健在どころか着実に成長してる。*しにしか使えないお前のよりずっと有用だぜ?」
そう言うと男は、自分の耳を軽く指で突付く
「調べたい情報を頭ん中でセットしときゃ、それについての会話を自動で盗み聞きしてくれる……まさに名前通り『壁に耳あり』ってやつだ。情報は絞り込まないと五月蝿くて何もわからんのが難点だな」
「で、そんなお前が何でこんなとこにいるんだ。学校いた頃はイギリス行ってMI6に入るって息巻いてたくせに」
「入ったぜ?」
「……は?」
「ああ、勿論表のじゃない。こんな能力があるんだ、当然ながらジェームスやマイクロフトがいる方にな」
「……死者の生存説が都市伝説なら、架空の人物の実在説も都市伝説か」
「よっぽど存在が浸透していて、かつ実在を疑われない程度に人間じみてないとダメだがな。んで俺はお仕事でこの町に来たってわけだ。言ったろ、マッドガッサーの話を知ってるって」
彼はアメリカで現在で大暴れしているマッドガッサーの調査の過程として、どうもそれから分派したらしい存在がこの町にいると聞きつけてやってきたというのだ
「そしたらまあ、マッドガッサーのお仲間に『マリ・ヴェリテのベート』やら『魔女の一撃』やらいるわいるわ。こいつらの目的を探る必要が出てきたってわけよ。そしたらまあ……」
バイトちゃんの顔を見て、ぷるぷると震えながら笑いを堪える学友
「何、それマジ? 女体化ガスとか最初は冗談だと思ってたんだけどさぁ」
「見りゃあわかんだろ!? こちとらアメリカ敵に回してんだ、イギリスが増えたところで大差無ぇんだぞ!?」
「いやいや、冗談じみた状況で済んでるお前はマジで運が良い」
呼吸を整えて笑い声を抑えた学友は、少しだけ真面目な顔になる
「まだそんな数じゃないが、奴らに捕まって戻ってきてない被害者もいるようだ。性的な意味で食われてるならご愁傷様だが……『ベート』がいるとなると洒落にならん」
「食欲的な意味で喰われてる可能性もあるのか」
「噂話をまとめて推測するとだがな」
「お前はそれを助けに行ったりするのか?」
「んにゃ? 俺は諜報専門だし、随分と昔にうちのジェームズさんがこの町の組織……『首塚』だっけな? そことドンパチやってな。最終的にはそこのトップと飲み友達になったそうだけど、MI6はこの町に直接介入しないって約束しちゃったらしくてさ」
ぽりぽりと頭を掻きながら溜息を吐く学友
「そもそも、俺は諜報専門だっつーの。人間らしいレベルでは身体を鍛えてはいるけどな、都市伝説相手にどうこうできるレベルじゃない」
「だからって、放っておくわけにはいかんだろ!?」
「だーかーらー、それは俺の仕事じゃあない。情報は集められるが、実働戦力のコネは無いし。だからお前に話してんだよ」
「……はぁ?」
「マッドガッサー一味に関する情報をお前にだけ話す。組織連中に関わられちゃ公式な協力になっちまうからな……それが、俺ができる限り最大の協力だ。後はお前が自分でどうにかするなり、誰かに協力を仰ぐなりすればいいさ」
「……俺だって組織の一員なんだけどな。MI6なんかにいるなら知ってるだろ、『第三帝国』ぐらい」
「今のお前ははぐれ者なんだろ? お前んとこの上司、結構頑張って探してるみたいだぜ」
ぐ、と言葉に詰まるバイトちゃんの肩を、ぽんぽんと叩く学友
「早いとこ事を解決して帰ってやれよ。あとまあ一つ言いたい事があるんだが」
「ん、何だ?」
「俺はスカートの短いフリフリな日本のメイドより、古式ゆかしい英国メイドの方が好き……ってトンファー振り回すな!? 蹴るな! パンツ見えてんぞ!」
「その見た記憶ごとホルマリンプールに沈めてやろうじゃねぇか馬鹿野郎!」