ドクター39
喫茶店に佇む二人の美女メイド
通りすがりにこの光景を見れば、ここがメイド喫茶と勘違いするかもしれない
だが二人のメイドはウエイトレスではなく、客席に座っているのだ
「なあ、今回の俺のせい? つーか『アメリカ政府の陰謀論』に対抗できる奴なんてほとんどいねーっての」
「言いたい事はそれだけか。せめてお前が手の内晒してりゃ、マッドガッサーには迷惑掛かんなかったんだよ」
紅茶をティースプーンでかき回しながらぶつくさ語る旧友に、バイトちゃんは呆れたように返す
「そりゃ手の内晒さなかったのは悪かったが……そもそもお前、マッドガッサーぶっ殺すって乗り込んでったのに何で反応が真逆になってんだよ」
「あいつらが戦う理由が判れば、あんなに怒りゃしなかったんだよ」
「……そんだけか?」
「何が言いたい」
「『MI6』……つーかジェームズの旦那にも将門公から話があってな。マッドガッサーは手出ししないで見守る方向に話が進んでるんだが」
傍らに置いたアタッシュケースから、がさがさと写真付きの紙束と取り出す
「あの連中に関する資料をきっちり貰ってある。『スパニッシュフライ』の契約者、似てるよな」
「うるせぇ。関係無ぇよ」
不貞腐れたように吐き捨て、視線を逸らすバイトちゃん
「似てるだけでどうこう考えるか。死んだあいつにも、彼女にも失礼だろ」
「まーな。似てるってだけじゃな」
そう言って旧友は、紙束から一枚の写真を抜き取りテーブルの上に放る
「『アメリカ政府の陰謀論』にやられた関係でな、旦那に資料回してもらったんだが。奴の側近、この町にもいるようなアクの強い黒服連中の写真だ」
それを見たバイトちゃんの表情が、目に見えて強張る
「サングラスしてるし鮮明な写真じゃないが、こっちの黒人黒服の横にいる女。似てね?」
「……似てるだけの奴なら世界中にごまんといるだろ」
「ま、そりゃそうだ。とりあえずは、こんな話もある程度に聞き流してくれてかまわんさ」
そう言うと旧友は、程々に冷めた紅茶を一気に飲み干し
黒服女の写真以外を片付けると、さっさと席を立って会計を済ませる
「さて、ジェームズの旦那は将門公と飲み始めたらいつまで掛かるかわからんし。一足先にイギリスに帰るわ」
「向こうに、解毒の得意な都市伝説や契約者でもいるのか?」
「耳と尻尾ぐらいは、地元の魔女に頼めばどうにかなる。女体化の方は」
不意に、旧友の目が暗く濁る
「……まあ潜入調査に便利なんじゃねぇのかね、女の身体。男の口はベッドで軽くなるもんだし」
「……マッドガッサーに土下座すれば、治してくれそうだがな。俺はドクターの厳命でそれすらできねぇけど」
「男に戻った上で今回の件を思い出したら……俺、拳銃で脳天ぶち抜いて死にたくなりそうだし」
「お前、マジで何された」
「語ったらそれはそれで死にたくなりそうだから勘弁してくれ」
「そうか」
二人はそれ以上語る事は無く、会計を済ませて喫茶店を出る
「そういやお前、出国はどうすんだよ。パスポート使えねぇだろ」
「正規入国してねぇもん俺。バイクごと輸送機で来たから」
そう言うと、喫茶店の脇に停めてあった、メイド姿に似合わない大型バイクにひょいと跨りヘルメットを被る
「んじゃ、またな」
「二度と来んな」
それだけ言葉を交わすと、バイクはあっという間に走り去って行ってしまった
残されたのは、今は彼女となった彼から渡された一枚の写真だけ
「これがあいつだとしたら……形はどうあれ生きてんのか」
調査の結果が正しいのであれば、彼女は敵という事になる
再会を望むとしたら、それは正しいのか、そうでないのか
結論は、出なかった
通りすがりにこの光景を見れば、ここがメイド喫茶と勘違いするかもしれない
だが二人のメイドはウエイトレスではなく、客席に座っているのだ
「なあ、今回の俺のせい? つーか『アメリカ政府の陰謀論』に対抗できる奴なんてほとんどいねーっての」
「言いたい事はそれだけか。せめてお前が手の内晒してりゃ、マッドガッサーには迷惑掛かんなかったんだよ」
紅茶をティースプーンでかき回しながらぶつくさ語る旧友に、バイトちゃんは呆れたように返す
「そりゃ手の内晒さなかったのは悪かったが……そもそもお前、マッドガッサーぶっ殺すって乗り込んでったのに何で反応が真逆になってんだよ」
「あいつらが戦う理由が判れば、あんなに怒りゃしなかったんだよ」
「……そんだけか?」
「何が言いたい」
「『MI6』……つーかジェームズの旦那にも将門公から話があってな。マッドガッサーは手出ししないで見守る方向に話が進んでるんだが」
傍らに置いたアタッシュケースから、がさがさと写真付きの紙束と取り出す
「あの連中に関する資料をきっちり貰ってある。『スパニッシュフライ』の契約者、似てるよな」
「うるせぇ。関係無ぇよ」
不貞腐れたように吐き捨て、視線を逸らすバイトちゃん
「似てるだけでどうこう考えるか。死んだあいつにも、彼女にも失礼だろ」
「まーな。似てるってだけじゃな」
そう言って旧友は、紙束から一枚の写真を抜き取りテーブルの上に放る
「『アメリカ政府の陰謀論』にやられた関係でな、旦那に資料回してもらったんだが。奴の側近、この町にもいるようなアクの強い黒服連中の写真だ」
それを見たバイトちゃんの表情が、目に見えて強張る
「サングラスしてるし鮮明な写真じゃないが、こっちの黒人黒服の横にいる女。似てね?」
「……似てるだけの奴なら世界中にごまんといるだろ」
「ま、そりゃそうだ。とりあえずは、こんな話もある程度に聞き流してくれてかまわんさ」
そう言うと旧友は、程々に冷めた紅茶を一気に飲み干し
黒服女の写真以外を片付けると、さっさと席を立って会計を済ませる
「さて、ジェームズの旦那は将門公と飲み始めたらいつまで掛かるかわからんし。一足先にイギリスに帰るわ」
「向こうに、解毒の得意な都市伝説や契約者でもいるのか?」
「耳と尻尾ぐらいは、地元の魔女に頼めばどうにかなる。女体化の方は」
不意に、旧友の目が暗く濁る
「……まあ潜入調査に便利なんじゃねぇのかね、女の身体。男の口はベッドで軽くなるもんだし」
「……マッドガッサーに土下座すれば、治してくれそうだがな。俺はドクターの厳命でそれすらできねぇけど」
「男に戻った上で今回の件を思い出したら……俺、拳銃で脳天ぶち抜いて死にたくなりそうだし」
「お前、マジで何された」
「語ったらそれはそれで死にたくなりそうだから勘弁してくれ」
「そうか」
二人はそれ以上語る事は無く、会計を済ませて喫茶店を出る
「そういやお前、出国はどうすんだよ。パスポート使えねぇだろ」
「正規入国してねぇもん俺。バイクごと輸送機で来たから」
そう言うと、喫茶店の脇に停めてあった、メイド姿に似合わない大型バイクにひょいと跨りヘルメットを被る
「んじゃ、またな」
「二度と来んな」
それだけ言葉を交わすと、バイクはあっという間に走り去って行ってしまった
残されたのは、今は彼女となった彼から渡された一枚の写真だけ
「これがあいつだとしたら……形はどうあれ生きてんのか」
調査の結果が正しいのであれば、彼女は敵という事になる
再会を望むとしたら、それは正しいのか、そうでないのか
結論は、出なかった
―――
わざわざそう出来るように加工されたスカートから、するりと伸びた尻尾がぴこぴこ揺れる
信号待ちで停めた旧友のバイクの横に、やけに大きな真紅のバイクと、それに跨る巨漢の男が停まる
「すっげ、見た事無い型だな……フルカスタムか?」
「おい」
小声で呟いたつもりだったのだが、聞こえたのだろうか
「あ、すんません。珍しいバイクだったのでつい」
「貴様、契約者だな?」
雄々しい、そして殺気をたっぷりと練り込んだ重厚な声
頭に危険を知らせる警報が最大級で鳴り響き、旧友は信号を無視して即座にバイクを急発進させる
それと同時に、粉々になったナンバープレートとテールランプが置いてきぼりになってアスファルトの上にばら撒かれた
「ちょ、やべ、何今の――」
「一撃で走れなくしてやるつもりだったが、なかなかやるな」
スタートはこちらが早く道路交通法ガン無視で違法改造限界の速度で走っているというのに、赤いバイクの男は悠々と真横に現れていた
その手には、この速度では持っているだけで転倒しそうな長い柄の武器が握られており
「何それ、その武器……ヤバくね? この町に蜻蛉切持ってる奴がいるって聞いたけど……こいつは武器だけの契約者ってわけじゃなさそうだよな……ていう事は」
方天画戟と呼ばれる造形のそれを持つ者は
赤兎と刻まれた真紅のバイクを駆るその漢は
「りょ、りょ……呂布だ――――――っ!?」
「正確には、その契約者だ。もっとも……その契約者は既に身体も意識も俺に明け渡しているがな!」
言うが早いか、旧友のバイクの後輪があっさり真っ二つにされ、バイクは転倒し破片をばら撒きながらスクラップとなる
勢い良く空中へ投げ出された旧友を、方天画戟の柄が貫いた
それは正確にスカートの下を潜り抜け、背中を通って襟元にまで届いており、四肢をだらしなく垂れ下げた状態を片手で支えられていた
「し……死んだ……と……思った……」
「俺はまだこの町には不慣れでな。色々と聞かせて貰いたい事がある」
「いや武力行使とかじゃなくて素直に言葉で頼めよ!?」
「逃げるからだ」
「逃げる前から殺気ぷんぷんだったじゃねぇか!?」
「黙れ、捨てるぞ」
先程から全く減速する気配の無い、景色もアスファルトももの凄い勢いで後方にすっ飛んでいく現状を打破する方法は全く無かった
「……で、何を知りたいのでございましょうか」
「平将門、禿と呼ばれる漢、寺生まれ……つい今し方、蜻蛉切の話も出たな。本多忠勝縁の者がいるならそれも良い」
呂布はその表情を変える事無くこう告げる
「この町で戦うのが俺に課せられた仕事だ。俺の武を示せる強き者の元なら何処でも構わぬ、連れていけ。それが出来ぬなら、そ奴らに出会えるまでこの町に滞在できるよう準備を整えろ」
獣耳メイドとしての初仕事
それは武人の傍仕えとなったのだった
信号待ちで停めた旧友のバイクの横に、やけに大きな真紅のバイクと、それに跨る巨漢の男が停まる
「すっげ、見た事無い型だな……フルカスタムか?」
「おい」
小声で呟いたつもりだったのだが、聞こえたのだろうか
「あ、すんません。珍しいバイクだったのでつい」
「貴様、契約者だな?」
雄々しい、そして殺気をたっぷりと練り込んだ重厚な声
頭に危険を知らせる警報が最大級で鳴り響き、旧友は信号を無視して即座にバイクを急発進させる
それと同時に、粉々になったナンバープレートとテールランプが置いてきぼりになってアスファルトの上にばら撒かれた
「ちょ、やべ、何今の――」
「一撃で走れなくしてやるつもりだったが、なかなかやるな」
スタートはこちらが早く道路交通法ガン無視で違法改造限界の速度で走っているというのに、赤いバイクの男は悠々と真横に現れていた
その手には、この速度では持っているだけで転倒しそうな長い柄の武器が握られており
「何それ、その武器……ヤバくね? この町に蜻蛉切持ってる奴がいるって聞いたけど……こいつは武器だけの契約者ってわけじゃなさそうだよな……ていう事は」
方天画戟と呼ばれる造形のそれを持つ者は
赤兎と刻まれた真紅のバイクを駆るその漢は
「りょ、りょ……呂布だ――――――っ!?」
「正確には、その契約者だ。もっとも……その契約者は既に身体も意識も俺に明け渡しているがな!」
言うが早いか、旧友のバイクの後輪があっさり真っ二つにされ、バイクは転倒し破片をばら撒きながらスクラップとなる
勢い良く空中へ投げ出された旧友を、方天画戟の柄が貫いた
それは正確にスカートの下を潜り抜け、背中を通って襟元にまで届いており、四肢をだらしなく垂れ下げた状態を片手で支えられていた
「し……死んだ……と……思った……」
「俺はまだこの町には不慣れでな。色々と聞かせて貰いたい事がある」
「いや武力行使とかじゃなくて素直に言葉で頼めよ!?」
「逃げるからだ」
「逃げる前から殺気ぷんぷんだったじゃねぇか!?」
「黙れ、捨てるぞ」
先程から全く減速する気配の無い、景色もアスファルトももの凄い勢いで後方にすっ飛んでいく現状を打破する方法は全く無かった
「……で、何を知りたいのでございましょうか」
「平将門、禿と呼ばれる漢、寺生まれ……つい今し方、蜻蛉切の話も出たな。本多忠勝縁の者がいるならそれも良い」
呂布はその表情を変える事無くこう告げる
「この町で戦うのが俺に課せられた仕事だ。俺の武を示せる強き者の元なら何処でも構わぬ、連れていけ。それが出来ぬなら、そ奴らに出会えるまでこの町に滞在できるよう準備を整えろ」
獣耳メイドとしての初仕事
それは武人の傍仕えとなったのだった