【電磁人の韻律詩11号~とある疑似科学の初詣~】
人間が三人、炬燵の中に入っている。
炬燵に電源は入っていない。
「遠赤外線効果で骨の芯から温まっているねえ……。」
「姉さん、マイクロ波は遠赤外線じゃないです。」
「まぁまぁ、細かいことは良いじゃないかアスマ。」
「そうだそうだ!細かいことを気にするなんて男らしくないぞ!」
「っもぉ~……。あんだよぉ………。」
炬燵に電源は入っていない。
「遠赤外線効果で骨の芯から温まっているねえ……。」
「姉さん、マイクロ波は遠赤外線じゃないです。」
「まぁまぁ、細かいことは良いじゃないかアスマ。」
「そうだそうだ!細かいことを気にするなんて男らしくないぞ!」
「っもぉ~……。あんだよぉ………。」
電源が入っていない炬燵で温まる三人。
勿論、人肌で温まっているわけではない。
恋路が都市伝説の能力を生かして炬燵の中に居る明日真と明日晶を暖めていたのだ。
勿論、人肌で温まっているわけではない。
恋路が都市伝説の能力を生かして炬燵の中に居る明日真と明日晶を暖めていたのだ。
「しかし恋路ちゃんのおかげで暖房器具にお金使わないで済むねえ、ありがたいねえ。」
手を合わせて恋路を拝む晶。
「いえいえ、私達家族じゃないですか!当然ですよ!」
慌ててそんな晶を止める恋路。
「泣かせるねえ恋路ちゃん。この穀潰しの弟に聞かせてやりたいよ。」
この会話を聞いて憮然としている真。
「悪かったな、俺だけ役立たずで!」
「はっはっは、そこまで怒るこたぁ無いだろ。」
手を合わせて恋路を拝む晶。
「いえいえ、私達家族じゃないですか!当然ですよ!」
慌ててそんな晶を止める恋路。
「泣かせるねえ恋路ちゃん。この穀潰しの弟に聞かせてやりたいよ。」
この会話を聞いて憮然としている真。
「悪かったな、俺だけ役立たずで!」
「はっはっは、そこまで怒るこたぁ無いだろ。」
明日家においては学校町の一般的な正月とは異なり大変に平和的な寝正月が進んでいた。
明日家の人間は普段アクティブな分、家ではだらしないらしい。
明日家の人間は普段アクティブな分、家ではだらしないらしい。
「ところで姉さんは何時帰るのさ?どうせ年末年始過ごしてアメリカに戻るんでしょう?」
「あ?三ヶ日終わるまでには家を出るつもりだよ。私だって何時までも家に居たらあんた達に悪いし。」
「それは残念ですね。」
恋路が本当に残念そうに言う。
その言葉を聞いて明日真は嫌そうな顔をしているが、
どうやら彼は恋路の顔が大変嬉しそうなことに気付いていないようだ。
「仮面ライダーは世界の平和を守る為に忙しいのである。」
まじめくさった顔で話す晶。
「仮面ライダーって柄でもないでしょう。精々ゴーストライダー。」
「なんだ、お父さんを殺す気か?」
「居ようと居まいと一緒だよ、あんな奴。」
「あ、良かったらお茶でも淹れてきましょうか?」
「頼んだ恋路。」
「頼んだよ恋路ちゃん。」
炬燵を出て台所に向かう恋路。
「あ?三ヶ日終わるまでには家を出るつもりだよ。私だって何時までも家に居たらあんた達に悪いし。」
「それは残念ですね。」
恋路が本当に残念そうに言う。
その言葉を聞いて明日真は嫌そうな顔をしているが、
どうやら彼は恋路の顔が大変嬉しそうなことに気付いていないようだ。
「仮面ライダーは世界の平和を守る為に忙しいのである。」
まじめくさった顔で話す晶。
「仮面ライダーって柄でもないでしょう。精々ゴーストライダー。」
「なんだ、お父さんを殺す気か?」
「居ようと居まいと一緒だよ、あんな奴。」
「あ、良かったらお茶でも淹れてきましょうか?」
「頼んだ恋路。」
「頼んだよ恋路ちゃん。」
炬燵を出て台所に向かう恋路。
「良い子だねえ、本当に良い子だ。あの子が居れば私は必要ないよね。
あんなに良い子だから都市伝説に飲み込まれたんだろうかね?」
その後ろ姿を見詰めながら明日晶はポツリと呟いた。
「……………。」
明日真は何も言わない、言えない。
黙って炬燵の電源を入れた。
「都市伝説なんて話には聞いていたけどまさか目の前に現れるとはおもわなんだ。」
「姉さん、本当に聞いていただけなの?やたら詳しいよね。」
明日晶は一瞬驚いたような顔をすると炬燵の出力を弱くした。
あんなに良い子だから都市伝説に飲み込まれたんだろうかね?」
その後ろ姿を見詰めながら明日晶はポツリと呟いた。
「……………。」
明日真は何も言わない、言えない。
黙って炬燵の電源を入れた。
「都市伝説なんて話には聞いていたけどまさか目の前に現れるとはおもわなんだ。」
「姉さん、本当に聞いていただけなの?やたら詳しいよね。」
明日晶は一瞬驚いたような顔をすると炬燵の出力を弱くした。
「知り合いに都市伝説関連の人間が居てね、最初は超能力かと思っていた。
始めて知ったときにはビックリしたっけなあ……。」
「ふぅん………。」
明日真は気の抜けた声でそう言うと炬燵を抜け出た。
「姉さん。」
「どうした?」
「今年は初詣にでも行こうよ。三人で。」
「え、……どうしよう。」
弟からの急な誘いに明日晶は戸惑った。
馴れ馴れしい癖に急に踏み込まれると困惑する。
受け身になれない性格が彼女を恋愛ごとから遠ざける原因であったりもする。
「お茶入りましたよー。」
その時、丁度恋路が台所から緑茶を持ってくる。
「ありがとう、恋路ちゃん。」
明日晶はそれを詰まった言葉ごとゴクゴクと飲み干す。
始めて知ったときにはビックリしたっけなあ……。」
「ふぅん………。」
明日真は気の抜けた声でそう言うと炬燵を抜け出た。
「姉さん。」
「どうした?」
「今年は初詣にでも行こうよ。三人で。」
「え、……どうしよう。」
弟からの急な誘いに明日晶は戸惑った。
馴れ馴れしい癖に急に踏み込まれると困惑する。
受け身になれない性格が彼女を恋愛ごとから遠ざける原因であったりもする。
「お茶入りましたよー。」
その時、丁度恋路が台所から緑茶を持ってくる。
「ありがとう、恋路ちゃん。」
明日晶はそれを詰まった言葉ごとゴクゴクと飲み干す。
「………決めた、私もうアメリカに帰るわ。
初詣くらい二人で行ってきなよ。」
「え、待てよ姉さん。」
唐突な申し出に驚く真。
「何かあったのアスマ?」
真にひそひそと尋ねる恋路。
頭をかきながら恥ずかしそうに晶は言う。
「いやね、恋路ちゃんが居たら真も寂しくないだろうと思ってさ。
幸せにしてやれよ、明日真。また日本に遊びに来たときには私の好きな水飴を用意して待っていてくれ。」
「ちょ………。」
明日真がそう言いかけた瞬間に明日晶は家を出た。
「やっぱ、駄目だね。家族とか、一緒に、とか、あたしにゃ今更出来ないよ。怖い。
あの子の方がよっぽど家族じゃないか。」
誰に言うわけでもなくそれだけ呟いて笑う。
彼女は他ならぬ自分自身をあざ笑う。
財布とバイクの鍵だけはポケットにしまっていたらしく彼女はすぐにハヤブサにエンジンをかけた。
初詣くらい二人で行ってきなよ。」
「え、待てよ姉さん。」
唐突な申し出に驚く真。
「何かあったのアスマ?」
真にひそひそと尋ねる恋路。
頭をかきながら恥ずかしそうに晶は言う。
「いやね、恋路ちゃんが居たら真も寂しくないだろうと思ってさ。
幸せにしてやれよ、明日真。また日本に遊びに来たときには私の好きな水飴を用意して待っていてくれ。」
「ちょ………。」
明日真がそう言いかけた瞬間に明日晶は家を出た。
「やっぱ、駄目だね。家族とか、一緒に、とか、あたしにゃ今更出来ないよ。怖い。
あの子の方がよっぽど家族じゃないか。」
誰に言うわけでもなくそれだけ呟いて笑う。
彼女は他ならぬ自分自身をあざ笑う。
財布とバイクの鍵だけはポケットにしまっていたらしく彼女はすぐにハヤブサにエンジンをかけた。
「待てよ姉さん!」
すかさず炬燵から出てきて姉を追いかける明日真。
「お姉様、家の荷物は!?」
送り出す気満々の恋路。
「適当に処分しておいてくれ!じゃあな!」
すかさず炬燵から出てきて姉を追いかける明日真。
「お姉様、家の荷物は!?」
送り出す気満々の恋路。
「適当に処分しておいてくれ!じゃあな!」
ブォオオオオオオン………
青いハヤブサはあっという間に遠くに行ってしまっていた。
青いハヤブサはあっという間に遠くに行ってしまっていた。
「行っちまった……。」
「やっと行ったか……。」
恋路が小さく呟いたことに明日真は気付かない。
恋路は肩の力が抜けてよろけた。
「おっと、大丈夫か?」
「いや、少し無理してたみたいだね。そういえば初詣どうするの?」
「お前一人の身体じゃなかろうに……、行けるわけがないだろう?」
「あはは、有らぬ誤解を受けるよ、その発言は。」
「え、う、うう………。
いやいやお前が体調崩すとこっちにも来るんだよ、なんか。」
顔を真っ赤にし始める真。
「冗談だよ、別に初詣くらい良いじゃないか。私は興味あるなあ。」
「いきなり倒れるなよ?」
心配する真。
「そうしたら負ぶって貰うから良いもん。」
そんな彼を余所に悪戯っぽく恋路は笑っていた。
「しかたねえ、行くぞ。」
二人は神社の初詣に向かうことにした。
「やっと行ったか……。」
恋路が小さく呟いたことに明日真は気付かない。
恋路は肩の力が抜けてよろけた。
「おっと、大丈夫か?」
「いや、少し無理してたみたいだね。そういえば初詣どうするの?」
「お前一人の身体じゃなかろうに……、行けるわけがないだろう?」
「あはは、有らぬ誤解を受けるよ、その発言は。」
「え、う、うう………。
いやいやお前が体調崩すとこっちにも来るんだよ、なんか。」
顔を真っ赤にし始める真。
「冗談だよ、別に初詣くらい良いじゃないか。私は興味あるなあ。」
「いきなり倒れるなよ?」
心配する真。
「そうしたら負ぶって貰うから良いもん。」
そんな彼を余所に悪戯っぽく恋路は笑っていた。
「しかたねえ、行くぞ。」
二人は神社の初詣に向かうことにした。
「なあアスマくん。」
それから数分後、振り袖を着た恋路といつも通りの服装の明日はバイクで神社に向かっていた。
「なんだ?」
「道路がここまで混んでいるとは聞いていないぞ。」
またも二人組は渋滞に巻き込まれていた。
「当たり前だろ、初詣だぞ?渋滞の一つや二つ、ない方がおかしい。」
「待つの嫌だ~!」
「……ソウイウだろうなあと思って今回はバイク、じゃなくてスク―ターを変えてみた。」
「そういえば今回はちょっと小さいね。あと形も面白いなあ………。」
それから数分後、振り袖を着た恋路といつも通りの服装の明日はバイクで神社に向かっていた。
「なんだ?」
「道路がここまで混んでいるとは聞いていないぞ。」
またも二人組は渋滞に巻き込まれていた。
「当たり前だろ、初詣だぞ?渋滞の一つや二つ、ない方がおかしい。」
「待つの嫌だ~!」
「……ソウイウだろうなあと思って今回はバイク、じゃなくてスク―ターを変えてみた。」
「そういえば今回はちょっと小さいね。あと形も面白いなあ………。」
面白い、その言葉を聞いた瞬間に明日真の表情が変わった。
「面白い………?
面白いてなんだ面白いて……。
ベスパだぞ、天下のベスパLX125だぞ?
伝統のスチールモノコックボディだぞ?
ローマの休日もびっくりのお洒落っぷりだろうが!!
それをなんだ!面白いとは!
馬鹿にするにも程がある!
良いか!
古来からベスパというものはお洒落でアーバンで知性的な男の必須アイテムだったんだよ!
それを面白い一言で済まそうとは良い根性しているじゃないか!
良いのか?
お前そんな適当なこと言っていたらマグナ50乗せるぞ!
遅いぞ!?
その上デザインとサイズ噛み合ってないから物凄く恥ずかしいぞ!?
ス―パーカブなんかはレトロモダンな美しさがあるがあれにはそれすらない!
性能がイマイチとか言う人が居てもベスパはベスパはベスパなんだい!!!
……まあその割にビンテージ仕様じゃないとか突っ込みたいことは多々あるんだけどさ。」
一息に喋り終えて肩で息をする明日。
恋路は寝てばかりのパンダを見るような目でそれを見ている。
「悪いが……、私にも解る言葉で話してくれよ。」
「うん、ごめん。とりあえず渋滞を躱して神社に行くくらいは楽勝って言いたかっただけなんだ。」
面白いてなんだ面白いて……。
ベスパだぞ、天下のベスパLX125だぞ?
伝統のスチールモノコックボディだぞ?
ローマの休日もびっくりのお洒落っぷりだろうが!!
それをなんだ!面白いとは!
馬鹿にするにも程がある!
良いか!
古来からベスパというものはお洒落でアーバンで知性的な男の必須アイテムだったんだよ!
それを面白い一言で済まそうとは良い根性しているじゃないか!
良いのか?
お前そんな適当なこと言っていたらマグナ50乗せるぞ!
遅いぞ!?
その上デザインとサイズ噛み合ってないから物凄く恥ずかしいぞ!?
ス―パーカブなんかはレトロモダンな美しさがあるがあれにはそれすらない!
性能がイマイチとか言う人が居てもベスパはベスパはベスパなんだい!!!
……まあその割にビンテージ仕様じゃないとか突っ込みたいことは多々あるんだけどさ。」
一息に喋り終えて肩で息をする明日。
恋路は寝てばかりのパンダを見るような目でそれを見ている。
「悪いが……、私にも解る言葉で話してくれよ。」
「うん、ごめん。とりあえず渋滞を躱して神社に行くくらいは楽勝って言いたかっただけなんだ。」
数分後、二人は神社に到着した。
「わーい!お店回ろうよ!」
恋路は動きにくい振り袖ではしゃいで………
「アベシ!」
転んだ。
「ったく……。ほら立ち上がって。」
恋路の腕を掴んで抱き上げる明日。
「まずは神社にお参りからな。」
「えー……。ていうかこれ立ち上がってないよね。」
「良いからついてきなさい。」
まるで保護者のような口調で恋路に言いつける明日。
「はーい。」
まるで子供みたいに恋路もそんな明日についていったのであった。
恋路は動きにくい振り袖ではしゃいで………
「アベシ!」
転んだ。
「ったく……。ほら立ち上がって。」
恋路の腕を掴んで抱き上げる明日。
「まずは神社にお参りからな。」
「えー……。ていうかこれ立ち上がってないよね。」
「良いからついてきなさい。」
まるで保護者のような口調で恋路に言いつける明日。
「はーい。」
まるで子供みたいに恋路もそんな明日についていったのであった。
【電磁人の韻律詩11号~とある疑似科学の初詣~ fin】