「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 電子レンジで猫をチン!-14

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【電磁人の韻律詩14~星待ち人~】

ガチャリ

病室のドアが開いたのと明日真がベッドから起き上がったのは丁度同じタイミングだった。
「はろー、ご機嫌如何でしょう?明日真さん。」
ドアを開けたのはハーメルンの笛吹き、メル。
「10000w――――――、喰らえ!」
パァン!
暖められる間もなく水蒸気が沸騰し、爆発する。
可愛らしい少女の頭部だって水が入っている、それは同じ。
病室に真っ赤な血と脳漿少々が流れる。
「やれやれ、マスターの言うとおり乱暴な方だ……。」
病室のドアが再び開いて先程とは別の少女が現れた。
「悪人を見逃す道理はない。」
「善悪など主観の問題でしょう。」
パァン!
またもはじけ飛ぶ少女。
「これでは話が進まない。とりあえずこれを見て下さい。」
ドアの向こうから現れた少年は一葉の写真をとりだした。
「これは……!」
「そうなんですよ、貴方の恋人は私達が拉致させて頂きました。」
「巫山戯るなよ!」
ベッドから飛び起きてメルに掴みかかる明日。
パチィン!
メルがその腕を軽く叩く。
「………っくううう!?」
「まだ怪我治って無いじゃないですか。」
「五月蠅い!お前を倒して今すぐ恋路を返して貰う!」
「私を倒してもマスターも出てこないし恋路さんも帰って来ません。」
「じゃあなんだ?何が望みなんだ?」
「マスターからの伝言は簡単な物でして……。」
「ああ。さっさと言え。」

「正義の味方をやめて組織の犬として恋人と平和に暮らすならば許してやろう。だそうです。」

「……はぁ?」
「いや、お気持ちは解りますが私只のメッセンジャー。ナニモシラナイ。
 黒服に連絡なんてしたら人質がどうなっても知らないぞーイッテタ。」」
「何故急にカタコトになるんだ。あと俺を組織から裏切らせるならまだしも従えってなんだよ。」
「ワタシシラナイ、ハーメルンノフエフキウソツカナイ。」
「巫山戯てやがる……。」
「え、ちょ、待て!?まだ私を破裂させる気!?
 あれ結構痛いんだぞバカヤロ………。」
メルがの顔に苦悶の表情が浮かぶ。
それからきっかり5秒後
パァン
一瞬だけ素の口調に戻ったメルを蒸発させると明日は恋路の写真を手にとってもう一度眺めた。
腕はまだ治りきっていない。
彼が右腕を完膚無きまでに破壊されたのは本当に一瞬の出来事だった。
彼は今も思い出す。
空間すら裂いてハリネズミの化け物でも現れたかのような情景を。
あれもまた都市伝説の類らしい。
「一体なんの都市伝説が刀剣を自在に操る能力になるんだ?」
戻るかどうか解らない右腕を見詰めながら彼は呟いた。


「真君、元気してたかな?」
「太宰さん、本当にマメに来てくれますね。」
昼過ぎくらいになると彼の病室に再び太宰紫がやってきた。
「ギブスって何時外れるんですかこれ?」
愛する人が悪人に人質に取られてしまった。
正義の味方は其の身体の動く限りに於いてこれを助けなくてはならない。
「うーん……、骨はそれ程ダメージもないし……。
 明後日にはとれるんじゃないかな?」
太宰は明日の思い詰めた表情には気付かない。
甘い。
目の前の少年に微細ながらも現れた心の変化に気付けない。
彼女も頭は回るのだろうが人の感情には疎いらしい。
「そうですか……。」
「あら?そこのバッグは貴方と契約している都市伝説が?」
太宰が病室の隅に置いたバッグを指さす。
先程、メルがこっそり置いていった物である。
「ああ、そうなんだ。」
ピッタリと貼り付けた笑顔で笑う。
「仲直り出来たのか。」
「ああ。」
「それは幸いだ。」
「そうだ、太宰さん。俺コーヒー飲みたいんだけど奢ってくれる?」
「良かろう、快気祝いだ。」
そう言うと太宰は病室から出て行った。
足音は遠く彼方に響いて消える。
明日真はバッグの中身を確認した。
変身スーツ一式だ。
恐らくあのハーメルンの笛吹きが彼の家に勝手に踏み込んだに違いない。
手紙までついていた。

「君の彼女の身柄は預かった。
 返して欲しくば今晩11時に廃工場にでもどこにでも来るといい。
 ちなみに君の彼女だが人質ライフをそこそこ楽しんでいる。
 つーか強いなあいつ。
 殴り合いを挑んだら瞬殺されたわ。
 だからお前と俺の一対一だ。
 楽しみにしているぜ-。」

本当に、巫山戯ている。


其の夜、彼は病院を抜け出した。
バイクはスペアの鍵を持っていたのでそれをつかえば工場へ向かうのも容易なことだった。


廃工場に辿り着くと明日は痛む右腕を引きずりながら指定された場所に向かう。
「そういえばここには人食い工場なんて物が有ったような……。」
そんな場所で待ち合わせだなんて果たして大丈夫なのだろうか?
明日真は不安を感じていた。
「君の案ずる程度のこと、既に私が対策している。」
「――――――!」
真っ赤な外套。
真っ赤なシャツ。
剣のように輝く銀色のネクタイ。
槍の穂先をそのまま刃にしたような短剣。
そして、狂っているとしか形容できない笑顔。
「右腕、手ひどくやられたようだね。
 しかし君は幸せだ。
 生きている。」
響き渡り浸透する低く艶やかな声。
それはたとえるなら地獄の釜の上澄み。
それはたとえるなら天国の杯の澱。

「ハーメルンの………笛吹き!」
「懐かしいな、我が友よ。」
戯けて笑う、赤い悪魔。
「恋路、恋路は無事なんだろうな!」
「勿論、ただし君が死ねばどうなるかは解らない。」
赤い悪魔、ハーメルンの笛吹き、上田明也は不敵に笑った。
「アスマー!」
屋根の上から声が響く。
「恋路ッ!」
廃工場の屋根の上に一人の女性が居た。
間違いない、彼女は上田に攫われていた恋路だ。
今は目隠しをされて身体をロープでグルグル巻きに縛られている。
下手に暴れられたら上田では敵わないのだから当然だ。

「アスマ!」
「恋路!」
「アスマ!」
「恋路!」
「あの……、お前ら?」
「今助けに行くからな!」
「待ってるからねー!」
「あのさあ………。」
あまりにもいきなり甘い雰囲気になっているので困ったらしい。
上田が遠慮気味に声をかける。
無視された。
「お前ら俺を倒してからイチャイチャしやがれ!」
そして怒る上田。
「さぁ、ハーメルンの笛吹き!勝負だ!」
「こ、い、つ、ら………。」
怒りでプルプルと震える上田明也。

「そっちが来ないならこっちからいくぞ!」
そんな上田を完全に無視して明日が右手を構える。
攻撃方法はたった一つ。
「アスマ、そいつ電子レンジの攻撃を反射するよ!」
「何!?」
自分が負けた時のことを思い出して明日に警告する恋路。
すかさず攻撃をやめる明日。
上田が小型の銃を取り出して明日を撃とうとしたがそれは流石に明日のマイクロ波に妨害された。
「チッ、余計なことしやがって。」
忌々しげに呟く上田。
しかしその顔は笑っている。
彼が素早く袖から取り出したのは水がたっぷり入ったペットボトル。
彼はそれを上に投げ上げた。
「―――――来い、蜻蛉切。」
ペットボトルが宙に浮く刹那、彼が蜻蛉切を取り出す。
スパァン!
ペットボトルを蜻蛉切が切断したのと明日真が上田の狙いに気付いたのはほぼ同時だった。
「おらあああああ!」
未だ宙に浮いているペットボトルを思い切り投げつける上田。
あまりに綺麗に、しかも一瞬で切断されたが故にペットボトルはまだくっついている。
「やば……!」
それに気付いてペットボトルを躱そうとするが反応が遅れる明日。
明日に激しくぶつかるペットボトル。
それは真っ二つに割れて内側から水を周囲にぶちまける。

「くそっ!」
目に入った水を拭き取ると辺りを見回す明日。
彼の衣服は真冬の夜中だというのにぐっしょりと濡れてしまった。
「それならば厄介なマイクロ波攻撃も使えないだろう?」
「やられた……。」
冷えた彼の身体に北風が突き刺さる。
酷く寒い。
「それじゃあさようならだ正義の味方。
 なぁに、殺しはしない。戦闘者として再起不能になって貰うだけだ。
 目が良いか?それとも四肢が良いか?
 どれか一つの機能を潰せば」
しかし寒いのはそんな理由だけではない。
彼の目の前に居る男、上田明也。
この理解不能の殺人鬼が本当の原因だ。
理解不能。
既知外。
アンノウン。
明日を本当に憎んでいたり殺したいだけならばもっと方法はあった。
なのに彼はわざわざ針の穴を通すかのように正面から小細工を仕掛けて明日を倒しに来る。
この謎の存在に明日真は自分の今まで信じていた物をひどく揺さぶられ始めているような気がした。

「俺の契約した都市伝説はハーメルンの笛吹き、赤い部屋、蜻蛉切。
 なかなかどうして破格だろう?
 割と巨大な都市伝説を三重契約だなんて。
 まあ、あと一つ有るんだがそれも今となってはどうでも良いや。」
上田明也は服からナイフを取り出して明日に投げつける。
狙いはまっすぐ明日の足だ。
これくらいだったら服の下の防刃繊維で防げると明日は思ったので躱さずに突っ込む。
彼が真っ直ぐに突っ込んでくると上田は思っていなかったらしい。
彼は不覚にも明日の接近を許してしまった。
明日の手が上田に伸びる。
幾ら服をぬらしたとはいえ、直接捕まれて電子レンジでチンされしまえば上田もお終いだ。
「あぶねっ!」
すばやく躱そうとする上田。
しかし走るなどの動きでは明日の方が若干速い。
明日が上田の腕を掴む。
ナイフは先程投げてしまったし再び蜻蛉切を呼ぶ時間もない。
しかし上田は明日の足元を見て面白いことに気がついていた。
「2000W――――――!」
「ドラァ!」
ガスッ!
上田は明日の足を思い切り蹴った。
いや、正確に言い直そう。
上田は明日の血で真っ赤に染まった足の傷口を蹴りつけた。

「――――――――――ぐう!?」
声にならない悲鳴を上げる明日。
「こいつぁ愉快だ。ちゃんと通っているじゃないか!」
明日が躱したと思っていたナイフは実は掠っていたのだ。
上田が丁寧に研ぎ上げたそれはわずかながら付喪神のサポートを得て防刃繊維を突き破り、明日にダメージを与えていたのだ。
上田は再び明日と距離を取ると鼠を呼び始める。
彼は明日に近づかずゆっくりと確実に止めを刺しに行くつもりだった。
「さぁて、明日君。今素直に降参して正義の味方とやらをやめれば君は鼠の餌にならなく済むぜえ?」
「そんな馬鹿なことできるかよ!」
こんな真冬に動き回っているからだろうか?
明日の身体からすごい勢いで湯気が立っている。
「じゃあ死んで貰おうかな?おっと、殺しちゃ駄目なのか。」
上田は鼠を呼び寄せて明日にけしかける。
明日はそれを確認すると鼠の群に向けて両手を伸ばす。
「はっはっは!自分ごと鼠を蒸し焼きにするつもりか!?」
上田は少し焦っていた。
今、いきなり無理されてこいつに死なれると困る。
それでは正義の味方が自分の志に殉じただけになってしまう。
「2500W――――――!!」

バチィン!

何かが弾けるような音がしたかと思うと明日の周りに群がる鼠達は動きを止めていた。

「何!?」
実はホッとしているのだが驚く振りをする上田。
「水をかけられたならさっさと蒸発させればいいじゃねえか……!」
「そうか……、ゆっくりと温度をあげて蒸発させたのか?
 蒸発するときに水が熱を奪えばそれほど熱くならなくて済むしな。」
右手をあげる明日。
「今度こそ……!」
上田の心臓が急に熱を持つ。
どうやら電子レンジの能力で熱を加えられているらしい。
「やらせねえよ!」
BANG!
上田は懐から銃を取り出して一発だけ撃つ。
次の瞬間、上田の身体から一気に熱が引く。
「ハーメルンの笛吹き……!学校町の銃使いに改称しろ!」
「それ、集中しなきゃ撃てないんだろう?あと銃使いは組織に一人いる。」
都市伝説の能力の発動には大抵ある程度の集中が必要だ。
だったら回避に必死にさせてやればいい。
上田明也はじわりじわりと明日真を追い詰める。
「ほらほら、逃げ回れよ!」
狙いは微妙に明日から外しながら銃弾を撃ちまくる上田。
狙いを微妙に外している、明日だってそんなことは解っている。
だがそれに対して足を止めれば簡単に足を撃ち抜かれるのも事実。
「人が疲れるのを待つなんてずいぶん良い趣味しているじゃねえか。」
悪態を吐く明日。
「殺すわけにはいかないんだよ。」
やれやれと言った様子でため息を吐く上田。

マイクロ波で出血を止めながら明日は戦い続ける。
だが彼にも体力の限界が来たようだ。
「しまっ……!」
ドシャア!
降り積もる雪の中で思い切り転んでしまう。
「もう一発!」
再び彼の身体に水がかかる。
そのまま一瞬で明日真は上田明也に組み伏せられた。
「これでお終いだ。正義の味方。ここまでやられてもまだお前はお前を正義の味方と呼べるのか?」
「くっ………!」
「俺を巻き込んで自爆しても良いが……、その場合お前は愛する彼女にはもう二度と会えない。
 さてさて、困った事態だろう?」
「この野郎……。」
上田をにらみつける明日。
しかし首筋に刃を当てられていては何をすることも出来ない。
「まあさっきは目玉か四肢を頂くと言ったがそこまでする気もない。
 さっさと正義の味方をやめて幸せに過ごせよ、彼女と。」
勝った、上田明也は確信してにやりと笑う。
明日は何も言わずに黙っている。
「おや、何も言わないのか。
 そうかそうかお前は正義の味方として死ぬつもりか。
 どうしても俺と敵対するつも………。」
刹那、上田明也の身体は宙を舞った。
「お前も!?」
驚いたように叫ぶ上田。
「恋路に習っといて良かったぜ、格闘技。」
そのまま上田の頭を捕まえる明日。
このまま彼が上田の頭を熱すればそれで勝利だ。

「形勢逆転だ、殺人鬼!」
「やられたねえ………。」
この状況に於いても尚、不敵に笑う上田。
「今だ、メル!」
「何!?」
思わず後ろを振り返る明日。
「勿論嘘だ!」
上田の右ストレートが明日の鳩尾に入る。
「う……クソ……!」
意識を失って倒れる明日。
「はぁ……、はぁ……。手間かけさせやがって。」
上田明也は汗を拭く。
彼が今度こそ本当に勝った、と思った次の瞬間だった。
ガチャリ
上田の後頭部に拳銃が当たる。
「なぁ、君は撃てば死ぬ人類か?殺人鬼。」
「……何時から其処にいた?」
上田明也は自らの失策を悔いた。
いくら何でもメルに奴を捕まえ続けておくことは無理だったのだ。
恋路、と普段から呼ばれている少女は撃鉄を起こした。
「大分前、君がアスマとの戦いを始めた……ちょっと後くらいから。」
「その銃も俺の物だよな?」
「ワルサーP99のQAモデルだなんて良い物持っているじゃないか。」
「畜生……。デザートイーグルでも持ってくれば良かった。
 しかしクイックアクションと解るのか、お前とは良い酒が飲めそうだ。」
「ああ、確かにあのサイズであの弾丸が入っていれば私の体格じゃ扱えない。」
「まあドイツ以外の銃器メーカーは基本的に嫌いなんだけどな。」
「贅沢。」
「……本当にお前は何者だ?」
「聞かないでくれるとありがたいかな?君の都市伝説は今頃向こうで眠ってる。」
沈黙が重くのしかかる。

「解ったよ、今日は手を引く。」
「それならこっちも君の捕虜に対する扱いの良さに免じて手を引きたい。」
先に口を開いたのは上田の方だった。
そしてそれに答える恋路。
「君の恋人にも良い薬になったんじゃないか?」
「ああ、まあ結果としてこれで仲直りだろうね。」
「俺って意外と良い奴だろう?」
「少なくとも私は感謝しておこうか。」
「気に入った。」
上田はゆっくりと明日から離れる。
そして胸のポケットから拳銃を取り出して恋路に投げ渡した。
「それ、やるよ。お前のお気に入りだろう?
 だから俺のワルサーは返せ。」
「良く解ったね、私のお気に入り。確かに私はジェリコ941を使っていた。」
「一発殴られれば充分解るわアホゥ。
 イタリアのタンフェリオ社が、あの名器であるチェコのCZ75をベースに開発したTA90。
 イスラエル陸軍で正式採用されている。
 只問題なのはどこでお前が格闘技やそれの扱いを習ったかということだ。
 お前、日本人だろう?」
「聞かないでくれよ、これでもすねに傷がある人間なんだ。」
ワルサーを上田に返す恋路。
「そうか、それじゃあもう俺は行くぜ。じゃあな。」

上田はそのままどこかの建物に素早く入り込むとそれっきり二度と出てこなかった。
恋路がその建物の中を確認した時にはハーメルンの笛吹き共々彼の姿は確認できなかったのである。




【電磁人の韻律詩14~星待ち人~ fin】

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