それは、少し昔の話
具体的に言うと、6年程前の話……
具体的に言うと、6年程前の話……
「…うん、大丈夫。ちゃんと作れた、はず。ラッピングだって、綺麗にできたはず…」
少女、藤先 沙織は、自分で作って、自分でラッピングしたその箱を手に、すぅはぁと深呼吸をしていた
今日こそは
今日こそは、と自分に言い聞かせる
今日こそは、このチョコレートを渡すと同時に、告白するのだ
今日こそは
今日こそは、と自分に言い聞かせる
今日こそは、このチョコレートを渡すと同時に、告白するのだ
想いを寄せている相手は、一年生にして「狂犬」などと呼ばれている、クラスメイトの日景 翼
だが、クラスメイトだからこそ、彼女は翼がただの不良ではない事を知っていた
本当は、とても優しい人だと言う事を知っている
どうしようもなく、心惹かれてしまって
しかし、今まで告白できなかった
だが、クラスメイトだからこそ、彼女は翼がただの不良ではない事を知っていた
本当は、とても優しい人だと言う事を知っている
どうしようもなく、心惹かれてしまって
しかし、今まで告白できなかった
今日こそは
今日こそは、といつも言い聞かせて
しかし、結局告白できず、明日こそは、といつも思う
今日こそは、といつも言い聞かせて
しかし、結局告白できず、明日こそは、といつも思う
…でも、今日こそは
バレンタインという、今日だからこそ!
告白、してみせるのだ!!
バレンタインという、今日だからこそ!
告白、してみせるのだ!!
「えぇと…日景君は…」
多分、昼休み中は、どこかの空き教室で友人二人と昼食をとっているはず
藤崎は、きょろきょろと、その教室を探していた
…やがて
彼らの、話し声が聞こえてきて
そっと、そちらに駆け寄り、静かに扉を開けて…
藤崎は、きょろきょろと、その教室を探していた
…やがて
彼らの、話し声が聞こえてきて
そっと、そちらに駆け寄り、静かに扉を開けて…
「…あの、日景く「凄いな、直希。これ、お前が作ったのか?」……ん?」
甘い匂い
甘い甘い、チョコレートの匂い
甘い甘い、チョコレートの匂い
「あぁ。我ながら、良い出来だと思うのだが」
翼の言葉に、淡々と答えているのは直希だ
彼らの前には、見事な出来栄えのチョコレートケーキが
彼らの前には、見事な出来栄えのチョコレートケーキが
「うわ、完全に負けた…俺もカップケーキは作ってきたんだが」
「俺はマフィン……っく、まさか、7号ホールサイズのケーキを作ってくるとは…」
「俺はマフィン……っく、まさか、7号ホールサイズのケーキを作ってくるとは…」
翼と誠も、それぞれチョコレート味のカップケーキやチョコレートマフィンを作ってきていたようではあるが
確かに、直希が作ったらしい、その大きなチョコレートケーキと比べると見劣りする
…だが、藤崎の目から見れば
三人が作った物は、どれもそれなりの店の店先に並んでいておかしくないレベルの物に見えた
確かに、直希が作ったらしい、その大きなチョコレートケーキと比べると見劣りする
…だが、藤崎の目から見れば
三人が作った物は、どれもそれなりの店の店先に並んでいておかしくないレベルの物に見えた
…自分が、生チョコレート作成セットなどで作った物とは
レベルが………違いすぎる
レベルが………違いすぎる
「君達が作ってきた物も、美味そうじゃないか。翼、もらってもいいか?」
「もちろん…でも、お前、舌肥えてるからなぁ」
「んじゃ、直希の作ってきたケーキ、切るぞ?」
「もちろん…でも、お前、舌肥えてるからなぁ」
「んじゃ、直希の作ってきたケーキ、切るぞ?」
わいわいと
楽しげに話している三人
そこに……藤崎が入る隙間など、存在しなくて
楽しげに話している三人
そこに……藤崎が入る隙間など、存在しなくて
「……………」
そっと
藤崎は、音も立てずに扉を閉めて……教室を、後にした
藤崎は、音も立てずに扉を閉めて……教室を、後にした
「……うん?今、誰か来ていなかったか?」
「へ?……気のせいじゃないか?」
「あぁ、気のせいだろ?」
「へ?……気のせいじゃないか?」
「あぁ、気のせいだろ?」
扉が閉められた気配に気づき、直希が首をかしげる
ちょうど、扉から完全に背を向けていた翼は、それには気づいておらず
…唯一、扉から見て正面にいた誠は全てに気づいていたが、あえて何も言おうとはしなかった
ちょうど、扉から完全に背を向けていた翼は、それには気づいておらず
…唯一、扉から見て正面にいた誠は全てに気づいていたが、あえて何も言おうとはしなかった
「……あはは、だ、ダメだよね…ひ、日景君は、料理上手なんだから……こ、こんな、手作りキットに頼ってるようじゃ…」
来年
来年、こそは
ちゃんと、1から自分で手作りチョコを作って…渡そう
他の空き教室で、こっそりと、自分が作ったチョコレートを食べながら
藤崎は、ひっそりと涙を流したのだった
来年、こそは
ちゃんと、1から自分で手作りチョコを作って…渡そう
他の空き教室で、こっそりと、自分が作ったチョコレートを食べながら
藤崎は、ひっそりと涙を流したのだった
fin