本日は、バレンタイン
が、そんな日に夢見るつもりも、彼にはなく
が、そんな日に夢見るつもりも、彼にはなく
「もらえる訳もねぇし」
いくら、女の姿になった相手とは言え、メンタル面は男のままなのだ
そんな奴が、バレンタインにチョコくれるわけがないだろう、常識で考えて
そんな奴が、バレンタインにチョコくれるわけがないだろう、常識で考えて
彼、広瀬 辰也は、今年のバレンタインに、特に夢を抱いたり希望を抱いたりはしていなかった
まぁ、そもそも、今までだって特に希望も夢も抱いちゃいないが
仲間達のうち、カップル二組がイチャついているであろう事を羨ましく思いつつ、小さくため息をつく
そもそも、自分は想いを伝える事もままならぬままだ
まぁ、そもそも、今までだって特に希望も夢も抱いちゃいないが
仲間達のうち、カップル二組がイチャついているであろう事を羨ましく思いつつ、小さくため息をつく
そもそも、自分は想いを伝える事もままならぬままだ
もし、伝えて、拒絶されるくらいならば
ならば、いっそ、伝えないままの方がいい
ならば、いっそ、伝えないままの方がいい
かすかに憂鬱さすら感じつつ、リビングに向かうと
ふわ、と甘い匂いが、鼻先をくすぐった
ふわ、と甘い匂いが、鼻先をくすぐった
「恵?どうしたんだ?そのチョコレート」
テーブルについている恵の前に、チョコレートが載った皿が一つ
それも、多分手作りの
それも、多分手作りの
「……誠、が……余ったから、皆で食え、と…」
「誠が?…あぁ、そうか」
「誠が?…あぁ、そうか」
そう言えば、あいつは友人にチョコをやるとか言って、作っていたような
多分、一方には明らかに本命なチョコを渡して盛大にぶん殴られるのだろうが
ざまぁみろ
ぴすぴすぴす、恵の膝に抱かれたジャッカロープが、チョコが気になるのか、テーブルの上に乗ろうとしている
多分、一方には明らかに本命なチョコを渡して盛大にぶん殴られるのだろうが
ざまぁみろ
ぴすぴすぴす、恵の膝に抱かれたジャッカロープが、チョコが気になるのか、テーブルの上に乗ろうとしている
「…辰也」
「うん?」
「……一緒に、食べよう?」
「俺と?」
「うん?」
「……一緒に、食べよう?」
「俺と?」
こっくり
恵は、小さく頷いてきた
恵は、小さく頷いてきた
「…誰か、と…一緒に、食べた方が………美味い、から」
ぽそぽそと、そう告げて来る恵
…まぁ、誰かと一緒と居っても、マッドたちイチャついている最中だろうし
魔女の一撃は、何かやらかして誠からお仕置きくらったらしく、しばし腰が立たない状態で部屋にいるし
…まぁ、誰かと一緒と居っても、マッドたちイチャついている最中だろうし
魔女の一撃は、何かやらかして誠からお仕置きくらったらしく、しばし腰が立たない状態で部屋にいるし
(…俺しかいないから、なんだろうけど)
……だが、それでも
嬉しいのだと思ってしまうのであって
嬉しいのだと思ってしまうのであって
「…?どう、した?」
「いや、何でもない」
「いや、何でもない」
食べるか、と
恵の隣に座って、辰也は笑った
恵の隣に座って、辰也は笑った
今はまだ、伝わらなくてもいいから
ただ傍にいさせてほしい
ただ傍にいさせてほしい
fin