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いつまでもベッドの上でうだうだしているわけにもいかず、服を着替えて寝室を出て顔を洗い、髪を括って居間に行って朝の挨拶をする。
「おはよー」
居間では頭にリカちゃんを乗っけた夢子ちゃんになにやら講釈しているTさん。というここ数日見る光景が相も変わらず展開されていた。
気付いた三人は俺を見て、それぞれ朝の挨拶をする。
「おはよう、契約者」
「おはよーなの!」
「おはようございます」
「んー……」
三人に手を振って応え、そのままつとTさんから目を逸らして夢子ちゃんへと視線を固定する。
「今日も反省会かよ」
「いえ、今回は簡単なおさらいだけですよ」
夢子ちゃんはこの一週間、Tさんに頼んで反省会っぽいことをしてもらっている。なんでも、「自分はまだまだ王様として色々と至らないから是非ともいろいろと教えて欲しいんです」とか。
Tさんも、「確かに、あまりにも警戒心がなさすぎるというのも問題かもしれんな。今回無力化まで一気に追い込まれたのもその辺りの甘さが原因でもある。……少なくとも前の王ならば浅井たちの作戦に引っかかりはしなかっただろう。
甘いこと、優しいことは決して悪いことではないが、夢子ちゃんの立場的にもそうも言ってはいられない」とかなんとか言って≪組織≫とかでTさんが学びとったことを教えているらしい。
「休みの日までご苦労なこっちゃ」
いや、まあ俺以外は誰一人として一般的で普通な社会的生活を送っちゃいないから休みもなにも無いんだけど。
そう思っていると夢子ちゃんが、
「そろそろ旅立ちますので、少しがんばってます」
小さくガッツポーズを決めて言った。
「あれ……? もう旅立っちまうのか?」
「はい。呪いの影響も完全に抜けてますし、そろそろ行けるかな。と思って」
「そうか……」
夢子ちゃん、また旅立っちまうのか。
「寂しくなるな」
会おうと思えば割と頻繁に会うことができるとは言っても寂しいもんは寂しい。
「そう言っていただけるだけでありがたいです」
夢子ちゃんはすっかり元気になった笑顔で言ってくれる。ああ、癒される。
そんなことを思っていると、
「契約者」
Tさんの、もう聞き慣れているはずの声にビクリとさせられた。
「な、なに? Tさん」
心持ち恐る恐る視線を向けると、Tさんはテーブルの一角を示し、
「早く朝食を食べるといい。冷めるぞ」
そこにはご飯に焼き魚で味噌汁な朝食が置いてあった。俺が起きだしてから温め直してくれたのか、飯からは湯気が立ってる。
「お、おう」
答え、席に着く。半分ほど食が進んだ時、Tさんが話しかけてきた。
「今日これから、夢子ちゃんがまた旅立つ前に一度≪夢の国≫に行くぞ」
「≪夢の国≫へ?」
地下カジノじゃなくて? と訊くとTさんは首を縦に振って、
「墓は別にあるが……まあ感傷だ」
そう言って線香を取りだした。……たぶん、おっちゃんたちに手向けるんだろうな。
Tさんは夢子ちゃんに目を向け、確認を取るように訊ねる。
「構わないか?」
夢子ちゃんは「はい」と答え、続いて少し申し訳なさそうな顔をした。
「歓迎します。……ただ、もうあそこは修理されてしまってますけど」
「構わん」
湯呑の茶を啜りながらTさんは夢子ちゃんに言う。
「傷をいつまでも見えるようにしておくことも無い。俺たちが忘れなければそれでいい」
そう言って線香を上着のポケットにしまうTさん。
「……そうだな」
「わすれないの」
「はい……」
それぞれがその言葉を噛みしめるかのような沈黙があり、その沈黙を繕うように俺が残りの飯をかき込んでいると、夢子ちゃんがリカちゃんに声をかけた。
「そうだ、リカちゃんは私とお留守番ですよ」
……え?
「おるすばんなの?」
「はい」
リカちゃんに頷いている夢子ちゃんを見て、俺はTさんに思わず目を向けようとして、気恥かしくて少し俯き気味に訊いた。
「二人は、留守番なのか?」
「……ああ」
頷いたTさんは小さくため息なんぞ吐いて、
「……その場で少し、契約者とサシで話がある」
静かに告げた。
「おはよー」
居間では頭にリカちゃんを乗っけた夢子ちゃんになにやら講釈しているTさん。というここ数日見る光景が相も変わらず展開されていた。
気付いた三人は俺を見て、それぞれ朝の挨拶をする。
「おはよう、契約者」
「おはよーなの!」
「おはようございます」
「んー……」
三人に手を振って応え、そのままつとTさんから目を逸らして夢子ちゃんへと視線を固定する。
「今日も反省会かよ」
「いえ、今回は簡単なおさらいだけですよ」
夢子ちゃんはこの一週間、Tさんに頼んで反省会っぽいことをしてもらっている。なんでも、「自分はまだまだ王様として色々と至らないから是非ともいろいろと教えて欲しいんです」とか。
Tさんも、「確かに、あまりにも警戒心がなさすぎるというのも問題かもしれんな。今回無力化まで一気に追い込まれたのもその辺りの甘さが原因でもある。……少なくとも前の王ならば浅井たちの作戦に引っかかりはしなかっただろう。
甘いこと、優しいことは決して悪いことではないが、夢子ちゃんの立場的にもそうも言ってはいられない」とかなんとか言って≪組織≫とかでTさんが学びとったことを教えているらしい。
「休みの日までご苦労なこっちゃ」
いや、まあ俺以外は誰一人として一般的で普通な社会的生活を送っちゃいないから休みもなにも無いんだけど。
そう思っていると夢子ちゃんが、
「そろそろ旅立ちますので、少しがんばってます」
小さくガッツポーズを決めて言った。
「あれ……? もう旅立っちまうのか?」
「はい。呪いの影響も完全に抜けてますし、そろそろ行けるかな。と思って」
「そうか……」
夢子ちゃん、また旅立っちまうのか。
「寂しくなるな」
会おうと思えば割と頻繁に会うことができるとは言っても寂しいもんは寂しい。
「そう言っていただけるだけでありがたいです」
夢子ちゃんはすっかり元気になった笑顔で言ってくれる。ああ、癒される。
そんなことを思っていると、
「契約者」
Tさんの、もう聞き慣れているはずの声にビクリとさせられた。
「な、なに? Tさん」
心持ち恐る恐る視線を向けると、Tさんはテーブルの一角を示し、
「早く朝食を食べるといい。冷めるぞ」
そこにはご飯に焼き魚で味噌汁な朝食が置いてあった。俺が起きだしてから温め直してくれたのか、飯からは湯気が立ってる。
「お、おう」
答え、席に着く。半分ほど食が進んだ時、Tさんが話しかけてきた。
「今日これから、夢子ちゃんがまた旅立つ前に一度≪夢の国≫に行くぞ」
「≪夢の国≫へ?」
地下カジノじゃなくて? と訊くとTさんは首を縦に振って、
「墓は別にあるが……まあ感傷だ」
そう言って線香を取りだした。……たぶん、おっちゃんたちに手向けるんだろうな。
Tさんは夢子ちゃんに目を向け、確認を取るように訊ねる。
「構わないか?」
夢子ちゃんは「はい」と答え、続いて少し申し訳なさそうな顔をした。
「歓迎します。……ただ、もうあそこは修理されてしまってますけど」
「構わん」
湯呑の茶を啜りながらTさんは夢子ちゃんに言う。
「傷をいつまでも見えるようにしておくことも無い。俺たちが忘れなければそれでいい」
そう言って線香を上着のポケットにしまうTさん。
「……そうだな」
「わすれないの」
「はい……」
それぞれがその言葉を噛みしめるかのような沈黙があり、その沈黙を繕うように俺が残りの飯をかき込んでいると、夢子ちゃんがリカちゃんに声をかけた。
「そうだ、リカちゃんは私とお留守番ですよ」
……え?
「おるすばんなの?」
「はい」
リカちゃんに頷いている夢子ちゃんを見て、俺はTさんに思わず目を向けようとして、気恥かしくて少し俯き気味に訊いた。
「二人は、留守番なのか?」
「……ああ」
頷いたTさんは小さくため息なんぞ吐いて、
「……その場で少し、契約者とサシで話がある」
静かに告げた。