………ばさり
深夜の教会の窓辺に、一羽の梟が降り立った
足に何かがくくりつけられていて、どうやら、それを運んできたらしかった
ほぅ、と小さく鳴き声をあげると…窓が、開け放たれる
顔を出したのは、一人の青年
若い青年は、梟の足についていたその、小さな袋を取って……中身を確認すると、札束と何やらかかれた紙を入れた袋を、梟の足にくくりつけた
ほぅ、と鳴き声あげて、梟は教会から飛び立つ
深夜の教会の窓辺に、一羽の梟が降り立った
足に何かがくくりつけられていて、どうやら、それを運んできたらしかった
ほぅ、と小さく鳴き声をあげると…窓が、開け放たれる
顔を出したのは、一人の青年
若い青年は、梟の足についていたその、小さな袋を取って……中身を確認すると、札束と何やらかかれた紙を入れた袋を、梟の足にくくりつけた
ほぅ、と鳴き声あげて、梟は教会から飛び立つ
「……さて、どうでるか……」
小さな袋に入っていた小さな、小さな赤い石を手に
青年、広瀬 辰也は、そう小さく呟いた
青年、広瀬 辰也は、そう小さく呟いた
「…本当に、一人で来たのか」
「一人で、と言う指定だったろう?」
「一人で、と言う指定だったろう?」
学校町内の繁華街
その一角に位置するファーストフード店、フォーチュン・ピエロのその一角
その目立たぬ席で、辰也はやってきた女性相手に、やや驚いたような声を出した
「第三帝国」に所属している、ドクターとか呼ばれている女性
この手の研究者タイプは苦手ではあるのだが……いつまでも、苦手意識を抱いてもいられない
今回のように、取引を持ちかける場合は、特に
その一角に位置するファーストフード店、フォーチュン・ピエロのその一角
その目立たぬ席で、辰也はやってきた女性相手に、やや驚いたような声を出した
「第三帝国」に所属している、ドクターとか呼ばれている女性
この手の研究者タイプは苦手ではあるのだが……いつまでも、苦手意識を抱いてもいられない
今回のように、取引を持ちかける場合は、特に
……一人で来い、と伝えた
渡したい物があるが、誰も連れてくるな、誰にもその事を話すな、と
渡したい物があるが、誰も連れてくるな、誰にもその事を話すな、と
辰也は、酷く慎重だった
それは、彼女に手渡す物が非常に貴重な物であると同時に…「アメリカ政府の陰謀論」を警戒しての事だ
あそこについては、良い噂を一つも聞かない
…あそこは、マッドガッサーを狙った相手でもある
あそこの目だけは、逃れたい
どうにも、「第三帝国」か、もしくはこのドクターかが、そこに因縁があるようで…そこから、情報が漏れて欲しくもないのだ
どうやら、ドクター自身は「アメリカ政府の陰謀論」の影響を受けている様子はない…と、辰也はそう判断していた
だから、一応は信頼して、彼女だけを呼び寄せたのだ
それは、彼女に手渡す物が非常に貴重な物であると同時に…「アメリカ政府の陰謀論」を警戒しての事だ
あそこについては、良い噂を一つも聞かない
…あそこは、マッドガッサーを狙った相手でもある
あそこの目だけは、逃れたい
どうにも、「第三帝国」か、もしくはこのドクターかが、そこに因縁があるようで…そこから、情報が漏れて欲しくもないのだ
どうやら、ドクター自身は「アメリカ政府の陰謀論」の影響を受けている様子はない…と、辰也はそう判断していた
だから、一応は信頼して、彼女だけを呼び寄せたのだ
場所をファーストフード店にしたのは、いっそ、こう言う場所の方が、この手の取引に便利だから
誰も彼も、自分達のお喋りに夢中で、他人の話に耳を寄せているものなど存在しないし…もし、そんな者が混じっていたら、すぐに怪しむ事が可能だからだ
思えば、そう言う事を教えてくれたのも、あの黒服であって……その事実は、やや面白くない所ではある
誰も彼も、自分達のお喋りに夢中で、他人の話に耳を寄せているものなど存在しないし…もし、そんな者が混じっていたら、すぐに怪しむ事が可能だからだ
思えば、そう言う事を教えてくれたのも、あの黒服であって……その事実は、やや面白くない所ではある
「それで?渡したい物とは?」
「………これだ」
「………これだ」
席に付いて注文を終えたドクターに…辰也は、それを見せた
小さな袋から、その、小さな小さな、赤い石を見せる
す、とドクターはそれを見つめ……ほぉ、と感嘆の声をあげる
小さな袋から、その、小さな小さな、赤い石を見せる
す、とドクターはそれを見つめ……ほぉ、と感嘆の声をあげる
「…「賢者の石」だね?」
「あぁ。つっても、劣化版だけどな。一度きりしか使えねぇもんだ」
「あぁ。つっても、劣化版だけどな。一度きりしか使えねぇもんだ」
賢者の石
錬金術を扱う者にとっての、最終目標
万能の存在であるそれは、本来ならば一度使っただけで壊れたり消えたりしないし…いや、そもそも壊れる事がないだろう
だが、辰也がドクターに見せているそれはたった一度使えば壊れてしまう劣化版だ
それでも、その力は、死んだ直後であれば死人一人蘇らせる事も可能な物
情報こみとは言え、かなり高い買い物だった
錬金術を扱う者にとっての、最終目標
万能の存在であるそれは、本来ならば一度使っただけで壊れたり消えたりしないし…いや、そもそも壊れる事がないだろう
だが、辰也がドクターに見せているそれはたった一度使えば壊れてしまう劣化版だ
それでも、その力は、死んだ直後であれば死人一人蘇らせる事も可能な物
情報こみとは言え、かなり高い買い物だった
「お前の研究に使えるなら、持っていけ」
「まぁ、僕も錬金術の分野に手を出し始めたところだ。ありがたいが……いいのかね?」
「研究に役に立つんならな。ただし、それを誰にも見せるな。手に入れたことを、誰にも話すな」
「まぁ、僕も錬金術の分野に手を出し始めたところだ。ありがたいが……いいのかね?」
「研究に役に立つんならな。ただし、それを誰にも見せるな。手に入れたことを、誰にも話すな」
睨むようにドクターを見つめ、そう告げる
ドクターは、じっと辰也を見つめ返し
ドクターは、じっと辰也を見つめ返し
「……わかった。約束しよう」
と、そう告げて
その、小さな賢者の石を、受け取ろうとして……しかし、その手を止めた
探るように、辰也に尋ねてくる
その、小さな賢者の石を、受け取ろうとして……しかし、その手を止めた
探るように、辰也に尋ねてくる
「それで?君は、見返りに何を求めるのかな?」
「…………」
「…………」
そう、尋ねてきて当たり前だろう
こんな貴重な物、何の見返りもなしに渡してくるお人好しなど、いるはずが………
……いや、たった一人、そんな底抜けのお人好しを、辰也は一人知っているが……普通は、いるはずもない
当然、辰也としては思惑があった
…自分自身に、そんな思惑があるなどと、認めたくはなかったが
こんな貴重な物、何の見返りもなしに渡してくるお人好しなど、いるはずが………
……いや、たった一人、そんな底抜けのお人好しを、辰也は一人知っているが……普通は、いるはずもない
当然、辰也としては思惑があった
…自分自身に、そんな思惑があるなどと、認めたくはなかったが
「…お前がやっている、都市伝説を人間に戻す研究……もし、それが完成したら、俺か、あの黒服に伝えろ」
「ふむ?…H-No.360と呼ばれている、あの髪の伸びる黒服に、かね?」
「あぁ」
「ふむ?…H-No.360と呼ばれている、あの髪の伸びる黒服に、かね?」
「あぁ」
かすかに、辰也は表情を歪ませた
……あの男には、嫌と言うほど借りができてしまっている、事実
そして…認めたくはないのだが、辰也にとって、あの黒服は父親か兄のような、そんな存在である事は事実なのだ
「組織」での生き延び方も、世間での生き延び方も、「組織」を始めとした都市伝説組織との戦い方も、日常の生き方も
全て、あの黒服から教えられた
そして、それらは確実に、辰也にとって有益なものとなっているのだ
あの黒服に、恩がある
故に、この取引をドクターに持ちかけているのだ
……あの男には、嫌と言うほど借りができてしまっている、事実
そして…認めたくはないのだが、辰也にとって、あの黒服は父親か兄のような、そんな存在である事は事実なのだ
「組織」での生き延び方も、世間での生き延び方も、「組織」を始めとした都市伝説組織との戦い方も、日常の生き方も
全て、あの黒服から教えられた
そして、それらは確実に、辰也にとって有益なものとなっているのだ
あの黒服に、恩がある
故に、この取引をドクターに持ちかけているのだ
「…俺は、あいつを人間に戻したい」
「彼は、それを望んでいるのかね?」
「……望んでいるはずだよ。それを表にはあまり出さないし、半分以上諦めかけてるけどな」
「彼は、それを望んでいるのかね?」
「……望んでいるはずだよ。それを表にはあまり出さないし、半分以上諦めかけてるけどな」
ため息をつく
そう、誰よりも、人間に戻ることを望んでいる癖に、あの黒服はそれを諦めてしまっている節がある
それらを表にはあまり出さないが、それでも、辰也はその事実に気づいていた
…気づいてしまった、とも言う
気づいてしまったそのきっかけを思い出し、小さく舌打ちする
そう、誰よりも、人間に戻ることを望んでいる癖に、あの黒服はそれを諦めてしまっている節がある
それらを表にはあまり出さないが、それでも、辰也はその事実に気づいていた
…気づいてしまった、とも言う
気づいてしまったそのきっかけを思い出し、小さく舌打ちする
「人間に戻る手段が、確実にあるなら、あいつはそれを拒否はしないだろうからな」
そうで、なければ
あの男は、希望になどすがらない
希望等、抱きはしない
希望をもっても、裏切られるだけだとあの男は知っているから
あの男は、希望になどすがらない
希望等、抱きはしない
希望をもっても、裏切られるだけだとあの男は知っているから
辰也の言葉にじっと耳を傾けていたドクター
静かに、辰也を見つめ…
……賢者の石を、手に取った
静かに、辰也を見つめ…
……賢者の石を、手に取った
「約束しよう。都市伝説を人間に戻す方法が見付かったならば、君か、もしくはあの黒服に確実に伝える。望むならば、あの黒服を人間に戻そう」
「……取引、成立だな」
「……取引、成立だな」
一応、信用しておく
信頼、ではない
信じて頼るのではなく、信じて利用しているのだ
信頼、ではない
信じて頼るのではなく、信じて利用しているのだ
だが、それはお互い様
互いに利用しあっているようなものだろう
互いに利用しあっているようなものだろう
「じゃあ、俺はこれで。条件を忘れるなよ?」
「あぁ、わかっているさ」
「あぁ、わかっているさ」
賢者の石を懐に仕舞いこむドクター
作り方までは教えていないが……まぁ、この女なら、きっとどうにかするのだろう、と辰也は考えていた
どうやら、マッドガッサーの女体化ガスの解毒剤を作れる程度には優秀らしいのだし
作り方までは教えていないが……まぁ、この女なら、きっとどうにかするのだろう、と辰也は考えていた
どうやら、マッドガッサーの女体化ガスの解毒剤を作れる程度には優秀らしいのだし
元々、苦手なタイプの相手
取引さえ終われば、あまり長く一緒にはいたくない
辰也はさっさと立ち上がり、席を離れようとした
取引さえ終われば、あまり長く一緒にはいたくない
辰也はさっさと立ち上がり、席を離れようとした
「……あぁ、そうだ」
そんな、辰也に
ドクターは声をかける
ドクターは声をかける
「何だよ?」
「君にとって、あの黒服が気にかけるべき存在であるならば。それを、もう少し表に出してやってもいいんじゃないのかい?」
「君にとって、あの黒服が気にかけるべき存在であるならば。それを、もう少し表に出してやってもいいんじゃないのかい?」
伝えたい時に、相手がいなくなっている事もある
その時、後悔するかもしれないから
そうとでも言う用に、告げてきたドクターに
その時、後悔するかもしれないから
そうとでも言う用に、告げてきたドクターに
「…………知るかよ、んな事」
と、ぶっきらぼうに答えて、辰也は店を後にしたのだった
to be … ?