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連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち・決戦以降-09

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 ………ばさり
 深夜の教会の窓辺に、一羽の梟が降り立った
 足に何かがくくりつけられていて、どうやら、それを運んできたらしかった
 ほぅ、と小さく鳴き声をあげると…窓が、開け放たれる
 顔を出したのは、一人の青年
 若い青年は、梟の足についていたその、小さな袋を取って……中身を確認すると、札束と何やらかかれた紙を入れた袋を、梟の足にくくりつけた
 ほぅ、と鳴き声あげて、梟は教会から飛び立つ

「……さて、どうでるか……」

 小さな袋に入っていた小さな、小さな赤い石を手に
 青年、広瀬 辰也は、そう小さく呟いた



「…本当に、一人で来たのか」
「一人で、と言う指定だったろう?」

 学校町内の繁華街
 その一角に位置するファーストフード店、フォーチュン・ピエロのその一角
 その目立たぬ席で、辰也はやってきた女性相手に、やや驚いたような声を出した
 「第三帝国」に所属している、ドクターとか呼ばれている女性
 この手の研究者タイプは苦手ではあるのだが……いつまでも、苦手意識を抱いてもいられない
 今回のように、取引を持ちかける場合は、特に

 ……一人で来い、と伝えた
 渡したい物があるが、誰も連れてくるな、誰にもその事を話すな、と

 辰也は、酷く慎重だった
 それは、彼女に手渡す物が非常に貴重な物であると同時に…「アメリカ政府の陰謀論」を警戒しての事だ
 あそこについては、良い噂を一つも聞かない
 …あそこは、マッドガッサーを狙った相手でもある
 あそこの目だけは、逃れたい
 どうにも、「第三帝国」か、もしくはこのドクターかが、そこに因縁があるようで…そこから、情報が漏れて欲しくもないのだ
 どうやら、ドクター自身は「アメリカ政府の陰謀論」の影響を受けている様子はない…と、辰也はそう判断していた
 だから、一応は信頼して、彼女だけを呼び寄せたのだ

 場所をファーストフード店にしたのは、いっそ、こう言う場所の方が、この手の取引に便利だから
 誰も彼も、自分達のお喋りに夢中で、他人の話に耳を寄せているものなど存在しないし…もし、そんな者が混じっていたら、すぐに怪しむ事が可能だからだ
 思えば、そう言う事を教えてくれたのも、あの黒服であって……その事実は、やや面白くない所ではある

「それで?渡したい物とは?」
「………これだ」

 席に付いて注文を終えたドクターに…辰也は、それを見せた
 小さな袋から、その、小さな小さな、赤い石を見せる
 す、とドクターはそれを見つめ……ほぉ、と感嘆の声をあげる

「…「賢者の石」だね?」
「あぁ。つっても、劣化版だけどな。一度きりしか使えねぇもんだ」

 賢者の石
 錬金術を扱う者にとっての、最終目標
 万能の存在であるそれは、本来ならば一度使っただけで壊れたり消えたりしないし…いや、そもそも壊れる事がないだろう
 だが、辰也がドクターに見せているそれはたった一度使えば壊れてしまう劣化版だ
 それでも、その力は、死んだ直後であれば死人一人蘇らせる事も可能な物
 情報こみとは言え、かなり高い買い物だった

「お前の研究に使えるなら、持っていけ」
「まぁ、僕も錬金術の分野に手を出し始めたところだ。ありがたいが……いいのかね?」
「研究に役に立つんならな。ただし、それを誰にも見せるな。手に入れたことを、誰にも話すな」

 睨むようにドクターを見つめ、そう告げる
 ドクターは、じっと辰也を見つめ返し

「……わかった。約束しよう」

 と、そう告げて
 その、小さな賢者の石を、受け取ろうとして……しかし、その手を止めた
 探るように、辰也に尋ねてくる

「それで?君は、見返りに何を求めるのかな?」
「…………」

 そう、尋ねてきて当たり前だろう
 こんな貴重な物、何の見返りもなしに渡してくるお人好しなど、いるはずが………
 ……いや、たった一人、そんな底抜けのお人好しを、辰也は一人知っているが……普通は、いるはずもない
 当然、辰也としては思惑があった
 …自分自身に、そんな思惑があるなどと、認めたくはなかったが

「…お前がやっている、都市伝説を人間に戻す研究……もし、それが完成したら、俺か、あの黒服に伝えろ」
「ふむ?…H-No.360と呼ばれている、あの髪の伸びる黒服に、かね?」
「あぁ」

 かすかに、辰也は表情を歪ませた
 ……あの男には、嫌と言うほど借りができてしまっている、事実
 そして…認めたくはないのだが、辰也にとって、あの黒服は父親か兄のような、そんな存在である事は事実なのだ
 「組織」での生き延び方も、世間での生き延び方も、「組織」を始めとした都市伝説組織との戦い方も、日常の生き方も
 全て、あの黒服から教えられた
 そして、それらは確実に、辰也にとって有益なものとなっているのだ
 あの黒服に、恩がある
 故に、この取引をドクターに持ちかけているのだ

「…俺は、あいつを人間に戻したい」
「彼は、それを望んでいるのかね?」
「……望んでいるはずだよ。それを表にはあまり出さないし、半分以上諦めかけてるけどな」

 ため息をつく
 そう、誰よりも、人間に戻ることを望んでいる癖に、あの黒服はそれを諦めてしまっている節がある
 それらを表にはあまり出さないが、それでも、辰也はその事実に気づいていた
 …気づいてしまった、とも言う
 気づいてしまったそのきっかけを思い出し、小さく舌打ちする

「人間に戻る手段が、確実にあるなら、あいつはそれを拒否はしないだろうからな」

 そうで、なければ
 あの男は、希望になどすがらない
 希望等、抱きはしない
 希望をもっても、裏切られるだけだとあの男は知っているから

 辰也の言葉にじっと耳を傾けていたドクター
 静かに、辰也を見つめ…
 ……賢者の石を、手に取った

「約束しよう。都市伝説を人間に戻す方法が見付かったならば、君か、もしくはあの黒服に確実に伝える。望むならば、あの黒服を人間に戻そう」
「……取引、成立だな」

 一応、信用しておく
 信頼、ではない
 信じて頼るのではなく、信じて利用しているのだ

 だが、それはお互い様
 互いに利用しあっているようなものだろう

「じゃあ、俺はこれで。条件を忘れるなよ?」
「あぁ、わかっているさ」

 賢者の石を懐に仕舞いこむドクター
 作り方までは教えていないが……まぁ、この女なら、きっとどうにかするのだろう、と辰也は考えていた
 どうやら、マッドガッサーの女体化ガスの解毒剤を作れる程度には優秀らしいのだし

 元々、苦手なタイプの相手
 取引さえ終われば、あまり長く一緒にはいたくない
 辰也はさっさと立ち上がり、席を離れようとした

「……あぁ、そうだ」

 そんな、辰也に
 ドクターは声をかける

「何だよ?」
「君にとって、あの黒服が気にかけるべき存在であるならば。それを、もう少し表に出してやってもいいんじゃないのかい?」

 伝えたい時に、相手がいなくなっている事もある
 その時、後悔するかもしれないから
 そうとでも言う用に、告げてきたドクターに

「…………知るかよ、んな事」

 と、ぶっきらぼうに答えて、辰也は店を後にしたのだった




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