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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-44a

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 上田や穀雨との食事を終えた後
 明日は、黒服Hに電話して、ハーメルンの笛吹きこと上田を話そうとしていた
 が、いつもならかければすぐに出るはずの黒服Hが、すぐに出ない
 ようやく、出たと思ったら

『-----誰だ?』

 聞こえて来たのは、警戒感バリバリの上田の知らない青年の声だった
 恐らく、20代前半程の青年の声
 20代前半と言う年齢は、黒服Hの外見年齢とも一致するが、彼の声ではない
 黒服Hと比べると、どこか精神的な幼さの混じる声だ

 …電話番号を間違えたか?
 いや、まさか
 携帯に登録した番号にかけたはず
 一瞬、明日が返答に迷っていると

『……あぁ、そりゃ、俺の担当契約者からだ。辰也、代わってくれ』
『お前の?お前が男の契約者担当してるなんて何の冗だ………あぁ、あの時の生き残りの餓鬼か』

 向こう側から、その青年と黒服Hが話している声が聞こえてきた
 どうやら、青年の名前は辰也と言うらしい

 ………ん?
 「あの時の生き残り」??

『悪ぃな、ちょいと手が離せない状況だったんでね…どうした、明日?』
「あぁ、その、ちょっとハーメルンの笛吹きのことで、話が…」

 上田から聞いた話を、正直に黒服Hに伝える明日
 黒服Hは、明日の話を黙って聞いていたが………最後まで聞き終えると、こう告げる

『悪いが、信用できねぇな』

 きっぱりと、そう言いきってきた

『あぁ、お前の事が信用できないって事じゃない。ハーメルンの笛吹きが、だ。あいつは大嘘付きだからな』
「だからって、全部が嘘って訳じゃ…」
『そこだ』

 え?
 そこって、何が?
 首をかしげる明日
 黒服Hは、ゆっくりと続けてくる

『お前の言う通り、ハーメルンの笛吹きの話は、全てが嘘って訳じゃあねぇだろ。だが、確実に嘘が含まれている。少なくとも、お前と初めて遭遇した時、あいつはお前を殺すつもりだっただろうからな』

 はっきりと、そう断言してくる
 その声は、いつものどこかふざけた軽い調子と違い、冷酷で重い
 己が大嘘吐きであるが故に、他人の嘘に敏感な黒服Hには、上田の心理がある程度理解できるのかもしれない

『ハーメルンの笛吹きは、目撃者を生かしておく程甘い男じゃねぇよ。俺がハーメルンの笛吹きだったとしても、同じだ。目撃者は全員消す。あの状況でお前が生き延びられたのは、運が良かったってのもあるだろ』
「だが……」
『…ったく、甘いねぇ?まぁ、正義の味方なお前さんらしいがな』

 くっく、と笑っている声が聞こえてきた
 声が、元の調子に戻っている

『まぁ、いいさ。お前が信じたければ信じればいい。だが、俺はハーメルンの笛拭きを信じない。言葉、ってのは麻薬で鎖だ。ハーメルンの笛吹きは、言葉で他人に暗示をかけるように話せる奴だ。お前が、ハーメルンの笛吹きを無意識に疑えないようにするくらいはできるだろうさ

 それに、と
 ゆっくりと、続ける声

『俺個人としてじゃなくとも、「組織」としてもそのスタンスになるだろうよ。ハーメルンの笛吹きは人を殺しすぎた。恨みを買いすぎた』

 また、声の調子が冷たくなる
 黒服Hは、こんなにもころころと声の調子が変わる男だったろうか?
 若干、違和感を感じなくもないが、この声は間違いなく、黒服H本人のものであり、否定の仕様がない

『お前がハーメルンの笛吹きを許したとしても。ハーメルンの笛吹きを許せない奴は、ごまんといるさ。お前の場合、殺されたのは友人だったが……家族を殺された、って奴が、どれだけいると思う?そいつら全員が、ハーメルンの笛吹きのその言い分で許すとでも思うか?』
「………それは」
『許すどころか、余計に憎む奴もいるだろうよ。「ふざけるな」ってな。他人の都合で大切な家族を殺されて。そいつの都合でもう殺さないから許してください?っは。少なくとも、俺が被害者家族の立場だったら、許さねぇな。憎んで憎んで憎んで憎んで憎みきって、さんざ苦しめて殺してやりたいと思うさ」

 お前さんは優しいから、許せるだろうがな、と
 そう、呟くように付け足した声だけは、優しかった
 だが、それ以外の声は、冷酷な……殺意すら、滲むような声
 その声が、また、元のいつもの軽い調子に戻る

『まぁ、ぶっちゃけ、ハーメルンの笛吹きが被害者への償いの気持ちを本当に抱えて生きるんなら、考えてやってもいいがな?まぁ、その償いが本物かどうかにもよるが』
「俺は、本物だと信じたいですけど」
『お前さんは信じればいい。だが、な……そうやって信じて裏切られると、憎悪がより一層深まるって事もあるでね』

 それは、まぁ、わからなくもない
  …上田の本心が、どうなのか
 それは、明日にもわからない事だ
 ……ある意味で、上田と黒服Hを、直接会わせて話させるべきだったか?
 一瞬、そう考えたが……「それは駄目だ」と、明日の中で即座に結論が生まれた
 何故だろうか、明日の事も含めて……黒服Hが、随分と上田を憎んでしまっているような
 そんな気がしたのだ
 それも、明日が今の上田の事情を話してから、特に

『あー、それとだな?少なくとも、俺の知り合いでどう考えてもハーメルンの笛拭きを許さなそうなのが二人いるだわ。これが』
「二人??」
『あぁ、一人は、前にお前さん達に話したことあるだろ?「骨を溶かすコーラ」と契約してる、「組織」最強のブラコンヤンデレ』

 …確かに、仕事の待ち時間に、黒服Hから聞いたことがある
 殺傷能力においてほぼ最強クラスであるが、性格的にも最強クラスに問題があり、宥められる黒服が某過労死候補のお人好ししかいないと言う、取り扱い注意な契約者
 顔を合わせたことはないのだが、相当の問題児らしい

『そのヤンデレ曰く、「今度顔合わせたら内蔵からじわじわと溶かし殺すよ」との事でな』
「グロっ!?」
『それと、もう一人……俺の弟分がなぁ』

  ……弟分?
 そんな相手がいたのか、と明日は素直に驚いた
 正直、黒服Hに関わっている相手なんて、9割が女性で、男が関わっているとしたら仕事仲間くらいだと思っていたからだ

『そいつも、そりゃあもう、ハーメルンの笛拭きを嫌っていてだな?まぁ、殺さないにしろ、苦しめるチャンスがあるなら、いくらでも苦しめたいんだと。一生苦しめ、とも言っててなぁ』
「…どれだけ恨まれてるだ、あいつは」
『まぁ、惚れた相手を鼠で怖がらせたのが相当腹立ってるみたいだからな。ヤンデレの怒りもそうだが、ハーメルンの自業自得って事で』
「惚れた相手を、って………そっちに関しては、ちょっと大人気ない怒りのような」
『んっだと、この餓鬼!!!血の池地獄に引きずり殺してやろうか!?』

  …突然、割り込んできた声
 黒服Hに、「辰也」と呼ばれていた声だ
 なるほど、彼が弟分と言う訳か

 って
 ちょっと、待て
 こちらの会話が、丸聞こえだった??

『あー、悪ぃ、スピーカーモードにしたままだったわ』
「っちょ!?色々と駄々もれてた!?」
『なぁに、気にするな。よくある事だ。それと、辰也はちょっと落ち着け。俺の担当だから、勘弁してやってくれや』

 向こう側でぎゃあぎゃあ騒いでいる声を、黒服Hが宥めているのが聞こえる
 何だか、弟を宥めている兄のようなその様子に、黒服Hの知らない面を知ったような気がした

『…とりあえず、一旦切るぞ?詳しい話は、今度顔をつき合わせてしようや?』
「あ、はい」
『こら、宏也、その餓鬼に代われっ!そいつだって女人質にとられた時激昂しまくってたじゃねぇか!俺の事をいえた義理じゃね』

 ぶつんっ、と通話を切られた
 …辰也とか言う青年に、こちらの事情が駄々漏れである事実にやや不気味さを感じた
 ……いや、それよりも

「…怒りは、収まって……いや、ないか。どうしたらいいものやら」

 後で、黒服Hと直接会って話すことを考えて
 明日は、やや憂鬱にため息をついたのだった





「ほらほら、落ち着け。病院で騒ぐのはよくないぜ?」

 ぜぇぜぇ
 ようやく、落ち着いてきたらしい辰也
 その様子に、黒服Hはくっく、と楽しげに笑う
 まったく、わかりやすい奴だ

 辰也がハーメルンの笛吹きを憎み続けているのは、昨年秋の中央高校での事件の時、恵を鼠の群れという悪意で怖がらせたから
 シンプルに、それだけの単純な理由に過ぎない
 そんなシンプルな理由でここまで憎むほど、辰也は恵に惚れている、ということなのだろう
 その癖して、未だに告白もできていないようだが

「…それで?どうするんだよ。ハーメルンの笛吹きの扱い」
「……さぁて?どうしようかねぇ?」

 くっく、と
 笑う黒服Hの顔は、どこか悪人面だ
 確実に、何かを企んでいる顔をしている

「…あぁ、そうだ。ハーメルンの野郎がアメリカに行くんだったら、あそこには某最強マッスル禿がいたなぁ。あいつに、ハーメルンがアメリカに行く事でも伝えておくか」
「あの禿がこっちの思ったとおりに動くかね?」
「まっさか。動く訳ねぇだろ。だから、ハーメルンを狙え、とは言わねぇ。アメリカ行きを伝えるだけだ。アメリカっつっても広いからな。遭遇するかどうかはハーメルンの運次第。禿に狙われるかどうかも運次第さ」
「……なるほど。だったら、禿に伝えた事、後でハーメルンに伝えとけ。尻狙われる恐怖に捕らわれ続けろ、あのロリコン殺人鬼」

 ニヤリ、とこれまた、どこか悪党面で笑う辰也
 完全に、二人して悪役モードである
 どこか、黒いオーラすら、漂っていて
 明らかに、診療所内にいる「第三帝国」メンバーに迷惑なのであるが、二人ともわりと気にしていないのだった



終われ





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