テ「(…ドキドキ…)」
教授に対して大きく言ってみたものの、実際のところテケテケには、外に出れる確証などは無かった。
場所こそ違えど、そこは“学校”。『テケテケ』が外へ出ようとして、ついに力尽きた場所。
ある種のトラウマ。自己を確立する“都市伝説”の枠を自ら飛び越えようとしている彼女の体は、自然と恐怖から震えていた。
ある種のトラウマ。自己を確立する“都市伝説”の枠を自ら飛び越えようとしている彼女の体は、自然と恐怖から震えていた。
教「……ほら」
テ「はぇ?」
不意に、隣に立つ教授の手がテケテケに向けられた。
教「外に出たらアスファルトだ。…生身(?)の腕で移動するのは辛いだろ?」
彼女は、それが彼の気遣いだとわかり、震えの止まった手で、握り返す。
テ「……じゃあ、これからはずっと教授さんの首に抱きついてますねっ」
教授「……でれ、たな」
テケテケ少女「でれました…ね」
教「本当に俺の守護霊になったのか?」
テ「うーん、私は特に変化はありませんが……」
教「よくわからんな」
テ「ですね。…あぁほらっ! はやくしないとスーパー閉まっちゃいますよ!?」
教「おっと、そりゃまずい」
テ「マジーン、GOー!」
教「髪引っ張んな」
教授「そう言えば、はたから見たらお前ってどうなんだろうな」
テケテケ少女「あっ、多分見えないと思いますよ?」
教「どうして」
テ「私、“学校”から“学校”へと移動してる最中は、見つかったことありませんから」
教「まさかの徒歩移動?」
テ「はいっ。あ、たまにスピリチュアルなんちゃらに声をかけられたりはします。」
教「(カウンセラー…)」
テ「電車はただで乗れるんですよーっ」
教「むしろ幽霊から金とる方がおかしいしな」
テ「電車待ちしてると、ヒかれたヒト達に色々声をかけられて大変なんですよぉー。やれ自殺だの押されてだの、あげくの果てにはナンパまでしてきたりして」
教「なんだろう、聞きたくなかったかも」
夜。薄暗くなり点々と街灯が照らす道を、教授は足早に進んでゆく。
テケテケ少女「はやくー、走ってくださいーっ」
後ろから首に腕をまわして抱きついている少女が耳元でブーたれる。
耳にかかる息に背筋がゾクゾクとしながらも、教授は少女の要求通りに歩調を上げた。
耳にかかる息に背筋がゾクゾクとしながらも、教授は少女の要求通りに歩調を上げた。
と、
ドンッ!
教授「うぉっ…!」
教授「うぉっ…!」
???「きゃあっ…!」
焦りすぎていたのか、曲がり角で女性とぶつかってしまった。
女性は犬の散歩の途中だったのか、主人に危害を加えた教授に、手綱に繋がれた犬が吠えかかる。
女性は犬の散歩の途中だったのか、主人に危害を加えた教授に、手綱に繋がれた犬が吠えかかる。
教「えっと、その……大丈夫か?」
女性「え、えぇ、どうも済みませんでした」
教「いえ、こちらこそ」
謝罪を済ませている教授の耳元に、少女は女性のことなどお構いなしに買い物を催促する。
教「あの……そ、それじゃっ、どうも済みませんでした!」
教授たちの去った夜道に、女性は静かに立ち尽くしていた。
女性も、その手のリードの先に繋がれた犬も、教授の走り去った闇を見つめたまま動かない。
女性も、その手のリードの先に繋がれた犬も、教授の走り去った闇を見つめたまま動かない。
???「……見たかよ、あのボウズの肩に居たの」
沈黙を割いたのは、低い男性の声だった。
だが無論、この場には女性の他に人間はいない。
──そう、話しかけたのは、赤いリードに繋がれた獣…女性の連れた、犬だった。
だが無論、この場には女性の他に人間はいない。
──そう、話しかけたのは、赤いリードに繋がれた獣…女性の連れた、犬だった。
女性「えぇ。上半身だけの女の子が抱きついてたわ」
女性は犬が言葉を発したことに驚くでもなく、冷淡な声で返事をかえす。
犬「“都市伝説”、『テケテケ』だな」
女「…もう契約はしたのかしら」
犬「してねぇだろ。してたらあんな風にはならんと思うしな」
女「私と貴方の関係と同じってことね」
犬「ああ。……しかしまぁ、そろそろ始まるのかねぇ」
女「本当に起こるのかしら。いまでも少し信じがたいわ」
犬「なぁに、すぐにわかるさ。……契約者同士が戦うこのゲームは、もうプレイボール寸前だぜ」
テケテケ少女「さぁ! 無事お買い物も済んだことですし、レッツプレイクッキング!」
教授「ふはは、頑張ってくれ」
テ「やる気なしっ!?」
教「普段の俺はカップ麺でいい。けれどお前は作ると言った。つまりはどうぞ御勝手に」
テ「非道いっ! 私は教授さんのためを思って、心を込めた愛妻料理を…!!」
教「なんだ、嫁に来るきなのか」
テ「……あ、あんなにおっぱい揉んでおいてその言い草ですか…」
教「あれはスキンシップだ」
テ「………」
教「………」
テケテケ少女「もういいです、独りで作りますから」
教授「刃物は気をつけて使えよー」
テ「子供扱いしないでくださいっ!」
教「いや、中学生なんだろお前」
教授の言葉を無視して、少女はビニール袋からゴソゴソと食材を取り出していく。
実際買ったのは教授で、テケテケ少女の指示のもと買い物カゴに食材を入れたのも教授であるから、料理の献立はわかりきっている。
畳の上に寝転がりテレビを眺めながらも、教授は視界外の少女を気にかけていた。
実際買ったのは教授で、テケテケ少女の指示のもと買い物カゴに食材を入れたのも教授であるから、料理の献立はわかりきっている。
畳の上に寝転がりテレビを眺めながらも、教授は視界外の少女を気にかけていた。
テ「…むむむ…」
なにやら唸っている。
教授は半眼を少女に向けて、気怠そうに尋ねた。
教授は半眼を少女に向けて、気怠そうに尋ねた。
教「…どうした?」
テ「流し台の位置まで体が届かないんですぅ……」
教授「お前…」
テケテケ少女「す、少しだけなら浮けるんですけど」
教「どれくらい?」
テ「……4cmくらい」
教「ドラえもんか」
テ「教授さぁーん」
教「あーもぅ。わかったわかった、手伝ってやるから」
テ「…あはっ、やっぱり教授さんは優しいヒトなんですねー」
教「やめろ気色悪い」
テ「えー」
教授「で、俺はなにをすればいい」
テケテケ少女「うんっと、抱っこしてください」
教「なにゆえ」
テ「要は、私がお料理を作れる高さになればいいんです。だったら、教授さんに抱っこしてもらうのが一番かと」
教「なるほど」
ギュウ
ギュウ
テ「……あの」
教「んん?」
ギュウギュウ
ギュウギュウ
テ「前から抱っこされてもお料理できませんよぅ…」
教「ん、それもそうか」
ギュウギュウクンカクンカ
教「ん、それもそうか」
ギュウギュウクンカクンカ
テ「あっ…ひゃ…ややや、やめてくださいぃ~…」
教「んー、お前可愛いなぁ。」
ギュウギュウフニフニ
教「んー、お前可愛いなぁ。」
ギュウギュウフニフニ
テ「かわいい…なんて……、下半身の無い化け物幽霊になにいってるんですかあぁ」
教「下半身だとか、別に大した問題じゃないだろ。可愛いもんは可愛いくて、俺がそう感じてるんだ。むしろ俺の感情を否定する権利なぞお前には、無い!」
教「下半身だとか、別に大した問題じゃないだろ。可愛いもんは可愛いくて、俺がそう感じてるんだ。むしろ俺の感情を否定する権利なぞお前には、無い!」
テ「はぅにゃー…」
教授「ま、いつまでもハグしてらんないから、このくらいにしておいてやろう」
テケテケ少女「くはぅー…」
教「…よっ、と。こんなもんか?」
母親が赤ん坊を背に結び付けるように、教授は自分の上半身にテケテケ少女の上半身を縛り付けた。
テ「んっ……ちょ、ちょっとキツいです…」
教「亀甲縛り風味なんで、正直かなりエロいです」
テ「なんでそんな縛り方を…くぁっ…!」
教「フハハハハ! もがけばもがくほど、この縄はキツく締め上げるのだー!」
テ「お料理できないじゃないですか!!」