同族殺しが、「13階段」の異空間を脱出した、その瞬間を
「13階段」の契約者たる広瀬 辰也は確かに感じ取り……ぞくり、体を震わせた
「13階段」の契約者たる広瀬 辰也は確かに感じ取り……ぞくり、体を震わせた
辰也は、「13階段」の異空間内で何が起こっているのかを、察知する事ができる
「13階段」内で、引きずり込まれた犠牲者がもがき苦しんでいるのも
憎悪の言葉を吐き出しているのも、必死に助命の言葉を叫んでいるのも
引きずりこもうとする亡者達に、必死に抵抗している様子も
………命の火を消す、その瞬間も
全てを、好む好まざるに関わらず、知る事ができるのだ
…そのせいで、かつて「第三帝国」のドクターを引きずり込んだ時、色々と感じ取って悪寒も感じてしまったのはさておき
「13階段」内で、引きずり込まれた犠牲者がもがき苦しんでいるのも
憎悪の言葉を吐き出しているのも、必死に助命の言葉を叫んでいるのも
引きずりこもうとする亡者達に、必死に抵抗している様子も
………命の火を消す、その瞬間も
全てを、好む好まざるに関わらず、知る事ができるのだ
…そのせいで、かつて「第三帝国」のドクターを引きずり込んだ時、色々と感じ取って悪寒も感じてしまったのはさておき
とにかく、あの同族殺しが「13階段」内から脱出した事は事実だ
辰也は、小さく舌打ちする
辰也は、小さく舌打ちする
「……辰也?どうした…?」
「…同族殺しが、「13階段」から出た」
「…同族殺しが、「13階段」から出た」
ぴくり
辰也の言葉に、隣を歩いていた恵が小さく体を震わせた
遠目に、ではあるが、恵も同族殺しの強さを見ている
怯えた様子の恵の頭を、辰也はぽふぽふと、優しく撫でてやった
辰也の言葉に、隣を歩いていた恵が小さく体を震わせた
遠目に、ではあるが、恵も同族殺しの強さを見ている
怯えた様子の恵の頭を、辰也はぽふぽふと、優しく撫でてやった
「大丈夫だって…とりあえず、宏也と「第三帝国」の連中に連絡しとくな」
「……くけっ」
「……くけっ」
こくり、小さく頷いた恵
辰也が携帯電話を弄りだしたのを見て、邪魔してはいけないと思い、静かに見つめる
辰也が携帯電話を弄りだしたのを見て、邪魔してはいけないと思い、静かに見つめる
「……あぁ、宏也か?……---------------」
途中から、辰也が話している言葉が、恵には全く理解できないものに変わった
辰也は、自分が理解できる言語ならば、話し掛けられた言語でそのまま返事を返す癖があるのだ
まずは、黒服Hに電話をかけたようだから、案外、「組織」の者にだけ通じる暗号会話なのかもしれない
いや、もちろん、ドイツ語やフランス語の可能性も充分になるのだが
辰也は、自分が理解できる言語ならば、話し掛けられた言語でそのまま返事を返す癖があるのだ
まずは、黒服Hに電話をかけたようだから、案外、「組織」の者にだけ通じる暗号会話なのかもしれない
いや、もちろん、ドイツ語やフランス語の可能性も充分になるのだが
話している内容は詳しくはわからないが、辰也の表情や声の調子で、何となくは、わかる
口では色々と言いながらも、辰也にとってあの黒服が、家族同然の存在である事も、伝わってきて
口では色々と言いながらも、辰也にとってあの黒服が、家族同然の存在である事も、伝わってきて
それを、羨ましいな、と恵はこっそりと考えるのだ
自分には、家族といえるような存在は、いなかったから
…今の、一緒に生活している仲間達が、初めての家族のような存在
他には、そう言う存在はいなくて
皆の、家族や、家族のような存在がいる、いた、と言うのが…少し、羨ましいのだ
自分には、家族といえるような存在は、いなかったから
…今の、一緒に生活している仲間達が、初めての家族のような存在
他には、そう言う存在はいなくて
皆の、家族や、家族のような存在がいる、いた、と言うのが…少し、羨ましいのだ
黒服Hと、「第三帝国」、二箇所への連絡を終えて
はぁ、と辰也が小さく、ため息をつく
はぁ、と辰也が小さく、ため息をつく
「悪い、待たせたな」
「…大丈夫、だ」
「…大丈夫、だ」
行こう、と
きゅ、と辰也の手を握った恵
辰也はその手を握り返し、歩き出す
きゅ、と辰也の手を握った恵
辰也はその手を握り返し、歩き出す
恵にとって、辰也は大切な家族で
大切な家族だから、護りたいと思う、力になりたいと、思う
……だから、同時に
その家族の大切な存在をも、護ってやりたいと、助けたいと願うのだ
大切な家族だから、護りたいと思う、力になりたいと、思う
……だから、同時に
その家族の大切な存在をも、護ってやりたいと、助けたいと願うのだ
fin