それは、最悪の再会、とでも言うべきだろうか
少なくとも、「13階段」の契約者、広瀬 辰也にとっては、ハーメルンの笛吹きと再会した時の次くらいには、憂鬱な再会であったことは事実である
少なくとも、「13階段」の契約者、広瀬 辰也にとっては、ハーメルンの笛吹きと再会した時の次くらいには、憂鬱な再会であったことは事実である
そして、それはモンスの天使契約者、門条 天地にとっても、面白くない再会であった
小さく舌打ちし…天地は、辰也を睨みつける
小さく舌打ちし…天地は、辰也を睨みつける
「……H-No.96……!」
かすかに、憎悪すら、こめて
天地は、辰也を睨みつけた
天地は、辰也を睨みつけた
「それは、俺の名前じゃねぇ」
天地に呼ばれたそのナンバーに、辰也は不快感をあらわにした
「組織」に居た頃の、実験体の証
かつて背中に刻まれていたそのナンバーは…今は、もうない
そこにあるのは、火傷の跡だけだ
「組織」に居た頃の、実験体の証
かつて背中に刻まれていたそのナンバーは…今は、もうない
そこにあるのは、火傷の跡だけだ
だからといって、実験体であった過去が消える訳でもない
そのナンバーで呼ばれる事は、辰也にとって、「組織」で受けた実験の日々を思い出させる不快な呼び名だ
そのナンバーで呼ばれる事は、辰也にとって、「組織」で受けた実験の日々を思い出させる不快な呼び名だ
「広瀬 辰也。それが今の俺の名前だ」
「H-No.360に付けられた名前か?任務の時に使った偽名じゃないか」
「確かに、あの変態の化身に付けられた名前と言う点に関しては考えたくねぇが。これが俺の名前だ」
「H-No.360に付けられた名前か?任務の時に使った偽名じゃないか」
「確かに、あの変態の化身に付けられた名前と言う点に関しては考えたくねぇが。これが俺の名前だ」
これしか、辰也には名前がない
「広瀬 辰也」と言う名前が、「本来は誰のもの」なのか…薄々、感づいてはいるが
それでも、辰也はこの名前にすがるしかないのだ
幼い頃からナンバーで呼ばれ続けてきた彼には、名前がない
本来、両親につけられたはずの名前は永遠に失われてしまったから
「広瀬 辰也」と言う名前だけが、辰也の名前だから
「広瀬 辰也」と言う名前が、「本来は誰のもの」なのか…薄々、感づいてはいるが
それでも、辰也はこの名前にすがるしかないのだ
幼い頃からナンバーで呼ばれ続けてきた彼には、名前がない
本来、両親につけられたはずの名前は永遠に失われてしまったから
「広瀬 辰也」と言う名前だけが、辰也の名前だから
「…それで?何か用か?「組織」の狗が」
「ここで会ったのはたまたまだが…そうだな。用がない訳じゃない」
「ここで会ったのはたまたまだが…そうだな。用がない訳じゃない」
刹那
天地の周りに、気配が生まれる
天地が契約しているモンスの天使達の気配
辰也にとっても、大分慣れた気配だ
天地の周りに、気配が生まれる
天地が契約しているモンスの天使達の気配
辰也にとっても、大分慣れた気配だ
「やめておけ。流石に目立ちすぎるだろ」
昼下がりの、繁華街
ここでモンスの天使達を召還するのは、流石に目立ちすぎる
「組織」所属の人間としては、避けたい事態のはずだ
…最も、「組織」所属で、都市伝説の存在を世間には隠したいはずなのに、目立つようなのがいるのは事実だが
主に、今、アメリカにさせ…出張中のマッスル禿とかK-No.711とか最強禿とか
ここでモンスの天使達を召還するのは、流石に目立ちすぎる
「組織」所属の人間としては、避けたい事態のはずだ
…最も、「組織」所属で、都市伝説の存在を世間には隠したいはずなのに、目立つようなのがいるのは事実だが
主に、今、アメリカにさせ…出張中のマッスル禿とかK-No.711とか最強禿とか
天地も、どちらかと言うと目立ちがちな存在だ
モンスの天使の大規模破壊は、どうしても目立つ
目標を抹殺するために、工場一つ丸々破壊した事もあるのだ
…その後に、謹慎一ヶ月をくらってはいるが
モンスの天使の大規模破壊は、どうしても目立つ
目標を抹殺するために、工場一つ丸々破壊した事もあるのだ
…その後に、謹慎一ヶ月をくらってはいるが
そんな、天地であっても
流石に、白昼堂々、繁華街でモンスの天使達を呼ぶことにはためらいがあるのか
気配こそすれど、天使達は実体化しない
流石に、白昼堂々、繁華街でモンスの天使達を呼ぶことにはためらいがあるのか
気配こそすれど、天使達は実体化しない
「流石に、この程度の判断はつくようになったか」
「いつまでもガキ扱いしないでもらおうか。そもそも、俺とお前じゃ一つしか歳が違わないだろ」
「いつまでもガキ扱いしないでもらおうか。そもそも、俺とお前じゃ一つしか歳が違わないだろ」
辰也を睨みつける天地
その目には、辰也への敵意と憎悪が込められている
その目には、辰也への敵意と憎悪が込められている
かつては、同じ任務についた事もある仲だ
だが、その頃からいがみ合っていた…と言うか、天地から一方的に辰也に対して敵意を燃やし続けていた
歳が二桁に届かぬ頃は、そうではなかった記憶もない訳ではないが、辰也にとっては割りとどうでもいいことだ
だが、その頃からいがみ合っていた…と言うか、天地から一方的に辰也に対して敵意を燃やし続けていた
歳が二桁に届かぬ頃は、そうではなかった記憶もない訳ではないが、辰也にとっては割りとどうでもいいことだ
「ガキだろ、お前は。どうせ、未だに抱き枕かモンスの天使抱きしめてないと眠れないんだろ?」
「何だと!?彼女達の抱きごこちを知らないのか!?」
「何だと!?彼女達の抱きごこちを知らないのか!?」
否定なし
むしろ、堂々と開き直っている
少なくとも、白昼堂々、大声で主張すべきことではない
むしろ、堂々と開き直っている
少なくとも、白昼堂々、大声で主張すべきことではない
…つまり、相変わらず、あのハーレム状態で抱きしめたり抱きしめられたりして寝ているのだろう
もげろ、リア充
こっそり、辰也は心の中で天地を呪った
もげろ、リア充
こっそり、辰也は心の中で天地を呪った
「第一、俺はコーヒーを砂糖なしで飲めるようになったんだ。もうガキじゃない」
「それ、別に威張れた事でもないし、大人の証って訳でもないだろ」
「それ、別に威張れた事でもないし、大人の証って訳でもないだろ」
天地の言葉に、呆れたように突っ込む辰也
大人でも、ブラックコーヒーが苦手な奴なんて、いくらでもいるだろうに
マッドガッサー騒動以降、誠からの縁で知り合った「仲介者」など、その筆頭だ
むしろ、彼の場合、コーヒー自体が飲めないようだったが
大人でも、ブラックコーヒーが苦手な奴なんて、いくらでもいるだろうに
マッドガッサー騒動以降、誠からの縁で知り合った「仲介者」など、その筆頭だ
むしろ、彼の場合、コーヒー自体が飲めないようだったが
「とりあえず、てめぇとガキみたいな喧嘩する暇は俺にはないんだよ」
相手をするのも、馬鹿らしくなって
辰也は、さっさと天地から離れようとした
だが、その辰也を天地が引き止める
辰也は、さっさと天地から離れようとした
だが、その辰也を天地が引き止める
「待てよ。H-No.96」
「…だから、その呼び方はやめろって言ってるだろ」
「…だから、その呼び方はやめろって言ってるだろ」
ため息と共に、立ち止まる
まったく、何故こいつは、こちらに突っかかってばかりなのか
恨みを買った覚えなど、ないのだが
まったく、何故こいつは、こちらに突っかかってばかりなのか
恨みを買った覚えなど、ないのだが
「俺は、あの騒動の時、お前とH-No.360を殺そうとしたんだぞ?……何か、言うことはないのか?」
「…………」
「…………」
マッドガッサー達と共に、中央高校に立てこもった時
モンスの天使達の、集中射撃を受けた
辰也が、背中に軽く銃弾を掠らせただけで、後は特に怪我人らしい怪我人もでなかった
辰也が受けた傷とて、「組織」に居た頃に投与された薬の影響か、大して時間も経たずに治ってしまう程度の傷で
一歩間違えば危なかった事は事実である
通常ならば、恨みを抱いても当たり前の事
モンスの天使達の、集中射撃を受けた
辰也が、背中に軽く銃弾を掠らせただけで、後は特に怪我人らしい怪我人もでなかった
辰也が受けた傷とて、「組織」に居た頃に投与された薬の影響か、大して時間も経たずに治ってしまう程度の傷で
一歩間違えば危なかった事は事実である
通常ならば、恨みを抱いても当たり前の事
それでも
「別に、何も」
辰也としては、天地を恨む気には、なっていなかった
恨むのも、面倒臭い
そんな感覚しかない
恨むのも、面倒臭い
そんな感覚しかない
そんな辰也の様子を、馬鹿にされた、と感じたのか
天地は、ますます辰也を睨みつけてくる
天地は、ますます辰也を睨みつけてくる
「…ただ、また俺達に手を出してくるなら、お前は敵だ。その時は相手をする」
「階段がないと何もできない癖に……」
「俺は、な」
「階段がないと何もできない癖に……」
「俺は、な」
確かに、自分は階段がなければほぼ無力だ
だが
だが
「…俺達は、一人じゃあないんでね?」
「------っ!?」
「------っ!?」
耳元で囁かれた、その声に
天地が、びくりと体を震わせる
天地が、びくりと体を震わせる
恐らく、直前まで気配を感じなかったのだろう
気配を消して、こちらに近づいてきていたから
気配を消して、こちらに近づいてきていたから
「マリ、探してたもん、見付かったのか?」
「はい、おかげさまで」
「はい、おかげさまで」
にこり
司祭の姿をとっているマリが、柔和な笑みを浮かべた
先ほど、天地に囁きかけたときのどこか凶悪な色は、消えうせている
司祭の姿をとっているマリが、柔和な笑みを浮かべた
先ほど、天地に囁きかけたときのどこか凶悪な色は、消えうせている
「さて、後は肉屋によるだけでしたね」
「食いすぎなんだよ、てめぇ。もっと抑えろ」
「食いすぎなんだよ、てめぇ。もっと抑えろ」
一味のエンゲル係数増加の原因に、軽くため息をつく辰也
まぁ、言っても無駄だろうが
すたすたと、マリは天地から離れていく
まぁ、言っても無駄だろうが
すたすたと、マリは天地から離れていく
「…こう言う訳です。我々は、仲間に手を出されたら…容赦はしませんよ?」
「「組織」も、俺たち相手は積極的に攻撃しない事になったんだろ?これ以上無駄に敵を増やしたくないだろ」
「----てめぇら」
「「組織」も、俺たち相手は積極的に攻撃しない事になったんだろ?これ以上無駄に敵を増やしたくないだろ」
「----てめぇら」
静かに、天地は辰也を睨みつける
憎悪、憎悪、憎悪
…それと、ほんの少し、別の感情
それが、真っ直ぐに叩きつけられた
憎悪、憎悪、憎悪
…それと、ほんの少し、別の感情
それが、真っ直ぐに叩きつけられた
「「組織」がいなければ、生き延びられなかった癖に…!「組織」に牙をむいて、ただですむと思うなよ……!」
「…別に、体中弄繰り回されて、訳のわからない薬たっぷりと投与されてまで、生き延びたいとは思わなかったがな」
「…別に、体中弄繰り回されて、訳のわからない薬たっぷりと投与されてまで、生き延びたいとは思わなかったがな」
ただ、と
辰也は、短く続ける
辰也は、短く続ける
「今は、這いつくばろうが何しようが、俺は生き延びるからな。誰を敵に回そうとも」
傍にいたい相手が、いるからには
死ぬ訳にはいかないのだ
死ぬ訳にはいかないのだ
傍にいたい相手が居る
共に生きたい相手がいる
---救いたい相手が、いるから
共に生きたい相手がいる
---救いたい相手が、いるから
何がなんでも、生き延びる
「だから、お前がこっちに攻撃するなら…容赦しねぇぞ」
ただ、それだけを次げて
今度こそ、辰也は天地に背を向けて、この場を後にしていく
さっさと買出しを済ませて、恵が待っている教会に帰りたい
今度こそ、辰也は天地に背を向けて、この場を後にしていく
さっさと買出しを済ませて、恵が待っている教会に帰りたい
「…あれが、あなたの因縁の相手ですか?」
「そんな大袈裟なもんじゃねぇよ。向こうが勝手に突っかかってきてるだけだ」
「そんな大袈裟なもんじゃねぇよ。向こうが勝手に突っかかってきてるだけだ」
本当、面倒臭い
深々とため息をついて、辰也はマリとともに、繁華街の喧騒の中に姿を消していった
深々とため息をついて、辰也はマリとともに、繁華街の喧騒の中に姿を消していった
「………あの野郎」
憎々しげに、辰也の後ろ姿を見送った天地
こちらのことを、歯牙にもかけないと言うのか
裏切り者の癖に
あんなにも恵まれた状態だった癖に…「組織」を裏切った、恩知らずが
こちらのことを、歯牙にもかけないと言うのか
裏切り者の癖に
あんなにも恵まれた状態だった癖に…「組織」を裏切った、恩知らずが
自分の都市伝説の力ならば、「13階段」には勝てる
相性的に、こちらが圧倒的に有利なのだから
…後の問題は、向こうの仲間の契約している都市伝説
それの対策さえできれば……!
だが、それまでは手を出せない
それが、忌々しい
相性的に、こちらが圧倒的に有利なのだから
…後の問題は、向こうの仲間の契約している都市伝説
それの対策さえできれば……!
だが、それまでは手を出せない
それが、忌々しい
「あぁ、畜生……!」
この忌々しさを、どうしてくれようか
苛立ちを感じながら、天地もまた、繁華街の喧騒の中に身を消していったのだった
苛立ちを感じながら、天地もまた、繁華街の喧騒の中に身を消していったのだった
続く予定はない