●
また何か問題が起こっているようだな……。
なにやら戦闘を行っていたらしい翼と誠。学校帰りにそれらと行き合わせたTさんと舞、リカちゃんはさしあたっての脅威を退け、ともかく話を聞こうと思っていた。
その直前、黒服に粘液を拭きとられながら普段よりも力の無い声で謝ってきた翼にTさんは首を振って答える。
「かまわん。舞も無事だったのだしな。――それよりも」
Tさんは視線を転じた。そこには黒服に嫉妬の視線を向けている誠がおり、
「青年、≪悪魔の囁き≫を排除できたようだな」
去年のこともあって半ば乗っ取られると思っていたのだが。と先程感じた≪悪魔の囁き≫の気配について話すTさんを誠は鼻で笑うと、
「当然だ。――愛の力だからな」
そう言って翼へと熱いまなざしを向けた。
「ぎりぎり間に合ってなかったんじゃねえの? Tさんに目隠しされて見えなかったけどなんかを殴ったっぽい音したぜ?」
実際にはその場に居た都市伝説の少女の心臓が抉りだされたのだが、まあ知らなくても良いことだ。故にTさんは訂正しない。
誠もそのことには特に言及せず、少女へと翼に向けるものとは180度違う、醒めた視線を向けた。
「あれは変態だから問題ねえ」
言われた少女の方は何やら艶っぽい声を出して悶えている。
誠の言葉が正しいことを確認し、ひとまず無視することに満場一致した。
「……ところで、なんか変わったか?」
タオルで黒服にタコの粘液を拭われながら翼がTさんに不思議そうな顔を向けた。
「なにが?」
舞が問いかけると翼は首を捻りながら、
「いや、Tさんなんだが、確かお前の事契約者って呼んでなかったか?」
「ああ、それは――」
「ちょっと待ったぁああああああ!」
Tさんが説明しようすると舞が大声でそれを遮った。
「な、なんだ?」
「いや、別に、なんでも、ねえ……」
驚き顔の翼に対して肩で息をしながら答える舞。
Tさんが苦笑していると、リカちゃんが声を発した。
「あのね、お兄ちゃんとお姉ちゃんね、ぎゅーってしてね、ちゅーってしたの」
ジェスチャー付きで言われた言葉にTさんは苦笑を完全な笑みに変え、
「――というわけだ」
周囲でほう、と生温かい応答が返る。
舞は顔を俯けると「は、はは……」と笑い、
「ちょっと、リカちゃん……いいか?」
鞄からリカちゃんを引っ張りだし、電柱の陰へと移動した。
「お姉ちゃん? ……あ、いたいの、そんなに開いたらさけちゃうの、わ、こ、こわれちゃうの! お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」
何やら声が聞こえるがまあすぐに戻ってくるだろう。
そう考え、周囲に「好きにやらせておいてくれ」と前置きし、Tさんは話を続けることにした。
「あの≪コーク・ロア≫の影響下にあった者たち、もしや以前≪魔女の一撃≫の青年が襲われていたのと同じ一派か?」
あの時、髪が伸びる黒服は「ヘタしたら親玉がいて、この能力を使える奴を増やしてる可能性もある」と言っていた。
ならばその親玉がまた動いているのかもしれない。
そう思い訊いてみると、黒服がええ、と答えた。
「おそらくは。ここ最近≪コーク・ロア≫が多く発生していますし、更にそれを治めている者もいるようです」
「そうか……」
それだけではない。あの藤崎と呼ばれていた女性。あの女性に取り憑いていたのは、
「あの山羊頭の異形、≪悪魔の囁き≫の実体化したものだな?」
本来ほんの一瞬だけ人間にとり憑き突発的な悪事を起こさせる存在であるはずのアレがまたあのような姿を顕現するまでに至っている……。「何者かが、悪意を持って、彼に悪魔の囁きをとり憑かせていたように思えます」以前黒服はそう言っていた。もしその通り、人為的に憑いたものだとしたならば、おそらくこの件――
「まだ裏がある……か?」
ならばその件について調べると言っていた黒服さんに進捗状況を聞くべきか。
Tさんが呟いていると舞が電柱の陰からリカちゃんを連れて帰って来た。
リカちゃんはTさんの頭に乗っかり「お姉ちゃん乱暴だったの」と若干涙声で言った。
「照れ隠しなんだ。大目に見てやってくれ」
「そこ! 少し黙れ!」
赤い顔で喚いている舞を見ながらリカちゃんは数秒Tさんの頭で悩み、
「わかったの」
舞の頭上へと飛び移った。
「お姉ちゃんはずかしがりやさん?」
舞はその言葉にしばらく唸り声を上げていたが、やがて「あーもうそうだよ」と言って大きく息を吐き出すと、
「……またでかくなってんのな」
どことは言わないけど。と照れ隠しまぎれに半目でカメラを取り出して黒服をシャッターに収め始めた。
なにやら難しい顔をしている黒服に対して幾枚かシャッターを切ると、舞は翼に目を向ける。
「ってかなんだ? あのタコとかラリった人間大量発生とか昔の携帯ゲーム機の中のモンスターを合体させたみたいなやつとか」
「あのドラゴンはゲームから実体化した都市伝説か」
ゲームをほとんどやらないTさんはなるほどと頷いている。それを横目に舞は話を続ける。
「話聞いてるとさ、あのタコの姉ちゃん、チャラい兄ちゃんの知り合いなんだろ?」
「あ、ああ。そうだけど」
「で、あの≪悪魔の囁き≫はあの姉ちゃんを操ってると」
「おそらく後ろで手引きをしている者がいるな」
Tさんの言葉にそうかそうかと一人でなにやら納得している舞は、
「Tさん」
Tさんへと振り返った。Tさんもああ、と頷き、
「ともかく、一度状況を整理しようか」
言った。
「でも巻き込むのは……」
翼がやはり常の力が無い言葉をかける。
舞はそれに「何言ってやがる」と笑い、
「俺は自分から首突っ込みに行くんだぜ?」
告げた。
「だ、そうだ」
薄らとTさんが口元に笑みを浮かべた。そんなTさんに声がかかる。
「では場所を移して話をしないか?」
さすがに少し冷える。そう言って声をかけてきたのは黒服と共にやって来た、分厚い本を手にした薄茶色の髪に白い肌をして眼鏡をかけた小柄な――
「おお、初めて見る………………兄ちゃん? 姉ちゃん?」
「自己紹介も必要になりそうだな」
「なの」
どこか空気の緩んだ笑いが生まれた。
なにやら戦闘を行っていたらしい翼と誠。学校帰りにそれらと行き合わせたTさんと舞、リカちゃんはさしあたっての脅威を退け、ともかく話を聞こうと思っていた。
その直前、黒服に粘液を拭きとられながら普段よりも力の無い声で謝ってきた翼にTさんは首を振って答える。
「かまわん。舞も無事だったのだしな。――それよりも」
Tさんは視線を転じた。そこには黒服に嫉妬の視線を向けている誠がおり、
「青年、≪悪魔の囁き≫を排除できたようだな」
去年のこともあって半ば乗っ取られると思っていたのだが。と先程感じた≪悪魔の囁き≫の気配について話すTさんを誠は鼻で笑うと、
「当然だ。――愛の力だからな」
そう言って翼へと熱いまなざしを向けた。
「ぎりぎり間に合ってなかったんじゃねえの? Tさんに目隠しされて見えなかったけどなんかを殴ったっぽい音したぜ?」
実際にはその場に居た都市伝説の少女の心臓が抉りだされたのだが、まあ知らなくても良いことだ。故にTさんは訂正しない。
誠もそのことには特に言及せず、少女へと翼に向けるものとは180度違う、醒めた視線を向けた。
「あれは変態だから問題ねえ」
言われた少女の方は何やら艶っぽい声を出して悶えている。
誠の言葉が正しいことを確認し、ひとまず無視することに満場一致した。
「……ところで、なんか変わったか?」
タオルで黒服にタコの粘液を拭われながら翼がTさんに不思議そうな顔を向けた。
「なにが?」
舞が問いかけると翼は首を捻りながら、
「いや、Tさんなんだが、確かお前の事契約者って呼んでなかったか?」
「ああ、それは――」
「ちょっと待ったぁああああああ!」
Tさんが説明しようすると舞が大声でそれを遮った。
「な、なんだ?」
「いや、別に、なんでも、ねえ……」
驚き顔の翼に対して肩で息をしながら答える舞。
Tさんが苦笑していると、リカちゃんが声を発した。
「あのね、お兄ちゃんとお姉ちゃんね、ぎゅーってしてね、ちゅーってしたの」
ジェスチャー付きで言われた言葉にTさんは苦笑を完全な笑みに変え、
「――というわけだ」
周囲でほう、と生温かい応答が返る。
舞は顔を俯けると「は、はは……」と笑い、
「ちょっと、リカちゃん……いいか?」
鞄からリカちゃんを引っ張りだし、電柱の陰へと移動した。
「お姉ちゃん? ……あ、いたいの、そんなに開いたらさけちゃうの、わ、こ、こわれちゃうの! お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」
何やら声が聞こえるがまあすぐに戻ってくるだろう。
そう考え、周囲に「好きにやらせておいてくれ」と前置きし、Tさんは話を続けることにした。
「あの≪コーク・ロア≫の影響下にあった者たち、もしや以前≪魔女の一撃≫の青年が襲われていたのと同じ一派か?」
あの時、髪が伸びる黒服は「ヘタしたら親玉がいて、この能力を使える奴を増やしてる可能性もある」と言っていた。
ならばその親玉がまた動いているのかもしれない。
そう思い訊いてみると、黒服がええ、と答えた。
「おそらくは。ここ最近≪コーク・ロア≫が多く発生していますし、更にそれを治めている者もいるようです」
「そうか……」
それだけではない。あの藤崎と呼ばれていた女性。あの女性に取り憑いていたのは、
「あの山羊頭の異形、≪悪魔の囁き≫の実体化したものだな?」
本来ほんの一瞬だけ人間にとり憑き突発的な悪事を起こさせる存在であるはずのアレがまたあのような姿を顕現するまでに至っている……。「何者かが、悪意を持って、彼に悪魔の囁きをとり憑かせていたように思えます」以前黒服はそう言っていた。もしその通り、人為的に憑いたものだとしたならば、おそらくこの件――
「まだ裏がある……か?」
ならばその件について調べると言っていた黒服さんに進捗状況を聞くべきか。
Tさんが呟いていると舞が電柱の陰からリカちゃんを連れて帰って来た。
リカちゃんはTさんの頭に乗っかり「お姉ちゃん乱暴だったの」と若干涙声で言った。
「照れ隠しなんだ。大目に見てやってくれ」
「そこ! 少し黙れ!」
赤い顔で喚いている舞を見ながらリカちゃんは数秒Tさんの頭で悩み、
「わかったの」
舞の頭上へと飛び移った。
「お姉ちゃんはずかしがりやさん?」
舞はその言葉にしばらく唸り声を上げていたが、やがて「あーもうそうだよ」と言って大きく息を吐き出すと、
「……またでかくなってんのな」
どことは言わないけど。と照れ隠しまぎれに半目でカメラを取り出して黒服をシャッターに収め始めた。
なにやら難しい顔をしている黒服に対して幾枚かシャッターを切ると、舞は翼に目を向ける。
「ってかなんだ? あのタコとかラリった人間大量発生とか昔の携帯ゲーム機の中のモンスターを合体させたみたいなやつとか」
「あのドラゴンはゲームから実体化した都市伝説か」
ゲームをほとんどやらないTさんはなるほどと頷いている。それを横目に舞は話を続ける。
「話聞いてるとさ、あのタコの姉ちゃん、チャラい兄ちゃんの知り合いなんだろ?」
「あ、ああ。そうだけど」
「で、あの≪悪魔の囁き≫はあの姉ちゃんを操ってると」
「おそらく後ろで手引きをしている者がいるな」
Tさんの言葉にそうかそうかと一人でなにやら納得している舞は、
「Tさん」
Tさんへと振り返った。Tさんもああ、と頷き、
「ともかく、一度状況を整理しようか」
言った。
「でも巻き込むのは……」
翼がやはり常の力が無い言葉をかける。
舞はそれに「何言ってやがる」と笑い、
「俺は自分から首突っ込みに行くんだぜ?」
告げた。
「だ、そうだ」
薄らとTさんが口元に笑みを浮かべた。そんなTさんに声がかかる。
「では場所を移して話をしないか?」
さすがに少し冷える。そう言って声をかけてきたのは黒服と共にやって来た、分厚い本を手にした薄茶色の髪に白い肌をして眼鏡をかけた小柄な――
「おお、初めて見る………………兄ちゃん? 姉ちゃん?」
「自己紹介も必要になりそうだな」
「なの」
どこか空気の緩んだ笑いが生まれた。
●
悪意が降り立つ]]|仲介者と追撃者と堕天使と|たぶんここら辺の事を自己紹介で話された。参考までにどうぞ
マドカ
へ
へ