とある昼下がり
学校町の繁華街に存在する、ウェイトレスの制服のデザインがちょっとアレな事で有名なファミレス「フェアリー・モート」にて
学校町の繁華街に存在する、ウェイトレスの制服のデザインがちょっとアレな事で有名なファミレス「フェアリー・モート」にて
ことん、と
机の上に置かれた小さな子瓶
中には、液体…薬品が入っている
机の上に置かれた小さな子瓶
中には、液体…薬品が入っている
「これが、悪魔の囁きを体外へと排出させる薬かい?」
「あぁ。つっても、深く憑かれた奴には、一発じゃ効かねぇからな。そう言う奴には、数度に渡って投薬するか、投薬前に説得なりなんなりして、悪魔の囁きを少しでもそいつから引き剥がす必要がある」
「あぁ。つっても、深く憑かれた奴には、一発じゃ効かねぇからな。そう言う奴には、数度に渡って投薬するか、投薬前に説得なりなんなりして、悪魔の囁きを少しでもそいつから引き剥がす必要がある」
「第三帝国」所属のドクターと、マッドガッサー一味の1人である広瀬 辰也
この二人はとある理由から協力しあっており、時折、こうやって薬品類の譲渡などを行っている
辰也が、本来はドクターのような研究者の類を毛嫌いしている事を考えれば、随分と異質な光景である
この二人はとある理由から協力しあっており、時折、こうやって薬品類の譲渡などを行っている
辰也が、本来はドクターのような研究者の類を毛嫌いしている事を考えれば、随分と異質な光景である
「こっちでは、ひとまず、魔女が精製に成功した。だから、それはそっちで好きに使え」
「あぁ、それでは、そうさせてもらおう」
「あぁ、それでは、そうさせてもらおう」
薬品の入った小瓶を、懐に仕舞うドクター
その表情には、やや疲れが滲んでいた
その表情には、やや疲れが滲んでいた
「また、ロクに休んでねーのか、お前は」
「…何せ、沙々耶が襲われてしまったからね。彼女を護る為の対処もしなければならないからな」
「…悪魔の囁き契約者の、口封じか」
「…何せ、沙々耶が襲われてしまったからね。彼女を護る為の対処もしなければならないからな」
「…悪魔の囁き契約者の、口封じか」
ドクターの研究の成果によって、悪魔の囁きから人間になった少女、沙々耶
だが、彼女から、悪魔の囁きであった頃の記憶が消えた訳ではない
…契約者であった存在に、彼女はいつ、口封じされてもおかしくないのだ
人間となった今、その気配を探る事もできないであろうから、彼女が過敏に犬を怖がっていなければ、ほぼ、バレなかったはずなのだが
だが、彼女から、悪魔の囁きであった頃の記憶が消えた訳ではない
…契約者であった存在に、彼女はいつ、口封じされてもおかしくないのだ
人間となった今、その気配を探る事もできないであろうから、彼女が過敏に犬を怖がっていなければ、ほぼ、バレなかったはずなのだが
「朝比奈 秀雄。かなり冷酷な人物のようだね」
「…冷酷どころか、人間のカスだ」
「…冷酷どころか、人間のカスだ」
ぼそり、低く呟く辰也
朝比奈 秀雄と言う男の経歴その他を調べた結果わかった事実は、ただでさえ、仲間が悪魔の囁きに憑かれて暴走したり、悪魔の囁き憑きに襲われて負傷した事実から彼が抱いていた怒りに、油を注いだ
辰也にとって、朝比奈 秀雄と言う男は、どこまでも憎悪の対象でしかなくなっていた
朝比奈 秀雄と言う男の経歴その他を調べた結果わかった事実は、ただでさえ、仲間が悪魔の囁きに憑かれて暴走したり、悪魔の囁き憑きに襲われて負傷した事実から彼が抱いていた怒りに、油を注いだ
辰也にとって、朝比奈 秀雄と言う男は、どこまでも憎悪の対象でしかなくなっていた
「相手の戦力その他は、こっちのメモに纏めといた。「第三帝国」が連中に対してどう言う態度に出るかは知らねぇが、使えそうだったら使っとけ」
「ありがたく、その情報も頂こう……こちらとしては、総統が無茶な事をしでかさない事を祈るばかりだよ」
「ありがたく、その情報も頂こう……こちらとしては、総統が無茶な事をしでかさない事を祈るばかりだよ」
小さく苦笑するドクター
…そうなのだ
朝比奈の、クールトーとの契約による、犬を操る能力
それは、「第三帝国」総統日本支部代表にとって、まことに嫌悪すべき能力である
無茶な事をしでかさないでほしい
本当に、祈るばかりである
…そうなのだ
朝比奈の、クールトーとの契約による、犬を操る能力
それは、「第三帝国」総統日本支部代表にとって、まことに嫌悪すべき能力である
無茶な事をしでかさないでほしい
本当に、祈るばかりである
「…それにしても、これくらいのやり取りなら、診療所で行っても、良かったのではないかね?」
コーヒーを口にしつつ、そう尋ねるドクター
まぁ、この店のウェイトレスの制服は、目の保養になるのでこれはこれでいいのだが
…ドクターが尋ねたその言葉は、辰也は難しい表情を浮かべた
まぁ、この店のウェイトレスの制服は、目の保養になるのでこれはこれでいいのだが
…ドクターが尋ねたその言葉は、辰也は難しい表情を浮かべた
「……つってもな。診療所にあの餓鬼がいる時は、なるべくこう言う話はしたくねーんだよ」
「エニグマ姉妹の、妹の事かね?」
「エニグマ姉妹の、妹の事かね?」
あぁ、と頷く辰也
あの少女から、何らかの都市伝説の影響を感じて以来、辰也はずっと、彼女を警戒し続けていた
なるべく顔を合わせようとせず、彼女の前ではいかなる情報も口にしようとしない
徹底したさけようである
出来うる限り、恵を彼女に会わせないよう努力も忘れていない
あの少女から、何らかの都市伝説の影響を感じて以来、辰也はずっと、彼女を警戒し続けていた
なるべく顔を合わせようとせず、彼女の前ではいかなる情報も口にしようとしない
徹底したさけようである
出来うる限り、恵を彼女に会わせないよう努力も忘れていない
「何の都市伝説の影響か、わかったもんじゃないからな。悪魔の囁きの可能性だって捨てきれないし……万が一、「アメリカ政府の陰謀論」の影響なんざ受けてた日にゃ、洒落になんねぇだろ」
「まったく、君は警戒心が強いな……まぁ、悪い事ではないと思うがね」
「まったく、君は警戒心が強いな……まぁ、悪い事ではないと思うがね」
辰也の生い立ちや今までの経験を考えれば、むしろ、その警戒は当然の事と言えよう
自身の身の安全のためにも、仲間の安全の為にも
彼は、強い警戒心を持って、行動しているのだ
…その辺りに関する知識は、恐らく一部…どころか大半が、あの黒服から受け継いだ知識なのかもしれないが
自身の身の安全のためにも、仲間の安全の為にも
彼は、強い警戒心を持って、行動しているのだ
…その辺りに関する知識は、恐らく一部…どころか大半が、あの黒服から受け継いだ知識なのかもしれないが
「複数の都市伝説組織と敵対してんだ。警戒は当たり前だろ」
ドクターの予想通り、そう口にする辰也
そうだな、とドクターも頷く
そうだな、とドクターも頷く
「…君が身につけているピアスが、ミスリル銀製なのも、一部都市伝説の不意打ちを警戒してかい?そのピアスならば、「ピアス穴の白い糸」の効果は受け付けないだろうからね」
「……よくわかったな。これがミスリル銀だって」
「……よくわかったな。これがミスリル銀だって」
ちらり、普段は肩の辺りまで伸ばされた髪に隠れてよく見えない、その耳
そこにつけられた一対のピアスは…確かに、ドクターの言う通り、ミスリル銀製だ
その存在自体が都市伝説であるそれは、他の都市伝説の影響を受け付けない
「組織」にいた頃に、黒服Hから渡された物だった
……また、あれに世話になっている事実に気づかされ、辰也はやや、面白くない
そこにつけられた一対のピアスは…確かに、ドクターの言う通り、ミスリル銀製だ
その存在自体が都市伝説であるそれは、他の都市伝説の影響を受け付けない
「組織」にいた頃に、黒服Hから渡された物だった
……また、あれに世話になっている事実に気づかされ、辰也はやや、面白くない
「…とにかく。あいつについてる都市伝説、さっさと確認した方がいいんじゃねぇのか?」
「……そうだな。君の言うとおり、「アメリカ政府の陰謀論」の影響を受けていたら…それは、問題だ」
「……そうだな。君の言うとおり、「アメリカ政府の陰謀論」の影響を受けていたら…それは、問題だ」
…もっとも、それ以上に問題なのは
彼女についているのが「アメリカ政府の陰謀論」だったとして…それが判明した時、どうするか?
それが、非常に重い問題として、存在してしまっている
それが、ドクターを憂鬱にさせた
彼女についているのが「アメリカ政府の陰謀論」だったとして…それが判明した時、どうするか?
それが、非常に重い問題として、存在してしまっている
それが、ドクターを憂鬱にさせた
「もしもの時は、こっち経由であの双子の餓鬼の引き取り先、探すぞ?」
「…気持ちだけ受け取っておこう。こちらの問題は、こちらで始末をつけるさ」
「…気持ちだけ受け取っておこう。こちらの問題は、こちらで始末をつけるさ」
…それが、最悪の結果になってしまわないように、努力するだけだ
ドクターはそう、口の中で小さく付け足したのだった
ドクターはそう、口の中で小さく付け足したのだった
to be … ?