「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 電子レンジで猫をチン!-20

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【電磁人の韻律詩20~三者三様~】

「元気にしてる?」
突然、姉から電話がかかってきた。
「急に電話なんて珍しいなぁ、何かあったの?」
「いや、特に何も無いさ。ただちょっと様子が気になってね。」
「珍しいなぁ……絶対何か有っただろ?」
「強いて言えば友達と飲み会やってワインセラー全滅させられたくらいかな?」
「結構高い物入ってるって前に聞いたけど?」
「全部……、やられた。」
「ご愁傷様、どうせ姉さん飲めないんだから酒も喜んでいるよ。」
「ひ、ひどい!?弟にまでこんなこと言われるなんてもう嫌だ~!」
「だって物は使わないと意味ないじゃない。」
「そんな~………。」
「また日本に帰って来なよ、仕事が忙しいとは思うんだけどさ。
 姉さんの愛した学校町は相変わらず物騒で楽しいよ。
 覚えてる?家族で遊びに行ったテーマパークとか有ったじゃん。
 あそこもリニューアルオープンされるらしいし………。」
「え、えっと~……。そういうのは良いかな?
 じゃあもう切るよ!ゴメンネ!」
勝手に電話して勝手に切られた。
自分勝手な姉である。
思えば昔から自分を放って遊び回っていたりする勝手な奴だったのだ。
深く立ち入ろうとすると向こうから拒絶する。
結局外にいて働いているだけの引きこもりだ。
だから、笛吹が彼女と仲が良かったと聞いて驚いた。
あの男がわざわざ仲が良かったと言うのだから尚のこと驚かされたのを覚えている。

「明日くーん?」
突然、向坂が所長室に入ってきた。
「どうした向坂?」
「いや、過去の事件の資料無いかなと思って。
 所長から預かってなかった?」
「所長から?」
あの男から預かり物なんてしただろうか?
適当に所長の机の棚を漁ってみる。
『向坂境へ』と書かれた白いusbメモリを見つけた。
「これか?」
「そうそう、それだよ!」
「過去の事件って一体何を調べてるのさ?」
「あーそういえば言ってなかったね。
 私今ね、ハーメルンの笛吹きについて調べているの!」
ハーメルンの笛吹き。
夏から秋にかけて学校町周辺に現れ、
最初は真夜中に子供
慣れると真昼間に大人
どんどん犯行難易度をあげて
最後にはあらゆる時間帯であらゆる人間を殺しまくった。
まるで人殺しの方法を勉強しているかのような几帳面な手口が一部の若者の間で評判になり、
全国各地で模倣犯が続出しては、真似しきれずに逮捕されている。
……まあうちの所長、笛吹丁である。

「へへぇ、なんでまた?」
「姉さんが殺されたのかもしれないんだよね、そいつに。
 死体が見つかってないからさ。」
ハーメルンの笛吹きの犯行の特徴。
それは死体が見つからないことにある。
死体が見つからない故に手がかりが見つからない。
それ故に模倣犯達は失敗して失敗して失敗し続けた。
真昼間だろうが都会の雑踏の中だろうが死体が消え去ってしまっては捜査もできない。
「所長はそいつが怪しいって言っているんだよね。」
そりゃ当たり前だ。
おそらく彼女の姉についても心当たりが有るのだろう。
「成る程なあ……。でも単に行方不明ってことも……。」
「あれ?言ってなかったっけか。
 本当に居なくなる前に私に一度会いに来てるんだよお姉ちゃん。」
向坂は何時も被っているニット帽の房の部分をいじりながら語る。
「その時にハーメルンの笛吹きに追いかけられているって話してた。」
ああ、あの時か。
ショックでしばらく彼女は学校に来られなかった。
「その後、お姉さんは完全に居なくなったのか。」
「うん………。」
向坂は普段は明るい彼女からは想像も出来ないような表情をしている。
俺には恋路という人が居ながら不覚にもドキっとしてしまった。

「な、なぁ向坂……。」
「何?明日君。」
顔を上げると彼女は泣いていた。
姉が居なくなって相当悲しい思いをしたのだろう。
涙を拭く為にとりあえずティッシュを渡そうとしたときだった。
「アスマー、今日の依頼は無しだよー!」
ノックも無しに恋路が所長室に入ってきた。
「…………。」
「…………。」
「…………。」
こいつぁ困ったね。
「なんか知らないけど向坂ちゃんを泣かせたな!?」
「ちょっと待って!?違う!違うから!」
予想通りの展開である。
「待って恋路さん、これはちょっと違うんだって!」
ナイスフォロー向坂さん。
「向坂さんがアスマを庇う………、まさか!
 ――――――浮気?
 三ヶ月目の浮気ってレベルじゃないよそれ!」
前言撤回、駄目じゃん向坂さん。
その時、所長室の奥から橙が出てきた。
「待て待て恋路。
 単に向坂が姉のことを思い出して泣いていただけだ。」
フォローありがとう檸檬ちゃん。
今、心の底から俺は叫びたい。
「檸檬と言うな檸檬と!」
橙さん、目が笑っていないです。

さて数分後、恋路の誤解をなんとか解くことに成功した俺は恋路のご機嫌を取る為に一緒にファミレスに向かっていた。
戦闘できない面子ばかり事務所に残すのも不味いとは思ったのだが、
さっきまで彼女の機嫌を損ねていたのだからこれ以上怒らせる訳にもいかない。
何より橙に『行っておかないと大変だぞー』と耳打ちされたのが効いた。
あいつの警告に従わないと毎回酷い目に遭うのだ。
ファミレスに入ると窓側の席に案内され、注文を聞きに店員がやってきた。
「レモンティー。」
俺は紅茶派なのだ。
適当に安い物を注文する。
「学校町南区店限定小悪魔焦がし塩キャラメルジェットコースターメリーゴーランドパフェ~森の魔法使いの建てた御菓子小屋風~ストロベリーパニックエディション……と。」
「と!?」
「どうしたのさアスマ。」
「いや、なんか名前が滅茶苦茶長いなあ……と。」
「春の新作だもん、チェックしないと。」
チェックとかそういう物では無い気がする。
「それと何を頼むかなあなんて、あははは……。」
「自分へのご褒美なんだからアスマは文句言っちゃ駄目!
 あ、でも支払いはお願いね。」
「解ったよ……。」
「それじゃあ、春一番の風を運ぶふんわりプディングクリーム大盛り増し増し南国風もお願いします。」
まあこれで怒りが解けるなら安い物だ。
ファミレスの店員さんも苦笑いである。
あれ?
ってかこの店員クラスの奴じゃねえか!
見られたぞ恥ずかしいなこれ。
どうにも今日は災難気味だ。

「どうもねー、黒服さんの様子がおかしいんだよー。」
パフェをもぐもぐ食べながら喋る恋路。
正直喰うか話すかどちらかにして欲しい。
「様子がおかしい?どういうことさ。」
「いや、所長の真似をすれば死臭がするっていうの?
 北斗の拳で言えば死兆星が見えているっていうの?
 とにかくそんな感じ。」
「やばいことに巻き込まれているって感じか。」
そんな気は全くしなかったんだが、
まあ恋路の話は聞いておいて損はない。
「いいや、やばいことに巻き込まれているというよりは身体に異常が有るみたい。
 ばれたら誰にも言うなって言われそうだけど私は何も言われてないから。
 アスマにだけは言っておかないとと思ってさ。」
「バレンタインの日に会ってたんだっけ?」
「チョコ買ってる途中でね。愛人と一緒だったぜ。」
「愛人!?」
結婚してたのかあの人。
「いや、だって恋人には見えなかったから……。」
なんだ、びっくりさせる。
「只の彼女だろう?ビックリさせるなよ。」
「ごめんごめん。」
唇に付いたクリームを舐め取ると恋路は笑った。

「で、結局何を言いたいのよ?」
「ん?もし黒服さんの身に何か起こったら私達どうしよーねって。」
普段からお世話になってるのにそんな事を考えるなんて冷たい奴だ。
こいつには恩とか義理とか無いのか?
自分のパートナーながら嫌になる。
「…………。」
「嫌そうな顔しないでくれよ。私には貴方を守る義務がある。
 Hさんは組織の中では過激派の人達と対立する立場だったって話は聞いているから……
 まあ私達は穏健派とかの黒服に引き取られるのかな?
 アスマが正義の味方やる分にはやりやすいよね。」
「おい、やめろよ。縁起でもない……。」
「うーん………ごめん。でも安全な場所に居たいってのは解ってくれるよね?」
「それは尊重するけどさ……。」
するけどさ。
するんだけどさ。
「恋路、お前にとって善悪って何よ?」
「悪はまだ、……あのハーメルンの笛吹きと対峙してさえ解らない。」
恋路はプリンを食べていたスプーンをカチャリと置く。
「でもね、善とか正義とか呼ばれる物については少し解ったよ。
 正義というのはきっと、間違いなく君だ。
 私は君と契約しているし君には世話になっている。
 だから私は結果として正義の味方。」
「………そうか、俺が正義ねえ。」
どうにもしっくりとこない。
一個人が正義や悪を体現するなんて不可能だ。

「そういう君はどうなんだい?
 君はいつも正義を口にするけど君にとっての正義とか悪って何さ?」
「うーん、俺はそういうのって言葉にできるもんじゃないと思うんだよ。
 子供の頃悪い事したら親に殴られるじゃん?
 で、駄目な物は駄目っていわれるだろ?
 そう言う物だと俺は思うな。」
「人に答えを求めておいて自分はそれか。
 なんとも卑怯じゃないか、ずるだ、ひっかけだよ!」
「あはは、ごめんごめん。」
笑いながらも俺の心は妙に寂しかった。
恋路にとって正義や悪はやっぱりその程度の物なのだ。
自分にとって心地よいから正義で居る。
それじゃあ悪人と一緒じゃないか。
まあそんなことを他人に求めること自体が間違っている。
結局、俺のワガママだ。
ワガママなのは良くない。
「そういえば俺気になっていることが有るんだよね。」
「何?」
「向坂の姉さんってハーメルンの笛吹きに殺されたみたいなんだよ。
 それでハーメルンの笛吹きについて笛吹所長に手伝って貰って独自に調査してるみたい。」
「笛吹きの事は笛吹に聞けってかい。中々残酷だね。」
「なんでわざわざあいつは向坂に親切にしているんだと思う?
 罪悪感でも有るのかな?」
俺達には関係無い話かもしれない。
しかしこのまま放っておけば大変なことになる気がするのだ。

「私は趣味だと思うな。悪趣味。」
「自分の掌の上で踊る向坂を見て楽しむのか?」
「うん、しかも私達はそのことを向坂さんには言えない。」
「言えない?どういうことだ。」
真実を話して、助けてあげないと。
「だって向坂さんにこのことを言って見なよ。
 多分彼女どうにかなっちゃうよ?
 優しかったバイト先の上司が姉の仇とか。
 そもそも私や明日より所長の言葉を彼女は信じるはずだ。」
真実を話しても、助けられないのか。
「う………、確かに。
 じゃああいつに直接言って真相を聞いてみれば……。」
「それも駄目だ。所長の言っている言葉を嘘かどうか判断するのはほぼ不可能だよ。」
「俺達が聞いてもあいつがシラ切り続ければ解らない。
 しかも、あいつがシラを切っているかさえも解らない。」
「そういうこと。本人が意識するとしないとに関わらずやっぱり悪事にかけてあの男は天才だわ。
 伊達にこの短期間で探偵として売れている訳じゃないよね。
 人の悪意とかそう言う物の扱い方がすごく上手。」
呆れたように恋路は言う。
笛吹を見ていると本当にどうしようもない男が居るというのが良く解る。
「悪っつーかあれだよな、悪人やるのが上手ってことだよな。」
「彼自身は常識から外れているだけで悪人じゃない。
 躊躇無く悪事を働くことができるだけ。
 それと同じ自然さできっと真逆のことが出来るよ。
 それが上手く行くかは別だけどさ。」
妙な生き物と関わってしまった物だ。
恋路も同じ事を考えたらしく二人揃ってため息を吐いた。

「大変だねえ向坂ちゃんも。」
「だねえ。」
彼女は何処にでも居る普通の高校生じゃないか。
「多分向坂ちゃんって笛吹さんのこと好きだぜ?」
なんだと?それは知らなかったぞ。だとしたら尚のこと救えない。
「えっ、それどういう……」
パリーン!
話の途中、近くの席で窓ガラスが割れる。
「ぎゃははははは!前から一度こういうことやってみたかったんだよな!」
割れたガラスの穴からうだつの上がらないサラリーマン風の男が店内に入ってくる。
「悪魔の囁き?」
「そんなところでしょ。私黒服さんに電話するから頼んだぜアスマ。」
「正義の味方は俺の仕事だからなあ。後でその話詳しく頼む。」
「話すまでも無いと思っていたがまあ良いや。
 じゃあさっさと倒してきてくれよ。」
「行って来マース。」
俺はドサクサに紛れて変身グッズを装着すると男の前に立ちはだかる。
「待て!そこのお前!
 学校町の平和を乱す輩はこのライディーンが許さないぜ!」
考えても仕方がない。
俺は元々考え込むようなタイプじゃないのだ。
「なんだお前は?俺の契約した『米軍の極秘生物兵器』で………。
 あれ?全部ホカホカになってやがる!
 これじゃあつかえねえじゃねえか。」
考えるよりもまず動こう。
今日も正義の味方の始まりだ。
【電磁人の韻律詩20~三者三様~fin】



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