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連載 - 電子レンジで猫をチン!-24

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【電磁人の韻律詩24~こどものじかん~】


「ったくもう…………。
 だから子供って面倒なんだよ。」

明日真はバイクに乗りながらブツブツと文句を言っていた。

話はその日の朝に遡る。
笛吹探偵事務所で探偵代理をしていた明日は一通の手紙を受け取ったのだ。
それは笛吹丁からの手紙で今日明日中にも日本に帰るという内容だったのだ。
内容そのものは彼にとってたいして問題ではなかった。
問題はそれを持ってきた人間である。

「お兄ちゃん、お腹減ったー!」

穀雨吉静。
笛吹探偵事務所が誇る食いしん坊幼女。
子供が苦手な明日にはどうにも面倒な相手だった。
困った明日はとりあえず彼女を食べ放題の店に連れて行くことにしたのだ。
しかしそれが間違いだった。
彼女は食べ過ぎて完全に動けなくなってしまったのだ。
明日は仕方なく、吉静と乗ってきたバイクを店に置いて一旦家に帰り、
その後でわざわざ店までバイクを取りに来たのである。



「大体なんで子供の世話なんかしなきゃいけないんだ。
 そりゃああの時は恋路が居なかったから俺がしたけどさぁ……。
 それにしたってなんで上田はあのタイミングで俺に……。」

明日は善人だ。
だから子供の世話を中途半端にするような無責任なことはしない。
しかし嫌いな物は嫌いなので相当ストレスがたまっていたようだ。

そんな時。
彼は見覚えのある影をみつけた。

「あ、おい、そこの少年。」

バイクを停めると明日は公園でゲーム遊んでいる少年に声をかける。

「あ、お兄さん。また会ったね。」

明日が声をかけた少年は明日の姿を確認すると彼に近づいてきた。



明日真はこの少年と面識がある。
彼はこのところ町を騒がせている悪魔の囁きの一味だ。
悪いことをしている人間は止めなくてはいけない。
明日が彼に声をかけたのは当然の行為だった。

「お兄さん、この前見逃してあげるって言ったんだからもう僕に構わないでよ。
 僕たちの仲間になる気はないんでしょう?」
「当たり前だ。
 それより君に聞きたいことがあるんだ。」
「なぁに?」

少年はまっすぐな瞳を明日に向ける。
悪ではない、と明日は感じる。
それが合っているとは限らないのだが明日はどうしても彼を悪人だとは思えなかった。

「君、悪魔の囁きの所を離れて『組織』に来る気は無いか?
 少なくともあの悪魔の囁きの傍に居るのは君にとっても危ない。
 『組織』には俺の知り合いの黒服も居るから紹介できると思う。
 そこなら君だって保護して貰える筈だしさ。どうかな?」
「お兄さん、何を言っているの?世界を貰えるんだよ!」
「世界?俺には世界の価値なんて解らないな。
 そんなことより、人殺しは犯罪だぜ。君がそれを続けるなら俺は止める。」

世界なんて要らない、明日ははっきりそう言った。
その表情はとても自信に満ちている。
それを見た少年は訝しげな表情を浮かべた。



「訳がわからないなあ……。
 さっさとどこかに行ってよ。
 もう僕には用がないんでしょ?僕たちの邪魔をするって言うなら……」
「いいや、あと一つ用がある。
 言って聞かない子供には、身体で善悪を叩き込まないと。
 少年、君はここで俺が倒す。
 これ以上、君を悪の道に進ませることは誰あろうこの俺がさせない。」

それを聞いて少年は一瞬キョトンとするがすぐにクスクスと笑い始めた。

「お兄さん、お兄さんの能力で僕が倒せると思っているの?
 精々お兄さんの能力は物を熱するだけなんでしょう?
 僕のカイザーに勝てるわけがないよ!」
「いや、倒す。俺は正義の味方だからね。」
「わけわかんないや、でもお兄さんが僕と戦うんなら仕方がないや。
 カイザー!」

少年が呼びかけるとどこからともなくドラゴンのような生き物が飛んできた。

「じゃあ行くよ、お兄さん。」
「来い!君の悪事は俺が止める!」
「カイザー、かえんほうしゃ!」

ゴォウ!
明日の目の前で火炎が踊る踊る。
明日は一度深呼吸をすると意を決して業火の中に歩を進めた。



「カイザー!切り裂く!」

それから数分後、戦いはいまだ続いていた。
カイザーの鋭い爪が大地を切り裂く。
只の人間である明日がこれを受けてしまえば一溜まりも無いだろう。

「チックショウ……、やっぱずるいよなそれ。」
「お兄さん、逃げてばっかりじゃ勝てないよ?」

明日は自らの都市伝説『電子レンジで猫をチン』を発動させ、照準をカイザーに向ける。
バチバチとスパーク音が響いて、明日の右腕の周りの空気が震え始めた。

「2500W……、喰らえ!」

カイザーの右目の辺りから急激に蒸気が立つ。
カイザーが一瞬よろめいた隙に明日はすばやくカイザーの右に回り込んだ。
死角からの連続攻撃でカイザーを一気に倒すのが狙いだった。

「カイザー、たたきつける!」

ブゥン!
カイザーの太く逞しい尻尾が明日の胴を的確に捉える。
明日自身はカイザーの死角に居る筈なのにまるで見えているようだ。
明日は派手にフェンスに叩きつけられるとガクリと膝をついてしまった。




「視覚を契約者と共有しているのか……。」
よろめきながらもなんとか立ち上がる明日。

「いいきずぐすり、っと。」
明日の目の前でカイザーの傷口はどんどん塞がっていく。
明日はため息を吐くと笛吹から貰った拳銃を取り出した。

「あいつの物を使うのは正直気が引けるけど……。」

どうやら彼が拳銃に手をかけたのはまだ気づかれていない。
BANG!BANG!BANG!
明日は笛吹に教えられた通りカイザーに狙いを定めて何発か銃弾を撃ち込んだ。

「お兄さん、拳銃なんか持っていたの?」
「正義の味方だからな。」
「正義の味方って拳銃も持っているの?」
「正義の味方は白いマントとカッチョ良いバイク、それに二丁拳銃って相場が決まっている。」
「ふーん、でもカイザーにはそんな物効かない……ってあれ?
 HPがすごく減っている!?」

ところで、皆さんはダムダム弾という物をご存じだろうか?
イギリス軍が、当時植民地だったインド・コルカタ(カルカッタ)近郊のダムダム兵器工場で開発・生産した殺傷力の高い弾丸である。
これは弾頭に十字型の切れ込みがあり、目標に命中すると切れ込みに沿って弾頭が広がり、
弾頭エネルギーを打ち込むと共に、分裂した弾丸が内部(内臓)を激しく傷つけるという特性を持った弾頭で、
本来は動物などの狩猟用に使われていた弾丸である。
しかし、陸戦に使用した所、非常に“実戦的”だった為、陸軍に採用され、
後にその“実用性”故にハーグ陸戦条約で禁止されることになるのである。
勿論、現在では製造生産されていないがそれに類似する物は幾つも作られている。
そして、今明日真が撃った弾丸もその中の一つだ。



「くそっ、まんたんの……!」
「やらせないぜ!」

明日は弾を撃ち尽くした銃を少年のゲームボーイに向けて投げつける。
拳銃は結構重い、それをぶつけられた少年はゲームボーイを手から落としてしまった。
少年に隙が出来た。
だが明日が狙うのは少年ではない。
あくまで目の前のカイザーだけだ。
明日はもう一丁持っていた弾倉を抜いた拳銃を少年に向けて構える。
それで、少年の動きがまた一瞬止まった。
その隙を突いて明日は素早くカイザーの腹に空いていた傷の中に掌を差し込む。

「最大電力、加熱開始だ!」

“実戦的”な弾丸による傷はカイザーの腹に巨大な穴を開けていた。
明日はそこにありったけのマイクロ波を流し込んで傷口から体内を加熱する。
こういう巨大生物との戦いが普段の明日の「組織」における任務である以上、迷いはなかった。

苦しげなうめき声をあげてカイザーはゆっくりと崩れ落ちる。
それを確認した明日は少年に弾倉を抜いた銃を向ける。



「もう一度聞くぞ少年、“悪魔の囁き”の所で君が行っているのは悪いことなんだ。
 これ以上、君は悪事を働いてはいけない。
 『組織』に来て貰うよ。今ならカイザーもまだ治療が間に合う。」
「…………悪事悪事って、正義の味方のつもり?」
「つもりじゃない、そのものだよ。」
「ここまでするのが、正義の味方なの?」
「ああ、そして君はいまここで悪だよ。
 殺すな、憎むな、赦しましょう。
 と言うわけで俺は君が『組織』に来てくれることを…………」

少年は憎しみに満ちた眼で明日を睨む。

「動くなよ、君にゲームボーイを触らせるのは『組織』の黒服が来てからだ。
 俺だってこれの引き金を人間に引きたくない。」
弾は無いのだが。
「いいや、…………その必要はないよ。カイザー、そらをとぶ。」
明日の後ろで巨大な物が動く音がする。
「原作と同じでひでんわざは体力が無くても使えるのか!?」
次の瞬間、もう動けないと思われていたカイザーは明日の後ろから突然体当たりをかけてきた。
まともにぶつかって明日は簡単に吹き飛ばされる。
カイザーは傷ついた身体に少年を乗せて空に飛び上がってしまった。

「お兄さん、次会ったら……許さないよ!」

少年はそう言い残して去っていった。




明日の両腕はともに間接が有らぬ方向に曲がり、血で真赤にそまっている。
胸の辺りにも激痛が走っている以上、肋骨も無事ではないだろう。

「ああ~、まっずいなあ。
 助けを呼ぼうにも電話使えないし……。」

気合いでなんとか立っているが明日真は人間である。
都市伝説で肉体が強化されているわけでもない只の人間なのだ。
ついに意識がもうろうとし始めたようだ。

「これだから困るんだよ子供って……。
 まぁ良いぜ、最悪恋路が愛の力で助けに来てくれるに違いない。」

明日はしばらく困って困って困って困って…………。
まあ誰かが助けてくれるだろうと思い、考えるのをやめた。

【電磁人の韻律詩24~こどものじかん~fin】



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