それは、とある商店街の、中心からは少しはなれた場所
そこに店を構えている八百屋は、いつでも繁盛している
街中の主婦が集まっているのでは?と錯覚するほどに、たくさんの主婦が集まっているのだ
若干、都市伝説の影響もある現象とは言え、戦争状態の購買か、バーゲンセールまっただなかの光景に見えてしまう
そんな主婦の群れの中、一人、混じっている青年の姿
そこに店を構えている八百屋は、いつでも繁盛している
街中の主婦が集まっているのでは?と錯覚するほどに、たくさんの主婦が集まっているのだ
若干、都市伝説の影響もある現象とは言え、戦争状態の購買か、バーゲンセールまっただなかの光景に見えてしまう
そんな主婦の群れの中、一人、混じっている青年の姿
---っぱし!
青年が、主婦達にもみくちゃにされかねないその現状で、しかし、その流れに流される事なく、素早く動いて野菜を手にする
それは、ぽ~ん、と後方に放り投げられて…ぱし!、と、そこで待ち構えていた他の青年が、器用にキャッチした
その拍子に、金色に染められた髪が、さらさらと揺れる
それは、ぽ~ん、と後方に放り投げられて…ぱし!、と、そこで待ち構えていた他の青年が、器用にキャッチした
その拍子に、金色に染められた髪が、さらさらと揺れる
---っぱし!
ぱしっ、ぱしっ、ぱしっ
ぱしっ、ぱしっ、ぱしっ
そうして、いくつかの野菜が宙を舞い、それを後ろで待っている者達がキャッチする
先ほど、ニンジンをキャッチした金髪の青年の他に、その青年と同じくらいの髪の長さで、しかし、こちらは黒髪で耳元に銀色のピアスをつけた青年と、小柄で大人しそうな印象の少女が、次から次へと野菜をキャッチしていく
粗方戦利品を手に入れて、青年は勘定を、用意されているバケツに放り込む
この店、勘上はこのバケツに入れておけば問題ないのだ
それを終えて、青年はするり、主婦達の群れから抜け出てきた
あの群れの中にいて、しかし、服装は全く乱れを見せていない
先ほど、ニンジンをキャッチした金髪の青年の他に、その青年と同じくらいの髪の長さで、しかし、こちらは黒髪で耳元に銀色のピアスをつけた青年と、小柄で大人しそうな印象の少女が、次から次へと野菜をキャッチしていく
粗方戦利品を手に入れて、青年は勘定を、用意されているバケツに放り込む
この店、勘上はこのバケツに入れておけば問題ないのだ
それを終えて、青年はするり、主婦達の群れから抜け出てきた
あの群れの中にいて、しかし、服装は全く乱れを見せていない
「…相変わらず凄いな、お前」
「……くけ」
「……くけ」
ピアスの青年、辰也が呆れたような声をだし、少女…恵が、小さく頷いた
二人の言葉に、誠は笑って答える
二人の言葉に、誠は笑って答える
「ま、修行の成果だな」
「それも修行の成果でいいのかよ」
「それも修行の成果でいいのかよ」
金髪の青年、翼は、誠の言葉にやはり、どこか呆れたような笑いを浮かべる
まぁ、誠のおかげで、あの店での買い物が楽で、大変と助かるのだが
まぁ、誠のおかげで、あの店での買い物が楽で、大変と助かるのだが
「…に、しても翼。その野菜の量、お前んとこだけで食べるには、多すぎないか?」
「あぁ、いや。俺達んとこだけじゃなくて、他んとこで飯作ってやってる分の野菜もこみだから」
「………へぇ?」
「あぁ、いや。俺達んとこだけじゃなくて、他んとこで飯作ってやってる分の野菜もこみだから」
「………へぇ?」
…誰に、料理を作ってやっているのか?
やや、嫉妬を滲ませる誠
……今ごろ、「死人部隊」の中年は、くしゃみでもしているか、身に覚えのない殺気でも感じているかもしれない
やや、嫉妬を滲ませる誠
……今ごろ、「死人部隊」の中年は、くしゃみでもしているか、身に覚えのない殺気でも感じているかもしれない
「そっちも、大分多いと思うけどな」
「こっちは、マリがよく食うからな」
「…くけ……一番食べるのは肉、だが…」
「こっちは、マリがよく食うからな」
「…くけ……一番食べるのは肉、だが…」
翼の言葉に答えるのは、辰也と恵
マリ・ヴェリテの食欲が非常に旺盛である為、彼らの月の食費はかなりのものだ
この八百屋のお陰で、大分助かっている面がある
マリ・ヴェリテの食欲が非常に旺盛である為、彼らの月の食費はかなりのものだ
この八百屋のお陰で、大分助かっている面がある
「んじゃ、そろそろ行くか」
「ん、あぁ」
「ん、あぁ」
歩き出した翼
その後を、誠が慌てて追いかける
辰也と恵は、その後をゆっくりとついていく
直希がいれば、この二組の間に直希が入っているところだ
五人出歩いている時は大抵そうなのだが、今日は直希はいない
その後を、誠が慌てて追いかける
辰也と恵は、その後をゆっくりとついていく
直希がいれば、この二組の間に直希が入っているところだ
五人出歩いている時は大抵そうなのだが、今日は直希はいない
「…恵、俺がもう少し荷物持つか?」
「…?…いや、平気…大丈夫、だ」
「…?…いや、平気…大丈夫、だ」
よたよたと歩いていた恵を、心配するように辰也が言うが、恵は小さく首を左右に降る
……が、明らかに、恵には重たそうな荷物
辰也は、やや強引にそれを自分で持つ
……が、明らかに、恵には重たそうな荷物
辰也は、やや強引にそれを自分で持つ
「……ぁ」
「無理すんな。俺も誠達ほどじゃないが、お前よりは力あるから、大丈夫だ」
「……すまない」
「無理すんな。俺も誠達ほどじゃないが、お前よりは力あるから、大丈夫だ」
「……すまない」
重たい荷物を辰也にとられ、軽い荷物だけを持った恵
てとてとと、辰也の横を並んで歩く
てとてとと、辰也の横を並んで歩く
…こうやって、恵と並んで歩けるだけで、辰也は充分に幸せだ
それ以上の幸せを望むなど、贅沢だと考える
……H-No.9を殺して以来、ずっとそう考える
自分には、普通の人間のような幸せを望むなど……相応しくなどないのだ
これだけでも、幸せを得られるだけ…充分だ
それ以上の幸せを望むなど、贅沢だと考える
……H-No.9を殺して以来、ずっとそう考える
自分には、普通の人間のような幸せを望むなど……相応しくなどないのだ
これだけでも、幸せを得られるだけ…充分だ
「…辰也、どうした?」
と、辰也がやや俯いたのに気づき、恵が心配そうな声を出した
何でもない、と辰也は慌てて、それを誤魔化す
…恵を、心配させたくは、ない」
何でもない、と辰也は慌てて、それを誤魔化す
…恵を、心配させたくは、ない」
「辰也?どうかしたのか?」
「いや、なんでもないっての」
「いや、なんでもないっての」
翼にまでやや心配そうな声を出され、ますます辰也は誤魔化した
…今の、翼を取り巻く現状に置いて…翼をヘタに心配させては、誠に殺されかねない
と、言うか、こう言う時くらい、翼は自分のことだけを考えていればいいと言うのに
…今の、翼を取り巻く現状に置いて…翼をヘタに心配させては、誠に殺されかねない
と、言うか、こう言う時くらい、翼は自分のことだけを考えていればいいと言うのに
「そうか?でも、何かあったら相談しろよ?」
「コミュニケーションは大事、ってか?エリカさんの言葉だな?」
「コミュニケーションは大事、ってか?エリカさんの言葉だな?」
ややからかうような誠の言葉に、う、と翼は押し黙る
辰也達からはその表情は見えないが、若干、赤くなっているかもしれない
エリカという女性を、辰也と恵はよく知らないが…どうやら、翼の初恋の相手で、今でも憧れの相手らしいから
辰也達からはその表情は見えないが、若干、赤くなっているかもしれない
エリカという女性を、辰也と恵はよく知らないが…どうやら、翼の初恋の相手で、今でも憧れの相手らしいから
「…相談については、お前が言うな、って言いたいがな」
ぼそ、と
そう、呟いた誠
翼が、何もかも1人だけで背負いがちな事を言っているのだろう
う、と、翼が気まずそうな声をあげる
そう、呟いた誠
翼が、何もかも1人だけで背負いがちな事を言っているのだろう
う、と、翼が気まずそうな声をあげる
「……これでも、昔よりは相談してるつもり、なんだけどな」
…それでも、長年の経験から、周りには相談しにくいのだろう
辰也も、その気持ちはわからないでもない
相談すれば、巻き込む
自分一人だけの問題ではなくなる
……巻き込みたくないから、相談できない
それが大きな問題であればあるほど、余計に
辰也も、その気持ちはわからないでもない
相談すれば、巻き込む
自分一人だけの問題ではなくなる
……巻き込みたくないから、相談できない
それが大きな問題であればあるほど、余計に
「……辰也」
「うん?」
「うん?」
じ、と恵が辰也を見上げてくる
相談云々に関し、誠が翼にまだ何か言っているようで…こちらの話は、多分、向こうには届いていない
向こうの話も、こちらには届いていないし
相談云々に関し、誠が翼にまだ何か言っているようで…こちらの話は、多分、向こうには届いていない
向こうの話も、こちらには届いていないし
「…本当に…大丈夫、か…?」
「……大丈夫だよ」
「でも……辰也、この間から……あまり、元気、ない…」
「……大丈夫だよ」
「でも……辰也、この間から……あまり、元気、ない…」
…あぁ、まったく
どうして、こうも簡単に見抜かれるのか
そう言ったことは、表に出さないようにしていると言うのに
どうして、こうも簡単に見抜かれるのか
そう言ったことは、表に出さないようにしていると言うのに
「…大丈夫だって。ここんとこ、悪魔の囁き騒動でゴタゴタしてるからな…少し、疲れてるだけだ」
「…そう、か…?」
「…そう、か…?」
そうだよ、と笑ってやる
やや納得言っていない様子の恵だったが…それ以上は、問いただしてこない
いや、何か言おうとした恵の言葉を遮り、辰也は続ける
やや納得言っていない様子の恵だったが…それ以上は、問いただしてこない
いや、何か言おうとした恵の言葉を遮り、辰也は続ける
「…そろそろ、あのおっさんの居所もわかるだろ。そうなったら、ちったぁ翼の手伝いをしてやるか」
「……あぁ…そう、だな…」
「……あぁ…そう、だな…」
…朝比奈 秀雄
恵に関する事で…辰也にとっても、それは殺したい相手であるのだが
だが、翼の方が恨みは深いはずだろう
そう考えて、辰也は朝比奈 秀雄には、直接殺意をぶつけるつもりはない
恵に関する事で…辰也にとっても、それは殺したい相手であるのだが
だが、翼の方が恨みは深いはずだろう
そう考えて、辰也は朝比奈 秀雄には、直接殺意をぶつけるつもりはない
…直接、牙を剥くべき相手は、他にまだいるから
決戦の時は近い
辰也は、それを予感するのだった
辰也は、それを予感するのだった
to be … ?