「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ドクター-69

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ドクター69


口腔内を圧迫し、舌の動きを封じる
それだけで意味のある音を成す事が出来ず、また圧し掛かる巨体は指一本まできっちりと押し潰し印の一つも結ばせない
理に適った動きの封じ方をするものだと敵意やいらつきを通り越して、半ば感心の域に達する
なるほどこうなれば肉体という存在ほど邪魔なものは無い
盟主とかいう女のように個として強い霊体か、もしくは今までのようにこの群体のような霊体か
今回の失敗からもまた得るものはあった
権力を利用しようとすれば、その力相応に目立ち敵も増える
そんな事を考えながら、中華黒服は口の中にいる悪霊を強引にごくりと飲み込んだ
「なるほど、此度の策は我らの負け。だがただでは終わらせん」
その口を悪霊が塞ぐよりも早く、音が放たれる、よりも早く
窓をぶち抜いて放たれた黒い拳がその頭を叩き潰した
拉げ潰れた頭部から零れた血液と脳漿はどろりと黒く変色し、男の傍らに具現化していた『蟲毒』の壺へとずるりと吸い込まれていった
「誰だ!?」
マステマの声に黒い拳はばらりと解け、髪の毛となる
「『組織』の者よ。討伐対象の一人を殺しただけ、文句は言わせないわ」
髪の毛はそのまま『蟲毒』の壺を拾い上げる
「こういう危険物も『組織』の管理下に置かせてもらうわ。じゃあね」
悪霊の一部が即座にそれを追うが、窓の外に出たところで地面に引き寄せられるように続々と墜落していってしまう
見れば地面がまるで泥沼のように液状化し、浮遊できるはずの悪霊達が身体半分ほどを沈み込ませ、脱出できずにびちびちともがいていた

―――

「お疲れ様です。これがあれば、町中に拡散している討伐対象もこちらに狙いを定めてくるでしょう」
周囲に漂う蒼い鬼火を消しながら、A-No.18782は微笑んだ
「あんたの能力なら、迎撃なら任せとけってわけ?」
「まさか。私の『ウィル・オー・ウィスプ』で沈められるのは、あくまで私とこの鬼火に『向かってくる』ものだけです。空間転移や対象に直接干渉する能力相手では何もできません」
繰から『蟲毒』の壺を受け取ると、それを大事に抱え込む
「私の能力はあくまで状況を限定させる手の一つ、迎撃はあなたに一任します。期待していますよ?」
「ま、前任者の仇討ちだし。残らずきっちりと倒してやるわよ」
「では早速ですが」
すいと繰の背後に退くA-No.18782
それまで彼が立っていた場所に、真上から無数の鉄針が降り注ぎアスファルトを粉々に打ち砕いた
「最早『太歳星君』を御する事は不可能」
「その上に『蟲毒』まで横取りされたとあっては」
「大人しく返せば手荒な真似はせん」
「だがこれ以上我らの邪魔をするというのなら」
「我が傀儡の一つを潰してくれた意趣返しもせねばならん」
じわりじわりと染み出すように現れる中華黒服達に、繰は殺気を込めた視線を向ける
「御託はいらないわよ。私の家族や友達がいるこの町で色々やらかした以上は」
繰の髪の毛が膨れ上がり、大蛇の群れのように蠢く
「全員ブッ殺す」
髪の毛の一房一房が人間ほどもある拳を形作り、現れた黒服達を片端から殴り飛ばす
同じ髪の毛を使い戦う黒服Hの、拘束や切断を主とした戦い方とは対象的な、乱暴で出鱈目な力技である
斬られようが引き千切られようが燃やされようが、髪はどんどん伸びて新たなる拳となる
暴力という言葉がよく似合うその猛攻に
頭を砕かれ
首を圧し折られ
胴体を捻じ切られ
文字通りの意味で、千切っては投げられる中華黒服達
その舞い散る血煙と人体が、瞬きした瞬間に破り裂かれた紙片に変化する
「――っ!?」
繰を覆い隠すように渦巻くと、爆音を立てて燃え上がった
「ちっ、こ、のっ!」
髪の毛で薙ぎ払い吹き散らそうとするが、炎が相手ではさしもの繰の髪も触れた傍から焼き切れていく
「手の内が判れば手玉に取る事など容易いものよ」
「『組織』の黒服よ、『蟲毒』を返してもらおうか」
「それは元々が我らの物」
「大人しく従うなら、命までは取らぬ」
「それとも、そこの女のように焼け死にたいか?」
先程と何一つ変わる様子も無く現れた中華黒服達
「困りましたね」
A-No.18782は『蟲毒』の壺を抱えたまま、それでも表情は笑みを浮かべたまま
「隠蔽作業の大変さ、ご存知無いのですか?」
その言葉の意味を理解しかねていた中華黒服の一人が、飛んできた巨大な円盤状の物体に轢き潰された
辛うじて人間の形をした挽肉を纏わりつかせたアスファルト塊が、電柱とブロック塀を巻き込んで豪快な破砕音を立てる
「命と仕事の大変さ、天秤に掛けんじゃないわよ」
炎の渦の中心で、熱で柔らかくなったアスファルトを引っぺがし、髪の毛の腕で振り被る繰の姿
「手玉に取れるもんなら取ってみなさいよ。そんな手、踏み砕いてやるから」
二投目のアスファルト塊が炎の渦を突き破り、それに合わせてそこから脱出する繰
身体のあちこちに火傷を作り、焼け焦げてボロボロになった制服姿で、煤けた顔に殺気の篭った笑顔を浮かべていた

―――

駅前の大型家電量販店の屋上、電飾も華々しい看板の天辺に立った男は、携帯電話を手に遠くのその戦闘の様子を眺めて溜息を吐く
一見するとMIBのような雰囲気を漂わせているが、目元を覆うのはサングラスではなく銀縁の眼鏡、上着は黒いスーツジャケットではなく家電量販店のロゴが入った派手な法被である
「ミスター、ですから私はチャイニーズを招き入れるのには反対していたのです」
《仕方あるまい、我が合衆国は多民族国家だ。いかなる人種でも等しく能力を揮う機会が与えられて然るべきなのだよ》
「それに、あれの討伐は現地組織に一任しているのでは。奴らは手を貸せば恩を感じる前につけ上がりましょう」
《分け隔てなく皆殺しにしてくれればいいのだがね。どちらかが妥協して手打ちになどなってはつまらん》
「奴らの自尊心と自己主張の強さは異常です。それはありえないとは思いますが」
何度目か判らない溜息を吐き、男は法被を脱ぎ捨てると足元の看板を蹴って宙を舞う
その背中に蝙蝠のような翼を広げ、空へと羽ばたいた
「ミスターはいつも私につまらない仕事ばかり押し付けますな」
《それを適切に処理できる君の能力を信頼しているのだとも》
「現地組織の人員との接触については」
《君が我々の組織に所属しているというデータは、この地球上には存在しない。精々、通りすがりの契約者といった体で協力してやりたまえ》
「了解致しました、ではこれより活動を開始致します」

―――

水鏡の底、肉塊に包まれた女性の目が薄く開かれる
水中から見る水面がその動きに僅かに歪む
『太歳星君』を宿したその女性の唇が僅かに動き
「……あとごふん」
誰にも聴かれなかった呟きが泡となって水面に弾け、彼女は開きかけた瞼をそっと下ろした


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