喫茶ルーモア・隻腕のカシマ
XIII 大いなる変成の子・死の門の支配者/死
まぶたを開くと独り、廊下に立っていた
「これで、過去を……変えられたのかな……」
心に、大きな空洞が出来た様な喪失感があった
「でも……これで、マスターの息子さんが助かる可能性が出てくる」
振り向くと、そこには扉
そして───
XIII
大いなる変成の子・死の門の支配者
死
───と刻まれている
「13……死か……ははは……確かにそんな気分だね」
乾いた笑いが漏れる
扉を開くと、決まりきった様に隙間から光が漏れ出てくる
「でも、死ぬわけじゃない……やり直すだけだ」
隙間から光が漏れる
だが、眩しくは無く───
だが、眩しくは無く───
*
扉が開かれて現れたのは……
広い空間
ただの広い部屋と言っても良い
見回してみると、体育館ほどの広さはありそうだ
見回してみると、体育館ほどの広さはありそうだ
黒い床は大理石だろうか、磨かれ光沢がある
上を見上げると、何も無く天井すら見えない
これといった照明器具も無い様に見えるが……
ぼんやりとした光が部屋の隅々まで照らしていた
上を見上げると、何も無く天井すら見えない
これといった照明器具も無い様に見えるが……
ぼんやりとした光が部屋の隅々まで照らしていた
最奥の中央には玉座
玉座としか表現出来ない様な大きな椅子が据えられている
玉座としか表現出来ない様な大きな椅子が据えられている
近づいて見てみると、大きく高い背もたれの部分には絵が描かれている
大鎌を持った黒い骸骨
絵の上には『XIII』
下には『Death』
明らかに死神のタロットカードを表している
大鎌を持った黒い骸骨
絵の上には『XIII』
下には『Death』
明らかに死神のタロットカードを表している
「またこの部屋か……これまでの事を整理しろってことかな?」
ストンと玉座へと座り、考え始める
「さて……と……考察……開始」
自分のした事の意味を、その結末を
『マスターが約束を憶えていてくれれば、息子さんは死なない』
息子さんが死ななければ、奥さんとは離婚せずにいられる
マスターは家族と3人で平和にあの店で暮らし、幸せな家庭を築いているはずだ
マスターは家族と3人で平和にあの店で暮らし、幸せな家庭を築いているはずだ
だがそれは、自分がマスターの所へは現れないという事でもある
きっと、子どもを亡くしていない親の元へ行くことはないだろう
元々、奇跡の様な……間違った出逢いだったのだから……
きっと、子どもを亡くしていない親の元へ行くことはないだろう
元々、奇跡の様な……間違った出逢いだったのだから……
『ボクとマスターが出逢わなかった世界』
次にあった出来事は……サチとの出逢い
サチはあの店に来るはずだ
カシマレイコに憑かれ、自分を見失ってしまっているだろう
カシマレイコに憑かれ、自分を見失ってしまっているだろう
あのカシマレイコを倒したのは自分だ
けれど、サチの標的は……姫さんだった
ならば、最終的に……あの人ならば、簡単に返り討ちにしていたと思う
姫さんならやってくれる
そして、きっと……爽快な結果が待っていたはずだ
けれど、サチの標的は……姫さんだった
ならば、最終的に……あの人ならば、簡単に返り討ちにしていたと思う
姫さんならやってくれる
そして、きっと……爽快な結果が待っていたはずだ
『サチは呪縛から解き放たれる……これは変わらない、大丈夫』
あの事件の後にあったのは……サチとカシマさんの出逢い
これも問題ない
『サチは、カシマさんと出逢い……ボクサーさんを助け、ジャックとも知り合う』
大丈夫だ
順調に世界は回る
順調に世界は回る
次の大きな事件は……マスターの死
だが、これも解決できているはずだ
だが、これも解決できているはずだ
『魔術師さんは、ゲーム脳の支配を受けない……だから、マスターは殺されない』
かつての魔術師さんは正しい事の出来る人だった
学校町で、或いはどこか別の地で、迷いながらも人を救う契約者のままでいるはずだ
学校町で、或いはどこか別の地で、迷いながらも人を救う契約者のままでいるはずだ
彼は……桃娘と出逢えるだろうか……悲しい出逢いだが、出逢ってくれることを願う
救えない運命だとしても、彼女を孤独から救って欲しい
"とんでれ"と言ってあげて欲しい、笑顔を引き出してあげて欲しい
でも、これはただの願望でしかない……それだけが残念だ
"とんでれ"と言ってあげて欲しい、笑顔を引き出してあげて欲しい
でも、これはただの願望でしかない……それだけが残念だ
ここまで行ければ、もう後は何も変わらないはず……
夢子さんが王になれば、あの黄色いクマさんも正気に戻れるだろう
あの事件の裏で、幽閉が解けた黒服さんは……
融合させられた、あの黒服さんは……自分を始末しに来るだろう
でも、さして違いはない
短期間で転生を繰り返す自分を見つけ出すのは困難だ
それに、自分が学校町にいるとは限らない
融合させられた、あの黒服さんは……自分を始末しに来るだろう
でも、さして違いはない
短期間で転生を繰り返す自分を見つけ出すのは困難だ
それに、自分が学校町にいるとは限らない
『融合した黒服さんは……いずれ、統合されたカシマさんに……或いは他の誰かに討たれる』
変わらない
自分がルーモアにいなくても、世界は大きくは変わらない
自分がルーモアにいなくても、世界は大きくは変わらない
自分はどうなるのだろうか
記憶はなくなるのだろうか
ならば、やり直すだけだ
ならば、やり直すだけだ
輪廻転生の都市伝説として
語られる内容が改変される前の生き方に戻るだけだ
語られる内容が改変される前の生き方に戻るだけだ
もし、記憶が残っているなら
今までの思い出が無くならないなら
今までの思い出が無くならないなら
それを糧に生きていける
マスター達は、それだけのものを与えてくれた
十分な程に与えてくれた
マスター達は、それだけのものを与えてくれた
十分な程に与えてくれた
「ボクだって……死ぬわけじゃないんだ……大丈夫」
記憶があれば、あの店へ、ルーモアへ遊びに行く事だって出来る
皆と知り合う事が出来るかもしれない
皆と知り合う事が出来るかもしれない
「ボクはわがままで、欲張りだ……全部……全部、手に入れてみせる」
希望はまだ残っている
「だから……待ってて……皆」
ガコン
音が響き渡った
自分以外には誰もいない部屋
音は扉の方からだった様に思う
自分以外には誰もいない部屋
音は扉の方からだった様に思う
「開いた……」
扉へと静かに近づき
ゆっくりと、扉を押す
動かない
ゆっくりと、扉を押す
動かない
全力を込めて
もう一度、押し開く
開く手応え
もう一度、押し開く
開く手応え
前へと進む意思を込めて
扉を開く
扉を開く
この部屋、このカードの役目は終わった
「ボクはまだ、全てを諦めたわけじゃない……自分を犠牲になんてしない!」
終わりが近い事を予感しながら、進む───