「OK。誠、落ち着け。ちみっこ相手への嫉妬は色々と大人気ないぞ」
「何を言ってんだ、直希。俺は落ち着いてるぞ?」
「睨み殺さんばかりの勢いで、あの少年を睨んでおきながら何を言う」
「何を言ってんだ、直希。俺は落ち着いてるぞ?」
「睨み殺さんばかりの勢いで、あの少年を睨んでおきながら何を言う」
翼に纏わりついている一年生になったらに、強烈な嫉妬視線を送っている誠に突っ込む直樹
…まぁ、当然というか何と言うか、一年生になったらは、そんな視線には気付いていない
誠からすれば、友人同士、飲んでいるところを邪魔された恨みも篭った視線なのかもしれない
大人気ないことに変わりはないが
…まぁ、当然というか何と言うか、一年生になったらは、そんな視線には気付いていない
誠からすれば、友人同士、飲んでいるところを邪魔された恨みも篭った視線なのかもしれない
大人気ないことに変わりはないが
「…直希、誠のこれ、どうにかならねぇのか?」
そう尋ねてきたのは、辰也
誠や辰也は、「首塚」の面子とマッドガッサー達との、その中間辺りを陣取っていた
直希もそこに座り、歳の近い者同士で飲んでいたのだ
……まぁ、下戸の直希と恵は、酒ではなくジュースだが
誠や辰也は、「首塚」の面子とマッドガッサー達との、その中間辺りを陣取っていた
直希もそこに座り、歳の近い者同士で飲んでいたのだ
……まぁ、下戸の直希と恵は、酒ではなくジュースだが
とまれ
辰也の問いかけに、直希は淡々と答える
辰也の問いかけに、直希は淡々と答える
「無理だ。誠の嫉妬深さは僕が彼と出会った頃には既に完成されていた。矯正は無理だろう」
「………三つ子の魂百まで?」
「そう言う事なのだろうな」
「………三つ子の魂百まで?」
「そう言う事なのだろうな」
首をかしげた恵にそう答え、料理に手を伸ばす直希
相変わらず、ノンストップで食べ続けている
この細い体のどこにそこまでの料理が入るというのか、謎である
相変わらず、ノンストップで食べ続けている
この細い体のどこにそこまでの料理が入るというのか、謎である
「誠は、翼の事に関しては、譲ろうとしないからな………翼に関してのみ、わがままになるとも言う」
「言われてみりゃ、そうだな」
「言われてみりゃ、そうだな」
直希の言葉に、どこか納得したように頷く辰也
…事実、誠は翼に関する事は、頑として譲ろうとしない面がある
昨年、彼らが学校町に混沌を振りまいていた頃、翼は自分の獲物であると、頑なに主張し、誰にも譲ろうとしなかった
それを主張していた時の誠は……あの頃は、悪魔の囁きにとり憑かれていた影響もあるとは言え、狂気にすら似た、強い意志を覗かせていた
翼に関する事でのみ、彼は何も譲ろうとはしないのだ
…事実、誠は翼に関する事は、頑として譲ろうとしない面がある
昨年、彼らが学校町に混沌を振りまいていた頃、翼は自分の獲物であると、頑なに主張し、誰にも譲ろうとしなかった
それを主張していた時の誠は……あの頃は、悪魔の囁きにとり憑かれていた影響もあるとは言え、狂気にすら似た、強い意志を覗かせていた
翼に関する事でのみ、彼は何も譲ろうとはしないのだ
「……君達も、誠ほどには、とは言わないが………もう少し、我侭になっても良いと思うのだがね」
「………くけっ?」
「…何の事だよ」
「………くけっ?」
「…何の事だよ」
直希が、ぽそりと呟いた言葉に
恵は首をかしげ、辰也は眉をひそめた
もぐ、とカラアゲを口にしつつ、直希は続ける
恵は首をかしげ、辰也は眉をひそめた
もぐ、とカラアゲを口にしつつ、直希は続ける
「君達は、誠や翼と比べれば……随分と自分を押さえ込んでしまっているように見える。もっと、わがままになっても問題はないと思う」
「…けけ…っ?そう、か…?」
「……恵はともかく、俺は一時期、思う存分好き勝手やってたからな。今は、その反動が出てるだけだよ」
「…けけ…っ?そう、か…?」
「……恵はともかく、俺は一時期、思う存分好き勝手やってたからな。今は、その反動が出てるだけだよ」
恵は、首を傾げただけだったが……辰也は、誤魔化すように視線を逸らし、コップに注いでいたウィスキーに口をつける
……昨年、学校町に混沌をばら撒いていた頃
辰也は、「組織」に居た頃の鬱憤を晴らすかのように行動していた
今の辰也は、その頃から比べれば、まるで別人のようにすら見える
……昨年、学校町に混沌をばら撒いていた頃
辰也は、「組織」に居た頃の鬱憤を晴らすかのように行動していた
今の辰也は、その頃から比べれば、まるで別人のようにすら見える
どちらが本来の辰也かと言われれば、それははっきりしない
どちらも、辰也である事に変わりはないのだ
ただ、強いて言えば……恵への好意を自覚して以降、自身を押さえ込む傾向が強まっているかもしれない
もっとも、辰也自身にその自覚があるかどうかは、不明だが
どちらも、辰也である事に変わりはないのだ
ただ、強いて言えば……恵への好意を自覚して以降、自身を押さえ込む傾向が強まっているかもしれない
もっとも、辰也自身にその自覚があるかどうかは、不明だが
辰也自身は…今、自分が、自分自身を抑えるような行動をとるのは
H-No.1が、再び自身の前に現れた時に備えて警戒しているだけである、としか考えていないのかもしれない
H-No.1が、再び自身の前に現れた時に備えて警戒しているだけである、としか考えていないのかもしれない
再び、あの男と遭遇した時に
大切な仲間を、巻き込まないように
大切な仲間を、巻き込まないように
「……辰也?」
かすかに俯いた辰也を、心配してだろうか
くいくい、と、恵が辰也の服の裾をひっぱってきた
何でもない、と、辰也は軽く頭を振る
くいくい、と、恵が辰也の服の裾をひっぱってきた
何でもない、と、辰也は軽く頭を振る
…あまり、心配させたくないと言うのに
また、心配させてしまった
何故、自分は恵を心配させる事しかできないのか
辰也は、そんな自分を嫌悪する
また、心配させてしまった
何故、自分は恵を心配させる事しかできないのか
辰也は、そんな自分を嫌悪する
「……ふむ、妙な事を言ってしまったらしい。申し訳ない」
「いや、いい」
「いや、いい」
謝罪しようと、頭を下げようとした直樹を、辰也は制した
…直希が悪い訳でもない
悪い方向へ悪い方向へと考え込む、自分が悪いのだから
…直希が悪い訳でもない
悪い方向へ悪い方向へと考え込む、自分が悪いのだから
「…そうか?…………ところで、君のウィスキーを、ジャッカロープが豪快にラッパ飲みしているのだが、良いのだろうか?」
「は?……って、いつの間に!?」
「は?……って、いつの間に!?」
ごっごっごっごっごっごっご
辰也があけていた、ウィスキーのボトルを
いつの間にやら、ジャッカロープがラブリーに両前脚でもち、ラッパ飲みしていた
けふっ、と愛らしく飲み干して
ぺふぺふ、空になったボトルを叩き、お代わりを主張している
辰也があけていた、ウィスキーのボトルを
いつの間にやら、ジャッカロープがラブリーに両前脚でもち、ラッパ飲みしていた
けふっ、と愛らしく飲み干して
ぺふぺふ、空になったボトルを叩き、お代わりを主張している
「…けけ……っ、新しいの、開けるな…」
「あぁ…悪い、恵、俺にはウィスキー以外のもの、頼む」
「ん…わかった…
「あぁ…悪い、恵、俺にはウィスキー以外のもの、頼む」
「ん…わかった…
…ウィスキーだと、また油断するとジャッカロープに飲み干される
甘えて擦り寄って来ているジャッカロープを撫でている恵を、じっと辰也は見つめる
甘えて擦り寄って来ているジャッカロープを撫でている恵を、じっと辰也は見つめる
…まだ、酔う程までは、飲んでいない
だが
今なら、酒のせいにできるだろうか?
だが
今なら、酒のせいにできるだろうか?
直希の言う通り
少しは、我侭になってもいいのだろうか?
少しは、我侭になってもいいのだろうか?
「………恵」
「くけっ?」
「…お前は…………俺といて、楽しいか?」
「くけっ?」
「…お前は…………俺といて、楽しいか?」
以前から、仲間内でも、辰也と行動することが多い恵
…自分などといて、楽しいのか、と
……嫌ではないのか、と
そう、尋ねると
恵は、きょとんとして
…自分などといて、楽しいのか、と
……嫌ではないのか、と
そう、尋ねると
恵は、きょとんとして
「…楽しい、ぞ?」
と
まるで、当たり前のように、答えてきた
まるで、当たり前のように、答えてきた
「…お前な。俺は仮にも、一度はお前の命を狙った事があるんだぞ?」
「夢の国」の騒動のゴタゴタで流れたとは言え
一度は、「組織」の仕事で、命を狙った事がある
一度は、「組織」の仕事で、命を狙った事がある
……だと、言うのに
ここまで、無防備になると言うのか
ここまで、無防備になると言うのか
「今は、違う……それに」
酒の蓋を、開けながら
恵は、どこか幸せそうに、笑って
恵は、どこか幸せそうに、笑って
「……俺は………辰也のことも、好きだぞ?」
その、言葉を
嬉しく思うと同時に、少し寂しく思う
嬉しく思うと同時に、少し寂しく思う
辰也の事「も」と恵は言った
…それは、つまり
恵にとって、仲間は皆大切で、好きで
辰也は、その内の一人に過ぎない
…そう言う事なのだから
…それは、つまり
恵にとって、仲間は皆大切で、好きで
辰也は、その内の一人に過ぎない
…そう言う事なのだから
だが
たとえ、そうだとしても
…仲間だと思われていれば、幸せな現状
それ以上、高望みする気には、まだなれない
たとえ、そうだとしても
…仲間だと思われていれば、幸せな現状
それ以上、高望みする気には、まだなれない
自分には、そんな資格など、ない
「…そうか、ありがとうよ」
「…くけ??」
「…くけ??」
ぽふぽふと、頭を撫でられて、恵は不思議そうに首をかしげる
…辰也からの好意に、恵は気づいていない
気付かれぬままでいいのだ、と
辰也は、そう自分に言い聞かせ続けるのだった
…辰也からの好意に、恵は気づいていない
気付かれぬままでいいのだ、と
辰也は、そう自分に言い聞かせ続けるのだった
to be … ?