「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち・決戦以降-20c

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「何故、お前は出かける度に傷負って帰ってくるんだ」
「聞かないでくれ。今回の件については、むしろ俺がどうなっているんだと誰かに叫びたい」

 ---とまれ
 至近距離での爆発に巻き込まれただかで怪我をして帰ってきたエーテルの治療も終わり
 このところ数日間続けている訓練を、はじめる事にした

 ……あの、表現しがたい色をしているうえ、若干びくびく蠢いていたような塗り薬…当然、ロレーナ製だ。そうでなければ、あんな奇怪な治療薬が存在するはずない…で傷が治った事実に、エーテルが複雑な表情をしているが
 それに構っている時間は、ない

「…とりあえず、今日の訓練も大体はいつも通りだが…」

 かすかに、エーテルが笑う

「……本当なら、あんまり他人の前では見せたくないんだが。こっちの方が、やる気がでるだろうしな」

 刹那
 エーテルの姿が……ハンニバルに、変わった


 隣に立っていた辰也が、ぴくり、かすかに反応したことに、宏也は気付いた
 当然だ、ハンニバルの姿を見て、辰也が反応しないはずがない

 ……ここに、ハンニバルが来るはずがない
 これは、ハンニバルではない
 …どうやら、エーテルは光を操る能力を持っているらしい
 つまり、これは

「光の屈折でも利用して、姿を変えてるのか?」
「…ご名答。まぁ、本当に姿だけ、だけどな」

 それじゃあ、と
 いつも通りの訓練が、始まった


(----やっぱ、刃物系とは相性悪ぃな、俺の能力は)

 切り裂かれる己の髪を見ながら、宏也はこっそりと苦笑する
 …並大抵の刃物では、切り裂くのも難しい髪ではあるが
 それでも、エーテルが使うような光剣では、あっさりと切り裂かれる
 ………恐らく、ハンニバル相手でも、同じ結果だろう
 本人の力量と剣の切れ味が合わさり、それこそ、人体を一刀両断できるだけの威力が、あの剣にはあるのだから
 宏也自身は、ハンニバルが戦闘を行っている場面を見たことは、ない
 しかし、辰也やヘンリエッタ、それにジェラルドやイクトミの証言を聞いた限りでは、そうらしい
 …だからこそ、余計に自分は、体内に「賢者の意思」を仕込むことで、それに対抗しようとしているのだが…

 どれだけ、相性が悪かろうとも
 あの男は、自分が殺す
 そう、決めたのだ
 ………これだけは、辰也に譲れない
 譲ってはいけない

 辰也とハンニバルを、再び対面させてはいけない

 ーーーっひゅん、と

 音もなく忍ばせていた髪を、一気に速度をあげてエーテルに向かって放つ
 数十本纏めたものではなむ、一本だけ
 --それでも、宏也の髪は、軽く人体を切断しうる威力を持っている

 しかし
 それは、ギリギリのところでエーテルに感知され、切り落とされた
 やはり、駄目か
 もっとギリギリの位置まで忍ばせてから、一気に巻きつけて切断した方が…

(……ま、それだと暗殺っぽいがな)

 正直、自分はだまし討ちの方が性にあっている
 このように真正面からの戦いも不得意ではないが……「組織」幹部を何人か殺した時は、そのような手段で殺したものだ

 都市伝説同士の戦いは、都市伝説同士の相性や本人の戦闘能力ももちろん大事だが……「自分がどんな都市伝説と契約しており、どんな能力を持っているのか」と言う事も、非常に重要だ
 能力を知らない相手ならば、不意を討って殺す事も容易い

 ……今回の相手となるハンニバル相手では、それは使えない
 ハンニバルは、こちらの能力を把握している
 逆に、こちらは未だに、ハンニバルが何と契約して飲み込まれた存在なのかすら、わからない
 ……正直、厄介だ

(元「教会」所属ってんなら、そっち方面からたどるって手もあるが…)

 あちらが、情報を漏洩するとは思えない
 だから、推察するしかないが
 …「教会」に所属するには、それに相応しい都市伝説である必要性があるのだ
 そうなれば、ある程度は絞れる

「っと!?」

 向かってきた光のメスに、思考を中断させられた
 ギリギリでそれをさけ、距離をとる

(あぁ、本当やりずれぇ。あの野郎本人相手となるともっとタチ悪いんだろうけどよ)

 ……まぁ、わかりきっていた事だ
 それに、自分はまだ、辰也と比べればマシだろう
 辰也は、近接戦闘訓練など、受けた事ないのだし……

(……ん?)

 ---その瞬間
 違和感に気付いた

 辰也の気配が、完全に消えている

「-----------っ!!」

 通常ならば、「13階段」の能力以外、まともな戦闘手段をもっていない辰也
 そもそも、階段がなければ能力は使えない
 一応、教会裏の庭の先の山の中であるここにも………少しは、階段らしきものがある
 それを使えば、発動できなくもない…が、そもそも、相手がその階段の上を通過しなければ発動できない訳で
 エーテルも、辰也のその能力に付いては、把握している
 奥の手については把握していないだろうが…自分が「組織」に報告しなかったのだから…、辰也には、あの能力は使わないように言っている
 今の辰也でも、まだ「あれ」を使うには早いだろう
 ヘタをしたら、飲み込まれる

 ……だから
 この訓練において、辰也はうまく、「13階段」の能力を発動する手段を探していた
 だが
 …ハンニバルの姿を見て
 冷静さが、そがれたか?

 急いで、辰也の姿を探す
 運がいいと言うべきか、悪いと言うべきか
 それは、すぐに見付かった

 エーテルの…「ハンニバルの姿をとった」エーテルの、その背後
 気配を完全に消して、気づかれる事なく…そこまで、接近していた辰也
 手に握られているのは、鋭利な形をした、石

 エーテルが、背後に回りこんでいた辰也に気付いた、その瞬間には
 辰也が握る石が、エーテルの喉元に向かっていって……------

「辰也っ!!」

 ---ぴたり

 辰也が振るった石の切っ先は………エーテルの喉元ギリギリで、止まった

「---っぶな」

 驚いたせいだろうか
 エーテルの姿が、元に戻った

 ---すぅ、と
 辰也が纏っていた殺気が、消える


 完全に、気配を消していた
 そして、急所狙いの、一撃
 「組織」にいた頃の…宏也と関わりだしてすぐの頃の辰也の姿を思い起こさせる光景だった


「………っ」

 それを、辰也自身、自覚したのだろう
 手に持っていた石が……からん、と
 音を立てて、落ちた
 表情が、かすかに青ざめている

 どう、声をかけるべきか
 宏也が迷った、その時

「…ひっひ、そろそろ、食事が出来たよぉ」

 かけられた声
 振り返れば、魔女の一撃たるロレーナが、辰也達を呼びに来ていた
 …さほど長い時間訓練していた覚えもなかったのだが、もうそんな時間か

「ほぉら、治療薬も持ってきたよぉ?飲んでから来ればいい」
「いらねぇ。これくらいどうって事ねぇよ」

 す、と
 ロレーナが取り出したどす紫色の治療薬を拒否する辰也
 …その雰囲気は、「組織」を抜けた後の、普段の辰也に戻っている

「おやおやぁ?あんたが怪我してたら、恵が心配するよぉ?」
「………ジャッカロープの乳でじゅうぶ」
「ジャッカロープなら、恵に連れられてもう食卓にいるけど?」

 ………
 …………

 無言で、ロレーナから治療薬を受け取った辰也
 一気に飲み干し……
 ……あ、味に痙攣してる

「…男だな」
「まぁ、ベタ惚れだからな」

 …元の性別?
 まぁ、気にするな
 そもそも、恵は生まれてくる性別を間違えたような存在だ

「………なぁ」
「うん?」

 辰也の意識がこちらに向いていない隙に…とでも、思ったのか
 こっそりと、エーテルが宏也に尋ねる

「…「組織」内で、とある資料が紛失した」
「へぇ?」
「……H-No.96。つまり、広瀬 辰也の、「組織」での任務記録だ。正直、重要性の低い資料だ………だが、だからこそ、データベース上の記録まで完璧に消されていた、と言うのが引っかかってな」
「どうして、俺にその話を?」

 俺には関係ない、とでも言うような宏也に
 射抜くような視線を向けて、エーテルは続ける

「…その資料を持ち出したのは。データベース上のデータまで抹消したのは…もしくはさせたのは、お前なんじゃないのか?」
「………何故、そう思う?」
「その記録の内容を……俺は、完全ではないが、少しだけ把握している」

 …ぴくり
 かすかに、宏也は反応を示す
 それに気付いて、さらにエーテルは続けた

「…やや、不自然に感じる点があった。お前も、それに気付いて…………?」

 す、と
 宏也が、話を打ち切らせるように、制するように、手をあげる

「……忘れてくれ、その事は…………間違っても、辰也には、気付かせるな」
「自分の任務の事だ。本人が気付いている可能性があるだろ?」
「…それはそうだがな」

 だが
 その奥にある「真実」には、まだ気付いていないはずだ
 それを、気付かせる訳にはいかない

「……あいつは、知らないままでいいんだよ」

 知らないままでいい
 知らぬままの方が、幸せな事もある

 絶対に、辰也に気付かせてはいけない
 その真実を、悟らせてはいけない



 …宏也の様子に、エーテルは首を傾げた
 彼もまた、あの資料でかすかに感じられる不自然な点…かすかな違和感には気付いていた
 しかし、その奥の奥の真実には、まだ気付いていない


 広瀬 辰也…H-No.96の、「組織」所属中の、任務
 常に、誰か他の契約者、もしくは黒服と組んでの任務である
 その任務は、たった一つを除いて……全て、暗殺任務

 そこまでは、解くに不自然ではない
 そもそも、辰也の「13階段」は、暗殺向きの能力なのだから

 ………しかし
 その任務で、共に組んだ相手は


 ただの二人を残して、全員、その任務中に命を落としているのだ
 そう、まるで

 辰也の任務を確実に成功させる為の、捨て駒にされていたかのように







to be … ?




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