「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち・決戦以降-20d

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 夕暮れ時
 学校町 北区 放置された廃墟ビルが並ぶ一角
 その、廃墟ビルの屋上に……一人の、人影
 それは、屋上の縁に立っていて……まるで、遠目に見ると、そのまま飛び降り自殺でもしそうな様子に見える
 人影は…その縁から、たんっ、と飛び立ち

 -----当たり前のように、向かいのビルの屋上に、着地した

 有り得ない光景
 走り幅跳びの選手であろうとも、飛び越えるには不可能な距離が、ビルとビルの間にはあったはず
 だと言うのに、その人影は……まるで、当たり前のように、軽く飛び越えて見せた

 たんっ、たんっ、と
 人影は、何度かそれを繰り返す
 危なっかしさも見せる事なく、軽く軽く、ビルからビルへと飛び移っていく
 北区と言う場所柄、それは誰にも目撃される事なく
 彼の「訓練」は、いつも通りに終わった


「ふぅ…」

 とんとんっ、と脚の調子を確認する辰也
 …痛みは感じない
 過去に投与された薬による、強化された身体能力を発揮しても、反動が出なくなってきている
 ……一時期、使用を控えていた事によって現れていた、その反動
 それが、もう、出ない

 「組織」にいた頃に、自分の体が近くなってきている事を自覚する 
 先程の訓練とて、「組織」にいた頃を思い起こしてしまう行為だ
 だが、それでも……辰也は、自分の体の調子を、いつ、戦闘に巻き込まれても良いように整えていた
 元々、近接戦闘訓練は受けた事がない
 自分が受けた訓練は都市伝説を使い、それを中心にした戦闘行為の訓練と………暗殺技術の訓練だけだ
 戦闘は先手必勝、一撃必殺重視、もしくはだまし討ち中心
 そうでなければ、自分は負ける
 その程度の戦闘力しか、持ち合わせていない
 エーテルとの戦闘訓練を積み重ねたとしても…付け焼刃にしか、すぎない

 それでも
 いつでも、咄嗟に体が動かせる程度には、しておかなければならない
 たとえ、自分が「組織」時代に近い状態になったとしても、だ
 …いや
 どうせ、自分は……

「………」

 思考を振り払う
 悪い方向へ考えれば、どこまでもそちらに思考が引きずられる

 今日は、ここまでだ
 辰也は廃墟ビルを後にし、教会への帰路へとつく事にした



「辰也?今から帰るのか?」
「ん?…あぁ、誠、翼」

 声をかけられ振り返ると、そこには誠と翼の姿があった
 誠の方は、買出しの帰りなのだろう、買い物袋を抱えている
 翼は…これから、バイトにでも向かうのか、いつも通りの身軽な恰好だ
 そうだよ、と誠の問い掛けに短く答える

「荷物、半分持つか?」
「いや、平気だ」

 それも、鍛錬の一つのつもりか
 結構な量の荷物だが、誠は軽々と持っている
 …自分のように、薬物投与などではなく、純粋な鍛錬でここまでの力を得ている誠を、少し羨ましいと思う

 翼も、途中までは同じ道のりを進むようで
 そのまま三人、並んで歩く

「辰也、体の調子、大丈夫か?」
「うん?………特に問題はねぇが、どうした?」

 翼に問い掛けられ、そう答える
 …と、言うか、翼が心配してくると誠の嫉妬の視線が突き刺さるから、勘弁してほしいのだが

「いや、恵が心配してたから」
「…大丈夫だよ。俺は、何も」

 ……恵だけは、心配させたくないのだが
 しかし、恵は時々、聡いから、こちらの異変に気づいてしまうのか

 体調には、特に問題はない
 …ただ
 心が不安定になっている自覚は、ある
 自分の欠点の一つだ
 もっと、己の心をコントロールできるようにならなければならない

「そうか?…なら、いいんだけどよ」
「体調の問題なら、恵の方が心配だよ……あいつは、体が弱いから」

 それもそうか、と納得している翼
 …単純で、ありがたい

 しばし、そうして何気ない話をして歩いていると

「……?」

 …誰かが、絡まれているような声が、聞えてきた
 北区は学校町内でも、やや田舎な地域だ
 人気がないが故、繁華街とは別な意味で不良が集まりやすい
 どこかの誰かが、不良でも絡まれてるのだろう

「……向こうか」
「翼?関わるのか?」

 悪いか?と逆に誠に聞いている翼
 …正義感が強いと言うか、何と言うか
 チャラチャラした外見に反して、翼はその辺り、しっかりとした性格だ
 あの両親の影響とは思えないから、やはり、あのお人好しの黒服の影響なのだろう
 それと……翼本人の、性分か

 翼を放っておく事もできないのか、誠が翼の後をついていっている
 …仕方ない
 自分も、誠が何かやらかした時に備えて、ついていくべきだろう
 辰也は小さくため息をつくと、誠達の後を付いて行った

 予想通りと言うべきか
 やはり、誰かが不良に絡まれていたようだった
 褐色の肌に、黒い髪の…自分達と同じくらいか、それより少し年上と言った雰囲気の、おどおどとした青年が、柄の悪い連中に絡まれている
 …都市伝説や都市伝説契約者の気配は、その柄の悪い連中からは感じない
 ならば、翼達の敵ではあるまい

「何やってんだ、お前ら」
「------げ!?狂犬!?」

 翼の姿に、柄の悪い連中たちが怯む
 …辰也は詳しくは知らないが、翼は中央高校に通っていた頃、やや荒れた生活を送っていて…狂犬と呼ばれて不良に恐れられていた存在だ
 同じくらいの世代には、未だに恐れられているのだろう
 その姿を見せただけで、この反応

「しかも、腰ぎんちゃくの負け犬も一緒だと!?」
「OK,俺達死んだ。敵わない」
「……誰が、腰ぎんちゃくで負け犬だって?」

 柄の悪い連中が、誠の地雷を踏んだ
 死にはしないが、ボッコボコにされる事確実だろう
 辰也は静かに、柄の悪い連中に同情した

「俺は翼の腰ぎんちゃくじゃねぇ!恋人候h」
「何、馬鹿な事口走ってるかぁああああ!!??」

 ごがすっ!!!

 ………真っ先に翼に殴り飛ばされたのは、誠だった
 あんな変態発言をすれば当たり前だ
 元々はまともな奴だったような気がしないでもないのだが、どうしてこうなった

 そして
 くるり……翼の視線が、柄の悪い連中に、向いて
 八つ当たりが決定したであろうその状況に
 辰也はますます、柄の悪い連中に同情したのだった


 数分後
 柄の悪い連中は、全滅した
 相手になっちゃいねぇ

「大丈夫だったか?」
「え、あ……う、うん、ありがとう…」

 柄の悪い連中に絡まれていた青年に、声をかける翼
 褐色肌のその青年は、こくり、頷く

「この辺りは日が暮れると物騒になるから、気をつけた方がいいぞ」
「そ、そう、なんだね……ありがとう、教えてくれて…」

 …この辺りの事を、あまり知らないようだ
 つい最近、学校町に引っ越してでもきたのだろうか
 この街は、どこだって、日が暮れてくれば物騒だ
 悪い場所に引っ越してきたものだ

「…本当に、ありがとう…それじゃあ」

 ぺこり、と青年は頭を下げて
 やや足早に、この場を立ち去っていく
 ……あの青年から、かすかに都市伝説の気配は感じたが………まぁ、あの絡まれていた様子を見るに、人間に害を与える可能性は低い
 見逃しても問題あるまい

「さてっと……おら、誠起きろ。いつまで気絶してんだ」
「お前が殴り飛ばしたのが原因だろ。わりと強めに頭打ってたぞ」

 …どうせ、誠の事だから、あと2,3分くらいで復活しそうな気もするが
 がくがく、誠を揺さぶる翼の様子に、辰也は小さくため息をつき

 …しかし
 その、平和な日常に
 かすかに、笑みを浮かべたのだった



「……うぅん……北区で後探してないのは………あの、教会だけだよね……教会は、苦手だけど……………後で、あそこも探した方が、いいのかなぁ……?」

 褐色肌の青年、ディランは、一人そう呟いて
 夕暮れの道の中、そっと、路地裏に入って…そのまま、忽然と姿を消したのだった




to be … ?




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