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連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち・決戦以降-20f

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 …呼吸は、安定している
 とりあえず、命は繋いだ
 しばし安静にしていれば、命の危険はあるまい

「君が行った応急処置が良かったお陰だ。そうじゃなければ、無事ではすまなかっただろう」
「そうか……」

 ドクターの言葉にため息をつく辰也

 限界以上に投与された薬の副作用で吐血し、意識を失った天地
 通常ならば、体が崩壊して命を落とすところだ
 だが、天地の動きを見て、辰也が天地に投与された薬の正体を見抜き、もはや毒となっていたその効力を、ジャッカロープの乳で中和した
 そうして、崩壊の進行をそこで止め……意識を失った天地を、ドクターの元へと運んできたのだ
 ドクターは、辰也から「組織」の…それもHNoが使用していた薬のデータを受け取っている
 投与された薬が何なのかわかれば、対処は容易い

「悪いが、しばらく天地を頼む」
「まぁ、患者の面倒は最後まで見るつもりだが………いいのかい?彼は、君の命を狙ってきたのだろう?」
「………………………いいんだよ。今回、だけは」

 …辰也の答えに、ドクターはやや、違和感を覚えた
 辰也という青年は、元「組織」に所属していたからか、それとも、その人生経験のせいなのか…それほど、甘い性格ではない
 自分の命を狙ってきた相手を、こうやって助けるものだろうか?
 しかも、この天地という青年、聞くところによれば「モンスの天使」の契約者だという
 …つまり、昨年の中央高校での騒動の時、あの激しい銃撃でもって、辰也達を殺そうとした相手
 それを、辰也が助けた
 ドクターを頼ってまで
 ………その、違和感

(…それに)

 もう一つ
 ドクターが感じている違和感が、一つ

 辰也は、天地に投与された薬の正体を、そして、投与された量を即座に見抜いた
 …薬の情報を、正確に把握していなければ、できない芸当
 確かに、辰也はHNoの使用する薬の情報を所持していた
 だが、所持していたからと言って、その詳細を把握しているとは限らない
 …そう簡単に、その詳細を正確に把握しきるには、あのデータは情報量が多すぎる
 それを、辰也は正確に把握していた事になる
 …思えば
 辰也は、「組織」でのメンテナンスをさぼっていた宏也の体を保たせるための薬を精製できるだけの知識と技術を持っていたのだ
 それだって、おかしい
 なぜ、ただの実験体でしかないはずの辰也がそれだけの知識と技術を把握できていたのだ?

 …「組織」が
 HNoが
 ただの実験体でしかない辰也が…それだけの情報を把握しうる状況を、許したとでも言うのか?
 宏也が教えたのか?
 違う、とドクターは考える
 宏也は、薬関連について、詳しくないと自己申告していた
 せんみつな彼の証言ではあるが、あれは「嘘ではない」とドクターは判断していた
 彼は、本当に、薬に関する知識は深くない

「…それじゃあ、任せたぞ」

 それ以上の追求を、避けるように
 辰也は、診療所を後にした


「…ぁ……辰也、どうだったんだ?」
「しばらく安静にしてりゃ、どうにかなるってよ」
「……そう、か」

 ほっとした表情を浮かべる恵
 …辰也が、天地を心配していたから
 恵も、天地が心配だった
 ……仲間以外の事など、あまり心配しない辰也が心配していたのだ 
 何かしらの事情があるのだろう、と恵は判断していた
 その理由を、聞き出したい気持ちがない訳ではない
 だが、無理に聞き出すつもりもないし…自分には、そこまでの資格はないと、恵は考えていた

「それじゃあ、帰るぞ」
「……くけっ」

 頷き、差し伸べられた手を、とろうとして

 …その時
 辰也の携帯に、着信がきた
 悪い、と手を引っ込める辰也

 ……一瞬
 ひどく、寂しく、不安に感じたのは、気のせいか?

「宏也、どうした?…………H-No.2の蛇が?」

 ぴくり
 辰也の口から漏れた、その言葉に
 不安が、深くなる

「いや、こっちには来てないが………………そうか、わかった………「組織」管轄の病院?」

 …辰也の、表情が
 どんどんと、暗く、そして、厳しくなっていっていて
 不安が、どこまでも深くなる
 辰也が、どこか遠くへと行ってしまうような、錯覚

 携帯の通話を切って、辰也が顔を上げた
 …何か、決意したような、表情

「恵、悪い…マッドにでも連絡とって、車で迎えに来てもらってくれ……迎えが来るまで……あのドクターのそばにお前を置いておくのは不安だが、この診療所にいろ」
「……辰也、は?」
「俺は……」

 辰也が俯く
 恵の、漠然とした不安が、さらに強まっていく

「俺は……少し、やることがあるからよ…………大丈夫、ぱっぱと終わらせてくるから」
「……ぁ」

 …立ち去ろうとした、辰也の服を
 恵は…半ば、無意識につかんだ
 辰也が、驚いたような表情を浮かべる

「…恵?」
「……あ……すまない…」

 服から、手を離す
 手を離したことを、すぐに後悔する
 離すべきじゃ、なかった
 辰也が、どこかに行ってしまう
 もう、帰ってこないかもしれないという、不安が……どんどん、どんどん、強まっていく

「辰也…帰ってくるよ、な…?」

 不安げに、恵は辰也を見上げた
 辰也は、じっと、恵を見つめ返して…
 …恵を安心させるように、笑ってきた

「当たり前だろ?」

 ……笑って、そう答えて来た辰也
 しかし、不安をぬぐえない
 なぜ、こんなにも不安なのか
 それがわからず、恵は戸惑う

「大丈夫だ……全部、終わらせてくるから」

 そう言って、走りだしてしまった辰也
 それを止めようとして…しかし、恵はそれを、止めることが、できず

「………?どう、して……?」

 なぜ、こんなにも不安なのだろうか
 何故……辰也が、いなくなってしまうような
 そんな錯覚を、覚えてしまうのか…

 …小さく、体を振るわせて
 恵は、自分がとるべき行動を、思案した



to be … ?



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