「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 電子レンジで猫をチン!-27

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【電磁人の韻律詩27~悲しいくらい優しくて~】


バイク関係の知り合いと偶然待ち合わせをすることになった。
指定の時間に待ち合わせ場所に行ってみると、そこには待ち合わせ相手が気絶して転がっていた。

「この状況を見れば俺が正当防衛でこいつらを倒したと思って頂ける筈だぜ、明日真。」

目の前に居る男の名前は笛吹丁。
去年の秋から日本を震撼させた連続殺人鬼。
日本のありとあらゆるところで人を殺して回り、最終的にこの町に腰を落ち着け、探偵業を営んでいる。

「ところで、お姉さんは良いのか?
 今頃俺の事務所が襲撃されているかもしれないんだが……。」

さも自分は余裕があるかのような口ぶりで俺に話しかける笛吹。
この男と長い時間話しているのは得策ではない。
この男には会話した相手の思考をゆるゆると奪い取る能力が有るのだ。
それが都市伝説依存のものなのか、それとも奴自身が異常なのかは解らない。
だけど、とりあえず今はここを離れるしかない。
それすらも奴の思い通りだったのかもしれない可能性になんてまったく気づかず、
俺はとりあえず姉である明日晶が居るらしい笛吹探偵事務所に向かった。






「あれっ?なんで此処に?」
「それはこっちの台詞だよ姉さん、アメリカに行っているんじゃなかったの?」
「ああー、ちょっとビルの補修工事のアルバイトが入っちゃってね。」

俺の姉である明日晶は何かの都市伝説と契約していて超能力が使える。
それが何なのかは俺は全く解らない。
今、彼女はその能力を使ってバラバラになっているビルの内壁を修理していた。

「外側は一瞬で復元できたんだけど内側の細かい作業が面倒だったんだよ。
 ……まああと十秒はかかるかな?」

そういう目の前で壁はまるで時間を巻き戻しているかのように形を取り戻す。

「何しに来たの?私の心配なら別に良いよ。」
「いや、所長に会って姉さんが危ないかもって話を聞いたから……。」
「それは委員長が嘘ついたね。」
「え?」
「あんたが居られると都合悪いことをしようとしていたんじゃないの?
 大体、委員長ですら歯牙にかけなかった相手で私がピンチになると思う?」
「あ、う……でもそれは…………。」
「まあ良いよ、あいつが何していようとも親友からの頼み事は果たすさ。
 あとベビーシッターのバイトも有るから用がないなら帰って。」

久しぶりに会う姉は心なしか冷たく感じた。
昔から彼女は自分を無視していたような気がしていたが、やはりそうなのだろうか。
心に少しばかりのすきま風が吹いたような感覚。






「ねぇ、なんで姉さんは笛吹と仲が良いのさ?
 俺はどう見てもあいつが悪い奴にしか思えないんだけど。」
「そう?逆に聞くけど悪い奴とは友達になっちゃ駄目なの?」
「えっ、……友達なら悪いことはやめさせないと。」
「成る程、その意見は正しいかもね。でもそれでも友達が悪いことやめられなかったら?
 そうなったらあんたは友達やめるの?
 結局貴方の語った友情は偽物ってことになるけど良いの?
 私は嫌だなそういうの、あいつが何をしていようと私を必要として、私に必要とされている限り、
 小学校の頃からの友達のまんまなんだよ。」
「偽物って……、なんにしても悪いことするのは駄目じゃん。」
「どうして悪いことしちゃ駄目なの?」

その問いに一瞬答えが詰まる。
悪いことをしてはいけません、そんなの当たり前すぎて理由なんてわからない。
ただ強いて言えばそれは今目の前に立つ彼女自身が昔言っていた言葉だからかもしれない。

「姉さんが昔言っていたじゃないか。
 弱い人を助けてあげなさいって、誰かの為になることをしなさいって。」
「ああ、それ?」
「それ?ってなんだよ。昔は姉さんいつも言っていたじゃん!」
「…………だから?」

恐ろしく乾いた声で彼女はそう言い放った。






「あんた、私の真似でもしているつもりなの?」
「それは違うよ、俺は俺の意志で今こうしているんだ。」
「なら良いじゃない、私が何をしていようと。」
「それはそうだけど、でもそうじゃないだろ?」
「言っていることが矛盾してるわね。貴方は貴方の周りが正義で満ち溢れていないと許せないの?
 誰の物かも解らない正義より大切な物が有るって思えないの?」
「そりゃあそっちの方が良いでしょ。」
「解った、それならあんたと話すことはもう無いよ。それじゃあね、今頃子供達が暇してる。」
「姉さん、何でそれで話すことが無くなるんだよ。」

昔よりもさらに冷たい姉。
まさか笛吹が彼女を操っているんじゃないだろうか?
いや、そんな事はないと思う前にその思いが口をついて出ていた。

「今の姉さんは笛吹の都合の良いように動いているだけじゃないの?
 まるで利用されているみたいじゃないか!」

一瞬だけ彼女が振り返る。

「だとしても構わないよ。」

それだけ言うと姉は笛吹探偵事務所のドアを潜っていった。






「やだやだ、姉弟ならもっと仲良くしたまえよ。」
「――――――!?」
「さっきから後ろに居たぜ。お前のお姉さんはとっくに気づいていたみたいだけど。」

俺が帰ろうと振り返るとそこには笛吹丁が立っていた。

「お前が正しいとか、間違っているとか、そういう思想はどうでも良い。
 思想とか理想とか理法とか、そう言う物の前に、大切な物が有るだろう?
 大事じゃん、家族。
 あと友達とか恋人。
 俺なんか思いあまって家族捨てちゃったからさ、そういうのが身にしみて解るぜ。
 仲良くしろ仲良く。」

「……さっきの人たちは無事なんだろうな?」
「ああ、今頃黒服が保護していると思うよ。俺はあの場に残り続けるとトラブルしか無いからな。
 さっさと退散させてもらった。」
「さっきの会話は何時から聞いてたんだ?」
「さぁて?知らないね。
 どうでも良いけどさ、黒服Hから俺の能力について聞いていたよな?」
「え、ああ……。」
「俺ってばアレを小学生くらいの時から出来てたんだよ。
 だから言わせてもらいたいんだけど、ああいうこと出来るのって別に俺だけじゃないんだぜ。
 人間ってのは大なり小なり言葉を通して通じ合って生きている。
 俺なんかは人より少し多く“発信・受信”してしまう側ってだけさ。
 今のお前の意志さえも沢山の他人によって歪められている。
 自分自身を常に疑え、自分に言葉をかける人間も疑え、でも恋路ちゃんだけは疑うなよ?」

なんちゃって、とおどけてみせる笛吹。
其処にいるのは町を騒がす殺人鬼とやらでなく只の気の良いお兄さんである。






「なぁ、前から気になってたんだけどさ、
 なんであんたは人を殺して、そんな平気で笑っていられるんだよ?」

解らない。
容赦なく他人を切り捨てたかと思えば、未練がましく過去にすがってみせる。
あっけらかんと命を奪ったかと思えば、誰かの笑顔の為に東奔西走する。
そんなこいつが解らない。

「ああ、それなら簡単。
 だってどいつもこいつもメル以上に生きたいと思ってないんだもん。
 誰よりも、一番生きたいと強く願う奴の為に何かしてやりたい。
 俺はそう思ったよ。
 その為の方法として、人殺しが一番楽だっただけ。
 俺は殺人鬼でも何でもないんだ。みんな勘違いしている。
 あの日、心から生きたいと願って俺にすがった都市伝説も、
 ある時、心から俺を正そうと俺に向き合った少女も、
 みんな全力だった、そこには間違いなく心があった。
 日々を只漫然と生きる人間にはない強い情熱が、意志があった。
 そういうのを見ると俺はもう駄目なんだ、手伝わずにはいられない。
 その為だったらその他諸々(美少女は除く)は道具でしかない。
 向坂だってそうだ、心から『ハーメルンの笛吹き』に復讐したいと願ったから、俺はその為に手伝った。
 お前だって有るはずだよ。人の必死な願いを無視するこの世の理不尽さを感じたことが。
 それをさらにねじ伏せる力を得たなら、俺が正しいと思える使い方で使いたいだろ?」

「その為には、人が何人死んでも良いのか?」

「“人の命”ってそこまで大事なのか?“誰かの命”は重要だけど“人の命”なんて統計だよ。
 それはもう心にかけるべきものじゃない。」
「そんなことって……、あんまりじゃないか。」
「人間なんてゴミさゴミ、今だって地球のどこかで誰か死んでいるんだ。
 俺がメルの為に殺した人々もそのうちの一部さ。
 “誰か”の存在はあまりに重いが“人”の存在はあまりに軽い。
 今此処で宣言しても良い、俺は“誰か”の為になら命を投げ出せる。
 ああでも……あの中にはお前にとっての“誰か”も居たのか?
 それについては済まなかったと思うが、あの件は正当防衛だぜ。
 お前が“人の命”が重要だと言って今からでも俺を倒しに来るなら返り討ちにしてやるよ。
 ただ、そうなったら晶が俺を守ってくれるけどな。
 その事実にお前はきっと耐えられなくなる。」
「そんな気はない、復讐は正義じゃない。」
「どこまで行っても正義、か。そういうのは大好きだぜ。
 昔の晶みたいだ。その感覚を保っていればお前が間違うことは無いよ。
 ……多分。」

致命的に何かを間違ってはいるが優しい男なのかもしれない。
一応俺はあいつの敵の筈なのだ。
あの優しさが演技であることは可能性としてあり得る。
でも、そうは考えたくない。
きっとあいつにとって俺は“人”じゃなくて“誰か”なんだろう。
数字の上のどこか遠くの存在じゃなくて直につながっている存在なんだろう。
それならば、その発言と行動を踏まえた上であいつの行動を思い起こせば。
あいつは理解不能な怪物なんかじゃなくて、ある意味誰よりも人間でしかない、只の人間だ。






「なんとなく姉さんがあんたを好きな理由が解ったよ。」
「恋愛じゃないぜ?子供じゃないんだからさ。
 純粋な友情と敬意、それと少しの愛情。」
「……恋愛じゃねえかよ。」
「否定はしない、今でも俺の性的な好み云々抜きにして俺は好きだよ、あいつが。
 昔から誰かを傷つけて誰かを守ってきた俺を、傷つけたり守ってくれたのはあいつぐらいだ。
 あいつ無しじゃ今の俺は居ないし生きていけない。」
「そうか……。」
「お前が正義の味方やる上で俺や晶と対立するかも知れないけどさ。
 晶のことは心配しなくても良いぜ、代わりに信じてやってくれ。
 無意識にだと思うけど、お前ってば晶のことを全く信用してないから。」
「そう、なのか?」
「自分の発言を思い返してみろよ?お前は割とお前の姉のことを解っていない。
 そしてお前の姉はそれにすこしいらだっている。」

そう言って笛吹は事務所に帰って行ってしまった。
……こいつもしかして最初から全部聞いていたのではないだろうか?
携帯の呼び出し音が鳴る。
恋路からだ。
俺は面倒な思考を中断して、一旦家に帰ることにした。
今日はシチューだそうである。
こんがらがった頭に彼女の優しさがじわりとしみてきたり。
【電磁人の韻律詩27~悲しいくらい優しくて~fin】



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