「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 電子レンジで猫をチン!-28

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【電磁人の韻律詩28~ピュアピュアハートの恋占い・前編~】


日曜日、明日真は怪我から回復して彼女とのデートを楽しんでいた。
場所は学校町近郊の遊園地。
チケットは彼らを担当している黒服Hからのプレゼントだった。

「いやー、黒服さんも優しいね!こんなものプレゼントしてくれるなんて!」
「それよりも俺は『これから少し忙しくなる』って言っていたのが気になるなあ。
 あの人の身に何かあったんじゃないか?
 嫌だぞ俺、結構借り作りっぱなしだしさあ。」
「大丈夫大丈夫、あの人ならなんとかなるさ。」
「そうかなあ……。」
「それよりアスマ、次はあのジェットコースター乗ろう!
 ジェットコースター!」
「え、ちょ…………。」

恋路は隣で青くなっている明日を楽しそうにジェットコースターに引っ張っていった。




「無理だ、絶対無理だ。俺はハンドルとタイヤのついてない乗り物は駄目だ!
 絶対に駄目なんだ!今ならまだ間に合う、降りよう。
 急いで降りよう。」
「駄目だよアスマー、男は度胸だぜ?」

「ひぇえええええん!無理!無理ですうう!怖いんですってばぁ!」

明日の後ろから女性の悲鳴が聞こえる。
どうにも彼らと似たような状況らしい。

「まだ降りられます!さっさとやめましょうよ拝戸さああああああん!」
「女も度胸、なんでも試してみるもんさ。」

拝戸、確かに彼女はそう言った。
気のせいではない。
明日と恋路の乗っているジェットコースターの後ろの車両には、
拝戸直とその契約都市伝説である口裂け女のみぃちゃんが乗っているのだ。

「そぉれでは発車しまぁーっす!」

それにしてもこの係員、ノリノリである。





「ぎゃああああああああああ!!」
「うわあああああああああああああああああ!」
「きゃっほーーーーーーーー!」
「……………………。」
「きゃーーーーーーーーー!ほら、ここで腕あげて!」
「え、ちょ待て!」

カシャ

「うわ、なんかシャッター音なったけど目つぶっちまったぞ!」
「あーん!なんで目つぶっちゃうのさ!写真撮るのに!」
「え、聞いてねえよそれ!」

ジェットコースターが止まってから言い合いを始める二人。

「すいませーん、彼女が卒倒してしまったので休めるところ無いですかねー。
 始めて来た物でまだあまり遊園地の構造を把握していないんですよ。」
「あれ、なんかあっちの人怖すぎて倒れちゃったみたいだね?」
「本当だ、おい恋路。道案内してやろうぜ。どうせ俺たちも休憩所の傍通るし。」
「あー、そうだね。次は観覧車だしね!」

恋路は観覧車の部分に妙に気合いが入っているが、当然明日はそれに気づかない。

「あのー、すいません。良ければ休憩所の場所に案内しましょうか?」
「え?それはありがたい、お願いできますかね?」

拝戸直は人の良さそうな笑みを明日に向けた。




数分後。

「……という訳で、妹が居るんですけどね。もう困った奴なんですよ、ハハ。」
「あー、俺も姉が居るんですけど本当に迷惑ですよねえ。」
「部屋とか構わず入ってきたりして。」
「その上部屋に入っている物勝手に漁ったりして。」
「ああー!あるある!」

拝戸直と明日真、殺人鬼と正義の味方、鴨川と月山くらい共通点の無い筈の二人なのだが、
偶然にも女兄妹への愚痴で盛り上がっていた。

「ったく、これだから男は……。」

やれやれ、といった風情でため息を吐く恋路。
態度ではゆるゆる休日モードといった風情だったが、内面は全く別だった。
血の匂いがする。
それが彼女の拝戸直という男に対する第一印象だ。
一瞬でも隙を見せれば食い物、いやもっと悪い何かにされてしまいそうな、不思議な雰囲気を持っている。
彼女の知る悪魔のような探偵とはまったく別物の悪意。
傍若無人などというのではなく、それこそ何かの宗教の狂信者のような……。

「俺の妹なんかそこは特にひどくてさー!」

しかし、彼女の警戒をよそに、拝戸と名乗る男は彼女を負ぶったまま明日真とのんきに話を続けていた。





「でも良いじゃないですかー、それだけ妹さんはお兄さん大事にしてくれてるってことで。」
「そうそう、お兄ちゃんのことは私が一番良く解っているんだから。」
「でもでも俺の彼女につきまとうとか色々アウトじゃないか?」
「いやー、アウト……ですね。」
「アウトじゃないもん、悪い虫を追っ払っているだけだもん。」
「ですよねー!」
「それを言ったら俺の姉なんか酷いですからね。
 去年のクリスマス俺たちに黙ってホテルの予約なんかしてもうムードも何もないっていうか……。」
「本当にこれだから姉だの妹ってのは――――――――!?」
「あ、やっと気づいたー?」
「どうしたんですか拝戸さん?…………ってドチラサマ?」

恋路は驚いた。
いつの間にか明日真と拝戸直の後ろ、恋路の目の前にセーラー服の女の子が立っていたのだ。

「明日真君だね、私は先ほどまで君たちの話に出ていた拝戸直の妹だよ。」

これでも恋路は都市伝説としてかなりの戦闘経験を積んでいる。
元々探知型じゃないとはいえ、目の前に人間が居ることにまったく気づかなかった事実は、彼女に恐怖を与えるのに十分であった。





「貴方は貴方は恋路さん、明日君の彼女さんだねー。私は私は恋する貴方を応援してるぞッ☆」

こともなげに少女は四人の前に回り込む。
また移動したことに気づかなかった。

「其処の二人+お兄ちゃんの肩で気絶してるとか私でもあんまり無いハッピー状態なあなた!
 お初にお目にかかります。
 生まれはY県番屋町、育ちはここ学校町。
 私は私は中央高校二年C組二十二番、拝戸純です。
 ピュアと書いて純です、よろしくねっ!」
「……同い年なのかっ!?」

そう、少女はセーラー服を着てはいるが……外見どうみても小学生である。
明日真が突っ込みたくなるのも当然と言えた。

「ていうか同じ高校!?」

そう、同じ学年の違う組である。
こんな変な人間が居るならば風紀委員の明日真の耳には入っている筈なのだ。
しかし明日は彼女のことを全く知らない。




「お兄ちゃんの肩で乗ってるそのふざけた女を可及的速やかに引き渡してくれると助かるかな?
 お兄ちゃんに悪い虫がついたら祓ってあげないと。」
「待てっ、純。お兄さんはこのお姉さんと至って清いつきあいでだな。
 お前がまた出てきてぶちこわしにされるとそれこそお兄ちゃん一生彼女が出来なくなりそうな気がするんだよ。
 お前だってお兄ちゃんがこのまま結婚も出来ない状態は嫌だろう?」
「え、むしろ望むところだよ。
 ていうか私と結婚してよ。
 大丈夫、お父さんもお母さんも許してくれるよ。だって二人とも優しいもん。」
「くっ、何を言っているんだこいつ……?」
「アスマ、それよりあの子契約者だよ。」
「え、マジかよ……!?」

二人がヒソヒソ話している間に純がこちらにゆっくりと近づいてきた。



「仕方ないか。」
明日はボソリとつぶやく。
「拝戸さん、ここは危ないので一旦逃げていてください。」
「へ?」
「いやー、俺その子が通っている高校の風紀委員じゃないですか。
 だからやっぱり校外で休日とはいえ自分の通っている高校の生徒がこんな危ない子としているのは放っておけないというか。
 ……とにかくその女の人だけでも目を覚ますまで安全なところに運んでください。」
「いや、しかし俺の家族の問題を人に任せる訳には……。」

ドスン!ドスン!ゴッスン!
なにやらもの凄い音がして何かが明日と拝戸の足下に直撃する。
土煙の中から現れたのは五寸釘。

「何二人でヒソヒソ話しているの?
 私の邪魔をするなら明日君も……許さないよ?」
「待って純ちゃん、どうかな、とりあえずここは遊園地、公共の場所だ。
 家族の問題なんだし、一旦家に帰ってからでもお兄さんとゆっくり話してみたらどうかな?」

恋路が明日を守るように彼の前に立って純を説得する。

「ごめんなさい恋路さん、それは出来ない相談だよ。
 貴方も貴方もなんだか“胡散臭い”感じがするモン、そこのお姉さんと同系統の雰囲気だね。
 ああ、でもそこの雌豚とは違って貴方は貴方は身も心も美しいからあまり気にしないでくださいね?
 交渉の相手としては信用しがたいだけだよ。」

更に一歩、純が四人の所に近づく。





事ここにいたってはしょうがない。
明日は覚悟を決めた。

「拝戸さん、信じられないかも知れませんが貴方の妹さんは超能力みたいなものを持ってます。」
「へ?」
「なので出来れば今日の出来事は綺麗さっぱり忘れてここから逃げて頂けると幸いです。」
「そ、そうなのか?まあ地面にこんな強烈に釘を突き立てるとか、昔から人間離れしていたけどここまで酷くはなかったが……。」
「だからとにかく、今は逃げてください。こういうのに対処するのは俺得意なんで。」
「ふむ……。」

一瞬だけ拝戸の瞳が鋭くなる。
これが拝戸直の特異性『観成』
ありとあらゆる生物や物体の長所や短所をあますことなく観察することができる特性だ。
彼の殺人鬼としての数々の能力はそもそもこれに由来する。
人間を芸術品として観察し、完成させる。
それは無意識の内に自分と接した人間を成長させる能力でもある。
だが基本的に殺人鬼である彼は人が成長する前に殺害・完成させてしまうのだが。

そんな彼の眼で見た明日真は間違いなく信頼できる人間だった。
誰かの危機の為なら都市伝説の存在がバレても構わない姿勢。
それは正義の味方として間違いなく正しい姿勢だ。

「恩に着る!」

拝戸直は振り返ることなく、みぃちゃんを背負ったまま逃げ出した。






「さて、お兄さんは逃げてしまいましたと。」
「純ちゃんだっけ、貴方も契約者なんだね?」

「ぐすっ……。」

「あれ…………、泣いてる。俺泣かせちゃった?」
「油断しないで、来るよ!」

――――――ブゥン!
次の瞬間、明日の手首と足首に五寸釘が直撃した。
釘は明日の身体を刺し貫いても勢いを留めて、そのまま彼の身体を壁に貼り付ける。

「ぐああああああああああ!」
「アスマッ!」
「恋路さん、貴方は貴方は解っているよね?
 大好きな人と引き離される辛さ、悲しさ、そしてそこから生まれる憎しみ、怒り。
 だって貴方も貴方も恋する乙女だもん。私は私は悲しくて涙が止まらないの。」
「後ろ――――――――!」

ガツン
恋路の後頭部にとんかちで殴られたような衝撃が走る。
しかし彼女は攻撃を加えられた方向から純の場所を推測し、手刀を撃ち込む。
だが、それは致命傷を与えるには少し浅い。





「恋路ちゃん、何の格闘技やってるの?私は私はびっくりだよ。」

恋路の手刀は純の額を的確に捉えていた、笑っている。
泣きながら笑いながら血も流す、拝戸純という少女。
泣くのも笑うのも血が流れるのも人間の特徴。
だから彼女は可笑しい程におかしいほどに狂ってしまう位に人間的?
いいや、それは違う。
例えるなら両性具有のような違和感。
なんでもかんでも混ぜれば、……それは異常でしかないのだ。

「その上、私の眼は外したね?優しい!安心してね明日君は怪我していないから。」

明日の方をちらりと見る純。
先ほどまで壁に貼り付けられていた明日は力なく床で崩れ落ちている。

「すごく痛かっただろうけど血は流れていない筈。
 だってそれが私の私の『丑刻参り』の能力だもの。
 只少し、運が悪くなるだけだよ!」
「……知っているよ。」
「気づいてたの!?すっごぉい!」
「だから、もらったんでしょう?貴方の髪。」
「――――――――――――ああ!それが狙いか。」

純は赤い舌で頬まで流れた血を舐めて、嗤う。




「呪いと言うからには、かけるのに条件があるよね。」
「うん。それは私の能力で生み出した五寸釘を刺すだけだけどね。
 それも直接の殺傷能力はないよ。ぶつかると痛いけどそれだけ。」
「さらにいえばそれを貴方に返す方法もあるよね。」
「うん。」
「それは恐らく貴方の爪か髪を手に入れる必要があるよね。」
「うん、髪で十分だよ。それと名前も知っていなきゃいけないけど、それは今更だよね。」
「少なくとも私にはもう、呪いは聞かないんじゃないか?」
「その通り、私は私はもう貴方を貴方を傷つけられない。」

純は丑の刻参りの能力で出した金槌を指でクルクルと回す。

「これで直接殴りつければ別だけどね。
 ところで恋路ちゃん、彼氏さん、危ないよ?」

その瞬間、強い風が吹く。
恋路の隣を巨大な看板が吹き飛ばされてきた。
それはそのまま明日の方向にまっすぐ向かう。

「アスマッ!」
「彼、今すっごく運が悪いけど私の髪を彼に渡せば呪いが解けてゲームセットだよ。
 私もこればっかりは制御できないから頑張って助けてあげてね!
 ちなみに、私を殺しても呪いは解けないから……妙なことは考えないでね?
 それじゃあ私お兄ちゃんを追うから。」

拝戸純は振り返ることもなく走り出してしまった。




「うーん……、ってなんだあれ!?」

明日真は何とか立ち上がり辺りを見回す。
すると、自分に向けてまっすぐ向かってくる巨大な看板を発見した。

「うわあああああああああ!?」

間一髪で横っ飛びに飛び、看板を回避する。
だがその看板が偶然近くの工事中の建物に突き刺さる。
ガシャーン!
それが原因で不安定な工事中の建物は簡単に崩壊してしまった。

「分断……された!」

この遊園地は西部と東部に分けられている。
そして工事中の建物はそのちょうど真ん中に建てられていた。
明日がすばやく横っ飛びに飛んで逃げたのは園の西部、そしてさっきまで恋路が純と戦っていたのは東部。

西部と東部をつなぐ連絡通路は偶然、こことあともう一つにしかないのだ。
勿論目の前の通路は倒壊した建物によって封鎖されてしまった。

二人はほぼ完全に分断されたのである。

【電磁人の韻律詩28~ピュアピュアハートの恋占い・前編~fin】



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