【電磁人の韻律詩32~豪華客船×探偵×吸血鬼=C級アメリカアクション映画、にならない~】
季節は秋。
夏の騒々しさはこの町からすっかり消え、祭りの後のような静かな風が吹いていた。
そしてここでもまた一つの物語が終わり始めていた。
夏の騒々しさはこの町からすっかり消え、祭りの後のような静かな風が吹いていた。
そしてここでもまた一つの物語が終わり始めていた。
「アスマー、お姉様から手紙が届いてるよん。」
「え、手紙?」
「え、手紙?」
明日真にはプロのバイクレーサーをやっている明日晶という姉が居る。
彼女は仕事柄お金持ちの知り合いが多いらしく
何かのチケットを手に入れて真に送りつけることが良くあった。
今回もその辺りかと思った明日は少し期待しながら封筒を開けた。
彼女は仕事柄お金持ちの知り合いが多いらしく
何かのチケットを手に入れて真に送りつけることが良くあった。
今回もその辺りかと思った明日は少し期待しながら封筒を開けた。
「う~んと、……今度結婚します。
式場は……ニューヨーク郊外の教会か。
その件について話したいから、今学校町の近くの町に停泊してる豪華客船に遊びに来い……?
そこのレストランで待ち合わせか。
ていうかあの人って今アメリカに居るんじゃなかったのか……?」
「まあ細かいこと気にしたら負けだよ。
あの人三分で万里の長城踏破できるじゃん。」
「そこまで人間離れはしてねーよ。」
「で、どうするの?いくの?」
「そりゃあまあね、家族……だし。」
「ついでにお姉さんとのその妙なわだかまりも解消して来なよ。」
「うっせーよ、そこら辺はつっこむな。」
式場は……ニューヨーク郊外の教会か。
その件について話したいから、今学校町の近くの町に停泊してる豪華客船に遊びに来い……?
そこのレストランで待ち合わせか。
ていうかあの人って今アメリカに居るんじゃなかったのか……?」
「まあ細かいこと気にしたら負けだよ。
あの人三分で万里の長城踏破できるじゃん。」
「そこまで人間離れはしてねーよ。」
「で、どうするの?いくの?」
「そりゃあまあね、家族……だし。」
「ついでにお姉さんとのその妙なわだかまりも解消して来なよ。」
「うっせーよ、そこら辺はつっこむな。」
明日真と明日晶は仲が悪い。
それは明日晶が中学生の頃から家にあまり帰らずに外を出歩いていたことや、
両親や姉と比較して明日真がそれほどバイクの才能に恵まれてなかったことで生じた家庭での扱いの差に端を発していた。
彼らの微妙な気持ちのすれ違いはお互いの性格の優しさから決定的な喧嘩まではいかないものの、
彼らの関係にはいつも微妙なすきま風が吹いていた。
それは明日晶が中学生の頃から家にあまり帰らずに外を出歩いていたことや、
両親や姉と比較して明日真がそれほどバイクの才能に恵まれてなかったことで生じた家庭での扱いの差に端を発していた。
彼らの微妙な気持ちのすれ違いはお互いの性格の優しさから決定的な喧嘩まではいかないものの、
彼らの関係にはいつも微妙なすきま風が吹いていた。
昼の十一時三十分。
約束の時間には少し早いが明日真と恋路は晶の指定した豪華客船のレストランの席に座っていた。
約束の時間には少し早いが明日真と恋路は晶の指定した豪華客船のレストランの席に座っていた。
「……子供だけでこんな所に座っていると恥ずかしいな。」
「そう?私は大して気にならないかな。
服も(明日の両親の金で)びしっと決めてきたし、大丈夫だよ!」
「そうかぁ?」
「そう?私は大して気にならないかな。
服も(明日の両親の金で)びしっと決めてきたし、大丈夫だよ!」
「そうかぁ?」
レストランで明日晶の名前を出すだけで二人はすぐに奥の方の眺めの良い席に通された。
流石巨大な豪華客船と言うだけあって揺れもないし先に頼んでいた料理も最高なのだが、
晶の名前を出して何かしてもらうと言うのが正直なところ明日真は嫌だった。
自分でも気付いていないその感情が彼にとってその船をなんとはなしに居心地の悪い場所に変えていた。
流石巨大な豪華客船と言うだけあって揺れもないし先に頼んでいた料理も最高なのだが、
晶の名前を出して何かしてもらうと言うのが正直なところ明日真は嫌だった。
自分でも気付いていないその感情が彼にとってその船をなんとはなしに居心地の悪い場所に変えていた。
「しっかし……、海が綺麗だなあ……。」
「そうだねえ。近くに見えている島の木々もまだ青々として夏の面影が残っている辺り、
何とも言えない情緒があるよねえ。」
「そうだねえ。近くに見えている島の木々もまだ青々として夏の面影が残っている辺り、
何とも言えない情緒があるよねえ。」
ドゥン!
わずかな振動、何処か遠くで爆音が響く。
それが何による物か、戦闘経験が豊富な恋路にはすぐ解った。
それが何による物か、戦闘経験が豊富な恋路にはすぐ解った。
「ロケットランチャーかな?」
「へ?」
「へ?」
首をかしげる明日。
「いや、だからロケランだよ。
今何処かでロケランによる砲撃があった。」
「お前そんな馬鹿なことが現代日本で……!」
今何処かでロケランによる砲撃があった。」
「お前そんな馬鹿なことが現代日本で……!」
組織に所属して人外の都市伝説相手に戦闘を繰り返しているくせに
あくまで明日真の台詞はのんきであった。
しかし、彼もそうのんきしていられなくなる事態がすぐに起こる。
あくまで明日真の台詞はのんきであった。
しかし、彼もそうのんきしていられなくなる事態がすぐに起こる。
「あれ、……なんでこの船動き始めてるの?」
「え?」
「え?」
音のした船内の方を見ていた恋路は窓の方に振り向く。
先ほど窓に見えていた離れ小島が既に無くなっていた。
先ほど窓に見えていた離れ小島が既に無くなっていた。
そう、彼らの乗った船は何時の間にか出港していたのだ。
「ピンポンパンポン↑、こちら船長室。乗船中のお客様及び船員の皆様にお知らせいたします。
ただいまこの船はハイジャック……じゃねえシージャックされちゃいました。
命が惜しい方は船倉からできるだけ急いで離れてデッキに向かってください。
船底には只今細菌兵器が仕掛けられております。可及的速やかにおねがいいたします。
さもなくば死ね。てか殺す。焼き尽くす。死体が残ると思うなよ。復活なんてさせないよ。
もう一回繰り返すぜ、船底に細菌兵器がしかけられている。
俺は人間をやめるぞジョジョオ!って奴以外は細菌が死滅する日光の下に居てくれ。
ピンポンパンポン↓」
ただいまこの船はハイジャック……じゃねえシージャックされちゃいました。
命が惜しい方は船倉からできるだけ急いで離れてデッキに向かってください。
船底には只今細菌兵器が仕掛けられております。可及的速やかにおねがいいたします。
さもなくば死ね。てか殺す。焼き尽くす。死体が残ると思うなよ。復活なんてさせないよ。
もう一回繰り返すぜ、船底に細菌兵器がしかけられている。
俺は人間をやめるぞジョジョオ!って奴以外は細菌が死滅する日光の下に居てくれ。
ピンポンパンポン↓」
何の前触れもない突然の船内放送。
渋くて艶やかな低音で巫山戯きった内容を真剣に伝えていた。
少なくともその場に居た全員は、その声を聞いただけで“真剣だ”と思ってしまった。
これだけでも十分異常事態である。
しかし同時にもう一つの異常事態が発生していた。
この船は世界を回る豪華客船である。
だから当然日本人ではない客も沢山いる。
だが、どの国の人間もまるで自国の言葉で話しかけられたかのようにすぐにデッキへと避難を始めたのだ。
こんなことが出来る人間は彼らの知る範囲内には一人しか居なかった。
渋くて艶やかな低音で巫山戯きった内容を真剣に伝えていた。
少なくともその場に居た全員は、その声を聞いただけで“真剣だ”と思ってしまった。
これだけでも十分異常事態である。
しかし同時にもう一つの異常事態が発生していた。
この船は世界を回る豪華客船である。
だから当然日本人ではない客も沢山いる。
だが、どの国の人間もまるで自国の言葉で話しかけられたかのようにすぐにデッキへと避難を始めたのだ。
こんなことが出来る人間は彼らの知る範囲内には一人しか居なかった。
「上田……明也!?」
「所長が?まああの人は伊達や酔狂だけでこんなことできるとは思うけど……。」
「所長が?まああの人は伊達や酔狂だけでこんなことできるとは思うけど……。」
彼らは一瞬で理解していた。
この騒動は上田明也の手で引き起こされたと。
神も人も妖さえも等価に引きずり下ろし自らの遊び道具として享楽する探偵を、人殺しを。
彼にとっての理由は人々にとってつねに理解不可理解不要。
強いて例えるならば子供のような無邪気さで一切合切を創造し救済し破壊する。
その直感は正しい。
正しいがそれ故に真実を見誤っていることを明日真はまだ知らない。
この騒動は上田明也の手で引き起こされたと。
神も人も妖さえも等価に引きずり下ろし自らの遊び道具として享楽する探偵を、人殺しを。
彼にとっての理由は人々にとってつねに理解不可理解不要。
強いて例えるならば子供のような無邪気さで一切合切を創造し救済し破壊する。
その直感は正しい。
正しいがそれ故に真実を見誤っていることを明日真はまだ知らない。
「俺たちも避難する?」
「いいや待って、細菌兵器、焼き尽くす、ロケランによる船体の破壊、出港した船……。
中々来ない御姉様、俺は人間を止めるぞジョジョオ!
―――――――そうか。」
「何か解ったのか?」
「いや、まったく解らん。」
「いいや待って、細菌兵器、焼き尽くす、ロケランによる船体の破壊、出港した船……。
中々来ない御姉様、俺は人間を止めるぞジョジョオ!
―――――――そうか。」
「何か解ったのか?」
「いや、まったく解らん。」
パリィン!
ガラスの割れる音、その後から絹を裂くような悲鳴が響く。
赤い瞳、虚ろな瞳、白い肌。
ガラスの割れる音、その後から絹を裂くような悲鳴が響く。
赤い瞳、虚ろな瞳、白い肌。
「訂正、この船は吸血鬼に、襲撃されている。」
「……ちょっと訂正して良いか?
この船、じゃあない。
何より今ここで、“人”が襲われているんだ!」
「……ちょっと訂正して良いか?
この船、じゃあない。
何より今ここで、“人”が襲われているんだ!」
明日は迷うことなく駆けだした。
彼が目指すのは正義の味方。
誰かの為に自ら闘うことこそが彼の目指した在り方だった。
彼が目指すのは正義の味方。
誰かの為に自ら闘うことこそが彼の目指した在り方だった。
「1000W…………!」
明日は拳を大きく振りかぶってその吸血鬼に近づく。
吸血鬼は身体を霧にしてそれを回避しようとしたがそれは無意味だったことを思い知らされる。
確かに明日真の拳は吸血鬼には届かなかった。
しかしそれでも
吸血鬼は身体を霧にしてそれを回避しようとしたがそれは無意味だったことを思い知らされる。
確かに明日真の拳は吸血鬼には届かなかった。
しかしそれでも
「―――――――――――スパーク!」
空中で巨大な熱が弾ける。
明日真の契約した都市伝説は「電子レンジで猫をチン」だ。
その能力は小規模なマイクロ波を起こして相手の身体を直接熱すること。
つまりある程度近づいた時点で回避は極端に難しくなる。
むしろ、身体を霧になどしてしまえばその部分は確実に蒸発させられて元に戻れない。
そんな訳で彼らの目の前に現れた吸血鬼とおぼしき都市伝説は言葉もなく完全に消滅した。
明日真の契約した都市伝説は「電子レンジで猫をチン」だ。
その能力は小規模なマイクロ波を起こして相手の身体を直接熱すること。
つまりある程度近づいた時点で回避は極端に難しくなる。
むしろ、身体を霧になどしてしまえばその部分は確実に蒸発させられて元に戻れない。
そんな訳で彼らの目の前に現れた吸血鬼とおぼしき都市伝説は言葉もなく完全に消滅した。
「日々強くなってるねえアスマ。」
「えへへ……、じゃねえや。
皆さん、いますぐ上に避難してください!
恋路はHさんに電話して!」
「解った!」
「えへへ……、じゃねえや。
皆さん、いますぐ上に避難してください!
恋路はHさんに電話して!」
「解った!」
明日は突然の出来事に呆然とする乗客達の避難誘導を始めた。
その間に恋路は素早く組織に連絡を入れた。
が、電話が通じない。
その間に恋路は素早く組織に連絡を入れた。
が、電話が通じない。
「駄目だアスマ!電話が通じない!妨害電波が出てるみたいだよ!」
「くそっ、組織に連絡出来なきゃ被害が増えるばかりだぞ!?
一々避難のための事情も話してられないし……。
さっきの巫山戯た放送で洗脳された奴らは上に行っているみたいだけど……。」
「くそっ、組織に連絡出来なきゃ被害が増えるばかりだぞ!?
一々避難のための事情も話してられないし……。
さっきの巫山戯た放送で洗脳された奴らは上に行っているみたいだけど……。」
上田明也はわりと無自覚に他人の意志を浸食する能力が有る。
普段は厄介な代物でしかないがこういう状況においてはありがたい。
普段は厄介な代物でしかないがこういう状況においてはありがたい。
「あっひゃっひゃっひゃ、逃げ惑え庶民達よー。
自らの無力さを呪うが良い~。」
自らの無力さを呪うが良い~。」
所変わって船長室。
ここに有った放送装置を使って上田明也は船内に放送を流していた。
その船長室にコンコンとノックの音が響く。
ここに有った放送装置を使って上田明也は船内に放送を流していた。
その船長室にコンコンとノックの音が響く。
「……入れ。」
入ってきたのは色白の男性だった。
赤い唇やちらりと覗く八重歯から彼が吸血鬼だと言うことが解る。
赤い唇やちらりと覗く八重歯から彼が吸血鬼だと言うことが解る。
「では失礼します、私立探偵の笛吹さんですね?
自らも懸賞金をかけられているが中々名前の売れた都市伝説狩りだと聞いています。
何故貴方がこの船に乗っているかは知らないのですが……」
「用件をさっさと言えよ。」
「我々の依頼を受けて頂きたい。」
「断る。」
「嘘です、自爆しに来ました。この計画の不確定要素としての貴方を排除しに……。」
自らも懸賞金をかけられているが中々名前の売れた都市伝説狩りだと聞いています。
何故貴方がこの船に乗っているかは知らないのですが……」
「用件をさっさと言えよ。」
「我々の依頼を受けて頂きたい。」
「断る。」
「嘘です、自爆しに来ました。この計画の不確定要素としての貴方を排除しに……。」
その男は腹に巻き付けていた爆弾を爆発……できない。
ぐっすり眠ってしまった。
ぐっすり眠ってしまった。
「buono、良い仕事だ彼方副所長。」
「これからどうするんですか上田さん?」
「これからどうするんですか上田さん?」
ドアの影から姿を見せたのは穀雨彼方。
笛吹探偵事務所の副所長である。
彼の契約する都市伝説で吸血鬼の男を眠らせたのだ。
笛吹探偵事務所の副所長である。
彼の契約する都市伝説で吸血鬼の男を眠らせたのだ。
「赤い部屋の能力でここから移動する。
明日姉に俺のパソコンを持たせているんだ。
あいつだけでは吸血鬼の相手もきつかろう。」
明日姉に俺のパソコンを持たせているんだ。
あいつだけでは吸血鬼の相手もきつかろう。」
これを着て普通に町を歩いていたら変態扱い確定である真紅のスーツの埃を払い、煙草を一服。
上田と彼方は爆弾を起爆させると同時に赤い部屋に潜り込んだ。
彼方を残して彼は明日晶の元に空間移動をする。
上田と彼方は爆弾を起爆させると同時に赤い部屋に潜り込んだ。
彼方を残して彼は明日晶の元に空間移動をする。
明日晶は手元のノートパソコンを眺めていた。
彼女の周りを囲むのは何体もの下等な吸血鬼。
彼女の「人間の集中力の限界は三分」という都市伝説は持久戦には向かない能力だ。
都市伝説の力で念動力をおこし続けていれば体力に限界が来るのは当然のこと。
そして彼女はさっきからずっと船の上の階に押し寄せようとする吸血鬼と戦っていた。
彼女の周りを囲むのは何体もの下等な吸血鬼。
彼女の「人間の集中力の限界は三分」という都市伝説は持久戦には向かない能力だ。
都市伝説の力で念動力をおこし続けていれば体力に限界が来るのは当然のこと。
そして彼女はさっきからずっと船の上の階に押し寄せようとする吸血鬼と戦っていた。
「チッ、食い止めるのが手一杯か……。
馬鹿弟が組織の援軍を呼んでさっさと逃げてくれるのを期待するかね?」
馬鹿弟が組織の援軍を呼んでさっさと逃げてくれるのを期待するかね?」
独り言を呟く。
彼女は自らの後ろに迫る吸血鬼に何の警戒もしてなかった。
その牙が彼女の首を捉えようとした瞬間、二回だけ銀色の閃光がきらめく。
音一つ立てずに吸血鬼は跡形もなく消滅していた。
彼女は自らの後ろに迫る吸血鬼に何の警戒もしてなかった。
その牙が彼女の首を捉えようとした瞬間、二回だけ銀色の閃光がきらめく。
音一つ立てずに吸血鬼は跡形もなく消滅していた。
「この船から逃げる?そいつは無理だ。
さっき橋やら脱出艇やら破壊した上で俺がこの船を出航させた。」
「やっと来たか委員長!でもそれじゃあ一般客が逃げられないじゃないか!」
「問題無い、この手の下級吸血鬼が陸地に逃げるリスクに比べれば安い物だ。」
さっき橋やら脱出艇やら破壊した上で俺がこの船を出航させた。」
「やっと来たか委員長!でもそれじゃあ一般客が逃げられないじゃないか!」
「問題無い、この手の下級吸血鬼が陸地に逃げるリスクに比べれば安い物だ。」
忌々しげに舌打ちをする明日晶。
「吸血鬼でも下級な奴らはねずみ算式に増えていく。
そんなのが陸地にたどり着いて一般人を襲ったらそれこそ取り返しがつかないぞ。
この船だけだったら俺とお前で皆殺しにもできるだろう?」
「……人でなしめ。」
「何を今更……、彼方、明日を少し守っていてくれ。
俺オフェンス、お前ディフェンスだ。」
「はい上田さん!」
そんなのが陸地にたどり着いて一般人を襲ったらそれこそ取り返しがつかないぞ。
この船だけだったら俺とお前で皆殺しにもできるだろう?」
「……人でなしめ。」
「何を今更……、彼方、明日を少し守っていてくれ。
俺オフェンス、お前ディフェンスだ。」
「はい上田さん!」
空間にわずかな亀裂が走る。
隙間の奥に広がる真っ赤な世界からその異形は顔を出した。
隙間の奥に広がる真っ赤な世界からその異形は顔を出した。
ガシャコン!
黒金が唸る。
地面にだらりと横たわったその身体から火薬が咆哮し硝煙が乱舞する。
黒金が唸る。
地面にだらりと横たわったその身体から火薬が咆哮し硝煙が乱舞する。
―――――――――BANG!BANG!BANG!
それは決して都市伝説により起きる奇跡などではない。
それは上田明也がその手で駆る小型ガトリングガンが引き起こす必然。
その火砲は一度引き金を引けば無慈悲な鋼鉄の暴力を執行する悪魔の装置。
それは上田明也がその手で駆る小型ガトリングガンが引き起こす必然。
その火砲は一度引き金を引けば無慈悲な鋼鉄の暴力を執行する悪魔の装置。
「対吸血鬼用に処理された弾丸だ!
受けて戦えると思うなよ!
毎分2000発の発射速度で飛翔する暴力だ!
回避が出来ると思うなよ!
そうだ、踊れ!
踊れ踊れ醜く踊れ!
数の暴力だ、貴様らが下っ端とはいえ吸血鬼であるならば!
都市伝説最強の一角を誇る種族ならば!
死ぬ時はもっと!もっと!もっと!もっと!
誰よりも醜く塵になれ灰になれ!」
受けて戦えると思うなよ!
毎分2000発の発射速度で飛翔する暴力だ!
回避が出来ると思うなよ!
そうだ、踊れ!
踊れ踊れ醜く踊れ!
数の暴力だ、貴様らが下っ端とはいえ吸血鬼であるならば!
都市伝説最強の一角を誇る種族ならば!
死ぬ時はもっと!もっと!もっと!もっと!
誰よりも醜く塵になれ灰になれ!」
「……弾が切れたか。」
上田明也が周囲を見回すとすでに辺りには灰と肉塊しか転がっていなかった。
「終わりましたか上田さん?」
「委員長……やり過ぎ。」
「委員長……やり過ぎ。」
物陰から耳を押さえて出てくる明日と彼方。
「何、これだけ派手にやれば……。」
「幸いここは大量に吸血鬼が発見された船倉から船の内部に入る為の唯一の道だ。
既に出て行っている分は仕方ないがここで出来る限り足止めを行おう。
明日と彼方は船のデッキに出ている人達を守っていてくれ。
赤い部屋を使えばお前らを直接デッキに送り込めるからな。」
「でも、船倉から吸血鬼が発生してるって事は……。」
「親玉が其処にいるんじゃないですか?」
「良いじゃないか、俺に構うな先に行け、ならぬお前ら構うな先に行く。
通称独断専行。」
「そんな馬鹿な……。」
「ジャーネ、せいぜい未来の旦那さんとお幸せに。
彼方もレモンを幸せにしてやんな。」
既に出て行っている分は仕方ないがここで出来る限り足止めを行おう。
明日と彼方は船のデッキに出ている人達を守っていてくれ。
赤い部屋を使えばお前らを直接デッキに送り込めるからな。」
「でも、船倉から吸血鬼が発生してるって事は……。」
「親玉が其処にいるんじゃないですか?」
「良いじゃないか、俺に構うな先に行け、ならぬお前ら構うな先に行く。
通称独断専行。」
「そんな馬鹿な……。」
「ジャーネ、せいぜい未来の旦那さんとお幸せに。
彼方もレモンを幸せにしてやんな。」
わざわざ死亡フラグを立てながら上田は赤い隙間に飲み込まれる二人を見送った。
「さーて本日は格闘ゲームで言うところのラスボス仕様だ!
精々気合い入れていっちゃうぜえ!」
精々気合い入れていっちゃうぜえ!」
一方その頃
明日真達は船底の倉庫を目指して船内を進んでいた。
明日真達は船底の倉庫を目指して船内を進んでいた。
「おっかしぃなあ?」
「どうしたのアスマ?」
「いや、吸血鬼の数が少ない……。」
「ああー、そう言われてみれば。」
「どうしたのアスマ?」
「いや、吸血鬼の数が少ない……。」
「ああー、そう言われてみれば。」
血液を媒介として能力を使用し、肉弾戦を主とする吸血鬼と明日達の都市伝説は相性が良かった。
彼らは特に苦戦することもなく偶に現れる吸血鬼を倒しながらどんどん船底まで歩みを進めていた。
彼らは特に苦戦することもなく偶に現れる吸血鬼を倒しながらどんどん船底まで歩みを進めていた。
「……なんかの罠じゃないかな?」
その時、船の廊下についていた窓に何かの影が走る。
「あれ、今のは……?」
船の壁を垂直に走る影。
人間にそんなことが出来る身体能力の持ち主はそう居ない。
人外になら可能かも知れない。
でも今この船にいる人外は日光に弱い。
だがもし、日光に耐えられるレベルの吸血鬼がこっそり上に行っていたとするなら……?
人間にそんなことが出来る身体能力の持ち主はそう居ない。
人外になら可能かも知れない。
でも今この船にいる人外は日光に弱い。
だがもし、日光に耐えられるレベルの吸血鬼がこっそり上に行っていたとするなら……?
「引き返そうアスマ。」
「解った。」
「解った。」
二人は今まで来た方向に急いで戻り始めた。
「間に合ったか……?」
「どうやらギリギリ、ですけどね。援護お願いします!」
「どうやらギリギリ、ですけどね。援護お願いします!」
赤い部屋の能力でデッキに戻った晶と彼方が見たのは今まさに人にかぶりつこうとする一体の吸血鬼だった。
明日が自らの都市伝説を使ったテレキネシスで動きを縛り付ける。
そしてその隙に彼方が大剣で心臓を一突きにして首をはねた。
明日が自らの都市伝説を使ったテレキネシスで動きを縛り付ける。
そしてその隙に彼方が大剣で心臓を一突きにして首をはねた。
「しかし彼方君、君何であそこで助手やっているのよ?
君は悪い子って雰囲気じゃないし……
あいつ悪人だよ?いや、下手すると悪より尚悪い生き物だよ?」
「んー、でもあの人命の恩人ですし。
それよりも今は戦闘中です、無駄口叩いてると殺されますよ?」
「失礼、それじゃあここで待機……もしてられないよねえ。」
「ええ、上田さんが心配です。」
「でも何時吸血鬼がこっちに来るか解らない。
もう来ているかも知れない。
その可能性を考えると私たちはここから動けない。」
「厄介な状況……ですねえ。」
君は悪い子って雰囲気じゃないし……
あいつ悪人だよ?いや、下手すると悪より尚悪い生き物だよ?」
「んー、でもあの人命の恩人ですし。
それよりも今は戦闘中です、無駄口叩いてると殺されますよ?」
「失礼、それじゃあここで待機……もしてられないよねえ。」
「ええ、上田さんが心配です。」
「でも何時吸血鬼がこっちに来るか解らない。
もう来ているかも知れない。
その可能性を考えると私たちはここから動けない。」
「厄介な状況……ですねえ。」
舌打ちを一つすると黄色く光る真昼の太陽を見上げる。
なんでこんな厄介なことになったのだ、と明日晶は呟いた。
なんでこんな厄介なことになったのだ、と明日晶は呟いた。
「しまったなぁ、引き返してくることを見越して待ち伏せしていたのか!?」
「いいや、むしろあのまま奥に進んでた方が完全に囲まれてたから危なかったと思うね。」
「いいや、むしろあのまま奥に進んでた方が完全に囲まれてたから危なかったと思うね。」
穀雨彼方と明日晶が避難していた乗客を守っている頃
明日真と恋路は吸血鬼の眷属に囲まれていた。
どうやら前もってこの辺りに人が来ることを見越して隠れていたらしい。
明日真と恋路は吸血鬼の眷属に囲まれていた。
どうやら前もってこの辺りに人が来ることを見越して隠れていたらしい。
「今だって十分危ないぜ、この数……。」
明日は辺りを見回してため息を吐く。
自我も不完全な吸血鬼の眷属であれば明日達も苦戦はしない。
だがとにかく数が多いのだ、軽く見積もっても二十体以上。
まだまだ隠れている可能性も有るし、これから先もまだ戦いが予想される。
明日も恋路もこれ以上の消耗は避けたかった。
自我も不完全な吸血鬼の眷属であれば明日達も苦戦はしない。
だがとにかく数が多いのだ、軽く見積もっても二十体以上。
まだまだ隠れている可能性も有るし、これから先もまだ戦いが予想される。
明日も恋路もこれ以上の消耗は避けたかった。
「仕方ないね、腹ククって戦うしかないよ。
久しぶりに私も戦っちゃおうかな?」
「悪い、じゃあ一緒に戦ってくれ。」
「省エネモードで行くよ、マイクロ波放射範囲は体表から10cmまで。
身体に纏うような感じで集中させて、直接触れたら流し込む。
良いね?」
「オッケーだ。」
「それじゃあ…………。」
久しぶりに私も戦っちゃおうかな?」
「悪い、じゃあ一緒に戦ってくれ。」
「省エネモードで行くよ、マイクロ波放射範囲は体表から10cmまで。
身体に纏うような感じで集中させて、直接触れたら流し込む。
良いね?」
「オッケーだ。」
「それじゃあ…………。」
「タカ、トラ、バッタ!タ、ト、バ、タトバタ、ト、バ!」
「「へ?」」
いきなり流れてきた歌に驚いて、二人は同時に素っ頓狂な声をあげた。
天井を、床を、壁をあり得ない脚力で跳躍しながら迫ってくるシルエット。
その姿は黒い霧に包まれてハッキリと解らない。
バッタのような足や鷹のように鋭い瞳だけがぼんやりと見える。
明日達を取り囲んでいた吸血鬼の眷属をもの凄い力でなぎ倒しながら彼らに近づいてくる。
その姿は黒い霧に包まれてハッキリと解らない。
バッタのような足や鷹のように鋭い瞳だけがぼんやりと見える。
明日達を取り囲んでいた吸血鬼の眷属をもの凄い力でなぎ倒しながら彼らに近づいてくる。
「何今の歌?そして新手の吸血鬼!?」
「歌は気にするな、そのうち嵌る。そして俺は通りすがりの契約者だ。」
「歌は気にするな、そのうち嵌る。そして俺は通りすがりの契約者だ。」
黒い霧が晴れるとそこには明日達とさほど変わらない年齢の青年が居た。
青年は人なつっこそうな笑みを浮かべながら明日達に話しかける。
青年は人なつっこそうな笑みを浮かべながら明日達に話しかける。
「お前らもこの船で逃げ遅れた人達を助けているんだろう?
もしくはこの事件の首謀者を倒しに行っているのか……
まあなんにせよ悪い奴らじゃあない。
あれだ、同じ契約者同士、助け合いでしょ。」
「え、あぁ……。」
「ほら、さっさと行った行った!」
「お、おう!ありがとう!あんた名前は?」
「名前?鵺野夜行、都市伝説“鵺”の契約者だよ。
組織に追われているから俺のことはあんまり他人に言わないでね。」
「え、追われてる?」
「あれ、もしかして君組織の契約者……?」
「…………オレハナニモキカナカッタ。オレノメノマエニイルノハゼンリョウナイッパンケイヤクシャ。」
「ありがとう!それじゃあ今度こそ、いくぜ鵺!」
もしくはこの事件の首謀者を倒しに行っているのか……
まあなんにせよ悪い奴らじゃあない。
あれだ、同じ契約者同士、助け合いでしょ。」
「え、あぁ……。」
「ほら、さっさと行った行った!」
「お、おう!ありがとう!あんた名前は?」
「名前?鵺野夜行、都市伝説“鵺”の契約者だよ。
組織に追われているから俺のことはあんまり他人に言わないでね。」
「え、追われてる?」
「あれ、もしかして君組織の契約者……?」
「…………オレハナニモキカナカッタ。オレノメノマエニイルノハゼンリョウナイッパンケイヤクシャ。」
「ありがとう!それじゃあ今度こそ、いくぜ鵺!」
彼が声をかけると再び黒い霧が集まって長い艶やかな黒髪を持った女性に姿を変える。
「やーねー、最近大人ぶっちゃって、昔はお母さんお母さん甘えてたのに。
変身の組み合わせは?」
「それは言うなよ、組み合わせは鷹、虎、チーターで。
速度を生かして一気に決める!」
「タカ、トラ、チーター!」
変身の組み合わせは?」
「それは言うなよ、組み合わせは鷹、虎、チーターで。
速度を生かして一気に決める!」
「タカ、トラ、チーター!」
夜行は再び黒い霧に包まれる。
そしてその霧が晴れると彼の腕が虎のそれに変化していた。
そしてその霧が晴れると彼の腕が虎のそれに変化していた。
「それじゃあここは任せたぜ!」
「あんた達もあんた達の仕事を全力でしてくれ!」
「おう!」
「あんた達もあんた達の仕事を全力でしてくれ!」
「おう!」
鵺野が開いた道を明日達は再び走り始める。
何体かの眷属を恋路が倒したがそれ以外に障害はなく彼らは歩みを進めていった。
何体かの眷属を恋路が倒したがそれ以外に障害はなく彼らは歩みを進めていった。
「此処を抜ければデッキに着くよ!」
「ああ!」
「ああ!」
上では既に明日晶と穀雨彼方という彼らと比べものにならない戦力が乗客を守っている事も知らず、
明日真と恋路はデッキへの通路を急ぐ。
明日真と恋路はデッキへの通路を急ぐ。
「狭い日本、そんなに急いで何処に行く?
……なんて、ここまで来るのを待っていたぞ。
H№所属の契約者達。」
「―――――――――!」
……なんて、ここまで来るのを待っていたぞ。
H№所属の契約者達。」
「―――――――――!」
明日と恋路が素早く後ろを振り返ると其処には吸血鬼の青年が立っていた。
今までの吸血鬼とは明らかに違う。物腰こそ柔らかいがその眼が、恐ろしいくらい殺気に満ちている。
彼は先ほど上田明也に船長室で一蹴された吸血鬼だった。
今までの吸血鬼とは明らかに違う。物腰こそ柔らかいがその眼が、恐ろしいくらい殺気に満ちている。
彼は先ほど上田明也に船長室で一蹴された吸血鬼だった。
「おいおいそんな警戒するなよ。
短い付き合いだろうが俺としてはあんた達と仲良くしたいんだ。」
「……どういうことだ?」
「こーいうこと。」
短い付き合いだろうが俺としてはあんた達と仲良くしたいんだ。」
「……どういうことだ?」
「こーいうこと。」
吸血鬼は真っ直ぐに一歩踏み出し、拳を真っ直ぐに突き出す。
その一歩で、彼は明日真を間合いに捉えていた。
だが彼の正拳突きが捉えたのは明日真ではなかった。
その一歩で、彼は明日真を間合いに捉えていた。
だが彼の正拳突きが捉えたのは明日真ではなかった。
「あの探偵しとめ損なっちゃったし、お前ら倒して手柄にしないとな!」
「恋路!?」
「カハッ……、いったいなあこれ。」
「恋路!?」
「カハッ……、いったいなあこれ。」
恋路の腹には大きな穴が空いていた。
すかさずマイクロ波の防壁を展開して吸血鬼を牽制する明日真。
幾ら吸血鬼でも肉体や血液を直接蒸発させられては敵わない。
その吸血鬼はすぐさま後ろに飛び退いた。
幾ら吸血鬼でも肉体や血液を直接蒸発させられては敵わない。
その吸血鬼はすぐさま後ろに飛び退いた。
「ありゃりゃ、……仕留め損なった。」
「恋路……!」
「恋路……!」
明日の身体から一瞬血の気が引く。
恋路が死んでいるかもしれない、という恐怖に駆られたのだ。
そうなれば自分を守ってくれるものは居なくなる、それを彼は恐れていた。
限界を超えた恐怖は時として攻撃的な行動の切っ掛けになる。
明日の感情に呼応するかのように近くに有った花瓶がいきなり割れた。
中の水が一瞬で蒸気になったのだ。
その破片のいくつかと熱湯がが偶然その吸血鬼に降り注いだ。
恋路が死んでいるかもしれない、という恐怖に駆られたのだ。
そうなれば自分を守ってくれるものは居なくなる、それを彼は恐れていた。
限界を超えた恐怖は時として攻撃的な行動の切っ掛けになる。
明日の感情に呼応するかのように近くに有った花瓶がいきなり割れた。
中の水が一瞬で蒸気になったのだ。
その破片のいくつかと熱湯がが偶然その吸血鬼に降り注いだ。
「――――――!?」
「来るな、こっちに、……来るな!」
「来るな、こっちに、……来るな!」
そこで出来た隙を突いて明日は動いていた。
明日はマイクロ波を発生させる為に消費する電力を体内で循環させる。
そもそも明日の都市伝説の力は体外に出す分には電気をマイクロ波に加工せざるを得ないが、
体内で巡らせる分には普通の電流として使用可能である。
それを筋肉に流して無理矢理動かすことにより、三分間だけ彼は人間を越えた動きが出来るのだ。
しかし、それを行ったのは今が初めてであることに彼は気付いてない。
明日はマイクロ波を発生させる為に消費する電力を体内で循環させる。
そもそも明日の都市伝説の力は体外に出す分には電気をマイクロ波に加工せざるを得ないが、
体内で巡らせる分には普通の電流として使用可能である。
それを筋肉に流して無理矢理動かすことにより、三分間だけ彼は人間を越えた動きが出来るのだ。
しかし、それを行ったのは今が初めてであることに彼は気付いてない。
彼の身体にわずかばかりの光が灯り、火花が散る。
そして放たれる無造作に足で薙ぐような回し蹴り。
彼も一応恋路から八極拳を習っているがその蹴りはどうみても素人の動きである。
でもそれだけで強靱な肉体を誇る都市伝説である吸血鬼の胴体が二つになった。
そして放たれる無造作に足で薙ぐような回し蹴り。
彼も一応恋路から八極拳を習っているがその蹴りはどうみても素人の動きである。
でもそれだけで強靱な肉体を誇る都市伝説である吸血鬼の胴体が二つになった。
元々明日真は普通の高校生だ。
むしろ少し臆病なくらいだ。
でも彼は生まれつきの優しさの為に自らの恐怖を押し殺して戦い続けていた。
それを続けられたのは恋路が隣に居るという安堵感と、
特別な力のある自分は人を救わなくてはいけないという使命感が有ったからだった。
むしろ少し臆病なくらいだ。
でも彼は生まれつきの優しさの為に自らの恐怖を押し殺して戦い続けていた。
それを続けられたのは恋路が隣に居るという安堵感と、
特別な力のある自分は人を救わなくてはいけないという使命感が有ったからだった。
でも
これだけ時間がかかればデッキの上の人達は救えない。
そして自分を支えてくれる恋路も倒れてしまった。
そして自分を支えてくれる恋路も倒れてしまった。
怖い
恐ろしい
誰一人救えないHERO失格の自分が
そしてその自分も今まさに殺されようとしていることが
その恐怖が
皮肉にも友の仇である上田明也との戦いに踏み切れない原因でもある恐怖が
今この瞬間、彼を進化に導いた。
「くそっ、治れ!治れ!」
「お前は化け物だ。
お前は化け物だ。
だから人間はお前らが怖いんだよ。
怖いから必死になって戦うんだよ。
なあ、怖いか?
お前は俺たちが、人間が怖いと思ったことあるかよ?
必死に助かりたいと願ったことあるかよ?
無いだろうな、無いからそうやって当然みたいに人を殺せるんだ。
化け物め化け物めくたばれくたばっちまえ。
人間にちょっかい出すなよ放っておいてくれよ。
人間も愚かだけど愚かなりにそこそこ平和に暮らしているんだよくそったれが。」
「お前は化け物だ。
お前は化け物だ。
だから人間はお前らが怖いんだよ。
怖いから必死になって戦うんだよ。
なあ、怖いか?
お前は俺たちが、人間が怖いと思ったことあるかよ?
必死に助かりたいと願ったことあるかよ?
無いだろうな、無いからそうやって当然みたいに人を殺せるんだ。
化け物め化け物めくたばれくたばっちまえ。
人間にちょっかい出すなよ放っておいてくれよ。
人間も愚かだけど愚かなりにそこそこ平和に暮らしているんだよくそったれが。」
胴体を二つにされた傷が治らない。
普段であればすぐに治る傷が治らないことで吸血鬼はさらなる隙を見せる。
普段であればすぐに治る傷が治らないことで吸血鬼はさらなる隙を見せる。
「怖いから腕も壊そう。怖いから足も壊そう。
もいでから焼けば傷なんて治らない。
だるまみたいにして喋れるだけ、喋れるだけにしてから目的をゆっくり聞き出す。
あの化け物探偵みたいに口だけで人を操れると困るから余計な事言った瞬間、
前頭葉の水分だけ爆発させよう。
なんせ相手は吸血鬼だ化け物だ。
恋路も倒れていて助けてくれない、俺が助けなくちゃいけないんだ。
でも俺は弱いから怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。」
「お前が……こええよ!」
もいでから焼けば傷なんて治らない。
だるまみたいにして喋れるだけ、喋れるだけにしてから目的をゆっくり聞き出す。
あの化け物探偵みたいに口だけで人を操れると困るから余計な事言った瞬間、
前頭葉の水分だけ爆発させよう。
なんせ相手は吸血鬼だ化け物だ。
恋路も倒れていて助けてくれない、俺が助けなくちゃいけないんだ。
でも俺は弱いから怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。」
「お前が……こええよ!」
半狂乱になった吸血鬼が半ば悲鳴を上げるように叫んだ。
明日は表情無く小さな声で恐怖を訴え続けていた。
明日は表情無く小さな声で恐怖を訴え続けていた。
「目的を教えろ。」
もはや胴体と首だけになった吸血鬼に明日真は問う。
「え、H№の……あの吸血鬼をおびき寄せて殺して、俺たちが……!
今弱っているとか言うあいつなら俺たちやボスの力で……!」
「……ふん、もう良いよ。」
今弱っているとか言うあいつなら俺たちやボスの力で……!」
「……ふん、もう良いよ。」
手刀で首を焼き切り、胸を貫き、心臓を抜き取り……
クチャ
潰す。
容赦無く潰す。
容赦無く潰す。
それでその哀れな吸血鬼は灰となった。
彼の瞳が最後に捉えていた明日の姿はきっと、人間。
何人もの何人もの人間。
その悪意、恐怖、異物を排除し続けてきた種族の総意。
一人一人は弱いが、その集団は吸血鬼に恐怖に与えるには十分な数を持っていた。
彼の瞳が最後に捉えていた明日の姿はきっと、人間。
何人もの何人もの人間。
その悪意、恐怖、異物を排除し続けてきた種族の総意。
一人一人は弱いが、その集団は吸血鬼に恐怖に与えるには十分な数を持っていた。
その吸血鬼が消滅したのを確認してから、糸が切れたかのように明日真はその場に崩れ落ちた。
明日真はとっくに限界を超えていたのだ。
明日真はとっくに限界を超えていたのだ。
コツン、コツン、コツン、コツン
それから数十分後
明日達に近づく足音が一つ
その主は中年の男性
正体は勿論吸血鬼
両腕が千切れかかっているし、顔には出来たばかりの火傷の痕がその眼光は一切衰えない。
明日達に近づく足音が一つ
その主は中年の男性
正体は勿論吸血鬼
両腕が千切れかかっているし、顔には出来たばかりの火傷の痕がその眼光は一切衰えない。
「油断した、人間如きが、只の人間が、あそこまでやるとはな……。
しかしあの時邪魔さえ入らなければ潰せたものを!
都市伝説狩り、ハーメルンの悪魔め!
早く人間の血を吸って回復せねばあの吸血鬼を迎え撃てないではないか!
奴のせいで眷属も思ったより増えなかったのが痛手だな……。」
しかしあの時邪魔さえ入らなければ潰せたものを!
都市伝説狩り、ハーメルンの悪魔め!
早く人間の血を吸って回復せねばあの吸血鬼を迎え撃てないではないか!
奴のせいで眷属も思ったより増えなかったのが痛手だな……。」
その吸血鬼は気絶した明日を見つけにやりと微笑む。
「丁度良い。ああいう男の血が一番良いのだ。
女の方は駄目か、そもそも都市伝説じゃないか。
種類によるが不味いんだよ都市伝説の血は。」
女の方は駄目か、そもそも都市伝説じゃないか。
種類によるが不味いんだよ都市伝説の血は。」
そう呟いて彼が一歩踏み出した瞬間だった。
「待って貰おうかのう、その子らを妾は守る義務が有る。
それと其処の少年の血は妾も狙っておるしな。」
それと其処の少年の血は妾も狙っておるしな。」
なんてのう、と冗談交じりに笑う影。
その影は一瞬、酷く凶悪に笑い、男は自らの死を覚悟した。
その影は一瞬、酷く凶悪に笑い、男は自らの死を覚悟した。
「……此処は?」
「病院だね。」
「病院だね。」
明日真と恋路は病院のベッドの中に居た。
「お前ら大丈夫だったか?
船では乗客の誘導やら戦闘やらご苦労だったな。
助けに行くのが間に合って良かったぜ。後でお嬢さんにお礼言っておきな。」
「あ、Hさん……。アイテッ!」
「ああそうそう、お前体中の骨やら筋肉やら大変なことになっているぜ?
一体何が有ったんだよ?」
「いや、あんまり覚えてないです……。」
「私もあの辺りで気絶してたからなあ……。」
「恋路ちゃんも今回は絶対安静な、内蔵が破裂してた。」
「うひゃあ、都市伝説の身体だけどそれは危なかった。」
「まあ覚えていないって言うなら良いけど、あんまり無理するなよ?」
「はい……、そういえば俺の姉は居ませんでしたか?」
「え、お前の姉ちゃん?
知らないからなあ……あそこに乗っていたのか?」
「はい、ちょっと昼飯一緒に喰う予定で……。
まあ無事だったとは思うんですけど何処に消えたのか……。」
「まあ連絡ぐらい来るだろ?」
船では乗客の誘導やら戦闘やらご苦労だったな。
助けに行くのが間に合って良かったぜ。後でお嬢さんにお礼言っておきな。」
「あ、Hさん……。アイテッ!」
「ああそうそう、お前体中の骨やら筋肉やら大変なことになっているぜ?
一体何が有ったんだよ?」
「いや、あんまり覚えてないです……。」
「私もあの辺りで気絶してたからなあ……。」
「恋路ちゃんも今回は絶対安静な、内蔵が破裂してた。」
「うひゃあ、都市伝説の身体だけどそれは危なかった。」
「まあ覚えていないって言うなら良いけど、あんまり無理するなよ?」
「はい……、そういえば俺の姉は居ませんでしたか?」
「え、お前の姉ちゃん?
知らないからなあ……あそこに乗っていたのか?」
「はい、ちょっと昼飯一緒に喰う予定で……。
まあ無事だったとは思うんですけど何処に消えたのか……。」
「まあ連絡ぐらい来るだろ?」
明日真の携帯電話が鳴る。
「ほら、来ただろ?」
やれやれ、とため息を吐きながら明日真は電話を通話ボタンを押した。
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