「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 電子レンジで猫をチン!-37

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【電磁人の韻律詩37~死線~】

前回の騒動から一週間後、明日真は
「解ったよ、恋路になら何されても……」
「えっマジで!?うっひょう!」
「かかったな、性別転換ガスを喰らえ!」
「うぼぁあああああ!……私は何をしていたんだ。」
というやりとりの末、なんとか処女を奪われるピンチを脱したのであった。
しかしこのことで自らの弱さを自覚した明日は都市伝説の力を強くする為の修行を始めることにしたのである。

とまあそんな訳で

「うわっ、予想以上にでかいぞ……。」
「所長って良いとこの子だったんだ……。」

明日真は上田明久の家を訪ねていた。
とてつもなく豪華な和風建築である。
上田明久は若い頃は貿易会社の経営に精を出していて相当儲けていたという話を彼等は太宰紫から聞いていた。

「良いの?押して良いのこのインターフォン!?」
「待て恋路、下手に押したら多分守衛さん的なのが飛んできて俺たち捕まるぞ!」
「むむむ……、こうなったら忍び込むしかないね!」
「ああ!こんな立派な家なんだから忍び込まなきゃ失礼……な訳無いだろ!
 それこそ不審者だよ!」
「はっはっは、冗談冗談。」





明日は緊張を隠しながらインターフォンを押した。
するとすぐに大きな門が開いて中からその門に負けないほどの大男が……

ゴツン

「痛っ!また頭ぶつけた……。
 待っていたぜお前ら、まあ茶でも飲みながら話しようや。
 ついてきな、かみさんが今は仕事でいないからドーナツ食い放題だ。」

出てくる前に頭をぶつけた。
サムライポニーテールの大男、上田明久は秋だというのに着流しで通していた。
よく見ると法治国家たる現代日本で堂々と帯刀している。
二人は明久に案内されて客間に通される。
何故か洋風の装飾である。
二人が座ると割烹着を着た女中さんがドーナツを出してくれた。

「で、修行をしたいって話は聞いたんだけどよ。
 龍之介の遺言と一緒に渡された髑髏の仮面は持ってきたか?」
「ああ、これですか?」
「そうそう、それ。遺言の内容とかは聞く気無いんだけどそれだけが心配でな。
 うん、……都市伝説の気配は無し。
 野生化したのか……、戦闘で死んだのか……。」
「一体これがどうしたんです?」
「いや、奴の契約していた都市伝説の【死神】の本体がこっちに入っていると踏んでいたんだが……。
 最悪破壊するつもりだったが俺の杞憂だったらしいな、それは君の物だからあとは自由にしてくれ。
 あいつが自分の正義を誰かに押しつける可能性も捨てきれなかったからな……。
 そんなこと書かれてても気にするなよ、人を殺してまで貫く正義なんて痛いだけさ。」




明久が熱いお茶をすする。

「杏奈のやつまた熱い茶にしやがった……」

なかなか飲めないところを見るとどうやら猫舌のようだ。

「……いや、遺言の中で自分の正義を継いでくれとは言われました。
 その言葉は自分にとって忘れられないっていうか、すごく大事な物です。」
「じゃあなんだ?
 お前も太宰と同じ事をするのかい?」
「いいや、逆です。
 絶対に人は殺さない、殺すなと言われました。」
「…………気になるね。全滅主義者のあいつがそんなことをいうのか。」
「自分は悪人を殺さないと正義を貫けなかった弱い人間だったと。
 どうしようもない状況はあるがせめて殺さないで済むような相手を殺す弱い人間にはならないでほしい。
 自分が貫いてきた正義は全てがではないがどちらかと言えば失敗だった。
 これを君が読んでいるならば私は戦って死んだのだろう。
 戦って死んだと言うことはまあ正義を貫きはした訳だ。
 私が死んだ後は君が私と同じように正義の味方になって、
 私の方法とは違う君だけの方法で、
 正義の味方として戦い続けてくれ。
 みたいなことを書いてました。一文一句暗記してた訳じゃないんですけど。」
「ほう、意外だなあ。でも、それなら心配無くお前に修行をさせられる。
 修行の成果を人殺しの道具にされるのは気分が悪いしな。」
「宜しくお願いします。」
「うむ、あいつの願いでもあるし……。
 家の馬鹿息子を叩きのめす有力候補だし、こちらこそお願いさせてもらおう。」

この間実に三十秒。
この短い時間でに明久は五つ用意されていたドーナツを全て食い尽くしていた。






二人は明久に案内されて和風庭園に出た。
庭の中心には離れが建っていて、その周りをぐるりと池が取り囲んでいる。

「俺のダチが言うには都市伝説には様々なタイプがある。
 そしてそれと同じように契約者にも様々なタイプが居る。
 都市伝説はその由来と超常能力によって、契約者は契約に対する適正によってタイプが分けられる。」
「契約容量のことですか?」
「それもある、だがそれだけじゃない。
 都市伝説には一つの由来から解釈次第で様々な力を引き出せる物が多い。
 契約者はどの方向に都市伝説を解釈するかがとても重要なんだ。
 よく容量が大きければ一人でいくつかの都市伝説と契約出来るなんて言うが……、
 “解釈”という観点から見るとそれはあまり効率が良くない。
 契約者のタイプは俺の区分で大まかに分けると六つ。
 強化、変化、創造、操作、放射、例外、だ。
 俺は放射よりの強化型……とみせかけて例外。
 刀剣型都市伝説以外では契約すら成立しない。」
「そういうのって判別方法があるんですか?」
「俺の眼力……ってのは嘘で気配っつーか匂いみたいなのがある訳よ。
 少年は多分強化寄りの放射系だな。
 嬢ちゃんは都市伝説だからまあ関係ないか。
 我が息子はガチガチの操作、操作一つに特化している故に応用範囲が広い。
 自らの肉体を操作して強化の真似事。
 疑似空間を操作して例外の真似事、本物の空間操作なら例外カウントなんだけどな。
 操作系は放射も普通扱えるらしいが残念ながらあいつは完全特化だ。
 それが使えたという報告が来たことはない。
 お前らの仮想敵である以上、しっかり覚えておけ。」






明日真は興味深そうに頷いている。
恋路はふと思い出したことがあって明久に質問した。

「そういえば呪いとかってどういう系統なんですか?」
「呪いは規模にもよるが例外区分だな、呪い系の都市伝説を上手く起動できるのは例外の奴だけだ。
 例外だけは本当に例外なんだ。
 区分しようがないから俺も適当に呼んでいる。」
「なるほど……。」
「さて、修行を始めたいんだが良いか?」
「何時でも大丈夫です!」
「良い返事だ、まずお嬢ちゃんは奥でのんびりお茶してろ。
 お前もう十分強いだろ。」
「へ?」
「そして明日真!お前は俺に刀を抜かせるまで俺と勝負し続けて貰おう。
 俺が刀を抜かなさそうだったら俺から刀を奪い取っても良いけどな。
 ちなみにお前だけ都市伝説の使用は有りだ。
 真夜中に家に侵入して不意打ちしても良いぜ。
 制限時間は今から七日間。」
「へ?」

恋路は女中さんに案内されて家の奥に連れて行かれた。






「いやあの、七日間って……。」
「さて、お前がどこまでできるのか、まずは見せて貰うぞ。
 さあ構えやがれ、すぐ構えやがれ。
 お前のタイプは解っても実力だけは戦わないと解らないからな!
 さあ来い、『元テンプル騎士団』『死線』の上田明久が相手してやる!」

明日真は上田明久の笑顔を見て確信した。
ああ、こいつ戦いたいだけだと。
そもそも一目で相手の能力が解るような眼力の持ち主が戦うまで相手の実力は解らないなんておかしいじゃないか。
明日真はなんとなく騙されたような気分で構えに応じた。

「さて、先手は貰うぞ!」

目にもとまらぬ速さで明久が踏み込んでくる。
その手に刀はない。
明日はとっさにマイクロ波を周囲に展開する。
自らの突きだした拳にわずかな熱を感じて明久は後ろに下がった。

「ふむ、能力自体はパワー・スピード共に充分だな。
 生物相手に特化した攻撃ってのも中々良い選択だ。
 無生物の相手をするってこと自体がめずらしいことだもんな。
 良いぞ、お前の攻撃も見せてみろよ。」
「……それじゃあ行きます。」
「駄目駄目、もっと気合い入れて来い。」
「……行くぞ!」
「佳し!」





明日は両手の平を上田明久に向けてマイクロ波を撃ち込もうとする。
だが明日真がとったその予備動作のみで攻撃を予知して、明久は真横に飛んだ。
明日の撃ったマイクロ波は和風庭園の池の水温をあげただけである。

「あっ、鯉が!高かったのに!」
「わわわわごめんな……」
「嘘だよ、前もって鯉は退避させてある。」
「うわ、しまっ……!」

ゴスン

明日真は二つのことに戸惑った。
まず真横に飛んだと思っていた明久がまるでワープでもしたかのように目の前に現れたこと。
そしてそれに反応して直接マイクロ波で攻撃しようと思ったら、
右に避けるモーションで左側面に移動されたこと。
だが戸惑う時間も彼には与えられない。
上田明久の拳が既に彼を捉えていたのだから。

当たり所がわるかったらしく明日真の意識は一瞬で刈り取られた。

「おお、この程度の嘘も気付かないとは情け無い。
 戦闘中は相手の言葉に惑わされないなんて基本じゃねえか。」

気絶した明日を担ぎ上げると明久は恋路達の待つ部屋に戻った。




一方その頃
恋路の居る客間の空気は冷え切っていた。
恋路をここに連れてきた女中さんがとてつもなく無口で、まったくおしゃべりが続かないのだ。
そんな時に開いたドアはそれを開けた人間が誰であれ恋路にとっては救いだった。
たとえその人間が死にかけた彼氏を担いでいたとしても。

「あ、明久さん。修行は……って。アスマが死んだ!?」
「ごめん、予想以上に弱かった。死んでないから安心してくれ。
 つーかなんだこいつは?
 戦闘中に相手の言うことなんて概ね嘘だろうがよ騙されるなよまったくもう。
 おい杏奈ちゃん、戸棚の薬とってくれ。」
「わかったのであります。」
「喋った!?」
「アンドロイドだ。」
「明久様、冗談がすぎてらっしゃりやがりますね。
 お慎みくださりやがれば幸いです。」
「ちなみにこいつ超がつくほど人見知りだから注意してね!」
「いや、そのまえに何その口癖!キャラが立つってレベルじゃないよ!」
「だからお客様の前ではあまり喋りたくなかったのであります。」
「気にするな恋路ちゃん、敬語が少しおかしいだけで根は良い子なんだ。」
「いやいやいやそういうレベルじゃないよこれ!?」
「明久様、薬とはこれでよろしゅうござりやがりますか?」
「そうそうそれだよ。カッパの塗り薬のストックはたっぷりあるし大丈夫だよな。」

明久は真の脇腹、丁度彼の拳が突き刺さった場所に薬を塗る。
すると彼の肌に残っていた青あざが一瞬で消えてしまった。






「あの……修行って何しているんですか?」
「殴り合い。」
「どう見ても一方的なフルボッコにしか見えないのですが……。」
「まあ最初の三日くらいはそうだろうな。
 俺によって人体のありとあらゆる場所を破壊され尽くすに違いない。
 だが、人間の身体ってのは不思議なもんでなあ。
 破壊から治癒の過程の中でどんどん強くなっていく。
 骨も、肉も、内臓も、全部な。
 とくに強化系寄りだろこの兄ちゃん?
 だったら都市伝説の力を使えば使うほどに身体が本能的にそれに最適化されていく。
 俺が昔殺し合った電子レンジの能力者は体内の電流を増幅させて肉体強化とかやってたし、
 まあまずはそれが出来るようになるのが目標だわな。」
「成る程……、ちなみにそれって何時のことなんです?」
「30年くらい前、イスラエルだったかなぁ?
 どこぞの軍人だったらしいけど煩いから切った。」
「………………。」
「お、彼氏が目を覚ましたぞ?」
「あれ、ここは……?」
「目を覚ましたか少年、さあて修行の続きだ。表出な。」
「え?え?うにゃあああああ!」

上田明久に引きずられていく明日真。
都市伝説による肉体破壊と超再生の繰り返しは確かに彼を強くするだろうが……

「トラウマものだろうなあ……。」

後の精神的な影響が恋路は心配だった。





「明久様は本当に困った方なのでいらっしゃりやがりますよ。
 私は最近この家で働き始めたばかりなのでありますが、
 会社の仕事を奥様に任せて自分は筋トレと道場破りとオールドファッションしかしてないのでやがりますよ。
 ああ、あと…………」
「あと?」
「いや、これは女中として言う訳にはいかないことなのであります。」
「まあ言えないなら良いんですけど……。
 丁寧語とかそういうの良いですよ、杏奈さんの方が年上じゃないですか。」
「いえ、杏奈は三歳です。」
「はぁ?」
「涼はアンドロイドじゃなくてヒューマノイドなのです。」
「いや、どっちも同じな気が……。」
「ヒューマノイドとおっしゃって頂きやがってくれるとありがたいのです。」
「……ごめんなさい。」
「失礼いたしました、私としたことが取り乱してしまいました。」

ぺこりと頭を下げる涼さん、割烹着の袖からマシンガンがはみ出している。
ドアの隙間からお魚咥えたどら猫を明日真を引きずったまま縮地で捕獲する明久が見える。
ああやはり上田明也が育った家だけはある。
本当に人外魔境だ。
こんな家で育てば誰でもあんな変人になるに違いないと恋路は思った。





「さーて少年!ギリギリ意識はあっただろうしさっきの話は聞いていたな!」
「マ、マジで全身破壊ですか?」
「勿論だ!お前がそれを防げるくらい強くなれば良いんだぜ?」
「無理だ……。」
「それじゃあ行ってみよう。
 次は俺真っ直ぐ歩いて近づいてくるから熱くて近づけなくなるまでマイクロ波を撃ちまくれ。
 次は腕折るぞ腕ー、間接も少々の事じゃ破壊されないくらい柔軟にしてやる。」
「いやあああああああああああ!!」

明日は恐慌状態でマイクロ波を撃ちまくる。
だが薄もやのようなもので明久の身体が包まれたかと思うと明久はその嵐の中を悠然と歩いてきた。

「ふむ、持続力が足りないなあ。
 威力は良いとして攻撃にむらがある、やっぱ強化系だなお前。」
「く、来るなああああああああああ!」
「おいおい、お前らの事情はサンジェルマンから聞いているけど、
 俺の息子を倒すならこの程度でびびってちゃ駄目だぞー。」
「助けて恋路いいいいい!」
「男なら彼女に頼るな!はいタッチ。」
「うわああああああああああ!!」

ポキッ
青空に間接やら骨やらの折れる素敵な音が響き渡った。
どうやら明日君の修行はまだまだ続きそうである。
【電磁人の韻律詩37~死線~fin】


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