「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-15

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「はい……はい。『夢の国』に関しては…何も、目新しい情報は入っておりません…………わかりました。それでは…」

 …本部からの連絡を受け、黒服は小さくため息をついた
 次から次へと問題ばかりが起きていき、しかし、それらは何一つ解決してはいない
 この学校町は、これからどうなっていくと言うのか
 微かに、不安がつのる

 ………ぶるんっ、と
 一歩歩くと、胸元が無駄に揺れた

 先日、マッドガッサーから喰らってしまった、性別転換などと言うふざけた効果の毒ガス
 その効果は、まだ切れていない
 毒の浄化に使える都市伝説は、全て手元になかった
 本部に連絡を取ったが、どうやら本部にも、「ユニコーンの角」の在庫がなかったようだ
 次に、いつ本部にそれが入ってくるかもわからず
 ……すなわち
 己の体内に入った毒が消え去るであろう一週間後まで、自分はこのままだと言う事だ
 この不便な女性の体のまま

 元々無かった体力も腕力も、格段に下がってしまった
 丸みを帯びた体は出っ張っている部分も多く、満員電車に乗り合わせていると、腰から下の部分が他人の手にぶつかってばかりだ
 …正直、普段持ち歩いているジェラルミン製の鞄まで重たく感じるのが、一番つらい
 しかし、こんな状態でも、休む訳にはいかないのだ
 まだ、自分が担当している「骨を溶かすコーラ」の契約者は本調子ではない
 あの精神状態は、そう簡単には回復しないだろう
 …それに、だ
 正直言って、この状態をあの青年には見せたくない
 恐らくは、後々まで、笑いの種にされる事は確実だろう
 そうでなくとも、自分がこうなった状態を見た、「はないちもんめ」の契約者の反応を見るに…少なからず、ショックを与えてしまうかもしれない
 それは、避けたい事であった
 だから、こそ
 自分が、彼の分まで働く必要があるのだ
 戦闘能力の低い自分に出来る事など限られているが、それでも、情報収集くらいは…

 暗い夜道を歩いていく
 今日は、特にめぼしい収穫なし
 ただ、体力を悪戯に消耗しただけで終わった
 ……とにかく、帰って休もう
 そう考え、帰路につき

「………」

 ぴたり、足を止めた
 背後から、誰かの気配
 隠そうとしないその気配に、覚えがあった

「……また、あなたですか」

 小さく、ため息をつき、振り返ると
 そこには、金髪の、ジャラジャラとシルバーアクセサリーを大量に身につけた青年の姿があった
 …また、自分を「首塚」の組織に誘おうとでも言うのか
 まったく、無駄なことを…
 黒服が、何か口に出そうとした、その時
 青年は、すたすたと…無言で、黒服に近づいてきた
 いつもと違う様子に、黒服は微かに眉をひそめ…少し、警戒する
 ……いい加減、自分を消すように、誰かに言われたか?
 青年は、黒服に近づいてきて…
 …そして

「一万年と二千年前から好きでしがはっ!?」

 がすっ!!!
 …突然、飛び掛ってきたので
 とりあえず、防御行動として、ジェラルミン製の鞄を盾にした
 鞄に思い切り顔面を打ちつけ、青年は痛みに悶えている

「…突然、何ですか」
「え?あ……………ヤバかった。今、新世界の扉を開けるとこだった」

 若干くらくらしている様子で、立ち上がる青年
 その視線が、胸元に強烈に注ぎ込まれている事に、黒服は気付いていない

「っな、何があったんだよ、その姿!」
「…マッドガッサーは覚えていますか?」
「へ?俺が焼いた奴か?」
「…それとはまた、別のマッドガッサーが出現しました…その毒ガスに、やられただけです」

 青年は、黒服の体に起きている変化に、完全に困惑しているようだった
 …やはり、知り合いの性別が突然変わっている、という事実は、大きなショックを感じるもののようだ

「で、それ……元に戻るのかよ」
「毒が抜ければ。浄化できれば早いのですが、生憎、その手段がちょうど手元にありませんので」
「そうか…」

 複雑そうな表情を浮かべている青年
 余計な心配でも、かけてしまったのだろうか
 「組織」の歯車でしかない自分の事など、気にしなければいいと言うのに、この青年は妙にこちらの事を気にかけてくる
 …両親からの愛情に恵まれず、やや捻くれて育った青年ではあるが、芯は真面目で正義感の溢れる青年だ
 その優しさを自分に向けてくれるのはありがたいが、正直、「組織」の歯車でしかない自分には、重すぎる

「あなたも、マッドガッサーにはご注意を。「首塚」配下に、毒を浄化できる者は?」
「…ん~…多分いねぇ、と、思う。正直、どんな奴が仲間にいるかもさっぱりわかんねーし…」
「ならば、余計に気をつけなさい。私は都市伝説ですから、一週間程で元の性別に戻るでしょうが…人間でしたら、毒を浄化しない限り一生、元に戻れない恐れもあります」

 黒服の言葉に、青年はわかった、と頷く
 …その間も、延々と視線は胸元に注がれている事に、黒服は気付かない

「…それでは、私はこれで」
「あ、ま、待てよ!」

 がしり、手首を捕まれた
 …青年の手の指は、こちらの手首を掴んで、その長さが余っている
 ……元々体が細い自覚はあったが、今はそれ以上か

「……痛いのですが」
「あ…!わ、わりぃ」

 抗議すると、すぐに青年は手を離してきた
 …おや、珍しい
 いつもならば、一言二言、反抗してくると言うのに

「話は終わりましたよ?あなたも、特にこちらに話などないでしょう?私は「首塚」組織に移るつもりはありませんから」
「う、あ、そ、その…」

 視線を彷徨わせている青年
 …一体、何だと言うのか
 黒服は、小さく首をかしげた
 ぷるるるんっ、と
 その拍子に、胸元が無駄に揺れる

「あ~、その……お、送ってやるから!家まで送ってやるから!最近、この町やけに物騒だし!!」
「…女子供ではありませんし、その必要はありません」
「お前、今、女じゃん」

 …それは、確かにそうだが
 だが、青年に送られなければならないほど、自分は弱いとでも言うのだろうか
 幸い、自分が契約している都市伝説は、逃亡には便利なのだ
 …問題など、ない

「問題ありません……失礼します」
「あ……っ」

 青年を振り払い、黒服は歩き出す
 …できることならば、一週間を待たずに、本部にユニコーンの角が入って欲しい
 そうすれば、元の性別に戻れる
 今までと何ら変わりなく、活動ができるのだ
 この体は、どこまでも不便すぎる
 自分の身に起きているこの現象に、静かに、憂鬱に、黒服はため息をついたのだった



「…あ~…」

 …黒服を、見送って
 青年は、何とも複雑な心境に包み込まれていた
 何だ、あれは
 何だ、あの素晴らしき、神々が作りたもう柔らかそうな二つの山は
 例えるならば、あの二つの山の間は神々の谷間
 そして、あの二つの山は……マシュマロインパクト
 あれ、絶対胸元をカバーする下着つけてないだろ
 揺れ放題じゃねぇか畜生
 あれに視線を奪われない男なんている訳ないだろ畜生
 正直、ほとんど胸と会話してたじゃねぇか俺

 …元に戻ると
 黒服は、そう言っていた
 そう 
 あの神々の山は、谷間は、いつか失われるのである

 それは、非常に残念であるが
 …しかし
 あの肉体は、自分が乳……じゃなくて父のように慕う黒服のものであり
 たとえ、肉体が女性になっても精神は男な訳で
 しかし、あの肉体を前にしては、自分の男の本能が色々と限界な訳で

「っあーーー!畜生!!!」

 駄目だろ!!
 ここは踏みとどまるべきだろ俺!!
 新世界の扉を開けるわけにはいかないだろ!!!
 黒服は男、黒服は男、黒服は男っ!!!!!!!
 まるで自分に催眠術でもかけるように、青年は自分に言い聞かせ続けるのだった





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