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連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち・決戦以降-20j

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「………っ、Tさん、これ……」

 素人目に見ても、心臓を刺されたのだ、とわかる、その辰也の状態に…舞は、Tさんの顔色をうかがうように、口を開いた
 ……だが……それ以上は、口に出来ない
 口にして、その答えを聞く事を…その答えを、恵に聞かせる事を、恐れるように

「…ッ辰也……辰也」

 恵が、必死に辰也に呼びかけ続けているが…返事は、ない
 返事をしようと言う意思はあるようではあるのだが…その口元からあふれるのは、声ではなく、血
 けほ、と小さく咳き込む度、血があふれ続けている

 折れた剣は、辰也の体に突き刺さったままだ
 これを引き抜けば、一気に出血が始まって…普通よりは体が丈夫だという辰也でも、死にいたるだろう
 それでも、ケセランパサランの力で、一瞬でも出血を止めて…その隙にジャッカロープの乳を飲ませれば、治癒は可能だ

 後の、問題は
 …辰也の、生きようという、意志
 それが、絶対的に必要になってくる

 だが……今の辰也に、それが、どれだけ残っているか
 知りたくなかった、残酷な事実を突きつけられ…絶望している、この状態
 辰也が、生きようという意志を手放してしまう可能性は…十二分に、ある

「…け、い…………おまえ、らも………どう、して」

 血を吐き出しながら…意思の弱い眼差しで、Tさん達の存在を確認しそう口にした辰也
 まだ、辛うじて、意識が保たれているらしい

「髪の伸びる黒服さん……宏也からの、頼みでな。お前と、彼女を護るようにと」
「……辰也、の…様子がおかしかったから………心配、で」

 辺りを警戒しながら答えるTさんと、泣き出しそうな表情で答える恵
 辰也が苦笑しようとしたのが、気配で伝わる

「……れ、は、いい、から…………早く、ここから、逃げ……」
「………!……駄目……辰也、いなくなるの………やだ………」

 辰也の言葉に、ふるふると首を左右に振る恵
 ジャッカロープの万能薬の生成は、既に終わっているようだ
 後は、辰也に飲ませるだけ
 …だが、辰也に……その意思が、薄い
 やはり、絶望感が、生きる意志を削いでしまっている

「辰也の兄ちゃん。姉ちゃんは、兄ちゃんを助けようとして、ここまで来たんだぜ!?体力ないのに、走り回って!兄ちゃんを探してたんだぞ!」
「へびさんにおそわれたり、あぶないめにもあってたの」

 舞とリカちゃんの言葉に、辰也が口の動きだけで「あの婆、もっと苦しめて殺せば良かった」と呟いたのだが、それは恵や舞達は気づいていない
 …既に死んだ者への憎悪は、生きる気力には、あまり繋がらない
 再び小さく咳き込んだ辰也の意思は、まだ弱いままだ

「…俺が、いなくとも…………みな、がいるから………恵、お前は、皆と、一緒に…」
「…………だ」

 ふるふると
 辰也の言葉に、恵は首を左右に振った

「や、だ……辰也がいないと、嫌だ……!」

 …ぽたり
 涙が、零れ落ちる
 流れた涙は恵の頬を伝い、辰也の顔までこぼれていく

「俺、は……辰也に、一緒に、いてほしい……………隣に、ずっと、いてほしい………」
「……け、い?」

 ……それは
 恵の、生まれてはじめてかもしれない……わがまま
 ずっと一緒にいてほしい
 ずっと、傍にいてほしい
 そんな、純粋でささやかな、わがまま

「…辰也の、隣にいたい。辰也と、一緒にいたい…………他の、誰でもない、辰也がいい……………辰也じゃなければ、嫌だ………!」
「……恵」

 ………恵の言葉が、予想外だったのか
 辰也が、驚いたような表情を浮かべている

 あー、と
 恵のその、まっすぐなまっすぐな言葉に……少し、あてられたように赤くなっている舞
 リカちゃんは?と首をかしげている
 Tさんは、小さく苦笑している

「これはまた、ストレートな…」
「あー……姉ちゃん、結構大胆だったのな…」

 何故、こちらが照れなければいけないのか
 わからないが、照れくさい
 妙な感覚が、舞は落ち着かない

「…青年、ここまで思われて………まさか、まだ死を望む訳ではあるまい?」
「…………」
「どんな生まれであろうとも……大切なのは、生き方。今までの生き方と…これから選ぶ、その生き方。絶望さえしなければ……必ず、希望は、未来派つかみ取れる」

 それに、と
 恵に視線をやり、Tさんは笑う

「青年には、支えてくれる相手にいるようだしな?」
「…………」

 辰也の、目に
 意志が、戻ってくる
 生きよう、という想いが…強まってくる

 恵の、まっすぐな思いが、願いが
 諦めかけた辰也の心に…生きる気力を、宿す

 今なら…!

「…剣を引き抜いて、一瞬、出血を止める。その間に、ジャッカロープの乳を飲ませられるか?」
「………ん」

 こくり、Tさんの言葉に頷く恵
 Tさんが、辰也に突き刺さった剣に手を添えた

「抜く瞬間は、どうしても痛む。こらえてくれ」
「………平気、だよ…痛みには、慣れている」

 少し自嘲するように笑う辰也
 ……時間との勝負だ
 恵とジャッカロープの準備は既に出来ている

「舞、リカちゃん、目を閉じていろ」
「お、おう」
「はいなの」

 ……二人が目を閉じた事を確認し…剣を、引き抜く
 たちまち始まる出血
 ---その出血が、少しでも抑えられたら幸せだ!!
 発せられた光が、辰也の出血を、瞬間的に抑え…その隙に、恵が辰也の口に、ジャッカロープの乳を注いだ

「------っか、は……」

 ジャッカロープの乳を、飲み込んだ直後
 ごぱ、と大量の血を吐き出す辰也
 一瞬、恵が慌てるが………直後、傷口が一瞬でふさがる
 ジャッカロープの万能薬の力が、致命傷とも言えるその傷を、完全に治療してみせた
 …だが、ダメージまで完全に回復した訳ではない
 すぐに、動く事はできないだろう

「……っ」
「ぁ……ま、まだ動いたら…駄目だ…」

 しかし
 すぐに、起き上がろうとする辰也
 恵が、慌ててそれを制する

「まだ、無理をするな」
「……い、や……早く、ここを離れた方が、いい」

 …決闘場にあいた、大きな穴
 そこから聞こえてくる戦闘音を気にしながら、しかし、辰也は続ける

「…連中の、研究所には………たいてい、警備用の…ダンピール達が、置かれているはずだから…」
「だんぴーる??」
「…吸血鬼退治のエキスパートといわれている存在だな。確か、人間と吸血鬼の間に生まれると言われる…」

 首をかしげた舞に、軽く説明してやるTさん
 その説明に、辰也はそうだ、と頷き

「…H-No.1にとって、研究対象であると同時に……H-No.0が、自分達の研究を邪魔しに来た時に、備えて…大量に用意している、はず。いつ、姿を現しても、おかしくない……」
「……それは、厄介だな」

 さて、どうしたものか…
 Tさんが、辰也からの新たな情報に、思考を巡らせようとすると

 ……恵に抱かれていたジャッカロープの耳が、ぴくりと動いて
 ぶわ!!と、その毛が逆立つ

「…?ジャッカロープ…?」

 じ、と、Tさん達も降りてきたその階段を睨むジャッカロープ


 ………かつん、と
 小さな、小さな…どこか、弱弱しい、足音が
 ゆっくりと、ゆっくりと…そこから、聞こえてきていたのだった


to be … ?




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