「………っ、Tさん、これ……」
素人目に見ても、心臓を刺されたのだ、とわかる、その辰也の状態に…舞は、Tさんの顔色をうかがうように、口を開いた
……だが……それ以上は、口に出来ない
口にして、その答えを聞く事を…その答えを、恵に聞かせる事を、恐れるように
……だが……それ以上は、口に出来ない
口にして、その答えを聞く事を…その答えを、恵に聞かせる事を、恐れるように
「…ッ辰也……辰也」
恵が、必死に辰也に呼びかけ続けているが…返事は、ない
返事をしようと言う意思はあるようではあるのだが…その口元からあふれるのは、声ではなく、血
けほ、と小さく咳き込む度、血があふれ続けている
返事をしようと言う意思はあるようではあるのだが…その口元からあふれるのは、声ではなく、血
けほ、と小さく咳き込む度、血があふれ続けている
折れた剣は、辰也の体に突き刺さったままだ
これを引き抜けば、一気に出血が始まって…普通よりは体が丈夫だという辰也でも、死にいたるだろう
それでも、ケセランパサランの力で、一瞬でも出血を止めて…その隙にジャッカロープの乳を飲ませれば、治癒は可能だ
これを引き抜けば、一気に出血が始まって…普通よりは体が丈夫だという辰也でも、死にいたるだろう
それでも、ケセランパサランの力で、一瞬でも出血を止めて…その隙にジャッカロープの乳を飲ませれば、治癒は可能だ
後の、問題は
…辰也の、生きようという、意志
それが、絶対的に必要になってくる
…辰也の、生きようという、意志
それが、絶対的に必要になってくる
だが……今の辰也に、それが、どれだけ残っているか
知りたくなかった、残酷な事実を突きつけられ…絶望している、この状態
辰也が、生きようという意志を手放してしまう可能性は…十二分に、ある
知りたくなかった、残酷な事実を突きつけられ…絶望している、この状態
辰也が、生きようという意志を手放してしまう可能性は…十二分に、ある
「…け、い…………おまえ、らも………どう、して」
血を吐き出しながら…意思の弱い眼差しで、Tさん達の存在を確認しそう口にした辰也
まだ、辛うじて、意識が保たれているらしい
まだ、辛うじて、意識が保たれているらしい
「髪の伸びる黒服さん……宏也からの、頼みでな。お前と、彼女を護るようにと」
「……辰也、の…様子がおかしかったから………心配、で」
「……辰也、の…様子がおかしかったから………心配、で」
辺りを警戒しながら答えるTさんと、泣き出しそうな表情で答える恵
辰也が苦笑しようとしたのが、気配で伝わる
辰也が苦笑しようとしたのが、気配で伝わる
「……れ、は、いい、から…………早く、ここから、逃げ……」
「………!……駄目……辰也、いなくなるの………やだ………」
「………!……駄目……辰也、いなくなるの………やだ………」
辰也の言葉に、ふるふると首を左右に振る恵
ジャッカロープの万能薬の生成は、既に終わっているようだ
後は、辰也に飲ませるだけ
…だが、辰也に……その意思が、薄い
やはり、絶望感が、生きる意志を削いでしまっている
ジャッカロープの万能薬の生成は、既に終わっているようだ
後は、辰也に飲ませるだけ
…だが、辰也に……その意思が、薄い
やはり、絶望感が、生きる意志を削いでしまっている
「辰也の兄ちゃん。姉ちゃんは、兄ちゃんを助けようとして、ここまで来たんだぜ!?体力ないのに、走り回って!兄ちゃんを探してたんだぞ!」
「へびさんにおそわれたり、あぶないめにもあってたの」
「へびさんにおそわれたり、あぶないめにもあってたの」
舞とリカちゃんの言葉に、辰也が口の動きだけで「あの婆、もっと苦しめて殺せば良かった」と呟いたのだが、それは恵や舞達は気づいていない
…既に死んだ者への憎悪は、生きる気力には、あまり繋がらない
再び小さく咳き込んだ辰也の意思は、まだ弱いままだ
…既に死んだ者への憎悪は、生きる気力には、あまり繋がらない
再び小さく咳き込んだ辰也の意思は、まだ弱いままだ
「…俺が、いなくとも…………みな、がいるから………恵、お前は、皆と、一緒に…」
「…………だ」
「…………だ」
ふるふると
辰也の言葉に、恵は首を左右に振った
辰也の言葉に、恵は首を左右に振った
「や、だ……辰也がいないと、嫌だ……!」
…ぽたり
涙が、零れ落ちる
流れた涙は恵の頬を伝い、辰也の顔までこぼれていく
涙が、零れ落ちる
流れた涙は恵の頬を伝い、辰也の顔までこぼれていく
「俺、は……辰也に、一緒に、いてほしい……………隣に、ずっと、いてほしい………」
「……け、い?」
「……け、い?」
……それは
恵の、生まれてはじめてかもしれない……わがまま
ずっと一緒にいてほしい
ずっと、傍にいてほしい
そんな、純粋でささやかな、わがまま
恵の、生まれてはじめてかもしれない……わがまま
ずっと一緒にいてほしい
ずっと、傍にいてほしい
そんな、純粋でささやかな、わがまま
「…辰也の、隣にいたい。辰也と、一緒にいたい…………他の、誰でもない、辰也がいい……………辰也じゃなければ、嫌だ………!」
「……恵」
「……恵」
………恵の言葉が、予想外だったのか
辰也が、驚いたような表情を浮かべている
辰也が、驚いたような表情を浮かべている
あー、と
恵のその、まっすぐなまっすぐな言葉に……少し、あてられたように赤くなっている舞
リカちゃんは?と首をかしげている
Tさんは、小さく苦笑している
恵のその、まっすぐなまっすぐな言葉に……少し、あてられたように赤くなっている舞
リカちゃんは?と首をかしげている
Tさんは、小さく苦笑している
「これはまた、ストレートな…」
「あー……姉ちゃん、結構大胆だったのな…」
「あー……姉ちゃん、結構大胆だったのな…」
何故、こちらが照れなければいけないのか
わからないが、照れくさい
妙な感覚が、舞は落ち着かない
わからないが、照れくさい
妙な感覚が、舞は落ち着かない
「…青年、ここまで思われて………まさか、まだ死を望む訳ではあるまい?」
「…………」
「どんな生まれであろうとも……大切なのは、生き方。今までの生き方と…これから選ぶ、その生き方。絶望さえしなければ……必ず、希望は、未来派つかみ取れる」
「…………」
「どんな生まれであろうとも……大切なのは、生き方。今までの生き方と…これから選ぶ、その生き方。絶望さえしなければ……必ず、希望は、未来派つかみ取れる」
それに、と
恵に視線をやり、Tさんは笑う
恵に視線をやり、Tさんは笑う
「青年には、支えてくれる相手にいるようだしな?」
「…………」
「…………」
辰也の、目に
意志が、戻ってくる
生きよう、という想いが…強まってくる
意志が、戻ってくる
生きよう、という想いが…強まってくる
恵の、まっすぐな思いが、願いが
諦めかけた辰也の心に…生きる気力を、宿す
諦めかけた辰也の心に…生きる気力を、宿す
今なら…!
「…剣を引き抜いて、一瞬、出血を止める。その間に、ジャッカロープの乳を飲ませられるか?」
「………ん」
「………ん」
こくり、Tさんの言葉に頷く恵
Tさんが、辰也に突き刺さった剣に手を添えた
Tさんが、辰也に突き刺さった剣に手を添えた
「抜く瞬間は、どうしても痛む。こらえてくれ」
「………平気、だよ…痛みには、慣れている」
「………平気、だよ…痛みには、慣れている」
少し自嘲するように笑う辰也
……時間との勝負だ
恵とジャッカロープの準備は既に出来ている
……時間との勝負だ
恵とジャッカロープの準備は既に出来ている
「舞、リカちゃん、目を閉じていろ」
「お、おう」
「はいなの」
「お、おう」
「はいなの」
……二人が目を閉じた事を確認し…剣を、引き抜く
たちまち始まる出血
---その出血が、少しでも抑えられたら幸せだ!!
発せられた光が、辰也の出血を、瞬間的に抑え…その隙に、恵が辰也の口に、ジャッカロープの乳を注いだ
たちまち始まる出血
---その出血が、少しでも抑えられたら幸せだ!!
発せられた光が、辰也の出血を、瞬間的に抑え…その隙に、恵が辰也の口に、ジャッカロープの乳を注いだ
「------っか、は……」
ジャッカロープの乳を、飲み込んだ直後
ごぱ、と大量の血を吐き出す辰也
一瞬、恵が慌てるが………直後、傷口が一瞬でふさがる
ジャッカロープの万能薬の力が、致命傷とも言えるその傷を、完全に治療してみせた
…だが、ダメージまで完全に回復した訳ではない
すぐに、動く事はできないだろう
ごぱ、と大量の血を吐き出す辰也
一瞬、恵が慌てるが………直後、傷口が一瞬でふさがる
ジャッカロープの万能薬の力が、致命傷とも言えるその傷を、完全に治療してみせた
…だが、ダメージまで完全に回復した訳ではない
すぐに、動く事はできないだろう
「……っ」
「ぁ……ま、まだ動いたら…駄目だ…」
「ぁ……ま、まだ動いたら…駄目だ…」
しかし
すぐに、起き上がろうとする辰也
恵が、慌ててそれを制する
すぐに、起き上がろうとする辰也
恵が、慌ててそれを制する
「まだ、無理をするな」
「……い、や……早く、ここを離れた方が、いい」
「……い、や……早く、ここを離れた方が、いい」
…決闘場にあいた、大きな穴
そこから聞こえてくる戦闘音を気にしながら、しかし、辰也は続ける
そこから聞こえてくる戦闘音を気にしながら、しかし、辰也は続ける
「…連中の、研究所には………たいてい、警備用の…ダンピール達が、置かれているはずだから…」
「だんぴーる??」
「…吸血鬼退治のエキスパートといわれている存在だな。確か、人間と吸血鬼の間に生まれると言われる…」
「だんぴーる??」
「…吸血鬼退治のエキスパートといわれている存在だな。確か、人間と吸血鬼の間に生まれると言われる…」
首をかしげた舞に、軽く説明してやるTさん
その説明に、辰也はそうだ、と頷き
その説明に、辰也はそうだ、と頷き
「…H-No.1にとって、研究対象であると同時に……H-No.0が、自分達の研究を邪魔しに来た時に、備えて…大量に用意している、はず。いつ、姿を現しても、おかしくない……」
「……それは、厄介だな」
「……それは、厄介だな」
さて、どうしたものか…
Tさんが、辰也からの新たな情報に、思考を巡らせようとすると
Tさんが、辰也からの新たな情報に、思考を巡らせようとすると
……恵に抱かれていたジャッカロープの耳が、ぴくりと動いて
ぶわ!!と、その毛が逆立つ
ぶわ!!と、その毛が逆立つ
「…?ジャッカロープ…?」
じ、と、Tさん達も降りてきたその階段を睨むジャッカロープ
………かつん、と
小さな、小さな…どこか、弱弱しい、足音が
ゆっくりと、ゆっくりと…そこから、聞こえてきていたのだった
小さな、小さな…どこか、弱弱しい、足音が
ゆっくりと、ゆっくりと…そこから、聞こえてきていたのだった
to be … ?