かつん…………かつん、と
ゆっくり、ゆっくり、降りてくる足音
Tさんは舞達を庇うような位置に立ち、警戒するように階段を睨みつける
辰也も立ち上がろうとはするのだが……まだ、体が自由に動かない
せめて、「13階段」を発動できる状態にしようとはするのだが…それすらも、ままならない
何もできない状態を、辰也は酷く歯がゆく感じる
ゆっくり、ゆっくり、降りてくる足音
Tさんは舞達を庇うような位置に立ち、警戒するように階段を睨みつける
辰也も立ち上がろうとはするのだが……まだ、体が自由に動かない
せめて、「13階段」を発動できる状態にしようとはするのだが…それすらも、ままならない
何もできない状態を、辰也は酷く歯がゆく感じる
…そうしていると…そっと、恵に、上半身を抱きかかえられた
辰也を護ろうとするように、恵は辰也を抱きかかえる
……ジャッカロープも入っていた、大量の携帯電話が入っている鞄の口は、あけられたままだ
恵にまで、護られている
自分が、恵を護りたかったと言うのに…
……自分ひとりで突っ走った挙句、これか
辰也は、小さく、こっそりと…自嘲気味な笑みを浮かべる
辰也を護ろうとするように、恵は辰也を抱きかかえる
……ジャッカロープも入っていた、大量の携帯電話が入っている鞄の口は、あけられたままだ
恵にまで、護られている
自分が、恵を護りたかったと言うのに…
……自分ひとりで突っ走った挙句、これか
辰也は、小さく、こっそりと…自嘲気味な笑みを浮かべる
………っつん…………かつん、と
酷くゆっくりとした…どこか、弱弱しい足音
その、主が……ゆっくりと、姿を現した
酷くゆっくりとした…どこか、弱弱しい足音
その、主が……ゆっくりと、姿を現した
「----っ!」
…何故
こいつが、ここに
恵が驚いているのが、気配でわかる
体の痛みをこらえて、辰也は口を開く
こいつが、ここに
恵が驚いているのが、気配でわかる
体の痛みをこらえて、辰也は口を開く
「……ってん、ち……」
「へ?…あの、兄ちゃんが?」
「…門条 天地、か…」
「へ?…あの、兄ちゃんが?」
「…門条 天地、か…」
門条 天地
ドクターの診療所にいるはずの天地が…何故、ここに
顔色は、まだ悪いままだ、本調子ではない
薬の効果は抜けたはずだが、まだ、体の状態が万全ではないのだ
無理をすれば、命に関わるかもしれないというのに
ドクターの診療所にいるはずの天地が…何故、ここに
顔色は、まだ悪いままだ、本調子ではない
薬の効果は抜けたはずだが、まだ、体の状態が万全ではないのだ
無理をすれば、命に関わるかもしれないというのに
…いつもは逆立てている天地の髪は、今は降りていて
その、姿は……………どこか、辰也に似ていた
その、姿は……………どこか、辰也に似ていた
「…H-No.96…っ」
天地の口から漏れ出すその声は、憎悪がこもっている
辰也としては…天地と己との関連性に確信を持てるようになった今、それを寂しく思わない訳でもないが……半ば、諦めている
天地か、彼方のどちらかが、自分の弟なのではないか
そう思ったキッカケが何だったのかは、覚えていない
ただ、そう感じたからこそ、あの二人に対して気を使ってきた
二人が「組織」の中で生き抜けるようにしてきたつもりだった
…その真意が伝わらずとも良いと、考えてはいたが
天地から向けられる剥き出しの憎悪は…やはり、辛い
辰也としては…天地と己との関連性に確信を持てるようになった今、それを寂しく思わない訳でもないが……半ば、諦めている
天地か、彼方のどちらかが、自分の弟なのではないか
そう思ったキッカケが何だったのかは、覚えていない
ただ、そう感じたからこそ、あの二人に対して気を使ってきた
二人が「組織」の中で生き抜けるようにしてきたつもりだった
…その真意が伝わらずとも良いと、考えてはいたが
天地から向けられる剥き出しの憎悪は…やはり、辛い
「……お前を、殺せば……先生も、認めてくれる………先生に、捨てられずにすむ……」
うわごとのように、そう呟く天地
モンスの天使を召喚しようとして…
……召喚、できていない
天使達は姿を現そうとはするのだが、しかし、完全に実体化できずに消えてしまっている
天地が、万全の状態ではないせいだろう
このまま無理をして召喚しては、体に負担がかかりすぎる
モンスの天使を召喚しようとして…
……召喚、できていない
天使達は姿を現そうとはするのだが、しかし、完全に実体化できずに消えてしまっている
天地が、万全の状態ではないせいだろう
このまま無理をして召喚しては、体に負担がかかりすぎる
「………ん、ち……やめておけ……今度こそ、死ぬぞ」
「煩い……っ、先生に、見込まれた癖に………「組織」を裏切った、恩知らずが……!」
「煩い……っ、先生に、見込まれた癖に………「組織」を裏切った、恩知らずが……!」
何が何でも、天使達を召喚しようとしている天地
…このままでは、不味い
止めようとしても…どんな言葉で止めればよいのか……わからない
自分の言葉では、どんな言葉をかけても逆効果にしかならないのではないか
辰也はそう考え…止める言葉が、口を出ない
…このままでは、不味い
止めようとしても…どんな言葉で止めればよいのか……わからない
自分の言葉では、どんな言葉をかけても逆効果にしかならないのではないか
辰也はそう考え…止める言葉が、口を出ない
「待て、青年」
天地の様子に、口を開くTさん
…初対面の相手だからか、天地は警戒するように、Tさんを睨む
……Tさんが、都市伝説である事は感じ取れても、どんな都市伝説かまでは、判別できまい
何を仕掛けてくるのか、それを警戒している様子だ
…初対面の相手だからか、天地は警戒するように、Tさんを睨む
……Tさんが、都市伝説である事は感じ取れても、どんな都市伝説かまでは、判別できまい
何を仕掛けてくるのか、それを警戒している様子だ
「彼を恨むのは、筋違いだろう」
「……ッ黙れ。何者かは、知らないが……邪魔するなら、容赦はしない…!」
「……ッ黙れ。何者かは、知らないが……邪魔するなら、容赦はしない…!」
ふらつきながらも、それでも、天地は必死にモンスの天使達を召喚しようとする
…ここで、辰也を殺す事で…己の存在価値を、見出そうとしているかのように
…ここで、辰也を殺す事で…己の存在価値を、見出そうとしているかのように
…こんな密閉空間で、あのモンスの天使達を召喚されては、たまらない
そうとでも言うように、舞が叫ぶ
そうとでも言うように、舞が叫ぶ
「待てよ、兄ちゃん!あんたの言う「先生」ってのが誰なのか、俺は知らねぇけど…………先生に認められるってのが、そんなに大事かよ!?」
「…………あぁ、そうだよ!!」
「…………あぁ、そうだよ!!」
舞の言葉に、血を吐くように答える天地
その表情に浮かぶのは、はっきりとした、焦り
その表情に浮かぶのは、はっきりとした、焦り
「…先生が、認めてくれれば………見捨てられずに、すむ………先生に見捨てられたら、俺は……もう、「組織」に……いられない」
………それは
まるで、迷子の子供のような心細さの混じった、声
まるで、迷子の子供のような心細さの混じった、声
「……強硬派連中から、引き離されて…………穏健派の中じゃ、俺みたいな能力……使いどころがあるはずもない………先生だけが、俺に期待してくれていたんだ、先生が俺を見捨てないでくれれば、俺はまだ「組織」にいられる。「組織」から捨てられずにすむっ!!」
…声、だけじゃない
表情にすら…その、心細さが混じったように見えたのは、気のせいか?
表情にすら…その、心細さが混じったように見えたのは、気のせいか?
「…「組織」に居場所がなくなったら…………もう、俺には居場所なんて…………ない………」
「………っ」
「………っ」
ズキリ、と、背中の火傷が、一瞬痛む
……天地を、強硬派から引き剥がすよう、ヘンリエッタに頼んだのは、宏也
その宏也に、それを頼んだのは…………辰也自身
天地の為を思ってやった事だったが、それが、天地を追い詰めたのか
…そこに
ハンニバルが、付け入った
そう言う事なのだろう
いや、その前から……天地に、「己の居場所は「組織」にしかないのだ」と思い込ませ続けていたのかもしれない
……天地を、強硬派から引き剥がすよう、ヘンリエッタに頼んだのは、宏也
その宏也に、それを頼んだのは…………辰也自身
天地の為を思ってやった事だったが、それが、天地を追い詰めたのか
…そこに
ハンニバルが、付け入った
そう言う事なのだろう
いや、その前から……天地に、「己の居場所は「組織」にしかないのだ」と思い込ませ続けていたのかもしれない
もっと
もっと…天地と交流して、他の道を教えていれば
自分が、宏也から、「組織」以外での生き方を教わったように…自分も、天地に伝える事ができていれば
こうは、ならなかったのか?
もっと…天地と交流して、他の道を教えていれば
自分が、宏也から、「組織」以外での生き方を教わったように…自分も、天地に伝える事ができていれば
こうは、ならなかったのか?
天地のその答えに、舞は戸惑った様子で
……そして
Tさんは、やや思案し………天地に、尋ねる
……そして
Tさんは、やや思案し………天地に、尋ねる
「…青年。お前は、自分は「組織」にしか居場所がないというが……それは、真実か?」
「っ何を…」
「「組織」の他にも…お前を必要としてくれる存在が。お前を気にかけてくれる存在は、ちゃんといるんじゃないのか?」
「っ何を…」
「「組織」の他にも…お前を必要としてくれる存在が。お前を気にかけてくれる存在は、ちゃんといるんじゃないのか?」
恐らく
Tさんは、辰也の事を指していったのだろう
辰也が天地の事を気にかけていた事は、Tさんも把握しているのだから
Tさんは、辰也の事を指していったのだろう
辰也が天地の事を気にかけていた事は、Tさんも把握しているのだから
…それを知らない、天地は
しかし…何か、別の誰かが、思い当たったのだろうか
はっとした表情になって……だが、すぐに首を左右に振ってしまう
しかし…何か、別の誰かが、思い当たったのだろうか
はっとした表情になって……だが、すぐに首を左右に振ってしまう
「………駄目、だ…………………直希に、迷惑は………俺が、勝手に………」
天地の口から出た名前に、聞き覚えがあったのだろう
え?という表情を浮かべる舞
…辰也も、少々驚く
まさか、自分達と共通の知り合いがいるとは…
え?という表情を浮かべる舞
…辰也も、少々驚く
まさか、自分達と共通の知り合いがいるとは…
……天地の顔に、迷いが浮かぶ
説得するなら、今か
声を出そうとして…しかし、辰也は咳き込む
吐き出しきっていなかった血が口からあふれ、恵が慌て出す
説得するなら、今か
声を出そうとして…しかし、辰也は咳き込む
吐き出しきっていなかった血が口からあふれ、恵が慌て出す
「…辰也、駄目だ……無理、するな…」
「……少しは、無理しなきゃいけねぇ状況だろうがよ…」
「……少しは、無理しなきゃいけねぇ状況だろうがよ…」
ぐらついている様子の天地
……しかし、こちらと戦おうという意思は、ハンニバルに見捨てられることを恐れる恐怖心は……まだ、消えていない
……しかし、こちらと戦おうという意思は、ハンニバルに見捨てられることを恐れる恐怖心は……まだ、消えていない
to be … ?