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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-神智学協会-09

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 部屋に入ったTさん達を笑顔で迎えた徹心は、千勢を見て、笑みに含まれる喜色を更に濃くした。
「高坂君、まずは無事に帰って来てくれて嬉しいよ」
「まだ死ねんと言っただろうが……。まあいい、徹心、奴らどうやら本気でモニカを狙ってきているようだ。
 おそらく離脱する前に仕込んでいたのだろう、≪道案内する死霊≫を起動してモニカを連れ出し、その迎えには≪冬将軍≫と≪テンプル騎士団≫を差し向けてきた」
 徹心は目を細める。その上で思案気に、
「モニカは多くあるアテの一つでは無く、彼らの重要な……他に替えがきかない目標だということかい?」
「そうでなければあの二人は出てこんよ」
 千勢の言葉を受けて、徹心はモニカを見る。
「エルマーの血筋……かな?」
「モニカにさせたいのは何かとの契約といったところだろうかな」
 二人の間で会話が進んだところで、Tさんが口を差し挟んだ。


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「符丁で会話をしないでもらおう。話し合いをするのだろう? 分かるように説明してもらいたい」
 Tさんの割り込みに対して、徹心のおっちゃんは素直に「すまないね、ついつい気になってしまって……」と頭を下げた。それから改めてTさんを見て、感慨深げにああ……、と息を吐く。
「君が××、Tさんだね?」
「……そうだが?」
「大きくなったようだね」
「貴方と会った覚えは無いのだが」
「高坂君から話は聞いているよ。こんなに小さい頃に拾って来たって」
 そう言って徹心のおっちゃんは手でTさんの当時の身長を表現する。
 ……やべえ、ちっせえ! 見てみたい!
「≪ケサランパサラン≫が酷なモノを見せたから、人付き合いは避けるようになるかもしれないと高坂君は拾ってきた当時言っていたけど」
 そう言っておっちゃんは俺に目を向け、安心したような笑みで言う。
「今は良い出会いに恵まれたようだね」
 まあ、な。と頷いてTさんは僅かに首を傾けた。
「高部徹心。師匠がここの所属という事は、俺も以前はここの所属だった、という事でいいのか?」
「自分の居た部署も知らなかったのかよ?」
 俺が呆れて言うと、Tさんは苦笑で頷く。
「あまり興味も無かったからな」
「君達師弟はそういうところはとても似ているよ」
 徹心のおっちゃんはそう言って千勢姉ちゃんを横目で見る。
「君がTさんとしてその存在を保っていた事は辛うじて知っていたけれど、まさか高坂君がいきなり見つけてくるとは思わなかったよ」
「私も驚いている」
「驚いたのはいいけどさ、いきなり戦わないでほしいぜ」
 あの突然の遭遇と、その後の戦いを思い出して口にすると、徹心のおっちゃんが非難するような目で千勢姉ちゃんを見た。
「そんな事をしたのかい?」
 対する千勢姉ちゃんは悪びれた様子も無い。
「ん、弟子の力量が如何程のものか気になってな。力量不足ならその場で殴り倒してモニカ達を攫って直帰する予定だった」
「……ちょっと待ってくれ、高坂君」
 徹心のおっちゃんは妙に手慣れた動作で眉間を押さえ、
「もしかして彼女らは、無理矢理に連れてきたのかい?」
 掌で丁重に示されたフィラちゃんとモニカが互いに顔を見合わせる。
 千勢姉ちゃんは「何を当たり前の事を……」と肩をすくめた。
「こいつらは他組織、しかも確か事前情報では≪組織≫と折り合いが良く無いという事になっていた筈の≪首塚≫の所属だぞ。素直に≪組織≫から助けに来たと言っても警戒されるだろう。とりあえず足を止める必要があったんだ」
「それで私の≪フィラデルフィア計画≫は殴り壊されたのね……」
「また乱暴な事を……≪首塚≫と≪組織≫は君が言った通り元々仲がよくないんだよ? 下手をして問題になったらどうするんだい」
「そうなった時に対処するのがお前の役目だろう」
 貫録すら感じさせる千勢姉ちゃんの居直り具合に、徹心のおっちゃんは今度は頭を抱えた。これまた何故か手慣れた感がある動作だ……。見ててちょっと面白れぇ。
「しかしな徹心。あれはしょうがなかった部分もあるんだ。≪フィラデルフィア計画≫での長距離移動を再開されたら私ではとてもその挙動に付いて行くことが出来ないからな」
 千勢姉ちゃんは徹心のおっちゃんの動作を面白そうに眺めながら続ける。
「まあ、結果として馬鹿弟子は力量を練り上げる事に成功した上で、伏見舞という娘を引っ掛け、更にリカちゃんという人形の子供まで出来ていた。
 モニカも、モニカの保護者をしている藤宮由実――フィラちゃんも、そして私も、五体満足でお前の前に来れた。――万々歳の成果じゃないか。
 更に驚いた事に、だ。馬鹿弟子と舞とリカちゃんはフィラちゃんと以前から知り合いらしいぞ。馬鹿弟子たちは将門とも会った事があるようだ」
 それらの報告を受けた徹心のおっちゃんはまじまじと目を見開いて、深く感嘆のため息をついた。
「縁だねえ……」
「まったく、数奇なものだ」
 そう言ってTさんは徹心の方へと一歩あゆみ寄った。
「俺たちはモニカを追っていたらしい都市伝説達に顔を見られ、彼等が追っていた藤宮由実を護った上に敵対行動もとった。貴方から見て俺達は事件に無関係かもしれないが、事情を知らせてもらうくらいはかまわないな?」
 嫌とは言わせない。という構えの言葉の畳みかけに、徹心のおっちゃんがのけ反る。
「高坂君……彼、しっかり者に成長し過ぎじゃないかい?」
「ここが私で鍛えた対厄介な人物用折衝スキルの発揮しどころだ。頑張れ徹心」
「うーん……」
「苦労しているようだな」
 Tさんの、どこか憐れみが込められた言葉に、徹心のおっちゃんは深く頷いた。
「……君も大概そうだったけど、高坂君が≪組織≫のような性質を持った集団内で大人しくいいなりになっているような人物に見えるかい?」
「見えん。よほど上が苦労していると見た」
「分かってくれるか」
 徹心のおっちゃんが握手を求めてTさんが応えた。
 ガシッ、と結ばれた手を眺めて千勢姉ちゃんが半目で言う。
「まるで私が悪者じゃないか……」
「そこまでは言わないよ。僕の懐刀を引き受けてくれるような人はもうこの先居ないだろうしね。感謝している。そしてTさん――」
 徹心のおっちゃんは、Tさんへと頭を下げた。
「すまなかった」


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 机に頭をぶつける勢いで頭を下げた徹心は、ややあって顔を上げた。
 困惑している風なTさんに言葉をかける。
「Tさん、君には話を始めるよりもまず先に、謝らなければならないことがある」
「あやまるの?」
 リカちゃんが舞の頭上で首を傾げる。徹心は無言で首を縦に振った。
「……≪夢の国≫の件か?」
「その通りだよ。よくわかったね」
 それくらいしか思い浮かばんからな。とTさんは苦笑する。
「当時、俺には犯人は神隠しだと情報が伝わっていた。どこかで情報の改竄なり滞りなりがあったようだな?」
「≪夢の国≫の黒服。≪組織≫はいつの間にかそれらの侵入を許していたみたいでね。伝えるべき情報が寸断されていたんだ。そのせいで君が消されそうになった。黒服達の侵入を許した事も含めてこちらのミスだ。すまない」
「一通りの修行を仕込んだ師匠が海外に発って、ちょうど疎ましい人材が一人残った為に情報を故意に消して抹殺でもされたのかと思ったよ」
「すまないな。私も徹心も別の対応に――今日会った者達が所属している組織を相手にするのに手を取られていたんだ」
「構わんさ……許す、と言えばいいんだろうかな?」
 Tさんは微笑して、
「幸いにして、≪ケサランパサラン≫と共にこうして今も俺は生き永らえているし……そのおかげで得難い出会いもあった」
 そう言ってTさんは舞の頭に軽く触れる。
 手振りで応接セットの上等そうなソファーへと一同を促しながら、Tさんは公園で千勢がT№0が自分の情報を集めていたという話を思い出して訊ねた。
「高部徹心。師匠からも聞いたが、俺の存続自体は掴んでいたと先程貴方も言っていたな。俺に関する情報は一体どうなっている?」
「≪組織≫内部の君の情報は、少なくとも手元にある分は完全に抹消しているよ。≪組織≫の人間が接触を図るならまず勧誘からということになるだろうけど、どうも君や伏見君の事は≪組織≫内でも調査及び手出し無用になっているフシがある。≪組織≫に知り合いでもいるのかい?」
「……え、誰だろ?」
「さてな、心当たりはそれなりにいるが……」
 そう言いながら、これまで関わった事のある幾人かの顔を思い浮かべる。
 その中には≪組織≫内でも特殊な立場にある人間も居た。彼等の誰かが働きかけていればこそ、いくつかの事件に関わった後も周囲に≪組織≫の気配を感じなかったのだろう。
「有り難いことだな」
 呟いたTさんに千勢が言う。
「随分と働いていたようだ」
「そういう巡り合わせにはどうにも恵まれているらしい」
「そうでなくてもTさん達の知り合いは面倒なのが多いのよ。不用意に手を出したら火傷じゃ済まなくなるわ」
 由実がため息交じりに言うと、徹心と千勢はそれはいい、とひとしきり笑った。
 やがて笑みを収め、徹心が切り出す。
「さて、すまないね。つい話しこんでしまった。年を取るとなかなかどうも、余談が過ぎていけない……」
 着席した一同、一人一人へと目を向け、
「――藤宮由実、それにモニカ・リデル。そしてTさんの契約者の伏見舞に、そのもう一つの契約都市伝説のリカちゃん。皆に実のある話をしよう」


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 ≪組織≫のお偉いさん。それもTさんの所属していた部署の偉い人で、このコテージが建てられてるこの異界の持ち主。
 それだけの話を聞いても、やっぱり徹心のおっちゃんはどう見ても人のよさそうなおっちゃんだ。千勢姉ちゃんに苦労させられてそうな辺りもまたすごく……らしい。
 Tさんに頭を下げるとこなんか堂に入っていた気がするしな!
 すげえふかふかするソファーの感触を確かめながらそんな事を考えて、俺は今日の事について話題が戻った場で、次の一言を待っていた。
 だれがどう話を切り出すのか。とりあえず俺にはさっぱりわかんねえけど順当に徹心のおっちゃんとかが話すのかな?
 そう思った矢先、千勢姉ちゃんが口を開いた。
「聞きたい事が多いだろうが、その前にこちらの質問に答えてもらいたい」
 そう言って千勢姉ちゃんはモニカに目を向けた。フィラちゃんの膝の上に収まっていたモニカは千勢姉ちゃんの問う視線に小さく震えて、フィラちゃんの手を握る。
 千勢姉ちゃんは苦笑して、
「騎士……ユーグの事を知っているようだったが、モニカは以前から彼とは知り合いなのか?」
「へえ、ユーグが……」
 徹心のおっちゃんが呟いた。何か知ってそうな反応だ。
「わたしは、お父さんとお母さんといっしょに日本に来る前は、ユーグおじさんともずっといっしょに暮らしてた……よ?」
「一緒に?」
 モニカは頷いて、
「お父さんもお母さんも研究のお仕事しててあんまりいっしょにいれなかったから、おじいちゃんが契約してた都市伝説の、ユーグおじさんを連れて来てくれたの」
 モニカは背格好からして小学生くらいに見える。それがもっと昔の事だっていうんだから、そんくらいの嬢ちゃんが親と一緒に居れないってのは寂しいもんだろう。その代わりに居たのがあの騎士のおっちゃんだとしたら、随分懐かれてたんだろうな。
「でも……」
「でも?」
 そこまで言ってモニカは黙っちまった。その場の誰も、モニカを急かすでもなく、緩い緊張を帯びた沈黙を作る。
 しばらく経って、フィラちゃんの足の間で身を縮めたモニカは小刻みに震えながら言った。
「ユーグおじさんがお父さんとお母さんを……殺したの……」
「え?」
 ――マジかよ?
 フィラちゃんがモニカを気遣うように撫でて、詳しい話をする。
「モニカの両親がある日突然、海外の今まで居た家からモニカを連れ出したのよ。そしてそれを追って来たのが≪テンプル騎士団≫とその契約者……」
「騎士のおっちゃんの契約者ってーと、さっきの話しからするとモニカのじいちゃんなんだろ? なんでまた」
「わからないわ。私はモニカと……もう手遅れだった御両親を見つけた所を、彼等を追っていた≪テンプル騎士団≫に見つかって、≪フィラデルフィア計画≫で必死に逃げただけだから」
「その後、≪首塚≫に連れて行ったのか?」
「ええ、≪首塚≫にモニカのような身よりを亡くした子を預けておける場所があるの。……そしてしばらくしてから私はご両親を探しに行ってみたんだけど、その日、そこでは何の事件も起きていない風に隠蔽されていて何も手がかりは掴めなかったわ。モニカも小さかったし、本当に何も、この数年間は分からずじまいよ」
「おじさん……ずっと仲よくしてくれてたのになんで……」
 そう言うモニカに目をやって、徹心のおっちゃんが物憂げに言う。
「できればそのまま≪首塚≫の加護の下で暮らしていて欲しかったけど、まさか霊を憑けて連れ出すとは思わなかった」
 千勢姉ちゃんも頷く。
「モニカの居場所が感知されてしまった今では≪首塚≫の加護は当てにならん。直接護らなければならないな」
「――ちょ、ちょっと待って」
 徹心のおっちゃんと千勢姉ちゃんの会話に、フィラちゃんが慌てて割って入った。
「まるで、モニカの事を昔から知っているような口ぶりね」
「直接モニカ君とは面識は無いけどね。モニカ君の御両親から今際の際に聞いたんだ」
 え? と疑問符がフィラちゃんの頭に浮かんだ。
「どういう事?」
「私達もあの場に居たんだよ」
 千勢姉ちゃんが言って「ほら、考えても見ろ」と続ける。
「数年前、フィラちゃんはそちらに騎士が一人向かったと言っていたな。お前はユーグ、あの騎士団総長が騎士を喚ぶ力を持っているのを公園で確認したな? あれだけの騎兵を喚び寄せられるのに、その場でお前に向かったのは一騎だけだったのもおかしな話だろう? 目標を見つけたのなら残りの他の騎士がそちらに早急に集まってしかるべきだ。フィラちゃんの≪フィラデルフィア計画≫は鉄の箱の召喚から転移までに十数秒はかかるのは私も知っている。それだけの間があれば、あの騎士団ならば箱を串刺しにする事も可能だ」
「じゃあ、もしかして」
 千勢姉ちゃんは頷いた。
「私があの場で他の騎士達を食い止めていた。そしてその戦場でモニカの両親、トリシアとレ二ーを見つけたんだ。
 彼等は最期、モニカの身を案じながらおおよその事を話してくれたよ。故にモニカと、モニカの両親を殺害したユーグが既知の仲だった事には驚いた」
 そう言って千勢姉ちゃんは納得したように何度か頷いた。
「徹心、私が聞きたかった事はそれで終いだ。話すべき事を話してやってくれ」
 そう言って千勢姉ちゃんは丸まったケウにもたれかかった。腕を組んで目を瞑る。
 徹心のおっちゃんはモニカが顔を上げたのを見て困ったような微笑をすると、懐から一枚の写真を取り出した。
「返しておこうか。モニカ君、君のおじいさんからの預かり物だ」
「え?」
 応接セットの机の上に置かれた写真にはハニーブロンドのちっちゃい嬢ちゃんと、同じ髪の色の母親らしき人物。それにもう少し色の濃い金髪のおっちゃんとじいちゃん。そしてあの公園で見た騎士のおっちゃんの姿があった。
 それを見て、モニカが零す。
「これ、私とお父さんとお母さん。……それにおじいちゃんとユーグおじさん?」
「え? じゃあこのちっこい嬢ちゃんはモニカか?」
「うん……」
「モニカの御両親は、今日君達を襲ってきていたのと同じ組織の研究班に所属していた。そして母トリシアと父レ二ーの間に生まれたモニカ、君はその組織内で研究対象として扱われていたようだ」
「研……究……?」
 徹心のおっちゃんの言葉にモニカが息を飲んだ。
 突然答えのわからない問題を出されたみたいに疑問の声を何度も上げて周囲を見回す。その忙しない目の動きと表情に俺が危機感を覚えてると、フィラちゃんがモニカの身体を抱きすくめた。
「研究対象……」
 なんとか落ち着きを得ようとしているモニカに目を向けて、Tさんが渋い顔をする。
 俺も似たり寄ったりの顔をしてるんだろうなと思いながら、徹心のおっちゃんに訊いてみた。
「じゃあ、モニカの居場所を突き止めたっていう機械をモニカに取り付けたのは、やっぱり研究の一環ってやつ?」
「おそらくはね。取り付けたのもそこの研究員だろう。モニカ君の両親からこの受信機を受け取ったから、たぶん取り付けたのは彼等か、それに近しい人物なんじゃないかと思ってる」
「実の両親がそのような代物を所持していたのか?」
 Tさんの問いに徹心のおっちゃんが頷いた。これは予想だけど、と前置きして、
「トリシアもレ二ーも都市伝説契約者で、研究分野ではそれなりの使い手だったらしい。更にレ二ーの父、モニカの祖父であり、その組織の長の側近でもあったエルマーに至っては、かの≪テンプル騎士団≫を纏め上げていたんだ。そんな子に対して色々と探究心をくすぐられたんじゃないかと予想しているよ」
 実の子供を実験体扱いたぁロクな人間じゃねえなと思いながら、俺は気になった事を訊く。
「で、なんでその組織さんがわざわざ日本にまで来て仲間割れしたんだ?」
 モニカを連れてモニカの両親が日本まで来た時に、モニカ達は襲われたって話だった。一体なんの理由でそんな事になったんだ?
「モニカの御両親をエルマーとユーグが追っていたのは簡単な理由だよ。――二人は逃げだしたんだ。モニカを連れてね」
「罪悪感にでも苛まれたか?」
 Tさんの棘のある声音に、徹心のおっちゃんは分からない。と答える。
「あまり長く話していられる状態ではなかったから深くは聞けなかった。でも、モニカが何か命に関わる実験に供されようとしていたために、モニカを連れ、僕を頼って逃げて来てくれていたようなんだ」
「おじさんのところ、なの?」
 リカちゃんが疑問を発した。それに徹心のおっちゃんは頷く。
「以前から僕はその組織を警戒していたからね。逃亡の事をもっと早く知っていれば助けられたのかもしれないけど……ともあれ、トリシアとレ二ーは僕の事をエルマーから伝え聞いていたんだろう。彼とは旧知の仲だった」
「だった?」
「≪テンプル騎士団≫契約者、エルマー・リデルはモニカの両親の手によって既に討たれている」
 千勢姉ちゃんが目を瞑ったまま補足する。
「そうなのか?」
「おじいちゃん……が?」
 モニカが驚きの連続で血の気が引いた、青ざめている顔で呟く。
「ああ……、しかしユーグが契約者を守りもせずにみすみす死なせるとは思えん。エルマーはおそらく自分から討たれに行ったのではないかというのが私の考えだ」
 理由は知らんがな。と千勢姉ちゃん。
 難しい話だ。親子での殺し合いかと思えば、なんか組織の思惑が絡んでいそうで、全体の形がよく分からなくなる印象を受ける。
 それもこれもその組織とか言うやつが悪いな。
「なあ、その〝組織〟ってなんなんだよ?」
 何年か前のモニカやその両親が襲われたりしたのも、今日公園で冬のじいちゃんと騎士のおっちゃんが襲ってきたのも、全部その組織が絡んでいるみたいだ。名前が分かってんなら教えて欲しい。

 徹心のおっちゃんはそうだね、と呟いた。
「その組織は人種、信条、性別、階級、皮膚の色の違いにとらわれることなく、人類の普遍的な同胞団の核となること。比較宗教、比較哲学、比較科学の研究を促進すること。宇宙の未解明の法則と人間に潜在する能力を調査すること。
 これらの事を目的として標榜し、それに沿った神秘学や他、科学に関する派閥をいくつか保持し、そして現在はオルコットという男が組織内の他の勢力を潰してその実質的な力全てを手中に収めている組織だ。その名を――」
 その組織名を、徹心のおっちゃんは告げた。
「≪神智学協会≫と言う」





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