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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-神智学協会-12

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 夕食を終えて個人個人がテレビをつけたり地図を眺めたりしている間、モニカはケウとリカちゃんが居るマンションのベランダへと通じる窓の方へと歩み寄り、窓の近くで休んでいる彼等の顔を窺った。
 伏せを崩した姿勢で左前肢にあごを乗せ、窓の外の景色を眺めていたケウは近寄るモニカを振りかえった。
 警戒する様子も無く、ケウは白く長い毛の奥から覗く黒い瞳でモニカを見る。
 おずおずと近寄ったモニカは、その横たえられた胴に背を預けるようにして床に座った。ケウとリカちゃんにここに居て良いかと訊ね、両者が態度でモニカがその場に居る事を受け入れたのを確認して、ほっ、と息を吐き出した。
 尻を動かして座りを直し、窓の外へと目をやる。
 外はまだ寒い季節ということもあり、澄んだ夜空が広がっていた。
 そんな景色を見ながらモニカは今日一日で起こった事に思いを馳せる。
 今日一日の内にいろんな事があった。
 いつものように≪首塚≫の島で過ごしていた筈なのに、気が付いたらどこかの公園に居た。よく思い返してみると、体が自由に動かせないままに自分は由実を先導して移動していたように思う。身体には自分に憑いていた幽霊を除霊するのに使ったという酒の臭いが微かに残っていて、モニカとしては慣れない感じがする。
 そして公園ではもう会う事は無いだろうと思っていた人とまた会う事ができた。
 ユーグおじさん……。
 その人物は都市伝説≪テンプル騎士団≫であり、昔からモニカの面倒を見てくれていたおじさんであり、モニカの祖父の契約都市伝説であり、両親を目の前で殺した人であった。
 なんで……。ずっと仲良くしてくれていたのに……。
 由実に助けられて≪首塚≫で暮らすようになってからもずっと考えていた事だ。
 由実などは『人を殺す理由なんて分からなくてもいい』と言ってくれてはいたが、それでもモニカは考えずにはいられなかった。
 また今度会ったら、分かるのかな……?
 そうは思うが、その答えを知りたくないような気もして、自分の心が何を望んでいるのか分からなくなる。
 モニカはため息をついて、顔を抱えた膝の中に埋めた。
 背にあるケウの、ボリュームのある毛越しに感じる体温が心地よい。
 その温もりに背を押しつけながら、モニカはその後起こった事を反芻する。
 公園を出てからも様々な事があった。
 ≪組織≫という集団や、千勢や徹心という、モニカ自身が知らないモニカの事をよく知っている人々。
 そして≪拝上帝会≫・≪太平天国≫、かつてモニカ自身が育った環境であるという、遠い記憶にぼんやりと情景がよみがえる≪神智学協会≫。
 これらが絡む戦いの構図を理解するにはモニカはまだ幼かった。しかしモニカは彼女なりに今回の出来ごとについて理解を得ていた。
 わたしのせい……なんだよね。
 姉のように慕う由実を巻き込んでしまっているのも、いろんな組織間の争いを誘発してしまっているのも、どうやらモニカが関わったという実験が関係しているようだ。ならばモニカが今回の出来事を引き起こしているのだろう。
 そう考えて、モニカは重い息を吐いた。
「モニカお姉ちゃんどうしたの?」
「――わっ!?」
 突然の声に背筋を伸ばして反応する。顔を傾けて見つめて来ているのは、小さな人形の瞳だった。
 リカちゃんと言うらしいその人形は、どうやら由実の知り合いであるらしかった。
 フィラちゃんの友達だっていうこの人たちも、巻き込んじゃったんだよね……。
 リカちゃんに何でもないよと首を振ると、当の彼女は不可解そうに、逆方向へと顔を傾げた。
 Tさんという男の人も、舞というお姉さんも、とても優しくて強い人達だとモニカは思う。
 舞の契約しているこのリカちゃんも、とても親しみやすくて心安らぐ。
 でも、だからこそ、
「ごめんね、巻き込んじゃって……」
 彼等をこのような事に巻き込んでしまった事に対する罪悪感が増すのだ。
 眉尻を下げ、力ない笑みで言った言葉には、リカちゃんの声以外の返答があった。
「気にするこったないぜ?」
「あ、お姉ちゃん!」
「舞、お姉ちゃん……」
 先程までテレビを見ていたはずの舞が、ケウの身体を挟んだ向かい側からモニカを見ていた。
 彼女は快活な笑みで言う。
「大人どもはモニカが今回の件では重要な位置にあるとかなんとか、そんな感じの話だけどさ。そりゃイコールモニカのせいってわけじゃねえよ。だから謝んなって」
「でもお姉ちゃんたちを危ない事に巻き込んじゃって……」
「あーそりゃ違う」
 舞はモニカの顔を覗き込みながら言う。
「俺達はな、自分達の意志でやるぞ! って決めて関わってるんだ。そこら辺勘違いしちゃ――めっ」
 そう言って舞は指でモニカの額を突いた。
「う、うん……」
 突かれた部分を手で押さえながら困惑気味にモニカは答える。
 舞はよし、と言って笑むと、リカちゃんを取りあげてモニカにも手を差し伸べてきた。
「風呂沸いたってよ。行こうぜ?」


            ●


 なにやら話しこんでいるTさん達に風呂に入る旨を伝えて、俺はリカちゃんを頭に乗せ、モニカの手も引いて脱衣所に入った。ケウは無理だ。扉をくぐれん。
 今日はかなりいろんな事があった。そんな中であの騎士のおっちゃんや、冬のじいちゃんに狙われていたモニカはけっこうストレスを感じているんだろう。表情にも疲れが見えている。さっきもそうだったけど、変に思い悩んでこれ以上参っちまわなけりゃいいんだがなぁ……。
「モニカ、行こうぜ」
「うん」
 碧い目が笑みに細められて頷きが返る。けどその返事もどこか心ここにあらずといった風情だ。
 服を脱ぎ終わった俺は、それを洗濯かごの中に放りこんで、同じく服を脱いだモニカのハニーブロンドの髪をグシャグシャとかき回した。
「舞お姉ちゃん?」
 モニカの控えめな抗議を無視、頭全体をグルングルン回す勢いで髪をかき回す。
「かーっ、やっぱきれいだなー。天然モノの金髪だぜ?」
 背の半分ほどはある長い髪がこれまた白い背中や肩に零れていくのはもう一種芸術的な何かを思わせるなあー、写真に撮っておきてぇ!
 そう思いながらかき回していると、髪が少しベタッとしている事に気付く。そして微かに香る甘ったるい臭い。千勢姉ちゃんがぶっかけた酒のせいだろう。
 早く洗ってやらなくちゃな。
「リカちゃん、扉オープン」
「はいなの」
 リカちゃんが俺から飛び降りて浴室の扉を開けた。
 俺はモニカの両脇から手を差し入れて持ち上げる。うむ、軽い。
「わわ!?」
 可愛らしく悲鳴を上げるモニカをぶら下げて、俺は浴室に足を踏み入れた。
「一名様ごあんな~い」












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