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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 我が願いに踊れ贄共・とある格闘家の邂逅-09

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だれでも歓迎! 編集
『ねぇ、イツキ。どうして、私には、その「ムサベツリュー」を教えてくれないの?』

 そりゃあ、お前さんにゃ向いてないからだよ

『そうかしら?私だって、あの子の姉だもの。きっとできるわよ』

 はは、無理無理
 あいつとお前さんじゃ、基礎体力やら何やらが全然違う
 お前さん、戦うにゃあ向いてないよ

『まぁ、酷い。私だって、弟を護りたいだけなのよ?』

 気持ちはわかるがね
 お前さんは、人をぶん殴るにゃあ向いてないよ

 ……あぁ、まぁ、でも

『どうしたの?』

 あいつもあいつで……多分、俺の無差別流は、向いてないのかもなぁ…

『あら、どうして?』

 優しいんだよな、あいつ
 しかも、真面目なんだよ、真面目すぎるんだよ
 俺の無差別流は、「どんな手段を使ってでも勝つ」って感じだからよ
 正々堂々戦いたがるあいつにゃあ………向いてないのかもな
 惜しいなぁ
 肉体的に見りゃあ、素質完璧なのに

『…ふふ、そうかも。あの子ったら、時々、頭が固いって思うくらいに真面目なんだから』

 今教えてる技だって、極意教えたら怒られるだろうしなぁ、十中八九

『そうね………ふふ、どうしようかしら』

 うわ、頼むから、あいつには黙っててくれよ
 あいつ、怒ると怖いんだよ

『イツキは大人じゃない。なのに、子供のあの子に怒られるのが怖いの?』

 だってよぉ
 怒った時のあいつ、迫力すげぇし
 何あの迫力、覇王?世紀末覇者??
 あれ、絶対迫力だけで相手を制圧できるって

『そこまであの子を怒らせるイツキが悪いんじゃない』

 …怒らせたくて怒らせたんじゃねぇんだけどなぁ

『反省するのよ?』

 はい、反省します
 ったく………お前さん達姉弟にゃ、敵わないな

『そう思うなら、私にも「ムサベツリュー」を教えて?』

 それは駄目だ

『……イツキのケチ』

 駄目なもんは駄目だ

 ………マリア
 お前さんの手は、誰かをぶん殴る為に使う必要なんてねぇよ
 誰かを愛して、誰かを癒してやる為に使うのが一番だ
 その綺麗な手を血で染め上げる必要なんて、どこにもねぇ

『……私だって。あの子を、護りたいのに』

 護るってのは、誰かをぶん殴るだけじゃないぞ?
 他にも、色んな護り方ってのがあるんだ

『…じゃあ、私はどうやって、あの子を護ればいいの?』

 お前さんにできるやり方で、護ってやればいい
 戦う以外にも、いくらだって護る方法はあるんだから

『……難しいわ』

 なぁに、お前さんも、まだ子供だからな
 いつかわかるさ………必ず



 記憶と言うものは、時として暖かく心地よく
 記憶と言うものは、時として……深い深い、取り返しのつかない後悔に繋がる

 彼女にも、己の技を伝えるべきだったのだろうか
 そうすれば、彼女は、あんな方法を選ばなかったのではないだろうか


 仮定の話など、馬鹿馬鹿しい
 歴史にIFなど存在しない
 存在していたとしても、それに触れることなどできない
 過去を変えるなど、到底不可能なのだから

「……マリア」

 可愛らしい子だった
 きっと、生きていれば、ずいぶんな美人になったんじゃないだろうか

 翡翠色の瞳は、いつだって希望に満ちて輝いていた
 ずいぶん、酷い環境にいたというのに
 ずいぶん、過酷な過去を背負っていたというのに
 彼女はいつだって、未来に希望を抱いていた
 特に、大切な、唯一残った家族である弟の未来の為に、いつだって一生懸命だった


 そして
 彼女は、己の考えを貫き通して、死んだのだ


 かは、と、樹は口内に溜まっていた血を吐き出した
 ぎろり、交戦相手を睨みつける

「おや、まだ立てますか」

 その男は、小さく笑っていた
 司祭服を着た男………エイブラハム・ヴィシャス
 「教会」強行派筆頭、奇跡の体現者、魔女狩りの指導者、救世主候補
 様々な呼び名と肩書きを持つ男は、樹を見下ろして微笑んでいる

(あぁ、くそ、どうなってんだよ…?)

 …攻撃が、当たらない
 確かに、当てたはずなのに…当たっていない
 どころか、与えた攻撃が、全て自分に返って来ている
 何らかの、カウンター能力なのだろうか

「立てるさ、そりゃあな。鍛えが違うんだよ、鍛えが」

 崩れそうになる体を叱咤し、立ち上がる
 負ける訳にはいかない
 こんなところで、無様に這い蹲っている暇などないのだ

「なるほど、そうですか。それならば」

 エイブラハムが、樹に向けて、手を伸ばす
 何らかの攻撃を仕掛けてくるであろう事を察知し、樹は後方へと跳んだ
 だが

「----っぐ!?」

 左肩に、鋭い切り傷が生まれた
 血が、辺りの壁を、地面を、汚していく

 エイブラハムの手には、いつの間にやら、巨大な鎌が握られていた
 デスサイズ
 死神が振るうそれに、よく似ている

「が、は…………司祭様が死神の鎌を振るうたぁ、滑稽だな………!」
「おや、知らないのですか?死神もまた、神の下僕。とある国の死神は、神の力が篭った樽に閉じ込められたと言う逸話もあるのですよ」

 だから、と
 エイブラハムは残酷に笑い、鎌を振り上げる

「神が、己が下僕が扱える力を、扱えないはずがないでしょう?」
「---っち!?」

 相手の戯言に、付き合っている暇はない
 恐らくは、あの鎌も契約都市伝説の能力
 「教会」所属なのだから、恐らくは天使関連か何かなのだろう
 天使の中には、「死の天使」やら「破壊の天使」やらと、物騒な名称で呼ばれるものも存在するから、恐らくはその辺り

 そして、どういった能力を使っているのか…明らかに届かない距離からの攻撃だと言うのに、それが樹に届いてくるのだ
 衝撃波とか、そう言ったものとも違う
 完全に、距離を無視したような攻撃
 やはり、だいぶ離れていたはずの距離から放たれた大鎌の攻撃は、慌てて避けようとした樹の首筋を掠り、出血させる

 体中の打撲、切り傷
 …明らかな、劣勢
 それでも

「さて、どうしましょうか?逃げ出すのなら、見逃しても構いませんが?」
「っは……誰が、引くか」

 それでも
 樹は…逃げ出す訳にはいかないのだ

 許せないのだ
 この男、だけは
 はっきりとした憎悪と殺意をもって、エイブラハムを睨みつける

「……マリア・ディーフェンベーカーを殺したお前を、一発でもぶん殴らねぇ事には、気がすまねぇんだよっ!!」

 気迫を込めて、叫ぶ
 空気を振動させるが如き、怒号
 ほんのわずか、相手が怯んだ一瞬の隙に距離を詰める
 隠し持っていたロープを相手に絡みつかせ、動きを封じた
 ……これならば、避けられまいっ!
 ごきり、指を鳴らして……その心臓をつかみ出すが如く、手を突き出した


 鮮血が、飛び散る


「…………っ、あ」

 …何故、と
 一体、これは、どういった能力なのだ

 確かに、エイブラハムの心臓をつかみ出そうとしたはずだった
 だと、言うのに

 己の手は、血で染まっている
 ………自らの、血で

「ぐぁ……っ」

 どさ、と樹の体が、地面に倒れこむ
 胸元から出血し、激しく咳き込んで血を吐き出す

 エイブラハムに与えたはずの、攻撃は
 完全に……樹に、返って来ていた

 己に絡んだロープを外しながら、微笑みながら、エイブラハムは樹を見下す

「マリア・ディーフェンベーカーですか………惜しい人間を亡くした者です。神に愛され、神を愛した少女。素晴らしい才能の持ち主でした」
「……しら、じらしい……っ」
「私は、彼女を殺した訳ではありませんよ?…あれは、そう…………不幸な事故、というべきでしょうね」
「ふざ、けんな……っ、てめぇ、が……殺したような、もんだろうが……!」

 激痛に耐えながら、樹は立ち上がろうとする
 …外見こそ若いが、樹の年齢はとうに50を越えている
 年齢に似合わぬ外見と身体能力は、樹の家系の血筋故のものであり、ここまで戦えたのも、日頃の鍛錬と、その血筋の恩恵だろう

 ……だが、それも限界に近づこうとしていた
 確かに、樹は強い
 だが、彼は、都市伝説契約者ではなく、何らかの都市伝説能力の恩恵を受けている訳でもない
 かつて、護衛として自分を数週間雇ってきた魔法使いは、自分を気に入っていて「不老不死にしてやろうか」とか言ってきたが、樹はそれを断ったのだ
 …人ならざる力を扱わない、手に入れない、影響されない
 それが、樹が自身に立てた近い
 彼が受け継いだ無差別流は、どんな手段を使ってでも勝つという外法の流派
 されど、己が鍛え上げた技以外の力で勝利をつかみ取るなどと、樹のプライドが許さなかったから

 死ぬ、その瞬間まで
 自分は、ただの格闘家でいたい
 契約者ではなく、人間の、格闘家として

 ……その、誓いゆえに
 もはや、樹の命は、風前の灯火に晒されていて
 それでも、樹は一歩も引かない


 かつて、自分に笑顔を向けてくれた少女と
 その少女の傍で、はにかむように微笑んでいた小さな少年

 あの二人の、ささやかな幸福を破壊し尽くした、目の前の男への憎悪が
 樹の、限界に近い体を突き動かす


「お前は……彼女が、マリアが!それを「拒めない」状況を作り出してっ!追い込みやがった!!アレと契約すれば、彼女が「飲まれる」事くらい、わかっていただろう!?」

 わかっていて
 マリア・ディーフェンベーカーが、あの存在と契約する事を拒めない状況を作り上げた

 その状況から、彼女は逃げ出さず、契約し


 そして
 エイブラハムの思惑通りに、その存在に飲み込まれて消失した


 マリア・ディーフェンベーカーが眠っているはずの墓に埋められた棺の中は、空っぽだった
 弟子であり探偵である笛吹からの調査結果を聞いて…どう言う事か、と混乱したものだ
 だが、続けざま、どうやって調べたのか突っ込みたくなるほどの、その調査結果を見て…浮かんだのは、怒り
 マリアをその状況に追い込んだ、エイブラハムへの怒りだ

「そうまで、しておきながらっ!彼女との約束を……てめぇは、破りやがった!!」
「…おや、そんなつもりはなかったのですよ?あれは、神のお導きで……」
「----っ嘘だっ!!!」

 嘘だ
 それは、全て、この男の計画通り

「マリアが死んでっ!それを知ったカインが、絶望する事もわかっていて!!わざと、そのタイミングで、カインを「教会」に引き取らせやがった!!マリアは、「カインには手を出すな」と!!それを条件に、アレとの契約に望んだのに!!」

 命を賭けて、マリアは弟を護ろうとしたのだ
 それが、自分にできる、弟を護る手段だと、そう、信じて

 その、マリアの、命を賭けた覚悟を
 この男は、あっさりと踏みにじったのだ

「…あぁ、そう言えば。彼女は、そんな事を言っていましたね」

 大鎌を、樹の喉下につきつけ、エイブラハムは笑う

 …体が、動かない
 立ち上がろうとしても、無様にもがくことしかできない

 出血が、多すぎる
 かすみ行く意識を、樹は気迫だけで保たせていた

「私は、カイン・ディーフェンベーカーを傷つけるような行為はしていませんよ?彼が傷つくだろうから、彼女の死の真相とて、伝えていません。マリアとの約束を破ってなどいないのですよ?」
「…ッふざけんな!!てめぇ、は……マリアの死の真相を、「スイッチ」として利用しようとしてる、だけだろうが……っ!」

 知れば、カインは絶望する
 それを、わかっていて

 その、真実を
 カインに対する切り札として、所有しているのだ

 いつか、真実を伝え、絶望したあの青年を
 自らの、操り人形へと、変える為に


 ……樹の、血を吐き出しながらの、叫びに
 くっく、とエイブラハムは、低く笑った

 先ほどまでの、穏やかな笑みとは、違う
 どこか、邪悪さをにじませた笑みで………樹を見下し、告げてくる

「そうですか、そこまで、わかっていますか………だが、だからどうだ、と言うのです?私は神の奇跡を体現する者。神そのもの……私の意思こそが、神の意思そのものなのですよ」
「……ってめぇ……!?」
「まぁ、カインに関しては……本当なら、とっくに手駒に加えておきたかったところなのですがね。はて、あれはどこで、姉以外の心の支えを得たのやら………早急に、そちらを潰さなければなりませんね」

 大鎌の切っ先が、樹の喉下から離れる
 振り上げられた大鎌
 狙いは、樹の首

「あれも、絶望から逃れられはしませんよ……唯一の家族は、自分を護るために死んだ。それを知れば、きっと、彼の心は絶望で染まるでしょうね?」

 酷く、酷く、残酷に笑って
 エイブラハムは、大鎌を振り下ろした

 己の首を切り落とすために迫ってくるそれを、樹は避ける事もできず
 迫り来る「死」を………ただ、見ている事しか、できなかった





to be … ?




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