●
秋月のおっちゃんが俺達を置いて行った後、俺達は秋月のおっちゃんを追いかける事にしていた。
フィラちゃんもリカちゃんもモニカを助けたいと思ってたし、このまま通路を戻ってもTさんと騎士のおっちゃんの戦いの邪魔になると思ったからだ。
通路には秋月のおっちゃんが斬っていったのか、大量の肉片や機械の部品が転がってる。
それでも俺達が進む通路には多くの都市伝説の群れが居た。叫びなのか吠え声なのかよく分からない音を発して、都市伝説の群れが襲いかかって来る。
俺とフィラちゃんは握力の限りにケウの体にしがみついて、あとはケウの脚力任せに通路を突破していた。
でも、
「ああくそ! やっぱりこっちの居場所はばれてるっぽいなチクショウ!」
ついさっき地下全体に変な地震みたいなのがあって通路に柱が何本も出て来てから、通路が狭くなっちまってケウが敵を避けながら駆け抜けるのに不都合ができちまっていた。
柱を避けて都市伝説達の上をジャンプしていると、≪ブギーマン≫とかいうらしい、黒い粘土見たいな腕をした都市伝説にケウの長い毛が引っ掴まれた。ジャンプを強制中断させられたケウが抗議の吠え声を上げて毛を掴んだ腕を蹴飛ばす。
それで怯んだ≪ブギーマン≫に向けて、フィラちゃんが道中で拾った拳銃を撃ちこんだ。
弾に何か細工でもしてあるのか≪ブギーマン≫は弾を受けた箇所から気味の悪い煙を吹きだしながら通路に崩れ落ちてく。なんだ? 酸性か?
「ケウ、大丈夫か?」
背の上から顔をのぞき込みながら訊く。ケウは大丈夫だと言うように頭を振って低く唸って答えた。
一つの所に長々と居るわけにもいかないと、そのまま走り出すけど、
「正直このままだと数に潰されちまわねぇか?」
「……残念だけどそのようね……」
言っている間にも眼前に大きく手を広げた≪フランケンシュタイン≫が壁のように立ちはだかった。
「――っ!」
フィラちゃんが手を振って、≪フィラデルフィア計画≫が発動した。
鉄の箱が天井から落下して≪フランケンシュタイン≫を押し潰して、その周囲に群がって来た都市伝説の群れを鉄箱を包み込む光が巻き込んだ。光に巻き込まれた都市伝説達は悲鳴を上げて、地面やらと同化したり凍り付いたり焼けちまったりする。
その横をケウ突っ走って――まだ動けた≪フランケンシュタイン≫に掴まれて壁に叩きつけられた。
「うわっ――!?」
「舞ちゃん!」
ケウの背から投げ出される。それをヤバい、と思った瞬間には通路に背中から落ちていた。
「ッ!」
痛みに涙目になりながら起き上ると周りにはもう都市伝説の群れが迫っている。
このままじゃああいつらに踏みつぶされる――!
「フィラちゃん!」
思うなり、俺は頭にしがみついていたリカちゃんを、ケウになんとかしがみついていたフィラちゃんに向かって放り投げた。
「お姉ちゃん!?」
フィラちゃんの手に無事渡ったリカちゃんが身をくねらせてフィラちゃんの手から脱出しようとしながら叫んでくる。すぐ近くにはなんかすげえモンスターやってる都市伝説の方々が来ているのを見て俺はうわぁ、と思いながら内心苦笑する。
うーん、これは……キツイかなぁ。
「先行っててくれ!」
顔が引き攣ってるのを自覚しながらフィラちゃん達にそう言う。後はなんとか危ない怪我をしないようにと祈って目を瞑って――
「破ぁ!」
まぶたの裏に白い光が瞬いた。
フィラちゃんもリカちゃんもモニカを助けたいと思ってたし、このまま通路を戻ってもTさんと騎士のおっちゃんの戦いの邪魔になると思ったからだ。
通路には秋月のおっちゃんが斬っていったのか、大量の肉片や機械の部品が転がってる。
それでも俺達が進む通路には多くの都市伝説の群れが居た。叫びなのか吠え声なのかよく分からない音を発して、都市伝説の群れが襲いかかって来る。
俺とフィラちゃんは握力の限りにケウの体にしがみついて、あとはケウの脚力任せに通路を突破していた。
でも、
「ああくそ! やっぱりこっちの居場所はばれてるっぽいなチクショウ!」
ついさっき地下全体に変な地震みたいなのがあって通路に柱が何本も出て来てから、通路が狭くなっちまってケウが敵を避けながら駆け抜けるのに不都合ができちまっていた。
柱を避けて都市伝説達の上をジャンプしていると、≪ブギーマン≫とかいうらしい、黒い粘土見たいな腕をした都市伝説にケウの長い毛が引っ掴まれた。ジャンプを強制中断させられたケウが抗議の吠え声を上げて毛を掴んだ腕を蹴飛ばす。
それで怯んだ≪ブギーマン≫に向けて、フィラちゃんが道中で拾った拳銃を撃ちこんだ。
弾に何か細工でもしてあるのか≪ブギーマン≫は弾を受けた箇所から気味の悪い煙を吹きだしながら通路に崩れ落ちてく。なんだ? 酸性か?
「ケウ、大丈夫か?」
背の上から顔をのぞき込みながら訊く。ケウは大丈夫だと言うように頭を振って低く唸って答えた。
一つの所に長々と居るわけにもいかないと、そのまま走り出すけど、
「正直このままだと数に潰されちまわねぇか?」
「……残念だけどそのようね……」
言っている間にも眼前に大きく手を広げた≪フランケンシュタイン≫が壁のように立ちはだかった。
「――っ!」
フィラちゃんが手を振って、≪フィラデルフィア計画≫が発動した。
鉄の箱が天井から落下して≪フランケンシュタイン≫を押し潰して、その周囲に群がって来た都市伝説の群れを鉄箱を包み込む光が巻き込んだ。光に巻き込まれた都市伝説達は悲鳴を上げて、地面やらと同化したり凍り付いたり焼けちまったりする。
その横をケウ突っ走って――まだ動けた≪フランケンシュタイン≫に掴まれて壁に叩きつけられた。
「うわっ――!?」
「舞ちゃん!」
ケウの背から投げ出される。それをヤバい、と思った瞬間には通路に背中から落ちていた。
「ッ!」
痛みに涙目になりながら起き上ると周りにはもう都市伝説の群れが迫っている。
このままじゃああいつらに踏みつぶされる――!
「フィラちゃん!」
思うなり、俺は頭にしがみついていたリカちゃんを、ケウになんとかしがみついていたフィラちゃんに向かって放り投げた。
「お姉ちゃん!?」
フィラちゃんの手に無事渡ったリカちゃんが身をくねらせてフィラちゃんの手から脱出しようとしながら叫んでくる。すぐ近くにはなんかすげえモンスターやってる都市伝説の方々が来ているのを見て俺はうわぁ、と思いながら内心苦笑する。
うーん、これは……キツイかなぁ。
「先行っててくれ!」
顔が引き攣ってるのを自覚しながらフィラちゃん達にそう言う。後はなんとか危ない怪我をしないようにと祈って目を瞑って――
「破ぁ!」
まぶたの裏に白い光が瞬いた。
●
「お兄ちゃん!?」
俺の携帯に着信をかけて来ていたリカちゃんの嬉しそうな声に、手探りで電源を切ろうとしていた俺も目を開けた。
周りにいた都市伝説達はもういない。祓われたんだろうなーきっと。
それをやってくれた人に向けて、俺は深く息を吐き出しながら軽口を叩く。
「あーもう……流石寺生まれだよ、やっぱすげえ……。でも今度はもっと心臓に悪く無いタイミングで来てくれ」
「善処しよう」
短く答えたTさんは、警戒するように目をあちこちに配りながら近付いて来た。
「大丈夫だったか?」
「おお、セーフだ、セーフ」
もう一度深呼吸をして身体の緊張をほぐし、危険を脱出した自分をようやく認識する。
寿命縮まったんじゃねえかと思いながらバクバクいってる心臓を抑えていると、Tさんは労うように頭を軽く叩いてきて、
「あまり無茶はしてくれるな。俺の心臓にも悪い」
「たまにはそういうスリルも必要だぜ?」
「軽口が口をつくようなら本当に大丈夫そうだ」
呆れたように言って口の端を笑みに曲げたTさんは、通路の奥からやって来た第二陣に向けて掌を向ける。
「道中、刀傷を負った都市伝説の死体を多く見たが、あれは?」
「秋月弘蔵ていう、ほら、永取町の大鉄橋で戦ったおっちゃん。あのおっちゃんと途中までモニカを一緒に探してたんだ。あのおっちゃんがこの都市伝説達が出てきた最初は道を付けてくれてさ、帰れって言われたんだけどやっぱりここまできたら退けねえじゃん?」
Tさんが悩まし気にため息を吐く。
「無理だと思ったら退くように……舞に何かあっては俺が困る」
「ん、次から善処する」
さっきのお返しだ。俺のその返事にもう一度ため息を吐いて、Tさんは訊ねる。
「その秋月弘蔵は?」
「さっき何かすげえ地震見たいなのがあって、その後に地面から柱が何本も生えてきたじゃん? そのちょっと前にウィリアムが館内放送で俺達に話しかけてきてさ、そんであの都市伝説の軍団が出て来たんだけどさ。そん時に秋月のおっちゃんに先に行かれちまったんだ。俺達はこの都市伝説の軍団相手だと力不足で追えなくてさ……ごめん」
「わざわざ先に行かせてもらっておいて、ごめんなさい」
フィラちゃん共々頭を下げるとTさんはいや、と答える。
「皆無事でなによりだ」
そう言ってTさんはじりじりと接近してくる都市伝説達を見る。
「あの都市伝説達、ケウの能力が通用していないようだが何かカラクリでもあるのか?」
「あれはウィリアムが人や都市伝説の残骸を用いて作った人造都市伝説よ。機械を通してウィリアムから常に私達の位置を知らされているみたいだわ」
「人造……奇矯な人間だな」
Tさんは短くそう断じた。
うん、胸糞悪い変態だってのは俺にもよく分かるぜ。
「急ごうぜTさん、この、突き出してる柱も都市伝説の能力なんだよな? どう考えたって普通じゃねえし、それに俺達の居場所はさっきフィラちゃんが言ってたみたいに≪ピリ・レイスの地図≫ってやつでばれてるみたいだからいつまでもここにいるとまた囲まれちまうぜ?」
「≪ピリ・レイスの地図≫……そうか」
「Tさん、≪ピリ・レイスの地図≫がどういう都市伝説なのか知ってんの?」
「進みながら話そう」
そう言うとTさんは、ケウを促して通路を走り始めた。邪魔になる都市伝説達に光弾を叩き込みながらTさんは口を開く。
「≪ピリ・レイスの地図≫、まだ発見されていなかった土地を、当時の技術力を超越した方式で描きだしていたという地図の話だな。どのような能力を持っているのかは推測しかできんが、拡大解釈を為されていた場合は最悪、探したい人物や場所の名を告げればそのモノが居る場所の地図を描きだすというくらいの事はしかねん代物だ」
「秋月が数年前に徹心さんがモニカを匿ったと考えたオルコットの指示を受けたウィリアムが、徹心さんの異界を探れるように≪ピリ・レイスの地図≫を改良したって言ってたわ。その最悪な改造を施されているのかも」
「そもそも都市伝説の改造なんて出来んのかよ?」
「舞ちゃんも見たでしょう、≪千人針≫やさっき襲ってきた都市伝説達、それに超能力部隊……あれだけの事が出来るのなら、きっとできてしまうわ」
Tさんも頷く。
「それが≪神智学協会≫の強みなのだろうな」
「あーくそ、なんてこった」
無茶苦茶だ。そう思うけど確かにやってしまいかねないんだろう。途切れることなく襲ってくる都市伝説達がケウの死角から襲ってこないか気を配りながら思う。
「じゃあやっぱり≪ピリ・レイスの地図≫が永取市に移動した俺達を見つけたりした優秀な探知機って奴でいいのか?」
「そう見て間違いないだろう」
そう答えながらTさんは僅かに目を細めた。前方から振るわれてきた≪ヨーウィー≫の腕を身を低くして回避しながら横腹に光弾を撃ち込んで倒し、その一方で目は通路に既に斬り倒されている都市伝説の群れと通路の先を見ている。
新たに現れた≪フランケンシュタイン≫に拳を喰らわせたTさんは、ケウに言葉を投げてよこす。
「これまで通り、斬殺された死体を追って行こう。それで秋月弘蔵、そしておそらくはモニカの居場所を追える筈だ」
ケウが吠え声で答え、そのついでとばかりに一体の≪ブギーマン≫を前肢で薙ぎ払った。
俺の携帯に着信をかけて来ていたリカちゃんの嬉しそうな声に、手探りで電源を切ろうとしていた俺も目を開けた。
周りにいた都市伝説達はもういない。祓われたんだろうなーきっと。
それをやってくれた人に向けて、俺は深く息を吐き出しながら軽口を叩く。
「あーもう……流石寺生まれだよ、やっぱすげえ……。でも今度はもっと心臓に悪く無いタイミングで来てくれ」
「善処しよう」
短く答えたTさんは、警戒するように目をあちこちに配りながら近付いて来た。
「大丈夫だったか?」
「おお、セーフだ、セーフ」
もう一度深呼吸をして身体の緊張をほぐし、危険を脱出した自分をようやく認識する。
寿命縮まったんじゃねえかと思いながらバクバクいってる心臓を抑えていると、Tさんは労うように頭を軽く叩いてきて、
「あまり無茶はしてくれるな。俺の心臓にも悪い」
「たまにはそういうスリルも必要だぜ?」
「軽口が口をつくようなら本当に大丈夫そうだ」
呆れたように言って口の端を笑みに曲げたTさんは、通路の奥からやって来た第二陣に向けて掌を向ける。
「道中、刀傷を負った都市伝説の死体を多く見たが、あれは?」
「秋月弘蔵ていう、ほら、永取町の大鉄橋で戦ったおっちゃん。あのおっちゃんと途中までモニカを一緒に探してたんだ。あのおっちゃんがこの都市伝説達が出てきた最初は道を付けてくれてさ、帰れって言われたんだけどやっぱりここまできたら退けねえじゃん?」
Tさんが悩まし気にため息を吐く。
「無理だと思ったら退くように……舞に何かあっては俺が困る」
「ん、次から善処する」
さっきのお返しだ。俺のその返事にもう一度ため息を吐いて、Tさんは訊ねる。
「その秋月弘蔵は?」
「さっき何かすげえ地震見たいなのがあって、その後に地面から柱が何本も生えてきたじゃん? そのちょっと前にウィリアムが館内放送で俺達に話しかけてきてさ、そんであの都市伝説の軍団が出て来たんだけどさ。そん時に秋月のおっちゃんに先に行かれちまったんだ。俺達はこの都市伝説の軍団相手だと力不足で追えなくてさ……ごめん」
「わざわざ先に行かせてもらっておいて、ごめんなさい」
フィラちゃん共々頭を下げるとTさんはいや、と答える。
「皆無事でなによりだ」
そう言ってTさんはじりじりと接近してくる都市伝説達を見る。
「あの都市伝説達、ケウの能力が通用していないようだが何かカラクリでもあるのか?」
「あれはウィリアムが人や都市伝説の残骸を用いて作った人造都市伝説よ。機械を通してウィリアムから常に私達の位置を知らされているみたいだわ」
「人造……奇矯な人間だな」
Tさんは短くそう断じた。
うん、胸糞悪い変態だってのは俺にもよく分かるぜ。
「急ごうぜTさん、この、突き出してる柱も都市伝説の能力なんだよな? どう考えたって普通じゃねえし、それに俺達の居場所はさっきフィラちゃんが言ってたみたいに≪ピリ・レイスの地図≫ってやつでばれてるみたいだからいつまでもここにいるとまた囲まれちまうぜ?」
「≪ピリ・レイスの地図≫……そうか」
「Tさん、≪ピリ・レイスの地図≫がどういう都市伝説なのか知ってんの?」
「進みながら話そう」
そう言うとTさんは、ケウを促して通路を走り始めた。邪魔になる都市伝説達に光弾を叩き込みながらTさんは口を開く。
「≪ピリ・レイスの地図≫、まだ発見されていなかった土地を、当時の技術力を超越した方式で描きだしていたという地図の話だな。どのような能力を持っているのかは推測しかできんが、拡大解釈を為されていた場合は最悪、探したい人物や場所の名を告げればそのモノが居る場所の地図を描きだすというくらいの事はしかねん代物だ」
「秋月が数年前に徹心さんがモニカを匿ったと考えたオルコットの指示を受けたウィリアムが、徹心さんの異界を探れるように≪ピリ・レイスの地図≫を改良したって言ってたわ。その最悪な改造を施されているのかも」
「そもそも都市伝説の改造なんて出来んのかよ?」
「舞ちゃんも見たでしょう、≪千人針≫やさっき襲ってきた都市伝説達、それに超能力部隊……あれだけの事が出来るのなら、きっとできてしまうわ」
Tさんも頷く。
「それが≪神智学協会≫の強みなのだろうな」
「あーくそ、なんてこった」
無茶苦茶だ。そう思うけど確かにやってしまいかねないんだろう。途切れることなく襲ってくる都市伝説達がケウの死角から襲ってこないか気を配りながら思う。
「じゃあやっぱり≪ピリ・レイスの地図≫が永取市に移動した俺達を見つけたりした優秀な探知機って奴でいいのか?」
「そう見て間違いないだろう」
そう答えながらTさんは僅かに目を細めた。前方から振るわれてきた≪ヨーウィー≫の腕を身を低くして回避しながら横腹に光弾を撃ち込んで倒し、その一方で目は通路に既に斬り倒されている都市伝説の群れと通路の先を見ている。
新たに現れた≪フランケンシュタイン≫に拳を喰らわせたTさんは、ケウに言葉を投げてよこす。
「これまで通り、斬殺された死体を追って行こう。それで秋月弘蔵、そしておそらくはモニカの居場所を追える筈だ」
ケウが吠え声で答え、そのついでとばかりに一体の≪ブギーマン≫を前肢で薙ぎ払った。