「いい?本家様のお子様に、粗相がないようにね?」
母の言葉に、兄と共に頷き、自分はその部屋へと向かった
両親達が、本家様と話している間、自分達は、その子供の相手をすることになった
両親達が、本家様と話している間、自分達は、その子供の相手をすることになった
自分より、少し年下の少年だと聞いていた
歴史あるこの家に生まれた、その少年
だが、その両親は、その少年を一般の子供と変わらないよう、育てようとしているのだとも聞いていた
ならば、自分達は、その少年にどう接すればいいのだろう?
答えは見つからないまま、兄に手を引かれ、その部屋につく
歴史あるこの家に生まれた、その少年
だが、その両親は、その少年を一般の子供と変わらないよう、育てようとしているのだとも聞いていた
ならば、自分達は、その少年にどう接すればいいのだろう?
答えは見つからないまま、兄に手を引かれ、その部屋につく
「…失礼します」
「……します」
「……します」
そっと、襖を開ける
板の間の、奥
そこに、その少年の姿はあった
板の間の、奥
そこに、その少年の姿はあった
長い前髪で目元が隠れていて、表情はよく見えない
ちょこん、とその広い部屋に正座して座って…何かを、じっと見つめているようだった
確か、この部屋には、この家に代々伝わると言う刀が安置されていたはず
それを、見ていたのだろうか?
一度だけその刀を見た事がある自分は、あの刀のどこか得たいの知れない雰囲気に圧倒され、恐怖した覚えがあるのだが…
この少年は、それが平気だとでも言うのだろうか
ちょこん、とその広い部屋に正座して座って…何かを、じっと見つめているようだった
確か、この部屋には、この家に代々伝わると言う刀が安置されていたはず
それを、見ていたのだろうか?
一度だけその刀を見た事がある自分は、あの刀のどこか得たいの知れない雰囲気に圧倒され、恐怖した覚えがあるのだが…
この少年は、それが平気だとでも言うのだろうか
「………?誰、だ?」
自分達に気付いた少年が、こちらを向いて首を傾げてきた
和装姿の、幼い少年
…この部屋だけ、時代が今と違うような、そんな錯覚
和装姿の、幼い少年
…この部屋だけ、時代が今と違うような、そんな錯覚
「お初にお目にかかります。獄門寺家分家 長男の、獄門寺 龍鬼です」
兄が、先に挨拶する
…そっと突付かれ、慌てて自分も、頭を下げた
…そっと突付かれ、慌てて自分も、頭を下げた
「…お初にお目にかかります。獄門寺 菊、です」
「……そうか」
「……そうか」
少年は、顔の向きだけではなく、体ごときっちりと、自分達に向き直ってきた
そして、頭を下げ、名乗る
そして、頭を下げ、名乗る
「……獄門寺家本家 長男 獄門寺 龍一だ」
名乗り、頭を上げた少年…龍一
その時、一瞬見えたその瞳に………ゾクリ、と、戦慄を覚えた
その時、一瞬見えたその瞳に………ゾクリ、と、戦慄を覚えた
自分よりも、年下の少年
まだ、あの時、4,5歳程度だったはず
だというのに……その眼差しは、酷く、鋭かった
龍一の両親は、龍一を、普通の子供と同じように育てようとしていた
だが、それは無理だろうと…あの目を見た時に、実感した
まだ、あの時、4,5歳程度だったはず
だというのに……その眼差しは、酷く、鋭かった
龍一の両親は、龍一を、普通の子供と同じように育てようとしていた
だが、それは無理だろうと…あの目を見た時に、実感した
獄門寺家の、本家に生まれた者
その長男としての、責務
それを、龍一は、あの年齢にして、恐ろしい程までに自覚していた
まるで、自分はその為に、その為だけに生まれてきたのだとでも言うように、それを理解して、まっとうしようとしていた
その長男としての、責務
それを、龍一は、あの年齢にして、恐ろしい程までに自覚していた
まるで、自分はその為に、その為だけに生まれてきたのだとでも言うように、それを理解して、まっとうしようとしていた
『まるで、八代目様の生まれ変わりのようだ』
親戚一同が、組の人間達が言っていたその内容を、その瞬間、理解する
目の前にいる龍一という少年は、八代目様の生まれ変わり
獄門寺家のあり方を決定付け、その宿命を作り上げた男
修羅に最も近く、しかし、その一歩手前で踏みとどまり、人として生き人として死んだと言うその人の、生まれ変わり
目の前にいる龍一という少年は、八代目様の生まれ変わり
獄門寺家のあり方を決定付け、その宿命を作り上げた男
修羅に最も近く、しかし、その一歩手前で踏みとどまり、人として生き人として死んだと言うその人の、生まれ変わり
…分家に生まれた自分達は、いざとなれば、龍一の代わりとなるのだと
本家を支えるために、いざという時はその本家となって生きるのだと、そう言われて育てられていた
本家を支えるために、いざという時はその本家となって生きるのだと、そう言われて育てられていた
だが、あの瞬間に、自分は気付いてしまった
八代目様の生まれ変わりそのものである龍一の代わりなど、自分達には決して無理なのだ、と
八代目様の生まれ変わりそのものである龍一の代わりなど、自分達には決して無理なのだ、と
ならば
分家の子として生まれた、自分は
その存在理由すら果たせないのならば、どうすればいいのだ?
分家の子として生まれた、自分は
その存在理由すら果たせないのならば、どうすればいいのだ?
その日、獄門寺 菊は、10にも満たない年齢で、己の生まれた理由を疑問視することとなった
そして、自分なりの答えを何とか見つけ出し………今に、至る
そして、自分なりの答えを何とか見つけ出し………今に、至る
現在
学校町、とあるマンションにて
学校町、とあるマンションにて
「…理解した」
「ほんっとーに、理解したんでしょうね?」
「ほんっとーに、理解したんでしょうね?」
「死ねばよかったのに」は、ジト目で菊を見つめる
あぁ、と頷いてくる菊
あぁ、と頷いてくる菊
ぱさぱさと長い前髪が揺れて、一瞬だけ、その目が見えた
どこか眠たそうな、しかし、鋭さの混じる眼差し
その目に、一瞬、「死ねばよかったのに」は、ゾクリと体を振るわせた
どこか眠たそうな、しかし、鋭さの混じる眼差し
その目に、一瞬、「死ねばよかったのに」は、ゾクリと体を振るわせた
…ただの、人間の癖に
その癖に、どうして、こいつはこんなに鋭い目ができるのだ
その癖に、どうして、こいつはこんなに鋭い目ができるのだ
「理解したんなら、どうして、まだ契約したいと思う訳?人生歪むって言ってるでしょ?」
「……どうせ、元々歪。生まれてきた目的すら、果たせないのならば、いっそ歪んで、別の方向に役立てた方がいい」
「……どうせ、元々歪。生まれてきた目的すら、果たせないのならば、いっそ歪んで、別の方向に役立てた方がいい」
淡々と、そう告げてくる菊
この人間が何を考えているのか、正直、「死ねばよかったのに」には、理解できない
自ら都市伝説と契約を望み、その運命を歪める事を望むとは
…狂人なのか、それとも、よっぽどの馬鹿か
それとも……何かしらの、強い信念があって、それに利用できるとでも考えたのか
この人間が何を考えているのか、正直、「死ねばよかったのに」には、理解できない
自ら都市伝説と契約を望み、その運命を歪める事を望むとは
…狂人なのか、それとも、よっぽどの馬鹿か
それとも……何かしらの、強い信念があって、それに利用できるとでも考えたのか
「ま、契約してもらえれば、私にも若干のメリットはあるからいいけど…でも、私、たいした都市伝説じゃないわよ?戦闘能力が高い訳でもない、魔法みたいな素晴らしい力が使える訳でもない……正直、契約によって能力が強化される事はわかるけど、どう言う方面に強化されるかもさっぱりよ」
「……問題はない」
「……問題はない」
あぁ、もう、どうするべきか、「死ねばよかったのに」は考える
…契約は、彼女にとっても渡りに船である
あのまま、意味もなくただ人を驚かし続けるなんて、飽き飽きだ
もっと、違うことがしたい
女の姿に生まれ、大体それっぽい精神をもってして生まれてしまったのだ
年頃の女のように、綺麗な服の一つだって着てみたいし、化粧だってしてみたい
化粧っ気もない顔で、こんな白い飾り気もない服を着ているだけも、もう嫌だ
…契約は、彼女にとっても渡りに船である
あのまま、意味もなくただ人を驚かし続けるなんて、飽き飽きだ
もっと、違うことがしたい
女の姿に生まれ、大体それっぽい精神をもってして生まれてしまったのだ
年頃の女のように、綺麗な服の一つだって着てみたいし、化粧だってしてみたい
化粧っ気もない顔で、こんな白い飾り気もない服を着ているだけも、もう嫌だ
…だが、この菊と言う人間との契約に、不安を覚えない訳でもない
とにかくにも、何を考えているのか、さっぱり理解できないのだ
どうにも、こいつと関わっていると厄介事に巻き込まれそうな気がする
とにかくにも、何を考えているのか、さっぱり理解できないのだ
どうにも、こいつと関わっていると厄介事に巻き込まれそうな気がする
(…だと、しても)
結局、自分はこいつに、ついてきてしまったのだ
(選択肢なんて、ないんでしょうね)
小さくため息をつく
…選択肢がない?
いや、違う
ここまでついてきた時点で、既に自分は選んでいた
ただ、それだけなのだろう
…選択肢がない?
いや、違う
ここまでついてきた時点で、既に自分は選んでいた
ただ、それだけなのだろう
「わかったわ、契約しましょう…後悔すんじゃないわよ?」
「…後悔する必要など、存在しない」
「…後悔する必要など、存在しない」
そっと、手を握る
都市伝説との契約方法には、様々なものがある
「組織」だか言うところは、簡単に都市伝説と契約できる契約書なる物を作ったらしいが…「死ねばよかったのに」からすれば、そんな物、とんでもない
自分達都市伝説に対する、侮辱以外の何ものでもないと、憤りすら感じる
何故、都市伝説との契約に、様々な種類があるか?
…都市伝説にとっても、契約とは重要なものなのだ
その方法にも、意味が存在するのだ
その過程を無視して、強引に契約させる契約書なんて、とんでもない
そんな物、この世から消えてしまえとさえ、考える
都市伝説との契約方法には、様々なものがある
「組織」だか言うところは、簡単に都市伝説と契約できる契約書なる物を作ったらしいが…「死ねばよかったのに」からすれば、そんな物、とんでもない
自分達都市伝説に対する、侮辱以外の何ものでもないと、憤りすら感じる
何故、都市伝説との契約に、様々な種類があるか?
…都市伝説にとっても、契約とは重要なものなのだ
その方法にも、意味が存在するのだ
その過程を無視して、強引に契約させる契約書なんて、とんでもない
そんな物、この世から消えてしまえとさえ、考える
…まぁ、そんな物騒な思考はさておき
彼女は、契約を試行する
彼女は、契約を試行する
「死ねばよかったのに」
彼女の名前の由来
彼女という都市伝説の本質の言葉
それを、菊の目を見つめ、しっかりと告げる
彼女という都市伝説の本質の言葉
それを、菊の目を見つめ、しっかりと告げる
ざわり、全身に、何かが駆け抜ける
己の中に、新たな力が湧きあがる感覚
自分と菊の間に、精神的なつながりが生まれる感覚
それを、噛み締め…契約が、終了した
己の中に、新たな力が湧きあがる感覚
自分と菊の間に、精神的なつながりが生まれる感覚
それを、噛み締め…契約が、終了した
「…大丈夫?まさか、飲まれちゃいないでしょうね?」
「……問題ない」
「……問題ない」
菊に、変わった様子は見えない
まぁ、自分の逸話的に、契約者に何らかの能力を与える可能性は低いのだ
飲まれてでもいない限り、変化はおきまい
まぁ、自分の逸話的に、契約者に何らかの能力を与える可能性は低いのだ
飲まれてでもいない限り、変化はおきまい
「…お前は」
「?」
「お前は、問題ないのか?」
「?」
「お前は、問題ないのか?」
短く、告げてくる菊
一応、気を使ってくれてはいるようだ
一応、気を使ってくれてはいるようだ
「問題ないわよ。あんたとの契約で、自分の存在がしっかり固定された感覚があるし」
「…そうか」
「…そうか」
そう、何も問題はない
…今の、ところは
…今の、ところは
「……ふぁ。契約終わってほっとしたせいか、眠たいわ…」
「…布団を準備する。着替えておけばいい」
「寝巻きに着替えろって?言っとくけど、私、服はこれ以外もってないわよ?」
「……問題ない」
「…布団を準備する。着替えておけばいい」
「寝巻きに着替えろって?言っとくけど、私、服はこれ以外もってないわよ?」
「……問題ない」
立ち上がる菊
壁をスライドさせると…そこに、たくさんの服が、かけてあった
どうやら、このマンションの一室、片側の壁一面が、クローゼットになっているらしい
そこから、菊は何着かの服を取り出し、「死ねばよかったのに」の前に並べた
壁をスライドさせると…そこに、たくさんの服が、かけてあった
どうやら、このマンションの一室、片側の壁一面が、クローゼットになっているらしい
そこから、菊は何着かの服を取り出し、「死ねばよかったのに」の前に並べた
「…何これ」
「寝巻き。好きな物を選べばいい」
「寝巻き。好きな物を選べばいい」
言われて、それを見つめる
確かに、それらは間違いなく寝巻きだ
……女物の
確かに、それらは間違いなく寝巻きだ
……女物の
「どうして、女物の寝巻きをこんなに持ってるのよ?」
「サンプル」
「…は?」
「サンプル」
「サンプル」
「…は?」
「サンプル」
短く、簡潔に答えてくる菊
…サンプル?
どう言う事だ?
…サンプル?
どう言う事だ?
…まぁ、いいか
とにかく、眠たい
とにかく、眠たい
「死ねばよかったのに」が着替え始めると、菊は背中を向けてきた
ごそごそと、布団を敷き始めている
どうやら、「死ねばよかったのに」用の布団は、客人用らしい
ちょっと、立派な布団に見える
ごそごそと、布団を敷き始めている
どうやら、「死ねばよかったのに」用の布団は、客人用らしい
ちょっと、立派な布団に見える
とまれ、着替えていた「死ねばよかったのに」だが
「----っ!?」
視線を感じ、動きを止めた
都市伝説は、都市伝説を引き寄せる
…まさか、もう、何か来たのか!?
急いで、視線をめぐらせると
都市伝説は、都市伝説を引き寄せる
…まさか、もう、何か来たのか!?
急いで、視線をめぐらせると
「…っ隙間男!」
「………?」
「………?」
「死ねばよかったのに」の声に、菊が視線を向けてきた
「死ねばよかったのに」の、視線の先
それは、家具と家具の間の、小さな隙間
人間など入り込めるはずもない、そこに……人の姿が、見えた
男の姿が
「死ねばよかったのに」の、視線の先
それは、家具と家具の間の、小さな隙間
人間など入り込めるはずもない、そこに……人の姿が、見えた
男の姿が
隙間男
名前通りの存在
隙間に住まう不気味な存在
名前通りの存在
隙間に住まう不気味な存在
特に、人間に対して害があるという話は聞いた事がない
それでも、油断すべきでは、ない
それでも、油断すべきでは、ない
一応、自分は菊と契約したのだ
菊を、護らなければなるまい
菊を、護らなければなるまい
「…何の用よ」
隙間男を睨みつける「死ねばよかったのに」
その視線に、隙間男は、やや怯えた様子を見せながらも
その視線に、隙間男は、やや怯えた様子を見せながらも
…ぐ、と
親指を、たてた
わりと、いい笑顔で
親指を、たてた
わりと、いい笑顔で
「な、何だってのよ!?」
「……着替え」
「え?」
「中途半端」
「……着替え」
「え?」
「中途半端」
菊に言われて、自分の姿を見下ろす
白いワンピースを脱ぎかけの自分
ちなみに、下着はない
素肌の上にワンピースをまとうと言う、自分でも突っ込みたくなるような格好だったのだ、「死ねばよかったのに」は
で、そんな彼女が、ワンピースを脱ぎかけている
すなわち、肌は思いっきり露出してる訳で…
白いワンピースを脱ぎかけの自分
ちなみに、下着はない
素肌の上にワンピースをまとうと言う、自分でも突っ込みたくなるような格好だったのだ、「死ねばよかったのに」は
で、そんな彼女が、ワンピースを脱ぎかけている
すなわち、肌は思いっきり露出してる訳で…
………
…………
……………
…………
……………
「死ねばよかったのに」の望みを、菊は理解した
それは、彼女と契約したからできた事か、それとも、この時の彼女の考えが、非常にわかりやすかっただけか
それは、彼女と契約したからできた事か、それとも、この時の彼女の考えが、非常にわかりやすかっただけか
部屋を見回し、長い定規を手渡す
ぐ、と「死ねばよかったのに」はそれを構え
ぐ、と「死ねばよかったのに」はそれを構え
がすっ!!
「あだっ!?」
がすっがすっがすっ!!!!
「っちょ、痛い!?痛い痛いやめてっ!?着替え覗いたの悪かったからやーめーてーーーっ!!??」
がすがすがすがすがすがすがす
隙間男を、ひたすら定規で突きまくる「死ねばよかったのに」
地味に痛いのか、悲鳴をあげ続ける隙間男
…逃げられないのだろうか、そこから
地味に痛いのか、悲鳴をあげ続ける隙間男
…逃げられないのだろうか、そこから
菊は、しばし、その様子を見つめて
…そう言えば、布団を敷くのが途中だったと思い出し、作業を再開させた
…そう言えば、布団を敷くのが途中だったと思い出し、作業を再開させた
そう言えば、「死ねばよかったのに」に名前がついていないな、と
後でつけてやった方がいいのだろうか、そんな事を、考えながら
後でつけてやった方がいいのだろうか、そんな事を、考えながら
続くかどうか不明